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映画『ともしび(2017)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ともしび(2017)』の概要:人生の終盤を迎えようとしているアンナ。夫が収監され、ひとり暮らしを余儀なくされる。彼女は平静を装い、いつも通りの生活を続けようとするが、少しずつリズムが狂い始めていった。

映画『ともしび』の作品情報

ともしび

製作年: 2017年
上映時間: 93分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アンドレア・パラオロ
キャスト:シャーロット・ランプリング、アンドレ・ウィルム etc

映画『ともしび』の登場人物(キャスト)

アンナ (シャーロット・ランプリング)
ベルギーの郊外の街で、夫と2人暮らしをしている初老の女性。豪邸で家政婦の仕事をしている。演劇サークルに通うのが趣味。夫が収監され、生活が変化していく。
アンナの夫 (アンドレ・ウィルム)
口数が少ないアンナの夫。ある犯罪に関与したことで収監される。夫婦には息子がいるが、過去のトラブルで絶縁状態にある。

映画『ともしび』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ともしび(2017)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ともしび』のあらすじ【起】

夫と郊外の古いアパートで暮らす初老の女性アンナ。定期的に演劇スクールに通い、若い人たちに混じって演技を学ぶ充実した日々を送っていた。夫は口数が少なく、夫婦の会話はほとんどない。彼女が帰宅しても「ただいま」「おかえり」も言わないが、夫婦仲が悪い訳でなかった。夫のために魚の煮込み料理を作り、寝る前に夫の背中をマッサージする。「ありがとう」「おやすみ」とだけ言葉を交わし、静かながらも穏やかな日常を送っていた。

ところがある日、夫が過去の罪で警察に収監されることになる。彼女は夫と一緒に警察に行き、帰りはひとりで帰宅した。しばらく使うことはないであろう夫のスーツを片付けた後、鏡に向かって自分の顔をじっくり見つめ、深く刻まれた皺を何度も触った。

アンナは夫がいなくなったそぶりも見せず、いつも通りに家政婦の仕事をし、演劇サークルに通う日々を送った。料理を振る舞う相手もいなくなり、目玉焼きを焼いて食べていると、イプセンの「人形の家」のセリフが気になって練習を始める。するとその時、インターホンが鳴り、シモンの母親と名乗る女が大声で騒ぎ始めた。どうやらアンナは、その女性とトラブルを起こしているようだった。

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映画『ともしび』のあらすじ【承】

翌朝アンナは、天井にオレンジ色のシミを見つけた。水漏れだと思って上の階に行くと、大人は不在で、子供たちが絵の具にまみれて水遊びをしていた。彼女は適切に対処し、部屋に戻って汚れた自分の手を洗い流した。

ある日、夫の面会に行ったアンナは、嬉しくて思わず微笑んだ。夫はそれが気に入らず、「なぜ笑っているのか」と言って彼女を黙らせる。夫は慣れない収監生活で体調を崩し、不機嫌だったのだ。しかも思ったよりも罪が重く、移送される可能性もあると彼女に打ち明けた。その夜、眠れなくなったアンナは、真夜中に枯れた観葉植物の手入れを始め、不安な気持ちを紛らわそうとするのだった。

日中に無言電話がかかり、不安になる彼女だったが、生活のリズムは変えないようにしていた。いつも通りに犬のシャンプーをし、そのついでに自分もシャワーを浴び、演劇サークルに通い、家政婦の仕事をこなしていった。ある日、家政婦先でシーツを片付けるため寝室に入ろうとしたが、中から女主人の喘ぎ声が聞こえたので、入室を止めた。その夜、彼女は男に抱かれている妄想に駆られる。しかしすぐに我に返り、ひとりぼっちだという寂しさに襲われるのだった。

映画『ともしび』のあらすじ【転】

アンナは演劇スクールで演技を褒められた後、ユリの花束を買って帰り、自分の部屋に飾った。華やかな花を見て気分が明るくなった彼女は、久しぶりに息子に電話をかけた。孫の顔を見たいと話すが、長年絶縁状態にあるため断られる。犬しか話し相手がいなくなったアンナ。その犬さえも彼女にそっぽを向き、彼女は更なる孤独を感じた。

息子から拒絶されたにも関わらず、アンナは誕生日にケーキを作って届けに行った。しかし案の定、玄関に入る前に息子から追い返されてしまう。アンナは公衆トイレで声を殺して嗚咽し、家に帰って飾っていたユリを捨てた。家政婦先で子供から頭を掻いてとせがまれたアンナは、ちょうど孫と同じ年頃の彼を抱きながら、孫のように優しく頭を掻いてあげた。

アンナはたまに通っている市民プールに行き、ひと泳ぎした。シャワーを浴びて帰ろうとしたが、受付から会員証はもう使えないと言われてショックを受ける。また一つ、居場所を失ったような気がしたアンナは、落ち込みながら帰宅する。

映画『ともしび』の結末・ラスト(ネタバレ)

ある日、アンナはタンスの裏に、夫が隠していた封筒を発見する。それは夫の犯罪の証拠となるものであったため、すぐにゴミ箱に捨てた。夫の面会に行った彼女は、孫に会ったと嘘をついた。夫は面会に来ない息子に憤慨し、さらに彼女から封筒の話題を持ち出されると不機嫌になり、背中を向けて面会室から出て行った。

家政婦先で女主人と息子が仲睦まじく過ごすのを見て、アンナの心は落ち着かなくなる。気分がすぐれないと早退した彼女は小学校へ行き、校庭で遊ぶ孫の姿を見つめて思わず涙ぐんだ。帰り道、海岸の人だかりに吸い寄せられるように近づくと、そこには打ち上げられたクジラの死体があった。大きな体を横たえ、やがて朽ちていくクジラ。彼女はその姿に自分を投影するかのように、じっとクジラを見続けていた。

彼女は飼っていた犬を手放し、本当にひとりとなった。翌日、演劇サークルに行くが、セリフが思うように出てこない。何度も言葉に詰まった彼女は、外の空気を吸うと言い残して教室を去り、そのまま地下鉄に乗った。

映画『ともしび』の感想・評価・レビュー

老いてもなお大女優であり続けるシャーロット・ランプリングが、ある日突然、孤独に直面する女性を演じている。裕福でなくてもそれなりに充実していた主人公だったが、夫がいなくなったのを機に、多くのものを失っていることに気付く。しかしそれは全て自分が招いたことであり、年を取り過ぎてなすすべもないのだ。

若い頃のシャーロットはスレンダーで美しく、1973年の『愛の嵐』では大胆なヌードを披露していた。本作でも皺だらけの全裸を露わにし、老いというものを全身で表現している。セリフは少なくて大きな事件が起きる訳でもないが、まるで実在する老女の孤独な生活を覗き見したような気持ちになる映画だった。(MIHOシネマ編集部)

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