映画『スウィート・ノベンバー』の概要:傲慢なビジネスマンがある日、一風変わった女性と出会い、11月という期限付きの中、日々のゆとりと愛の素晴らしさを取り戻していく。しかし、女性にはある重大な秘密があった。キアヌ・リーヴスとシャーリーズ・セロン共演。甘くも切ないラブストーリー。
映画『スウィート・ノベンバー』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:ラブストーリー
監督:パット・オコナー
キャスト:キアヌ・リーヴス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・アイザックス、グレッグ・ジャーマン etc
映画『スウィート・ノベンバー』の登場人物(キャスト)
- ネルソン・モス(キアヌ・リーヴス)
- 頭の中は全て仕事中心の広告マン。傲慢で、儲ける為なら何でも犠牲にしかねない。恋人ですら蔑ろにしてしまう。人の心情の機微に疎くなっており、自己中心的。
- サラ・ディーヴァ(ジャーリーズ・セロン)
- 自由気ままに過ごす女性。ひと月ごとに男性を決めて付き合っている。明るく笑顔に溢れ、何事も日々を楽しもうとしている。
- チャズ(ジェイソン・アイザックス)
- サラの友人で隣人。彼女の事情を知りつつも傍でずっと見守っている。女装が趣味。優しく穏やかな男性。
- ヴィンス(グレッグ・ジャーマン)
- ネルソンの仕事のパートナー。仕事人間で、ネルソンと会社を辞め、別の会社へ行って儲けようと思っている。
- ブランドン(マイケル・ローゼンバウム)
- サラとチャズの友人で女装趣味がある。サラの事情を知っている1人。
映画『スウィート・ノベンバー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『スウィート・ノベンバー』のあらすじ【起】
全てが仕事中心のネルソンは日々を忙しく働いている。自己中心的な人間だ。故に、運転免許の更新ですら後回しにしようとしていた。だが、今の更新を逃せば無免許になると忠告され、彼は仕方なく時間を捻出して免許の更新へ向かう。
そこには買い物袋を沢山抱えた女性も参加していた。彼女はお菓子をつまみつつ適正テストを受ける。ネルソンは彼女に声をかけてカンニングしようとするが、それを監督官に咎められ彼女はテストを中止。退出を促されてしまう。
無事テストを終えたネルソンは、現在のプロジェクトの進行状況を確認しながら会社へ戻ろうとする。だが、駐車場であの彼女と再会する。女性はペット・ケアを営んでおり免許が無ければ仕事にならず、それをネルソンが台無しにした事で一か月は無収入である。ネルソンはその一か月分の収入を弁償するから連絡をくれと名刺を渡す。許しを買いたいというネルソンに彼女は、許しは売り切れと言って別れる。
その夜、自宅へ戻ったネルソンの元へあの彼女が訪ねて来る。彼女の突拍子もない行動に半ば呆れながらマンションの下へ。一悶着あった後、ネルソンは車に乗せろという彼女の要求を飲んだ。彼女はサラ。目的の場所に到着するとサラはカツラを被りサングラスをする。そうして、とあるアパートへと鍵を壊して入って行った。不法侵入のサイレンが鳴る中、荷物を抱えて走って来た彼女は、車に乗るなり早く出せと言う。荷物から出て来たのは子犬が2匹。実験道具にされてたまるものかとサラは言う。
仕事が一番楽しいと言うネルソンに、サラは仕事以外に楽しみは無いのかと問う。すると彼は何も答えられない。趣味も何も無いのだ。彼女は自宅へ誘うがネルソンは頑なに断った。巧みな彼女の話術に乗せられ結局、自宅へと招かれてしまう。彼女は問題のある男性を助けると言う。仕事しか頭になく趣味もない。しかもその仕事ですら楽しめていない。ネルソンを不幸な男だと言う。感情が摩耗し愛情の欠片すら失っている。救うには条件があり、ひと月をこの部屋でサラと過ごすと言うのだ。思わず失笑するネルソン。きっかり一か月、仕事もせず彼女と過ごす。11月1日から始めようと言うサラに、ネルソンは断固拒否を示し部屋を出て行った。
映画『スウィート・ノベンバー』のあらすじ【承】
次の日、ネルソンはクライアントにプロジェクトのプレゼンをしていたが、クライアントには気に入られずプレゼンは失敗。クライアントと喧嘩してしまう。ネルソンのせいで多大な過失を負った会社は、思い上がったネルソンに休暇を言い渡す。だが、彼は納得せず更に言葉を重ねた結果、会社をクビにされてしまう。自宅へ戻ると荷物を持った恋人が出て行くところだった。会社をクビにされ、恋人にはフラれ、茫然自失となるネルソン。だが、そこへサラから荷物が届く。開けてみると家の鍵と子犬が入っていた。
文句を言いに子犬を連れてサラを訪ねる。彼女の狙いが分からないネルソン。サラは11月の男をネルソンと決めた様子だ。仕事もない彼女もいない。ネルソンはサラの誘惑に乗ろうとしたが、ふと我に返り帰ろうとする。外は大雨だったが、2人してずぶ濡れになりながら口論を続けた。サラの言い分はネルソンにとっても損はない。ひと月仕事をせずただ彼女と同棲するだけ。条件はそれだけなのだ。それだけでネルソンを救ってみせると豪語するサラに、ネルソンはとうとう折れて彼女と過ごす事にした。
朝、ネルソンはヴィンスへ電話する。広告業界の大物の所へ2人で移籍しようと誘いを掛ける。だが、それをサラに見咎められ服も全て彼女の用意したものを着る。そこへ隣人のチャズが登場。ネルソンを見て11月の男だなと挨拶。彼女が持って来た服はどうやらチャズの物のようだった。ネルソンはいまいち納得できず戻ろうとするが、彼女に酷い事を言ってしまいすぐに謝って仲直りする。一日だけという話で関係を続ける事にした。
サラの仕事である犬の散歩の為、2人で浜辺へ向かう。彼女の楽しそうな姿を眺め、歩きながらアイスを食べて休日を楽しむかのように時間はゆっくりと流れる。夕食を食べながらひと月ずつ男性を救う彼女の話を聞き、そうしてネルソンは自宅へ戻った。しかし、退屈して彼女を思い出してしまい結局は戻って来る。
タクシーはダメ。そう言う彼女の言いつけ通り電車で漁港へ向かう。近所の少年が参加するボートの競争大会を見に行くのだ。立派なボートの中、少年のボートは小さくスピードも遅い。同年代の少年たちに馬鹿にされる少年の為、ネルソンは人肌脱ぐ事に。近くに集まっていた大人に小型潜水艦を出動要請。他のボートを邪魔させて少年を勝たせたのだった。
だが、少年の為にならないとサラに言われネルソンはそれを素直に認める。
その夜、ネルソンはサラに乞われ身の上話を聞かせる。父親は近所でも嫌われるセールスマンだった。だから自分は上に立つ勝者になるべく、今の地位を目指したのだった。
映画『スウィート・ノベンバー』のあらすじ【転】
あるカフェで少年とサラとアイスを食べていたところへヴィンスがたまたまやって来る。ネルソンの謎の恋人と対面してはしゃぐヴィンスだったが、その姿に過去の自分を見たネルソン。友人を弁護すべく根はいい奴と話しておく。その後、サラの勧めで今は誰も住んでいない実家へと足を向けてみる。ネルソンが生まれ育った原点である。過去へ戻りたくないネルソンは、戸惑いつつも中に入りかつての自分を思い出していく。
サラと毎日を楽しく過ごす。以前とは比べものにならない程、ゆったりと日々を楽しんでいた。ある日、チャズの所へ夕食に誘われる。時間厳守で向かうと女装したチャズに迎えられ驚愕するが、彼らの手前体面を装って対応。チャズの女装した友人ブランドンと4人で食事をする。ネルソンとチャズが席を外した際、ブランドンはサラを気遣う。彼女は頭痛をずっと我慢していたのだ。
ネルソンがテレビCM の件でチャズと揉めていたところへ電話が鳴る。頭痛を必死で我慢していたサラが電話を取ったけれども相手と揉めている様子。彼女は怒り出して電話切った。電話の相手はサラの姉。密かにチャズと連絡を取り合い、彼女の様子を見守っていたのだった。
自宅へ戻ったサラは急いで薬を服用する。だが、彼女は詰問するネルソンをはぐらかそうとし、自分の事を決して話そうとはしなかった。
広告業界の大物との面会の日、サラの静止を振り切ってネルソンはヴィンスと会いに行く。この日の為にヴィンスも会社を辞めている。ここで彼の了承を貰えなければ仕事にはありつけない。2人は必死だ。いや主にヴィンスが必死だった。だがレストランのウェイトレスの失敗に気遣いの一つも見せない業界の大物に対しネルソンは不快を感じる。自分はこんな所で仕事をして来たのかと思い、相手の言動に幻滅して高い条件を蹴ってしまった。
歩道を歩いているサラにタクシーが近づく。後部座席から花を持ったネルソンが声をかけた。花束を持って仕事を辞退した事を告げる彼に、サラは嬉しさのあまり抱き着いた。ネルソンは以前の彼とはもう違うのだ。
映画『スウィート・ノベンバー』の結末・ラスト(ネタバレ)
11月も残すところあと僅かという時だった。感謝祭の準備を話し合っている際、サラは家族との確執をほのめかす。顔色は悪く体調は思わしくなさそうである。飼っていた犬を譲る事になっており来客を告げるベルが鳴った。ネルソンに犬を連れて下へ向かって欲しいと頼むサラ。ネルソンが犬を渡した後、少年が話しかけて来る。父親参観があって養子になりたいと言う少年に、ネルソンは養子には出来ないが父親参観に行くと約束する。喜んで走り去る少年を見送ったネルソンは、近所を見回しそしてサラを思った。
その頃サラは痛みに耐えつつ薬を飲んでいた。相当な苦痛であった。急いで薬を隠し平静を装う。体調が悪そうな彼女にネルソンは鍵のかかった棚を指摘。だが、それには答えず彼女はネルソンの聞いて欲しい話を促す。ネルソンはサラにプロポーズ。しかし、サラは嬉しいと言う反面、結婚は出来ないと話す。理由は話さず泣きながら部屋へと籠るが、そこで彼女が嘔吐する音を耳にする。ネルソンは急いで鍵のかかった戸棚をこじ開ける。戸棚にはぎっしりと薬が並べられていた。サラは泣きながら放っといて欲しかったと叫び、戸棚の薬を茫然とするネルソンへ投げつける。その後、ふらふらと別室へ行こうとして意識を失くした。
サラを病院へ搬送。駆け付けたチャズから、サラが非ホジキンリンパ腫である事を知らされる。ガンの一種である。サラは1年前に治療を止めている。戸棚の薬は全部痛み止めだったがどれも効果のない気休め。ガンはこの1年で全身に転移しサラの命はあと僅か。ネルソンとの結婚に同意するはずがなかったのだ。毎月の取り決めをする事で彼女は尊厳を保っていた。それが彼女の活力。だから理解して欲しいと言う。しかし、ネルソンは納得出来なかった。彼女を愛しているからだ。生き延びて欲しいと願うのは当然の事だった。
サラは残りの人生を精一杯生きようとしている。ネルソンは家に帰りたいという彼女の願いを聞いて病院から連れ出す。チャズとブランドンは彼女を労わりつつ、普段通りの会話を続けながらサラの世話をする。サラはネルソンに弱っている姿を見せたくない、ここから去って欲しいと言う。チャズ達に拒否され退出を言い渡されたネルソンは思い悩み、何日も考えた。
その頃サラは体に力が入らなくなり、料理もまともに出来なくなっていた。ネルソンにプロポーズされ、結婚したいと思ったのは初めてだったとチャズに語る。そして感謝祭の日、窓から突然ネルソンが現れた。生い先短い彼女の為に先取りをして、12のクリスマスプレゼントを持って来たと言う。サラミ、虹色のカツラ、皮のムチ、香水、ガイドブック、シャボン玉マシン、市電の乗車コイン、レコード、ダンスレッスン、食器洗浄機、飼っていた犬、そして最後はネルソンの愛の歌。
部屋中を11月のカレンダーで埋め尽くす。11月が終わらないように。2人の愛が続くように。ネルソンの深い愛の表れだった。共に生きよう最後まで。
だが、サラは決意していた。朝方、彼女は泣きながら外へ行く準備をしていた。11月は終わったと言って外へ飛び出す。彼女を追ってネルソンも走り出した。公園へ向かい互いに愛していると言い合う2人だったが、サラは美しい自分だけをネルソンに覚えていて欲しいと言う。彼女を看病する決心までしていたネルソンだったが、サラの強い願いを聞きそれへ従う事にした。そうして彼女はネルソンの元を去った。彼をたった一人残して。
映画『スウィート・ノベンバー』の感想・評価・レビュー
1968年の同名映画をリメイクした作品。2001年に制作され、その年のゴールデンラズベリー賞にて3部門にノミネートされた恋愛映画。
シャーリーズ・セロン演じるサラに振り回されるキアヌ・リーヴス演じるネルソンの戸惑う様子が多く、それまでの概念を覆していく様子が描かれている。セリフも気が利いた言葉遊びが見られ、2人の言い合いも面白い。後半はヒロインの自由奔放な様子に打ちのめされた主人公とのゆったりと愛を育む様子が描かれ、そこからのストーリー展開に目が離せなくなる。今作を観た当初はネルソン同様に納得できなかったが、改めて観返しサラの心情も理解できると思った。涙無くしては見られない作品。(女性 40代)
後半は涙なしには見れない作品です。ティッシュを大量に用意しておいてください。
競争社会を生き抜いて愛を見失ったエリート広告マンが、奔放な女性と出会って愛を取り戻していくというありがちなストーリーではあります。しかし、キアヌ・リーヴスとシャーリーズ・セロンのおかげなのか、ありがちではない作品に仕上がっています。
ラストがハッピーエンドではないからかもしれません。できればネルソンには幸せになって欲しかったのですが、出会いが夢だったように終わるのがスウィートなのかもしれません。
高慢なキアヌとぶっ飛んだシャーリーズが見られる珍しい作品でもあります。(女性 30代)
ネルソンはいけ好かない男なのだが、キアヌ・リーヴスが演じていることもあり、カッコ良いなと思いながら見ていた。
ネルソンとサラが無邪気に笑い合う様子が本当に素敵で、こんな風になりたいと憧れるカップルだと思う。サラが病気であることはなんとなく予測できていたが、想像以上に悲しい終わり方だったのでショックを受けた。サラの気持ちは理解できるが、別れを決断したことがとても悲しい。ハッピーエンドが見たかったなと思う。(女性 30代)
ハッピーエンドでは無いのに、こんなにも心が温かくなり、優しい気持ちになれて「人が好きになる」作品は他にないと思います。普通の人とは違うサラの行動から、命に関わる秘密があることは容易に想像できるのですが、それが分かってからの2人の行動が本当に温かくて、本当に切ないです。
命の期限を分かっているからこそ全てを捧げたいネルソンと、幸せな記憶だけを残しておきたいサラ。どちらもお互いを思いあってのことなので、正解はありませんが涙が止まりませんでした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー