映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の概要:「ただ社会を良くしたい」という高い志の元、17年の政治活動に身を投じた衆議院議員・小川淳也を追いかけたドキュメンタリー作品。監督・大島新自身も魅了された小川議員の熱量を通して未来を問いかけていく。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ドキュメンタリー
監督:大島新
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映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の登場人物(キャスト)
- 小川淳也
- 香川県高松市生まれ。東京大学卒業後、総務省に入省するも政界を目指した。5期の当選を果たすが、希望通りの出世を果たせず数々の苦悩に見舞われる。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』のあらすじ【起】
2016年7月。監督・大島新は衆議院議員・小川淳也に『なぜ君は総理大臣になれないのか』というドキュメンタリー作品の企画を提案しに行く。自称「日本をよくしたいオタク」である小川議員は政策立案に強い情熱を注いでいる。しかし、「世間に求められていない」と話す小川議員は他の政治家とのズレを感じていた。
大島監督が小川議員と出会ったのは17年前。小川議員が32歳の時である。小川議員は大島と初めて会った日から「政治家になりたいのではなく、ならければならない」と熱く語った。
高松市出身の小川議員は総務省を退職し、「政治を市民の手に取り戻したい」と宣言し議員として初当選した。小泉政権時にあえて野党から出馬した小川議員は若さと熱量、理論建てた政治論を武器である。希望に溢れる夫の姿を妻・明子は健気に支えていく。
「何事も51対49で勝負が決まっている」と言う小川議員。高い志と熱量に、大島監督自身も応援し始めていた。しかし民主党から衆議院選挙に初出馬した際には落選してしまった。結果的には比例復活した小川議員だが、発言権の弱さに苦悩することとなる。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』のあらすじ【承】
年に一度会うようになった小川議員と大島監督。2009年の選挙時には風向きが変わり政権交代が起こる。念願の選挙区にて当選を果たした小川議員。仲間も増え、高揚感が高まりつつある小川議員は「5年以内」にトップ(総理大臣)になると目標を口にするようになった。
2012年、民主党政権の終わりと同時に41歳となった小川議員は党のふがいなさと悔しさに表情を歪めていく。この頃から大島監督は小川議員が「政治家に向いていないのではないか」という疑問を抱き、深く密着を始めた。
政治ジャーナリスト・田崎氏を招いての食事会。野党議員の中では小川議員を評価していた田崎氏。安倍政権贔屓である田崎氏を前に、物おじせずに意見を交わす小川議員だが東京オリンピックを見越した話題になり行く先に少し表情を曇らせたのだった。
似た経歴を歩む玉木氏と比較されることの多い小川議員。自民党政権が崩れることはないが、党内で前原誠司の最側近としてささやかな出世を果たした。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』のあらすじ【転】
衆議院の解散を受け所属する民進党は新党・希望の党との合流を表明。小川議員は前原議員やライバルであり盟友の玉木氏との仁義に頭を抱えたが、悩み抜いた末2017年の総選挙では希望の党への合流を決断した。
希望の党・党首である小池議員への不信感を募らせる支持者たちの声にも誠実に答えていく小川議員。妻だけではなく、両親そして2人の娘も総出で背水の陣の選挙戦に向けて動き出した。党の公演も確定していない中で地元に根付いた活動を続ける小川議員と家族には、温かい声援と同じように非難の声も多く届いた。
小川議員の母親は、政治家よりも大学教授や啓蒙活動の方が向いているのではないかと思っていた。父親は議員バッチをつけることを願っているわけではないが、息子が議員として日本を変えることに成功するのではないかと、万が一の可能性を信じているという。
比例当選ではなく選挙区にて当選するという目標を胸に、雨の日も活動を続けた小川議員と家族。幼いときは嫌だった、と話す娘たちも先頭に立ち父親のために尽力するのだった。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の結末・ラスト(ネタバレ)
支持者たちと共に夜遅くまで開票状況を見守った小川議員。地元の有力メディアと強いコネがある平井氏はとても今日的であった。小川議員は所属する党すらも動かす力はなく苦戦を強いられる。結果は小川議員79,383票、ライバルの平井氏は81,566票と僅差で落選となった。
肩を落と隙もなく、支持者たちに謝罪の言葉を並べる小川議員。白票が5,000票近くあったという事実も当選への心残りを膨らませる。秘書と二人、言葉も出ずにホワイトボードを見つめるのだった。
2018年、希望の党は解散。小川議員は国民民主党には合流せず、47歳で無所属となった。2019年。小川議員は国会で統計不正を追及し注目を集め、ネットでは「統計王子」と呼ばれるようになった。
地元に戻り、夫婦二人で家賃4万円の家で暮らしながら議員としての活動を続ける小川議員。初心に返り、初めて出馬した際のポスターを眺めていた。政治家らしい「欲求」は未だに持っていないと語る小川議員。変わらず「ただ社会を良くしたい」と奔走していた。
2020年。世界は未曾有のウィルスに脅かされた。「総理大臣なりたいですか?」という大島監督の問いかけに対して、「その志をまだ持っているから議員を続けている」と熱く語るのだった。
映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の感想・評価・レビュー
希望を抱くことは無料だ。立志を口にすることも無限。愚直な男の政治人生を17年間追ったドキュメンタリーでは、誠実さだけでは人生の理想像は成り立たないと突き付けられたようだった。ただ、救いとなる存在も多く登場する。人として生業に従事する以上、認めてくれる存在と支えてくれる存在は欠かせないと強く痛感する。最初と最後に見られた小川議員の笑顔は多少違えど、悩ましい表情で作品が幕を閉じなかったことで未来への希望の光を少しだけ見出させてくれたように思う。(MIHOシネマ編集部)
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