映画『同じ月を見ている』の概要:不思議な能力と絵の才能を持った青年と、心臓病を患う女性、その病を治そうと医師になった青年、3人の幼馴染の確執と友愛を描いたドラマ。窪塚洋介、事故から復帰後の初映画で2005年公開。
映画『同じ月を見ている』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:深作健太
キャスト:窪塚洋介、エディソン・チャン、黒木メイサ、山本太郎 etc
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映画『同じ月を見ている』の登場人物(キャスト)
- 熊川鉄矢(大人:窪塚洋介 / 少年時代:塩顕治)
- エミの病気を治す為に心臓外科医となる。現在は研修医。優等生の裏の顔は荒んでおり、少年時代では虐められていた。
- 水代元 / ドン(大人:エディソン・チャン / 少年時代:石川眞悟)
- 通称ドン。人の境遇や心を読んだりする不思議な能力を持っている。絵の才能があり貧乏だが、心優しく無口。自分の事よりも相手の事を考えてしまう。天涯孤独。
- 杉山エミ(大人:黒木メイサ / 少女時代:福田麻由子)
- 幼い頃より心臓病を患う女性。幼馴染の鉄矢と恋人同士で結婚を約束しているが、ドンの事もずっと気にかけている。可憐。
- 金子優作(山本太郎)
- ヤクザの下っ端でチンピラ。柄は悪いが人並みに優しさを持ち合わせている。ドンの友人。
映画『同じ月を見ている』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『同じ月を見ている』のあらすじ【起】
熊川鉄矢は心臓外科医だ。まだ研修医の為、覚える事は日々沢山あり忙しくしていた。恋人の杉山エミは心臓病を患っており、普段から無理の出来ない身体だった。そんな中、投獄中の水代元が刑務所から脱走した知らせが入る。この3人は幼い頃からの幼馴染だった。
鉄矢は昔を思い出す。幼馴染の水代元、通称ドンは不思議な能力を持っている。2人は森の中に秘密基地を作り、毎日そこで遊んでいたがある日、見知らぬ女の子に秘密基地の存在を知られて追いかける。走って行く女の子は突然倒れ、胸を激しく叩いた。そこへ彼女の母親と思しき女性が駆け付ける。2人は彼女の家へ招かれた。女の子の名前は杉山エミ。心臓に穴が開いているらしい。2人は彼女の友達になった。
エミの心臓はその後、2回手術をしたが結局、完治には至っていない。鉄矢はエミにドンが脱走した事を知らせる。彼女は複雑な表情を浮かべた。ドンの事を警察が聞きに来たら知らないと言えばいい、と鉄矢は言った。
ドンには絵の才能があった。よくエミの絵を描いてくれていたのだ。高校生の頃、鉄矢は医者になると宣言。ドンからはエミは死なないと保証された。エミは3人のこの関係がずっと続くと思っていた。その後、エミの家は放火に遭い、その火事のせいで父親が焼死した。エミがドンの絵を取りに戻ろうとしたのがきっかけだった。ドンの家は貧乏だった。彼の事を町の人達は気味悪がっており、放火犯の容疑者として捕まったのだ。何の言い訳もしない彼に、エミは思い余って人殺しと叫んでしまったのだった。
脱走したドンは大阪に来ていた。手には大きなキャンバスを持っている。手紙の住所を頼りに街を彷徨い歩く。そこでチンピラとぶつかった。彼から何かを読み取ったドンは逡巡した後、彼へと声をかける。しかし、男はドンの言う事を聞かず店の中へ入って行った。男は金子優作という。ヤクザの下っ端で自分が犯した失敗を酷く責められた。殴る蹴るの後、お前が死体になるかと言われる。そこへドンが闖入。ドンは兄貴の隣に座らされ、家族がいるか質問される。彼は天涯孤独の身だった。奴らは言外に良い死体が見つかったと笑った。気絶させられたドンは車のトランクへ。金子も一緒に乗せられた。そのまま山へと連れられて行く。
映画『同じ月を見ている』のあらすじ【承】
金子とドンは湖のほとりで銃を頭に突き付けられる。金子にも家族はおらず、施設育ちだった。兄貴に銃を渡され、ドンを殺せと言われる。銃を手に取った金子は震える手で銃口をドンへと向けるが、ドンは静かに彼を見つめて月を仰ぐ。金子は銃口を兄貴へと向けて撃った。ドンを連れて車を奪い逃げる。金子はどこにでも送ると言うが、ドンは絵を取りに店へ戻ると言った。
店のママが絵を持って待っていた。ドンは絵を受け取りエミのアパートへ。インターホンを鳴らした時、背後から鉄矢が彼へと声をかける。エミは急いで階段を駆け下りたが、玄関付近に人影は無く、彼女は発作を起こして道端に蹲った。
その頃、鉄矢とドンは高架下へ。鉄矢はドンへと乱暴を働く。ドンが何を考えているのか鉄矢には分からなかった。彼はいつでも笑いながら、全てを赦してしまうからだ。
金子は怒鳴り声がする方へ向かい、鉄矢の暴行を止める。ドンはただ、おめでとうと言いたかっただけだ。彼は絵を持って立ち去ろうとしたが急に倒れる。ドンは流れ弾に当たり、怪我を負っていたのである。金子は知り合いの整形外科病院へドンを連れて行った。
エミも発作で病院へ来ていた。夢うつつにドンの名を呼ぶ。鉄矢は彼女が落ち着く間、またも昔の事を思い出していた。
虐められていた時も学生の時も、ドンは鉄矢をいつも気遣っていた。
秘密基地にいたドンへエミの父親が声をかける。彼の絵を見た父親は、ドンには絵の才能があると笑いかける。鉄矢はそれを木陰から聞いていた。その夜、鉄矢はドンの絵を燃やした。思い出の秘密基地と共に。強い風が吹く夜だった。ドンは自宅で絵を描いていたが、妙な胸騒ぎがして秘密基地へ向かう。そこには鉄矢の姿が。火の向きはエミの家へ。鉄矢が燃やした秘密基地からエミの家へ飛び火した結果、彼女の父親を殺してしまった。そして、ドンは鉄矢の身代わりとなって捕まったのだった。
鉄矢は雨が降る空を見上げる。彼はずっとその事実をエミにも誰にも言えずに、ドンを犠牲にしてのうのうと暮らしてきたのだった。
映画『同じ月を見ている』のあらすじ【転】
ドンは助かった。彼の心臓が子供のように小さかった為、弾が当たらなかったのだ。普通の大きさならば当たっていただろう。金子はドンが後生大事に持っていた手紙を読む。エミからの手紙だった。彼女は彼に向けて放った言葉を酷く後悔していた。そして、鉄矢と結婚しようとしている事が書かれていた。
ドンはエミと鉄矢の為に脱走して、2人を思いながら描いた絵を渡して祝福したかった。ただ、それだけの為に彼らへと会いに行ったのだ。
鉄矢はドンの居場所を突き止め、例の整形外科病院へ向かった。だが、そこにドンの姿は無い。金子だけがそこにいて、鉄矢へと声をかける。金子が掴みかかると鉄矢の衣類から注射針と薬品が出て来る。彼はこれをどうするつもりだったのか。金子はドンが残していった絵を見つめる。彼もドンがどこへ行ったのか知らなかった。もし分かったら知らせ合おうと言う。金子はもう一度ドンに会いたかった。そして、自分達は皆地べたへ這い蹲りながら、同じ月を見上げているのだ。だから、自分はもう逃げないと言葉を残して立ち去って行った。
鉄矢は鬱屈した心を持っている。自分の欝々とした性格にも嫌気が差し、ドンの優しさも素直には受け入れられず、ドンを思う彼女にもイライラしていた。彼は飲んだくれてチンピラ共と喧嘩した。翌朝、反省した彼を心配したエミが迎えに来てくれた。
とある寺の前でドンは絵を描いた。そこで画壇の先生に見出され、絵を描く環境を与えられる。ドンは無心に絵を描き始めた。その寺には心臓病を患った孫がいたが、少年は自分の境遇を受け入れられずにいた。
金子は新たな職に就いてやり直そうとしていた。まだまだ下っ端だが、どんなに辛い事でも笑って頑張っていた。そこへ携帯に着信がある。整形外科医からだった。彼の所にドンから絵が届いたのだ。凛と立つ一本の松の絵だった。その帰りだ。金子は人とぶつかる。数歩進んで、腹部に短刀が刺さっている事に気付く。車が急停車し、中から何人もの男達が走り寄って来て金子を襲った。
映画『同じ月を見ている』の結末・ラスト(ネタバレ)
鉄矢の携帯に着信がある。金子からだった。山形の住所を息も絶え絶えに話す。電話口の彼の様子がおかしい。金子は空にある真昼の月を見上げて、子供の頃の自分の夢をドンに会って思い出したと言う。お前も早く。彼はそう言って息絶えた。
ドンは寺で渾身の一枚を描いた。燃え出しそうな赤と幾つもの月が描かれていた。画壇の先生がその絵を目にし、彼はきっと沢山の悲しい目に遭って来たのだろうと言う。そして、彼は心の中で必死に戦って来たのだろうと。
鉄矢は整形外科病院へ来た。だが、そこには金子の遺体が横たわっていた。傍らにはドンの絵があった。彼はエミを連れてドンの元へ向かった。車中で秘密を告白する。ドンは鉄矢を庇って7年も投獄されていたのだ。ドンに謝りたかった。
夜、寺へ到着し画壇の先生から話を聞いた。ドンは絵を描き上げた後、出て行ったまま戻らないと言う。2人は山へ向かった。きっと彼はまだ近くにいる。山では寺の孫が木に火を灯していた。この頃の山火事は彼の仕業だった。少年は消防隊に見つかり、近くの倉庫へ隠れた。だが、そこへは山からの火が近付いていた。少年は胸を押え倉庫の2階へ潜む。消防隊が倉庫のドアを開けようとしている所へ、鉄矢とエミも遭遇する。チェンソーで扉の止め木を切っていくが、山火事の火はすでに倉庫へと回っていた。扉を開いた事で、炎が一気に倉庫を覆い尽くす。そこへドンも姿を現していた。
ドンは月を見上げ、鉄矢へと歩み寄りおめでとうと言う。そして、彼は燃え盛る倉庫へと駆けて行った。鉄矢も水を被り彼の後を追う。中は火の海だ。必死にドンを呼ぶ。彼は2階にいた。落ちて来る瓦礫を避けて2階へと登った鉄矢は、ドンから少年を受け取る。とにかく逃げろと叫ぶが、倉庫には火気厳禁の物ばかり置いてあった。爆発が至る所で起こり、ドンが乗っていた所が崩れ始める。鉄矢は彼を助けようと手を伸ばすが、僅かに届かない。ドンはまた3人で遊ぼう。昔みたいに。そう言い、力尽きて階下へ落ちて行った。
鉄矢が病院で目を覚ました頃。ドンの心臓は少年へと移植される事になり、今正に手術中だった。鉄矢は止めようとする看護師達を押し退けて必死に叫ぶ。ドンの心臓は取り出され、無事少年へと移植された。ドンはもういないのだ。病室にドンが描いた絵が飾ってある。彼が2人を思って描いたものだった。中心には新郎の鉄矢と新婦のエミ。そして、2人を優しく見守る月のドン。
鉄矢とエミが海を眺めていると、ドンの心臓を移植された少年が声を掛けてくる。経過は良好のようだ。何かを思い浮かべろと言われ、そうすると少年はそれを絵にして鉄矢へと見せた。渡された絵は月に向かうテントウムシの絵。彼はドンから不思議な能力を受け継いでいたのだった。鉄矢とエミは悲しみの滲む笑みを見せ、そして真昼の月を見上げた。
映画『同じ月を見ている』の感想・評価・レビュー
漫画家・土田世紀の同名作品を実写映画化。漫画作品は平成11年度文化庁メディア芸術祭漫画部門優勝賞を受賞している。今作は、窪塚陽介の復帰映画を作るという企画の元、実写映画化された。
元々はドンの役に窪塚陽介がキャスティングされていたらしいが、本人の意向により難しい役どころである鉄也役を演じることにしたらしい。企画としては窪塚陽介がメインだが、今作の主人公はドンであることからむしろダブルキャスト的な立ち位置にある。無口だが、実直で優しいドンと過ごし闇を抱えてしまった主人公の懊悩をよく演じられている。今作のキーポイントは金子の存在である。彼がいなければ、物語は進まなかったし確執も解けなかった。とても重要な役どころを山本太郎が演じているが、彼らしい泥臭さのある演技によって感動を誘う。それぞれに深みのある演技があった。原作の素晴らしさと俳優陣の深みのある演技により、哀愁漂う深みのある作品になったと思う。(女性 40代)
昔大好きで何度も見たこの作品。窪塚洋介が好きで彼といえば『池袋ウエストゲートパーク』で演じた「キング」の印象がとても強かったので、今作で演じた鉄矢の繊細でどこか影のある役どころは、彼の新しい魅力に気付かせてくれた気がします。
鉄矢とエミ、そしてドン。幼なじみでありながらそれぞれが「秘密」を持っていて、それを知っても友情は変わらないのかが今作の見所です。
ラストはとても切ない気持ちになりますが、不思議と「温かさ」が心に残りました。(女性 30代)
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