映画『富美子の足』の概要:谷崎潤一郎の原作を大胆に映画化した。男たちを惑わせる魅力を備えた足を持つ富美子は、ある時、塚越という老人に出会う。死後、遺産の2憶円を譲渡する取引を持ちかけられた富美子は、塚越の家に通うようになる。
映画『富美子の足』の作品情報
上映時間:81分
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
監督:ウエダアツシ
キャスト:片山萌美、淵上泰史、でんでん、武藤令子 etc
映画『富美子の足』の登場人物(キャスト)
- 富美子(片山萌美)
- 魅力的な足を持った美女。子供の頃から足に魅力があり、男を惑わせた。成人後は足の魅力を打ち消そうと他の体の部分を美容整形で美しくしている。普段は口数も少なくておとなしいが、酒に酔うと喋り方も乱暴になり、絡んでくる。
- 塚越(でんでん)
- 富美子の足の虜になる老人。遺産の2憶をちらつかせて富美子を家に通わせ、その足を堪能する。甥の野田に完璧な富美子の足のレプリカの製作を指示する。
- 野田アキラ(淵上泰史)
- 塚越の甥。人間に興味がなく、フィギュア製作に夢中になっている。塚越に富美子の足のレプリカを作れと言われる。次第に富美子の足の虜になり、忠犬のように富美子の命令を聞くようになる。
映画『富美子の足』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『富美子の足』のあらすじ【起】
富美子の周りは子供の頃から男ばかりだった。成長期を迎え、母親に恋人ができた時、男たちが自分の何に夢中になってしまうのかに気がついた。それは彼女の足だった。富美子の足には特別な魅力があり、多くの男たちはその足に魅了されていたのだ。だが、彼女はそれを快く思わず、自分の足には呪いがかかっていると悩んでいた。
成長していくにつれ、男たちはますます富美子の足を求めるようになった。足以外も美しくしたら呪いが解けるのではないかと考えた富美子はデリヘルなどで金を稼ぎ、全身整形をして足以外も完璧にしようと試みた。しかし、他をどれだけ美しくしても、男が魅かれるのはやっぱり足だった。
噂を聞きつけた塚越という老人が富美子の所へとやってきた。塚越は足を見るなり言った。自分の死後、遺産の2憶円を譲渡するからそれまでその足を自分のものにさせてほしいと。塚越は誓約書を書き、その日以来、富美子は彼の家に通うようになった。
ある日、塚越は野田アキラという甥を家に呼んだ。野田は美少女フィギュアなどを製作していた。野田に富美子を会わせた塚越は、お前の才能でこの足で芸術を作れと指示した。
映画『富美子の足』のあらすじ【承】
野田は人間には興味がなかったため、富美子の足にも魅力を感じていなかった。そのせいか、出来上がった足のレプリカには何の魅力も備わっていなかった。野田の作品を見た塚越は、こんなものは中身がからっぽのちくわだと罵倒し、庭に投げ捨ててしまう。
落ち込む野田を飲みに誘った富美子だったが、彼女は酔うと冗舌になって人に絡んでくる性格の持ち主だった。野田は鬱陶しさを感じながらも、富美子に悩みを吐露。彼が作るフィギュアは全く売れず、なぜ売れないのかと悩んでいたのだ。
富美子の足を作り直したが、塚越は彼女の足について全然理解していないと声を荒げる。考えた塚越は野田に犬になれと命令した。そして、富美子の足にじゃれついて舐めてみろと言う。仕方なく野田は言われた通りに足に舌を這わせるが、すぐに自分にはできないと言って舐めるのを止めてしまった。
富美子には母親がいたが、足が不自由だった。母がそうなってしまった原因は、富美子の足にあった。富美子を追いかけて横断歩道を渡ろうとした時に事故に遭ってしまったのだが、ドライバーが富美子の足に気を取られたのが原因だったのだ。
それ以来、母親は腹いせのように富美子に辛く当たり、やってきたヘルパーと関係を持てと強要することもあった。ヘルパーも、やはり富美子の足のみに夢中になった。
映画『富美子の足』のあらすじ【転】
富美子は野田の部屋を訪れ、作りかけの足をぶち壊すと強引に野田と関係を持った。今まで男たちは皆、富美子の足に夢中になったが野田だけは違った。そんな野田に富美子は惹かれていたのだ。
ところが、関係を持った翌朝、富美子が目覚めると、野田は夢中で富美子の足を舐めていた。彼もまた、他の男と同じように足の虜になってしまった。それを知った富美子は落胆する。狂ったように足の製作に取り掛かった野田は、遂に完璧な富美子の足のレプリカを完成させた。塚越は大喜びし、常に肌身離さず持ち歩いては足と戯れていた。
以前から塚越の元に実の娘が訪ねてくるようになっていた。娘は遺産相続を願い出ていたが塚越は娘が嫌いだったため、一銭も渡す気は無く、財産は富美子に全て相続させる意志を曲げなかった。
塚越の死期が近づき、富美子は金と共に自由を得られると胸を高鳴らせた。そんな時、母親から再びヘルパーと寝るように命令される。富美子は嫌なことがあるとバッティングセンターでストレスを発散させていたが、そこが閉店してしまったために次第に狂い始めていった。
富美子は野田を使ってストレスを発散させる。すっかり犬のようになった野田は富美子の暴力的に扱いに興奮し、どんなことでも言うことを聞くようになっていた。富美子の命令で野田は塚越の娘を階段から突き落として死亡させる。
映画『富美子の足』の結末・ラスト(ネタバレ)
塚越の死は間近だと思っていたが、富美子の足への欲望からか驚異的な回復力を見せる。塚越は一日中、富美子の足をペロペロと舐めるようになり、その姿を見た野田も一緒になって舐めまわした。
死ななくては遺産が手に入らない。母親の仕打ちはますますエスカレートしだし、富美子のストレスは遂に限界を迎えてしまう。彼女は塚越と野田を殺害しようと考えた。台所から持ってきた包丁で野田の背中を刺すと、塚越をこれでもかと蹴り飛ばす富美子。
富美子が自分の死を望んでいることを知った塚越は、彼女に遺産はないのだと告げた。それを聞いた富美子は狂乱し、塚越を蹴り続けた。だが、塚越はこれこそ自分が待っていたものだと言って恍惚の表情を浮かべる。やがて、美しいと呟いた彼は富美子の足によって満たされながら死んでいった。
ここにきて富美子は初めて気がついた。自分の足は美しいのだと。翌日、塚越が遺体で発見されたことが報道され、犯人が逮捕された。警察に自首したのは野田だった。彼は全て自分がやったと容疑を認めているという。
ひとり浜辺の波打ち際を歩いていた富美子はこれからのことを考えながら、捨てられたサッカーボールを蹴り飛ばした。この美しい足でサッカーでもしてみようか、と。
映画『富美子の足』の感想・評価・レビュー
主要キャスト三人の演技はすごく、富美子の足の魅力を蟻と食べ物で表現している部分は面白かった。バッティングセンターで球を打つことから、人間を足で蹴ることにストレス発散がスライドしていく様は怖くていい。映像が文学的なオーラをほとんど感じさせないチープな作りになっていたのが少し残念だったが、文学を前面に出そうと台詞やナレーションを多用しなかったのは高く評価できる。片山萌美の足は確かに魅力的だったが、それ以上にでんでんと淵上泰史の陶酔した演技が見ものだ。(MIHOシネマ編集部)
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