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映画『トキワ荘の青春』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『トキワ荘の青春』の概要:昭和40年代、今や伝説と呼ばれるトキワ荘を舞台に、日本の漫画界の礎を作った漫画家たちの奮闘を描いている。古き良き時代と駆け出し漫画家の極貧さ、寺田ヒロオ視点による各々の苦悩が描かれ、淡々とした中でも深い人情味が漂っている。

映画『トキワ荘の青春』の作品情報

トキワ荘の青春

製作年:1996年
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:市川準
キャスト:本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ etc

映画『トキワ荘の青春』の登場人物(キャスト)

寺田ヒロオ(本木雅弘)
売れない漫画家であったが、新漫画党の総裁を務める。若き漫画家たちを支え励まし、彼らを育て上げる。代表作は『スポーツマン金太郎』や『背番号0』他。愛称はテラさん。大変物静かで穏やかな性格。後年では幻の漫画家と呼ばれている。
我孫子素雄(鈴木卓爾)
藤本弘と藤子不二雄を結成。手塚治虫を慕ってトキワ荘に来るも、入れ違いで入居する。メガネをかけひょろりと背が高い。藤子不二雄Aとしての代表作は『忍者ハットリくん』『怪物くん』他多数。
藤本弘(阿部サダヲ)
我孫子素雄と藤子不二雄を結成する。いつも赤い絵描き帽を被り、背が小さい。我孫子とは共作で『オバケのQ太郎』他を執筆。藤子・F・不二雄としては『パーマン』など数多くの作品を執筆している。
石森章太郎(さとうこうじ)
宮城県出身でやや小太り。どこか飄々としたところがあるが、非常に前向き。代表作は『サイボーグ009』『仮面ライダー』他、特撮ヒーローの脚本執筆も手掛ける。
赤塚不二夫(大森嘉之)
石森章太郎を慕いトキワ荘に入居してくる。どこか泥臭いというか、田舎臭さが抜けない。デビューから鳴かず飛ばずでスランプに陥るも、寺田の励ましにより復活。代表作は『おそ松くん』『ひみつのアッコちゃん』『バカボン』他、ギャグマンガの礎を作る。

映画『トキワ荘の青春』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『トキワ荘の青春』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『トキワ荘の青春』のあらすじ【起】

昭和40年代、トキワ荘に寝起きする売れない漫画家寺田ヒロオは、自身が描いた漫画を学童社の編集部へ投降する毎日を送っている。同じ下宿屋の他の部屋には『ジャングル大帝レオ』の著者、手塚治虫など有名漫画家も入居していた。

寺田は自分が何を描きたいのか目標がはっきりせず、冴えない漫画ばかりを描いては編集者に散々、こき下ろされ描き直しを要求されるばかり。だが、彼は子供達のことを考えた漫画を描きたいと願っていた。

そんなある日、手塚治虫を慕って漫画家藤子不二雄の2人がトキワ荘にやって来る。丁度、手塚が不在だったため、寺田が彼らを部屋に迎え入れ食事をご馳走する。藤子不二雄は上京したてで、右も左も分からない。寺田はトキワ荘を例に部屋代や水道光熱費の説明をして、生活するためのアドバイスをした。

その後、手塚治虫はトキワ荘から引っ越し、開いた部屋に藤子不二雄の我孫子素雄と藤本弘が入居することになる。それと同時に少年漫画誌に投稿していた漫画家の卵たちが、トキワ荘に集まって来るようになるのだ。

若手で駆け出しの漫画家たちは誰もが貧乏である。彼らは金に困ると、兄貴的存在である寺田を頼りに部屋を訪れては、金を借りて行くのであった。
編集者は他の漫画家が没になった際、トキワ荘にやって来て「穴埋め」と叫ぶ。すると、描きたい者が次々と名乗りを上げるのだ。
そして、誰もが貧乏なので原稿料が入るのを心待ちにしている。原稿料が届くと各々、名前を呼ばれるのを廊下に出て待つのだった。

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映画『トキワ荘の青春』のあらすじ【承】

そんなある日、トキワ荘の面々は寺田の部屋へ集まり、新漫画党を結成する。各々に酒を持ち寄り、つまみはいつもキャベツと玉ねぎに落花生などだったが、漫画について議論を重ね情報交換するには最高の場所だった。

そうして、新漫画党で合作の漫画を描く。編集者は出来上がった原稿を目にし、合作になると誰もが伸び伸びと描いていると感想を述べる。これは交流が上手くできている証拠なのであった。

そんなある日、藤子不二雄に連載の仕事が舞い込む。たった2ページだったが、自分達の作品を売り込むチャンスであった。
そうしている内に石森章太郎の作品も徐々に人気を得てくる。

だがそんな時、漫画家の登竜門とも言える少年画報の廃版が決定してしまう。新漫画党の一同は愕然とし、今後の先行きに不安を抱いたが、こんな時ほど踏ん張ろうということになる。少年画報以外にも新しく発売された少年誌もあるし、投稿を続けていればいつか人気を得て仕事が舞い込むようになるかもしれない。

映画『トキワ荘の青春』のあらすじ【転】

トキワ荘の面々はその後も諦めずに漫画を描き続けた。すると、藤子不二雄を始め石森章太郎など、仕事がどんどん舞い込むようになる。
寺田もまた投稿を続け、いくつかの少年誌への掲載を得ていくのであった。

だが、そうなると新漫画党の集会に1人、また1人と集まれなくなってしまう。残ったのは寺田と赤塚不二夫のみ。赤塚は同志の中でも全く人気が出ず、不貞腐れ始める。
そんな中、寺田にも連載の仕事が舞い込み、彼は勢い込んで漫画を描くのであった。

いつしか新漫画党の集会ができないほど面々は忙しくなり、どんどん新しい漫画が少年誌に掲載されていく。その頃になると赤塚はとうとうスランプに陥ってしまい、描けば描くほど自分の描きたいことが分からなくなってしまうのだった。

自分より若い編集者に散々、漫画をこき下ろされる。赤塚は憤慨しつつ寺田の元を訪れ、愚痴をこぼして帰る。やがて、彼は担当編集者から自身の進退を考えろと言われるようになるのだった。

映画『トキワ荘の青春』の結末・ラスト(ネタバレ)

一方、寺田の漫画も次第に時代から置いてきぼりにされ始める。彼は駆け出しの頃から担当編集者に、自分が描きたいものではないものを描けと要求され続けてきた。それでも子供達のための漫画を描きたくて、今まで続けてきたのだ。だが、彼が描く漫画はまるで小学校の教科書のように良い子ばかりが登場する。同志たちは寺田の漫画をタッチが優しくて、まるで寺田本人のように優しい漫画だと述べるのだ。

思い悩む寺田の元に悲愴な表情をした赤塚がやって来て、漫画家を辞めるかどうかの相談をした。寺田は自分も大変な時であるのに、彼の漫画に目を通してアドバイスをするのである。寺田から言葉を貰った赤塚は、自分が描きたいテーマを絞ることにした。

その後、寺田の同期でもある漫画家がとうとう夢を諦め、トキワ荘から去って行ってしまう。彼が去った後、寺田は自分の進退を本格的に考え始める。編集者は嘘をついて面白い作品を描けと言うが、寺田自身がそれを受け入れられずにいる。彼は寡黙にもたった1人で思い悩むのであった。

やがて、トキワ荘の漫画家は人気を博し、誰もが連載を持つようになる。各部屋には連日、出版社の担当編集者がひっきりなしに訪れるようになった。
そんな中にいて過ごすには辛すぎる。寺田は次第に不在でいることが多くなる。

そんなある日、赤塚の声掛けでトキワ荘の面々が寺田の元に集まった。彼らはトキワ荘の寮母のような存在である寺田を励まそうとして、相撲を取ろうと誘うのである。寺田は一昔前を思い出しつつ、彼らと最後の時を楽しんだ。

そうして、寺田はある夏の日、トキワ荘からひっそりと去って行くのだった。

映画『トキワ荘の青春』の感想・評価・レビュー

漫画の礎となった伝説のアパート、トキワ荘にて今や大物と呼ばれる漫画家たちの若き頃の奮闘を描いている。時代は昭和40年代。古き良き時代で人情味が溢れており、誰もが気軽に挨拶をし合う場面が多く描かれている。

寺田ヒロオが主人公となっているが、非常に温厚で怒っている姿が1度もない。愚痴を零すでもなく淡々とした中に、悶々とした何かを演じ分けられるのは、さすが俳優本木雅弘である。(MIHOシネマ編集部)


昭和の漫画界の重鎮たちの多くがその青春の住処とした、トキワ壮の日々を、今回は、その住民の一人であり、リーダー格として慕われながら、ほかの作家のようなヒットに恵まれなかった悲運の漫画家寺田ヒロオの視点で描いた作品。
後輩の面倒を見て、子供たちのための漫画を目指した寺田。しかし、後出の後輩たちが次々にヒットを飛ばしていく中で、次第に彼の漫画は時代からあぶれていき、その様に静かに苦悩する姿が切なく描かれている。(男性 20代)

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