映画『体操しようよ』の概要:妻を早くに亡くし、父一人娘一人で暮らしてきた親子。定年を迎え、親離れした娘との間にできた亀裂やラジオ体操を通じてできた仲間との関わりを描く。草刈正雄を主演に迎え、菊地健雄が監督を務める。
映画『体操しようよ』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:コメディ
監督:菊地健雄
キャスト:草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知 etc
映画『体操しようよ』の登場人物(キャスト)
- 佐野道太郎(草刈正雄)
- 生真面目で、几帳面な元サラリーマン。定年退職後、参加することになったラジオ体操の会で新たな出会いを迎える。親離れした娘との関係に苦悩する日々が続く。
- 佐野弓子(木村文乃)
- 道太郎の娘。母親を早くに亡くしているため、シングルファーザーの道太郎をずっと支えてきたが、定年退職を機に家事を「引退」する。ほぼ無職の恋人がいる。
- 神田義彦(きたろう)
- ラジオ体操会の会長。初めは一人でラジオ体操をしていたが、傷心したのぞみの姿を見かけ声をかけたことがきっかけで大きな会となる。町の便利屋を営んでいる。
- 馬場薫(渡辺大知)
- 神田の便利屋で、住み込みで働く青年。実家の米屋を継ぐのが嫌で、趣味の天体観測を優先している。弓子の恋人だが、真っ当な職に就いていないので結婚を悩んでいる。
- 藤澤のぞみ(和久井映見)
- ラジオ体操会の副会長。過去に大失態を犯し、嫁ぎ先を追い出されてしまっている。町の喫茶店を営み、住人にも人気が高い女性。
映画『体操しようよ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『体操しようよ』のあらすじ【起】
几帳面な性格の道太郎は38年間務めた会社を定年退職した。送別会では元上司・並木に「これからのこと」を考えるようアドバイスを受け、帰り道には見知らぬ酔っ払いに嘔吐される散々な一日。通り道の広場でスーツを洗い、「自由だ」としみじみしながらベンチに腰掛けた道太郎はそのまま朝を迎えてしまう。翌朝、ラジオ体操をしに集うグループに声をかけられ起きた道太郎。「おはようございます」と声をかけられながら、ようやく帰路に就いた。
帰宅すると、食卓テーブルに娘・弓子からのプレゼントのエプソンと、「父の定年を機に、佐野家の主婦を引退します」と書かれた手紙が置いてあった。妻を早くに亡くした道太郎は弓子と二人暮らしてきた。父親優先で生活してきた弓子は、家事や道太郎の世話を辞め自分の好きなように生きると決めていたのだった。
自由になり、時間を持て余す道太郎は無精ひげを生やし昼間からビールを嗜んでいる。そこへ、妹の喜久子が道太郎への見合い写真を持って訪ねて来た。弓子には長い付き合いの恋人がいることも知らなかった道太郎。弓子に親離れして欲しいと強がるが、何もできない不安を痛感し始めていた矢先の出来事であった。
弓子の思い出の品を見て懐かしんでいた道太郎に、並木から連絡があった。それは、ラジオ体操の誘いである。定年後の人生を楽しむべきだと話す並木は、孫を支えに張り切っていた。しかし後日、並木は突然の心不全で亡くなった。定年後、家族と別居していた並木は亡くなったとき一人だったと葬儀の後に知り、道太郎は孤独死に不安を抱え始めるのだった。
映画『体操しようよ』のあらすじ【承】
不安と哀しみの中帰宅した道太郎。弓子に水を持ってきてほしいと頼むが、嫌な顔をされ「いつ片付けるの?」と家事ができていないことを叱られてしまう。
翌日、道太郎は送別会の翌朝に声をかけてくれた女性を見かけた。元気のない様子が気になり、後を付ける道太郎。その女性の名前はのぞみ。のぞみが営む喫茶店に立ち寄った道太郎は、定年後ぼんやりとした日々について話す。並木もラジオ体操を始めた頃はそうだったと笑うのぞみは、ラジオ体操会に誘ってくれるのだった。
翌朝から、ラジオ体操に向かった道太郎。運動不足も伴い、小学生に「へたくそ」と笑われてしまうが、のぞみが声をかけてくれた。ラジオ体操後はのぞみの喫茶店にいつも集う。ラジオ体操会の中年男性たちは皆、のぞみのファンだというのだ。几帳面に片付けをする道太郎の姿を見たのぞみは、「良ければ働きませんか?」と声をかけた。のぞみの力になれるならと二つ返事する道太郎だったが、実際はラジオ体操会・会長の神田の手伝いであった。
神田の店は町の便利屋である。子守りや、認知症の老人の散歩、ペーパードライバーのタクシー運転手の練習など多岐に渡る仕事を同僚の薫とこなしていく。一度は辞めたいと申し出た道太郎だったが、薫に叱られ気を取り直すのだった。
のぞみの店の電球を変えにいった道太郎は、パンの配達に来た弓子と鉢合わせてしまう。堅物な父親の文句を言う弓子は、「のぞみさんがお父さんと再婚相手ならいいのに」とぼやくと道太郎は恥ずかしそうに止めるのだった。
薫は実家の家業を継ぐのが嫌で、趣味の天体観測をするために便利屋をやっているという。神田主催のバーベキューでも子供達に星の説明をしているときは活き活きとしていた。そんな中、悲しそうな表情ののぞみを見てしまった道太郎。翌日のラジオ体操会に来ておらず、道太郎は気にかかってしまう。
映画『体操しようよ』のあらすじ【転】
薫との距離も縮まり、道太郎は彼女と喧嘩したという相談を受けていた。「絶対に謝ってはだめだ」とアドバイスをする道太郎。しかし、帰宅後に皿を割ってしまい弓子に平謝りを続けるのだった。
神田が怪我をしてしまい、のぞみが会長代理をすることになった。不安そうなのぞみをサポートしようとマニュアルを作って会員に指導する道太郎。張り切りすぎた道太郎は空回りし、体操会に来る人数が激減してしまう。なんと副会長がクーデターを起こし、新たな会を作っていたのだ。「みんなで体操がしたい」というのぞみに自分か道太郎を選べと迫る副会長。交渉は決裂し、道太郎は新たな会員を増やそうとまず薫に声をかけていた。その頃、のぞみも弓子に「親子の思い出」作りに参加して欲しいと声をかけていた。
道太郎と過ごす時間が限られていることは弓子もわかっている。リビングで眠ってしまった道太郎の几帳面なメモとイラストを見て、翌朝から一緒にラジオ体操会に参加することにするのだった。
朝まで天体観測をしていた薫も参加してくれた。弓子に同僚だと紹介した道太郎だったが、弓子から彼氏だと逆に紹介されてしまった。普段の薫の姿を見ている道太郎は、交際を許さないと断言してしまうと弓子は大きく反発する。「お父さんが死ねばよかった」と不意に言ってしまった弓子を叱りつけるのぞみ。道太郎を許せない弓子は薫を連れて去っていってしまった。
翌朝、ついに一人になってしまった道太郎。そこへ来た会長から、のぞみは火事を起こし嫁ぎ先の旅館を追い出され町にやって来たと聞く。何度か見たのぞみの悲しい表情を思い返し、心配になった道太郎はすぐにのぞみの元へ駆けつけ手を取るのだった。そこへ、薫と弓子が車で訪ねて来た。神田は親子の仲を取り持とうと、旅館に連れていくよう指示していたのだ。
映画『体操しようよ』の結末・ラスト(ネタバレ)
旅館の前に着いたが、のぞみは尻込みしてしまう。偶然通りかかった息子に声をかけたのぞみだが、「あなたなんか知らない」と突き返されてしまった。息子の顔を見て満足したのぞみは帰りたいと伝え、帰路につくが車がオーバーヒートしてしまい通りの旅館に一泊することになった。
翌朝、癖で早起きしてしまった道太郎はのぞみをラジオ体操に誘う。二人は向かい合って体操をした。その時、のぞみは神田に初めて声をかけてもらった日を思い返し、「またみんなで体操したい」と呟いた。そこで、道太郎はメンバーの似顔絵イラストを描き、弓子と薫に手伝ってもらい丁寧な手紙を書いた。道太郎は一人一人に手渡しで手紙を届けていくのだった。
翌朝、ラジオ体操には全員が参加してくれた。対立していた副会長も隠れて参加しようとしていたが、道太郎が模範体操をして欲しいと願い出て参加することになる。また「みんなで」体操することができたと穏やかな時間が流れる中、薫は実家の米屋を継ぐ決心をし、弓子にプロポーズをした。薫の決意に弓子は結婚を受け入れるのだった。
ささやかな結婚式はのぞみの店で行われた。38年間皆勤賞だった道太郎は一度だけ早退したことがあるとスピーチをする。それは弓子が生まれた日だ。これまで支えてくれていた弓子に感謝を伝え、薫の実家に嫁ぐ弓子を送り出すのだった。
本当に一人暮らしになった道太郎。弓子にもらったエプソンを締め、家事をこなす。そしてまた、「おはようございます」とあいさつを交わし、ほどほど元気にみんなでラジオ体操をするのだった。
映画『体操しようよ』の感想・評価・レビュー
小さなコミュニティでのあるあると、ハートフルな人情模様が詰まっている一作である。物語の展開に緩急を求める方に勧め難いが、のんびりと変化を追うのが好きな方には良いだろう。『ディアーディアー』『ハローグッバイ』でも丸みを帯びた演出で観客を魅了した当監督。今作は役者の柔らかさが相まってか、「ほっこり」という言葉が似合う時間であった。(MIHOシネマ編集部)
たまにはこういう映画も悪くないなと感じさせてくれるほっこりとした、優しい作品でした。家族というのは一生一緒にいなければならない訳では無いし、それぞれが個人としての自由な人生があるのも当然のことなのですが、大切な家族が離れていってしまうのは少し悲しくて寂しい気がしますよね。
この作品はそのなんとも言えない感情をとても上手く描いていて、悲しくても明日は来るし、自分の人生は同じようにあるんだからせっかくなら楽しく生きようと思わせてくれました。
ラジオ体操というユニークな題材でここまで観客を温かい気持ちにさせてくれるのはすごいなと感じました。(女性 30代)
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