この記事では、映画『スクラップ・ヘブン』のあらすじをネタバレありで解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『スクラップ・ヘブン』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『スクラップ・ヘブン』 作品情報

- 製作年:2005年
- 上映時間:117分
- ジャンル:青春
- 監督:李相日
- キャスト:加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明、光石研 etc
映画『スクラップ・ヘブン』 評価
- 点数:45点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★☆☆☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★☆☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★☆☆☆
[miho21]
映画『スクラップ・ヘブン』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『スクラップ・ヘブン』のあらすじを紹介します。
バスジャックに巻き込まれた警察官のシンゴ、気ままに生きるテツ、片目が義眼というコンプレックスを持つサキ。
テツが銃で撃たれ、犯人は自殺という形で事件は幕を閉じた。
3ヶ月後、シンゴとテツは偶然再会する。
意気投合した2人は、公衆トイレを窓口とした”復讐代行ゲーム”を始める。
医療ミスを隠蔽していた病院長に対する復讐、虐待してくる母親に対する小学生の復讐の手伝いなどを、誰も傷つかないことをモットーに頼まれた復讐を楽しむシンゴとテツ。
ある日シンゴの元に、サキから「助けて」と連絡が入る。
バスジャックの時にサキを見捨てたという負い目があるシンゴは慌てて向かうのだが、彼氏のフリをして欲しいだけだった。
それでもサキに頼られた事を素直に喜び、浮かれていたシンゴは仕事で大きなミスをして、幼稚な嫌がらせをされるように。
その頃、テツは父親を自殺で失った。
テツに愚痴をこぼした事から、シンゴの警察に対する復讐として拳銃強奪が行われた。
興奮する2人の元に、サキから「全部」に対する復讐依頼が届く。
サキが作り上げた薬物を使って「全部」に対する復讐を行おうとするテツ。
一方シンゴは捜査一課の刑事から、自分たちが盗んだ拳銃がホームレスの手に渡り殺人事件に発展した事、拳銃を盗まれた警官が自殺したことを聞かされる。
誰も傷つかない約束だったと言うシンゴと、想像すればわかった事だと言うテツは仲違いしてしまう。
やがて拳銃を持って自首してきたテツを、シンゴが取り調べることになる。

映画『スクラップ・ヘブン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『スクラップ・ヘブン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ご想像にお任せ、のストーリー
作中、オダギリジョー演じるテツの台詞として何度も繰り返される「想像力」が鍵になっているストーリー。
そして復讐代行業の窓口にしたのは公衆トイレで、盗んだ拳銃を隠すのも汚い公衆トイレ、クライマックスの爆弾を隠すのも警察署のトイレと、トイレが第二の舞台ともいえる作品。
シンゴが先輩警官から現実を突きつけられるのも、汚い公衆トイレだ。
汚れたトイレばかりだと嫌気がするが、復讐代行業が上手くいっている時は比較的綺麗なトイレを使っているため、心象風景をトイレに映し出した珍しい設定ともいえる。
ドラマに憧れて警察官になったはいいが、デスクワークばかりでうんざりしているシンゴと、地下鉄サリン事件の被害者で、仕事人間だったのだが体よく会社をクビになったことから精神を病んだ父を持つ自由人テツが出会い、不思議な化学反応を起こしながら友情を築くストーリー。
そこに栗山千明演じる義眼をサングラスで隠したサキが適度に関わることで、遊び半分で行っていた復讐代行業が「想像力が足りない世の中をどうにかしたい」という不穏なものに変化していく。
自首したテツの思惑や、シンゴとテツの手口と同じ交番襲撃事件の謎、シンゴはなぜテツに対して殴りかかったのかなど、「自分の想像力で考えろ」と言わんばかりの結末は、こじつけに近いものがある。
キャスティングがずば抜けて良い
夢を持っていたはずの将来がこんなはずじゃなかった、というシンゴのキャラクターは感情移入しやすい。
ヒーローのようにバスジャック犯を逮捕したり、サキを助けたかったのにも関わらず、サキの義眼を見て目を逸らして怖気ずくシーンや、街中で迷惑行為をする男性に対し、想像の中でしか反撃できないというありふれた人物像。
一方のテツはうらやましくなるほどに行動が突飛で自由奔放、真逆の設定で入り込みやすい作品。
自由奔放なテツ役には個性的なオダギリジョー、平凡を絵に描いたようなシンゴ役に作品に溶け込むような演技をする加瀬亮と、キャスティングはピッタリ。
影のある美人サキ役に栗山千明、そして重要な脇役のシンゴを気にかけている先輩刑事には柄本明、適当な性格のシンゴの上司役に光石研と、配役には目を引くものがある。
だが、特徴の少ない演出、ご想像にお任せというラスト、重すぎず軽すぎない設定が作品全体の印象をぼかしてしまっており、意味がわかりにくい映画になっている。
こういう世の中に反発するような、世間を皮肉ったような作品はコアなファンが付きやすいですよね。『トレインスポッティング』のような若さや汚さ、脆さにも似た感情がこの作品からも感じられ、とても興味深い作品でした。
「想像力のない馬鹿が多すぎる」というセリフが印象的で、今でも心に残っているのですが見終わった時の心のモヤモヤと言うか、からっぽになってしまったような不思議な感覚は他の作品ではなかなか味わえないでしょう。(女性 30代)
電車内での無差別事件から始まるストーリーは衝撃的で、最初から心を掴まれました。加瀬亮演じる刑事とオダギリジョー演じる薬剤師、そして柴咲コウの存在が絡み合い、鬱屈した社会への鬱憤を代弁するように「復讐代行」を始める展開には強い引力がありました。しかし、次第にそれが暴走していき、最後には壊れていく姿に虚しさを感じました。破壊と救済の狭間を描いた、痛々しくも忘れられない作品です。(20代 男性)
復讐代行サービスを掲げた主人公たちの行動は、社会に対する不満や閉塞感をストレートに表現していて共感する部分もありました。しかし同時に、その行動が誰も幸せにしない現実が突き付けられるラストには胸が苦しくなりました。柴咲コウ演じるナオミの存在は特に印象的で、彼女の喪失感と孤独が物語全体をより切なくしていました。観終わった後、心に重い余韻が残る作品でした。(30代 女性)
この映画は社会派でありながら、登場人物の個人的な痛みや孤独を深く描いているところが魅力でした。オダギリジョーの狂気を帯びた演技は迫力があり、加瀬亮との対比が鮮烈。ラストで「スクラップ・ヘブン」という名前通り、全てが壊れ去る結末は救いがないようでいて、逆に誠実さを感じました。万人に薦められる映画ではありませんが、鋭いメッセージ性を持った傑作だと思います。(40代 男性)
社会の理不尽さや鬱屈を抱えた若者たちが、ささやかな反撃を試みる姿に切実さを感じました。ただの犯罪映画ではなく、人が抱える孤独や承認欲求をリアルに描いている点が強烈です。復讐代行は一見スカッとするアイデアですが、次第に彼ら自身を追い詰めていく流れが皮肉で悲しい。観る人を選ぶ作品ですが、心に突き刺さるリアリティがありました。(20代 女性)
この映画は一種の「反社会的青春映画」だと感じました。正義感でも悪でもなく、ただ生きにくさを抱えた者たちが作り上げた小さなユートピア=スクラップ・ヘブン。そこに居場所を見つけながらも、結局は壊れていく姿が哀しいです。柴咲コウ演じるナオミの死が特に痛烈で、ラストの虚無感を決定づけていました。消耗しながらも真実を描いた作品だと思います。(30代 男性)
「復讐代行」というテーマは刺激的ですが、単なるスリラーに留まらず、人間の心の闇を掘り下げているところが秀逸でした。特に加瀬亮の演じる刑事が抱える正義感と挫折感がリアルで、観る側に問いを突き付けてきます。結末は救いがなく、余韻が重くのしかかりますが、そこにこそ本作の価値があると感じました。観る人の心をざらつかせる映画です。(40代 女性)
青春映画の要素と社会派ドラマの要素が融合した独特な作品でした。閉塞した社会で「誰かを裁きたい」と願う心情は理解できるだけに、登場人物たちの暴走は観ていて苦しかったです。けれど、その破滅的な結末にこそリアルなメッセージがあると感じました。笑える場面はほとんどなく、観終わった後にどっと疲れましたが、強烈に記憶に残る映画でした。(50代 男性)
柴咲コウの存在感が圧倒的でした。彼女が抱える痛みや生きづらさが、スクラップ・ヘブンという共同体に意味を与えていたように思います。彼女の死が物語を決定的に暗くし、残された二人の虚無を際立たせる構造はとても象徴的でした。映像もスタイリッシュでカッコよさがありつつ、心の奥をえぐるような物語展開に息を呑みました。(20代 女性)
自分は普段ハリウッド映画ばかり観ますが、本作は独特な日本映画の空気感に引き込まれました。アメリカ的な勧善懲悪ではなく、ただ鬱屈と絶望が積み重なっていくストーリーが新鮮で衝撃的。オダギリジョーの狂気を孕んだ演技は海外作品に引けを取らない迫力でした。最後の「救いのなさ」も含め、日本映画らしい余韻を強く感じました。(30代 男性)
映画『スクラップ・ヘブン』を見た人におすすめの映画5選
パンク侍、斬られて候
この映画を一言で表すと?
カオスな世界観で描かれる、暴走する人間模様と破滅の物語。
どんな話?
江戸時代を舞台に、野心家の浪人が「世直し」を掲げて騒動を巻き起こす物語。登場人物たちは次第に狂気に飲み込まれていき、誰も止められない破滅へと突き進む。異色の時代劇ながら、現代社会の歪みをも映し出す挑戦的な作品です。
ここがおすすめ!
豪華キャスト陣による熱演と、破天荒な展開が観る人を翻弄します。常識を打ち壊す物語の運び方や独特の映像美は、好き嫌いが分かれるものの強烈なインパクトを残します。『スクラップ・ヘブン』の破壊的なテーマが刺さった方に最適です。
ヘルタースケルター
この映画を一言で表すと?
虚構の美に翻弄される、破滅型ヒロインの衝撃作。
どんな話?
人気モデルとして絶頂に立つ主人公は、実は全身整形で作り上げられた存在。次第に心身が蝕まれ、スキャンダルや裏切りに追い詰められていく姿を描きます。華やかな表舞台の裏に潜む虚無と狂気が観る人を圧倒します。
ここがおすすめ!
蜷川実花監督ならではの鮮烈な色彩と映像美が、主人公の転落と破壊をより際立たせています。沢尻エリカの圧倒的な存在感と演技は必見。社会の虚飾や人間の欲望を赤裸々に描いた点で、『スクラップ・ヘブン』と共鳴します。
アカルイミライ
この映画を一言で表すと?
若者の虚無と希望を描いた、深淵なる青春映画。
どんな話?
仕事や社会に馴染めない若者たちが、暴力や逃避の中で自分の居場所を探す物語。幻想的な演出や不可思議な出来事を交えつつ、現実に取り残された世代の孤独を切実に表現しています。観る人に強い余韻を残す作品です。
ここがおすすめ!
黒沢清監督による静かな狂気と美しい映像表現は圧巻です。淡々とした日常の中に潜む不安や絶望を捉えながらも、かすかな希望を感じさせる余地があります。『スクラップ・ヘブン』の虚無感に惹かれた人にぜひおすすめしたい一本です。
ブルータル・ジャスティス
この映画を一言で表すと?
暴力と絶望を真正面から描いた、衝撃のクライムドラマ。
どんな話?
追い詰められた刑事二人が、金のために犯罪に手を染めていく物語。最初は小さな一線を越えるだけだったのが、やがて制御不能となり、破滅へと突き進みます。善悪の境界が崩れゆく展開は観る人を圧倒します。
ここがおすすめ!
リアルで容赦ない暴力描写と、人間の欲望と愚かさを突き詰めた脚本が強烈です。救いのない物語ながら、逆に誠実さを感じさせる完成度があります。『スクラップ・ヘブン』の破滅的な世界観が刺さった人に相性抜群です。
愛のむきだし
この映画を一言で表すと?
愛と狂気が暴走する、4時間超の問題作。
どんな話?
父親に認められたい少年が、盗撮や暴力に走りながらも愛を求める物語。出会った少女との関係や、カルト宗教との関わりが絡み合い、破滅と救済の間で揺れ動きます。衝撃的かつ壮大な青春映画です。
ここがおすすめ!
園子温監督の代表作で、過激で過剰な演出が満載ながら、登場人物たちの「愛に飢えた心」が鮮烈に伝わってきます。長尺ながら一気に見せるパワーがあり、『スクラップ・ヘブン』と同じく痛々しいほどの人間模様が描かれています。

 
  
  
  
  




みんなの感想・レビュー