この記事では、映画『捨てがたき人々』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『捨てがたき人々』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『捨てがたき人々』の作品情報
上映時間:123分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:榊英雄
キャスト:大森南朋、三輪ひとみ、内田慈、滝藤賢一 etc
映画『捨てがたき人々』の登場人物(キャスト)
- 狸穴勇介(大森南朋)
- 無職で、生きることに飽きた男。両親に捨てられた過去を持っている。故郷に戻り、強姦した京子という女と家庭を持つ。女が好きで、幸福を性欲で満たそうとしている。
- 岡辺京子(三輪ひとみ)
- お弁当屋で働く女。勇介に強姦され、妊娠する。勇介と家庭を持つ。新興宗教の熱心な信者で、そこに所属する男と不倫をする。人を幸福にしたいと強く願っている。顔に大きな痣がある。
- あかね(美保純)
- 飲み屋を営む女で、京子の叔母。勇介のことを、腐ったトマトだと揶揄する。勇介に強姦される。男の経験値が豊富。
- 丸吉(田口トモロヲ)
- 勇介の勤める工場の社長。人妻である社員の和江と不倫をする。和江の夫が自殺したことを受け、自らも自殺する。工場内で和江と愛し合うほど、性の快楽に溺れる。
- 吉田チーフ(遠藤賢一)
- 和江の夫。結婚してばかりにもかかわらず、体の関係が全然ないことに不満を持っている。丸吉と和江の浮気に気づき、自殺する。
- 吉田和江(内田滋)
- 吉田チーフの妻。丸吉と不倫をする。夫も丸吉も自殺してしまい、泣き崩れる。美人ではないが、体に魅力のある女。
映画『捨てがたき人々』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『捨てがたき人々』のあらすじ【起】
無職でお金のない狸穴勇介。笑顔もなく、やる気もない勇介は人生に飽きていた。そんな彼が最後に足を運んだのは、両親に捨てられた記憶の残る生まれ故郷の港町だった。
港町についた勇介は、不動産屋に安い物件を紹介してもらう。頭金を払い、すぐに勇介はそこに住むことを決める。
道を歩いていた勇介は、自転車に乗った岡辺京子という女とぶつかってしまう。顔に痣のある京子を心配した勇介だったが、生まれつきだから大丈夫だと京子は笑顔で答える。
お弁当屋に寄った勇介。レジにいたのは京子だった。特に言葉も交わさず、勇介はお弁当を買ってお店を後にする。
偶然外で遭遇した勇介と京子。京子は、なんでこんな小さな町に来たのかと勇介に聞く。勇介は、人生に飽きてしまったのだと答える。京子は愛を信じる、新興宗教の熱心な信者だった。人を幸せにしたいという京子に勇介は、これが俺の幸せだと言ってセクハラまがいの行動を起こす。そこへ京子の叔母のあかねが現れ、京子はその場からどうにか逃れる。

映画『捨てがたき人々』のあらすじ【承】
あかねが営む飲み屋を訪れた勇介。お客に絡まれた勇介は、すぐにその飲み屋から出て行く。
京子のお弁当屋を訪れた勇介。京子の仕事終わり、勇介は京子に土下座をして謝る。そして、京子を食事に誘う。
お酒に酔った京子が目を覚ますと、そこは勇介の自宅だった。幸福を性欲にしか感じない勇介は、京子を強姦する。
自宅へと帰った京子。そこには、母親とその恋人がいた。性の快楽に溺れる二人の関係に呆れていた京子は、母親に怒りをぶつける。
勇介を訪れる京子。彼女は、生きることに飽きたという勇介が気になっていた。京子は、好きだと言っていたドフトエフスキーの罪と罰を勇介に渡す。さらに、無職だという勇介に仕事まで紹介する。
家に帰った京子が見たのは、母親と恋人が愛し合う姿だった。逃げるようにあかねの店に向かうが、あかねも男に体を許していた。京子は怒りを言葉にしながら、自転車を走らせる。そして京子は向かったのは、勇介の家だった。勇介は京子を迎え入れ、缶ビールを二つ取り出す。
映画『捨てがたき人々』のあらすじ【転】
勇介は京子に迫り、二人は再び肉体関係を持ってしまう。自宅へと帰った京子は、シャワーを浴びながら泣き崩れる。しかし、裸で寝そべる母親と恋人の姿を見た京子は、何かを悟ったように笑みを浮かべる。
工場で働き始めた勇介。二ヶ月が経ったが、上達しない勇介は上司からは嫌味を言われる。
勇介のもとを訪れた京子は、勇介との子供を妊娠したと伝える。今すぐ子供をおろせと言う勇介。少しは勇介が人間としての心を見せると思っていた京子は、勇介の態度に落胆する。そんな京子に勇介は、体だけの関係で十分だという言葉を吐き捨てる。
京子の母親と恋人が死んでしまう。しかし、京子は特に悲しんだ様子を見せることはない。葬式の帰り、勇介は工場の社長である丸吉と、人妻である社員の吉田和江が工場内で愛し合っているのを目撃する。
自宅で母子手帳の児童憲章を朗読していた京子は、子供の大切さについて改めて考える。すると突然、外から勇介の泣き声が聞こえてくる。自分のような男の子供だと思うと不憫だと言い、生まれてこない方が良い人間もいるのだと勇介は泣きながら訴える。
映画『捨てがたき人々』の結末・ラスト(ネタバレ)
京子と勇介は、家族になることを決心する。仕事から帰ってきた勇介は、あかねが京子に自分の悪口を口にしているのを耳にする。あかねは勇介のことを、腐ったトマトだと揶揄する。その後、勇介があかねを訪れる。そして、勇介はあかねを強姦する。
京子と勇介の間に子供が誕生する。その頃、丸吉と不倫していた和枝の夫であり、工場のチーフである吉田が自殺する。それを受けて、丸吉までもが自殺してしまう。勇介は工場を辞め、丸吉の妻から退職金をふんだくる。
時が経ち、京子と勇介の息子はもう10歳になっていた。勇介はあかねと頻繁に体の関係を持ち、京子は働き始めた新興宗教の男と不倫している。
勇介の息子の正義は、勇介に対して嫌悪感を抱いていた。その様子に怒った勇介は、正義を殴ってしまう。それ以来、家族の関係は見るからに悪化してしまう。
勇介は京子に、愛していると言えと強要する。京子は、心無い勇介への愛を口にする。勇介は京子を殴り、家を出て行く。その様子を見た正義は京子に、普通の両親のもとに生まれたかったと言う。なんで産んだのかと京子を責める正義を、京子は愛していると言って抱きしめる。
海へとやってきた勇介は、「なぜ人は生き、なぜ人は死ぬのか。なぜ自分は狸穴勇介なのか」と叫んだ後、海の向こうを遠く見つめるのだった。
映画『捨てがたき人々』の感想・評価・レビュー
本作は、人生を諦め本能のままに生きるクズ男を描いたジョージ秋山の漫画原作としたラブヒューマンドラマ作品。
主人公は金も仕事もない怠け者で、終いには強引に京子と関係を持つというクズ男で、男の都合の良さが出ていて気味が悪かった。
しかし、観ていくうちに彼の人間性に引き込まれていった。
主人公には一ミリも共感しなかったが、やはりラストまで救いようのないのは切なかった。
なんともやるせない余韻が残る作品。(女性 20代)
見ている人を不快にさせる要素が詰まりまくった作品で、見なければよかったとさえ思いました。
この作品を見ると、大森南朋のイメージが大きく変わります。影があるけど芯は優しいキャラクターを演じていることが多いのでこれまで良いイメージを持っていたのですが、こんなにもクズでクソみたいな性欲にまみれた男を演じることも出来るのかと本当に驚きました。
勇介のような人間が実際にも存在すると思うと恐怖を感じます。女性は特に不快に感じるシーンが多いと思うので注意して鑑賞してみて下さい。(女性 30代)
観終わった後、どこか胸がざわつくような感覚が残る映画だった。登場人物は皆、不器用で醜く、理想とは程遠い。だがその“人間らしさ”が逆にリアルで、強く印象に残った。特に、捨てられた者同士の依存とも愛ともつかない関係性が、救いがないようで、どこか切なかった。希望がないわけではないが、決して甘くない現実を突きつけられる作品。(30代 男性)
まさに“人間の業”を凝縮したような作品で、正直、観ていて苦しくなる場面も多かった。だが、その不快さすらも計算された演出であり、物語の奥深さに繋がっている。主人公の行動に共感はできないが、否定もできない、そんな曖昧な感情が観る者を捉えて離さない。結末も救いようがないが、それがまたリアルで良かった。(40代 女性)
自分の人生と重ねてしまう部分があり、かなり刺さった映画だった。社会からはみ出した人間たちが、それでも何かにすがろうとする姿は哀れでありながら美しかった。主人公の自己中心的な行動も、どこか孤独への恐れから来ているようで、ただの悪人とは思えなかった。悲惨な物語の中にも、かすかな“生”の光が見える作品。(20代 男性)
観終わった直後は「なんて後味の悪い映画なんだ」と思った。でも時間が経つにつれて、登場人物の一人ひとりの行動の裏にある感情がジワジワと心に染みてくる。主人公もヒロインも、どこかで何かを信じたかったんだと思う。人間の醜さと弱さを真正面から描いた、決して忘れられない一本。(50代 女性)
この作品は“嫌悪感”と“同情”が交互に押し寄せてくるような独特の体験を与えてくれる。物語としてはとても重く、暴力的な要素も多いが、単なるショッキングな演出ではなく、登場人物の心理を描くための必然性が感じられる。生々しい人間関係の中に、どこか愛のようなものを感じてしまうのが不思議だった。(30代 女性)
役者たちの演技が凄まじくリアルで、フィクションであることを忘れるほどだった。特に主人公の不気味さ、そしてそれを受け入れてしまうヒロインの壊れ方がとても印象的だった。幸せとは何か、救いとは何かを考えさせられる作品。観る人を選ぶ映画ではあるが、深く刺さる人には一生忘れられないだろう。(60代 男性)
この映画は“恋愛”や“絆”といった言葉の美しさを剥ぎ取った後に残る、本当の感情を描いている気がする。相手を求める気持ちは純粋でも、それが他者にとっては破壊でしかないという事実が、生々しく突きつけられる。重くて暗いけれど、目が離せない力を持った映画だった。(20代 女性)
どの登場人物にも感情移入できないのに、なぜか最後まで観てしまった。おそらくそれは、“人間のどうしようもなさ”というテーマがあまりにも赤裸々に描かれていて、目をそらせなかったから。暴力や依存、無責任な関係性など、現実でもあり得るような問題が詰め込まれている。観た後に自分を見つめ直すきっかけにもなる作品。(40代 男性)
映画『捨てがたき人々』を見た人におすすめの映画5選
冷たい熱帯魚(2010)
この映画を一言で表すと?
日常の皮を剥がせば、そこには狂気と欲望が蠢いていた——。
どんな話?
熱帯魚店を経営する冴えない男が、カリスマ的な同業者と出会ったことから殺人事件に巻き込まれていくサスペンススリラー。実話をベースにしたリアルでグロテスクな展開が衝撃的。人間の狂気と闇を鋭く描いています。
ここがおすすめ!
『捨てがたき人々』同様、人間の醜さや理性の崩壊を描いた作品。園子温監督ならではの過激な演出と、吹越満・でんでんの鬼気迫る演技は必見。観終わった後にズシンとくる“疲労感”がクセになる作品です。
愛のむきだし(2008)
この映画を一言で表すと?
愛とは、ここまで歪で暴力的で、それでも美しいのか。
どんな話?
宗教、盗撮、暴力、性癖…あらゆる逸脱を詰め込んだ中で、一人の青年と少女の奇妙な愛が描かれる4時間近くの大作。過剰なまでに破綻した世界観のなかで、それでも純粋な感情が光ります。
ここがおすすめ!
極端なキャラクターと演出ながら、最後には深い“愛”の意味が胸に刺さる。『捨てがたき人々』で描かれた、壊れた人間同士の奇妙な絆に惹かれた人には間違いなく刺さる傑作です。観るには覚悟が必要ですが、それだけの価値はあります。
蛇にピアス(2008)
この映画を一言で表すと?
痛みの中にしか存在できない少女の、生への渇望。
どんな話?
ボディピアスと刺青の世界にのめり込んでいく若い女性ルイ。彼女が出会う男たちとの破滅的な関係を通じて、自分の存在意義を探し続ける姿が描かれる衝撃作。芥川賞受賞作の映画化作品です。
ここがおすすめ!
身体的な痛みと精神的な孤独をリンクさせるような描写が『捨てがたき人々』と共鳴します。吉高由里子の体当たりの演技も圧巻で、壊れていく様に目が離せません。不器用な“生”を感じたい方におすすめ。
復讐するは我にあり(1979)
この映画を一言で表すと?
道徳も正義も無意味に思える、極限の人間劇。
どんな話?
実在の連続殺人犯・西口彰をモデルに、淡々と犯罪を重ねていく主人公と、その裏にある家族・社会との関係を描いた犯罪ドラマ。深作欣二監督の容赦ない視点が光る名作です。
ここがおすすめ!
『捨てがたき人々』が提示した“救えない人間”というテーマに、より深く切り込んだ作品。緒形拳の狂気を帯びた演技は今なお語り継がれるほどで、善悪の境界線を揺さぶられたい人にこそ観てほしい一作です。
海炭市叙景(2010)
この映画を一言で表すと?
何気ない日常の奥にある、人の孤独と哀しみの風景。
どんな話?
北海道・海炭市を舞台に、人生に行き詰まりを感じている市民たちの日常を静かに描いた群像劇。大きな事件は起きないが、それぞれの人生に滲む切なさと虚無感が静かに心を打ちます。
ここがおすすめ!
『捨てがたき人々』で描かれた閉塞感や社会からこぼれ落ちた人間の悲哀に共感した人におすすめ。美しい風景と共に描かれる、静かな絶望と微かな希望が胸に染みる作品です。派手さはないが、心に残る傑作です。
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