映画『天国の日々』の概要:貧困から抜け出せないままテキサスの農場に行き着いたビルと妹のリンダと恋人のアビー。アビーはそこで余命宣告を受けた農場主に求婚され、ビルは財産目当てで彼女と農場主を結婚させるのだが…。繊細で美しい映像が印象的なヒューマンドラマの秀作。
映画『天国の日々』の作品情報
上映時間:94分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:テレンス・マリック
キャスト:リチャード・ギア、ブルック・アダムス、リンダ・マンズ、サム・シェパード etc
映画『天国の日々』の登場人物(キャスト)
- ビル(リチャード・ギア)
- 両親はなく、妹のリンダと恋人のアビーと3人で各地を転々としている。気が短いので、よく問題を起こす。王様になりたいという夢はあるが、その日暮らしの生活から抜け出せない。シカゴからテキサスの農場に流れ着く。
- アビー(ブルック・アダムス)
- ビルの恋人。ビルたちと同じ貧しい生まれで、淡々と生きている。農場主のチャックに求婚され、ビルの勧めで結婚する。
- チャック(サム・シェパード)
- テキサスの農場主。広大な麦畑を所有しており、収穫時には多くの労働者を雇う。家族はいない。何かの病気を患い、医者から余命宣告を受ける。
- リンダ(リンダ・マンズ)
- ビルの妹。まだ10代前半の少女だが、冷静に周囲を見ている。荒んだ生活をしてきたので、普通にタバコを吸っている。
- ベンソン(ロバート・ウィルク)
- チャックの農場の農場長。チャックのことを息子のように思っている。ビルたち3人を信用していない。
映画『天国の日々』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『天国の日々』のあらすじ【起】
ビルと妹のリンダ、そして恋人のアビーは、その日暮らしをしながら貨物列車を乗り継ぎ、シカゴからテキサスまで流れ着く。ちょうどテキサスの農場では麦刈り労働者を募集しており、3人は広大な麦畑へ移動する。
この麦畑の農場主はチャックというまだ若い青年で、立派な屋敷でひとり暮らしをしていた。ビルたちは1日3ドルの報酬で雇われ、多くの労働者たちとともに、収穫が終わるまでこの農場で暮らすことになる。労働者たちを仕切っているのは、長年チャックを支えてきた農場長のベンソンだった。
ビルは、“その方が何かと便利だから”という理由で、アビーのことも妹だと偽っていた。リンダは農場で年上の友達ができ、それなりに楽しい時間を過ごす。
収穫の無事を祈る儀式も終わり、本格的な仕事が始まる。麦刈りの仕事はかなりの重労働で、特にアビーのような女性にはきつかった。チャックは、黙々と働くアビーの美しさに惹かれ始める。
ビルは、他の労働者にアビーのことをからかわれ、取っ組み合いの喧嘩を始める。短気なビルは、どこへ行ってもトラブルを起こしがちだった。アビーはそんなビルを優しく慰める。チャックはベンソンにアビーのことを尋ねるが、収穫時だけの労働者の素性はほとんど何も分からなかった。
農場に訪問医が訪ねてきた日。ビルは手の荒れたアビーのために薬を盗もうとして、チャックと医者の会話を聞いてしまう。チャックは医者に“余命は1年ほどだ”と余命宣告を受けていた。チャックは、何かの病気らしかった。
映画『天国の日々』のあらすじ【承】
ある日の夕暮れ。チャックはアビーに“これからどうするのか”と声をかける。3人の行き先ははっきりしていなかったが、アビーは“多分ワイオミングへ行く”と答える。ビルは東部のどこかで、そろそろ落ち着きたいと考えていた。
ここでの仕事も明日で終わりという日。チャックは、“このままここに残って仕事を続けないか”とアビーに頼んでみる。収穫が終われば仕事はほとんどなくなるが、給料はそのまま払うとチャックは約束してくれる。
その話を聞いたビルは、“残ってやれ”と答える。チャックが長くは生きられないことを知っていたビルは、惨めな暮らしから抜け出すチャンスかもしれないと考えていた。アビーは複雑だったが、ビルのアドバイスに従い、“兄と妹も一緒なら残る”とチャックに告げる。しかし、収穫を祝う宴で仲良く踊るチャックとアビーを見て、ビルは不愉快になるのだった。
労働者たちも去り、農場での静かな生活が始まる。アビーをビルの妹だと信じ込んでいたチャックは、“愛している”とアビーに告白する。アビーは“嬉しいわ”と曖昧な返事をしておく。
ビルは、期間限定なら我慢できると考え、アビーに結婚を勧める。いずれチャックが死ねば、彼の財産を横取りできるという計算があった。アビーは身売りのような結婚に抵抗を感じるが、チャックのプロポーズを受け入れ、彼と結婚する。
アビーは農場主夫人となり、ビルとリンダも家族として、チャックの屋敷で暮らし始める。貧乏暮らししか知らない3人にとって、その生活は夢のように贅沢なものだった。
しかし、しばらくすると、チャックはビルとアビーの関係を疑い始める。ビルも我慢できずに夜中にアビーを連れ出し、彼女を困らせる。ずっとビルたちに不信感を持っていたベンソンは、“あなたは騙されている”とチャックに忠告する。ベンソンは息子同然のチャックのことを本気で心配していた。しかしチャックは妻のアビーを優先し、ベンソンには北の土地へ行ってもらう。チャックは、誠実にアビーのことを愛していた。
映画『天国の日々』のあらすじ【転】
チャックの病気は良くも悪くもならず、アビーと結婚して半年が過ぎる。ビルは苛立ち、チャックに殺意のようなものを抱き始める。そんなある日、曲芸師を乗せた2台の小型飛行機が農場に不時着し、静かな生活に風を吹き込む。
久しぶりに賑やかな夜を迎えた農場では、小さな宴が開かれる。そこで、チャックはビルとアビーがキスをするのを見てしまう。チャックは、今まで見せたことのない怖い顔をしてアビーを問い詰める。アビーはひどく動揺し、ビルに事情を話しに行く。
ビルは、その時のアビーを見て、彼女が本気でチャックを愛しているのだと気づく。アビーはそれを否定しなかった。ビルは彼女のことを諦めるつもりで、曲芸師とともに農場を出て行く。
ビルがいなくなり、アビーは心穏やかな日々を過ごす。チャックの気持ちも落ち着き、静かな冬が過ぎる。
春を迎えた農場では、小麦の種まきが始まる。そして麦が青くなった頃にはベンソンも戻ってきて、また麦刈りの季節がやってくる。農場には、麦刈りの労働者たちとともに、ビルが帰ってきた。アビーとリンダはビルの帰還を喜び、チャックも彼を歓迎する。
ビルはしばらくアビーと離れ、失ったものの大きさを痛感していた。しかし、結婚を無理強いした自分の非を認め、早めに農場を去るつもりでいた。アビーはビルに謝罪し、2人はお別れのキスをする。その様子を、チャックが屋敷の屋上から見ていた。
映画『天国の日々』の結末・ラスト(ネタバレ)
その年はイナゴが大発生し、チャックの麦畑にもイナゴの大群が押し寄せてくる。労働者は総出でイナゴ退治を開始するが、いくら捕まえて燃やしても、イナゴの数は全く減らない。
イナゴの駆除は夜を徹して行われ、チャックもランプを持って畑を回る。チャックの農場は、大変な騒ぎになっていた。そんな中で、ビルに声をかけられたチャックは怒りが爆発し、ランプの下がった棒を振り回してビルを殴ろうとする。ランプの火は、近くにあった馬車に引火し、驚いた馬が暴走を始める。
馬車の炎は、あっという間に麦畑に燃え移り、風に煽られてどんどん火事は広がっていく。火の海と化した農場を、アビーは呆然と見つめていた。チャックはアビーにも怒りをぶつけ、“何が目当てだ!”と彼女を罵る。そしてアビーを屋敷の柱に縛り付け、銃を持って出て行く。
明け方。農場を出るためバイクの修理をしていたビルは、チャックに銃を突きつけられる。ビルは思わず、持っていた工具でチャックを刺してしまう。工具はチャックの胸に刺さり、ビルはそのまま逃走する。ビルに殺されたチャックの遺体を、ベンソンが発見する。
ビルは、アビーとリンダを連れて農場から逃げ出していた。アビーが身につけていた宝石を売って小さなボートを買い、ビルは川を下っていく。アビーは、こうなったのは全て自分のせいだと感じ、ひどく苦しんでいた。
ベンソンは警察とともにビルの行方を捜していた。岸辺の茂みで野宿していたビルは、川に出たところで警察の騎馬隊に見つかってしまう。ビルは大勢の騎馬隊に追い詰められ、最後は射殺される。アビーは川に浮かんだビルの死体を引き上げ、彼にすがりついて泣く。リンダも黙って泣いていた。
その後アビーはリンダを寄宿制の女学校に入れ、汽車でどこかへ旅立っていく。リンダは前に農場で友達になった女性と再会し、寄宿舎を抜け出して彼女と線路上を歩いていく。行くあてもお金もない2人は、この先どこへ行くのだろうか。
映画『天国の日々』の感想・評価・レビュー
大自然の美しさと、今を懸命に生きる若者の姿がものすごくマッチしていて芸術的な作品でした。リチャード・ギア演じるビルの短気でぶっきらぼうな性格の裏側には強くいなければ生きていけない過酷な現実が見えてきて、色々な感情が胸に込み上げてきました。
自然の美しさとは言え、大量のイナゴのシーンは鳥肌がたちました。作物を育てることは自然との戦いなのだと思いますが、私にはこの状況は耐えられないと感じてしまいました。
ラストの展開は言いようのないもどかしさで、もう一度見たくなる心に残る作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー