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映画『トニー滝谷』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『トニー滝谷』の概要:トニー滝谷と名付けられ幼少期から孤独な環境に育った男が、ある女性を愛して初めて孤独であることの寂しさを知るようになる。村上春樹の同名小説を市川準監督が映画化。音楽は坂本龍一が担当している。2005年公開の日本映画。

映画『トニー滝谷』の作品情報

トニー滝谷

製作年:2004年
上映時間:75分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:市川準
キャスト:イッセー尾形、宮沢りえ、篠原孝文、四方堂亘 etc

映画『トニー滝谷』の登場人物(キャスト)

トニー滝谷(イッセー尾形)
両親は日本人だが、これが本名。生まれてすぐに母親と死別し、ジャズ奏者の父親もほとんど家におらず、孤独な幼少期を過ごす。芸大を卒業後、緻密な機械類の絵を専門とするイラストレーターになる。喜怒哀楽を表に出さない寡黙な男。
滝谷正三郎(イッセー尾形)
トニーの父親でジャズのトロンボーン奏者。世話になったアメリカ軍少佐トニーのファーストネームをもらい、息子にトニー滝谷という風変わりな名前をつける。
小沼英子(宮沢りえ)
雑誌社に勤務している時にトニーの担当となり、後に結婚する。わがままで贅沢な人間だと自覚している。洋服に異様な執着があり、服や靴を際限なく買ってしまう。
斉藤尚子(宮沢りえ)
英子の死後、トニーの出した求人に募集してきた平凡な女性。英子と姿形がそっくり。

映画『トニー滝谷』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『トニー滝谷』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『トニー滝谷』のあらすじ【起】

トニー滝谷の父である滝谷正三郎は、第二次世界大戦中に上海のナイトクラブでジャズ楽団のトロンボーン奏者をしていた。戦後、それまでの付き合いが仇となって刑務所に入れられ、仲間は次々と処刑される。何とか生き延びて昭和21年の春に日本へ帰国したが、実家は空襲で焼け、両親と姉も他界していた。天涯孤独となった正三郎は遠い親戚の女性と結婚し、翌年息子が生まれる。しかし妻はその3日後に他界。正三郎は世話になっていたアメリカ軍少佐のトニーからファーストネームをもらい、息子をトニー滝谷と命名する。

トニーはこの名前のせいで肩身の狭い思いをし、1人でいることを好むようになる。正三郎は演奏旅行でほとんど家におらず、幼い頃は家政婦が雇われていた。しかしトニーは特に寂しいとも感じず、家事を覚えてからは家政婦が来るのも断るようになる。

少年時代から細密画を得意としていたトニーは芸大へ入り、黙々と絵を描く。友人や彼女も必要とせず、常に1人でいることを好んだ。その後、機械類全般を描けるイラストレーターとして成功し、高い報酬を得るようになる。

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映画『トニー滝谷』のあらすじ【承】

ある雑誌社からトニーの担当としてやってきた小沼英子を見て、トニーは特別な風を感じる。自然に服を着こなしている英子の美しさに魅了され、トニーは彼女を食事に誘う。英子は“洋服は自分の中に足りないものを埋めてくれる”と感じており、給料のほとんどを洋服代につぎ込んでいた。わがままで贅沢な女だと自分のことを語る英子にトニーは惹かれ、彼女にプロポーズする。その時英子には別の恋人がいたが、英子はトニーを選び、2人は結婚する。

孤独でなくなったトニーは失うことの怖さを感じるが、それも3ヶ月ほどで落ち着く。英子は家事をテキパキとこなす有能な主婦で、トニーは幸せな日々を送る。しかし贅沢が許される環境の中で英子の服への執着はますます酷くなり、衣装部屋はあっという間に高価なブランド物の服や靴で埋め尽くされる。それはトニーが呆れるほどだった。

珍しく正三郎から連絡があり、トニーと英子は正三郎の演奏を聴きに行く。そこでトニーは聴き慣れた父のトロンボーンの音色に小さな違和感を覚える。その帰り、トニーは初めて英子に“服を買うのを控えたらどうだ”と言ってみる。英子も自分の異常さを自覚しており、何とかしようと努力を始める。

映画『トニー滝谷』のあらすじ【転】

英子はきれいな洋服を目にするとどうしても買いたいという衝動を抑えきれない中毒状態に陥っており、外出をやめることにする。1週間ほどは衣装部屋に引きこもって毎日自分の服を眺めていたが、そのうちどうしても新しい服が欲しくなり、購入してしまう。すぐに後悔してそれを返品するが、英子は返品した服を諦めきれない。店へ戻ろうとして車のハンドルを切った英子は、事故を起こしてあっけなく死んでしまう。

突然ひとりにされたトニーは、以前のような孤独に耐えられない。そこで英子と同じの体型のアシスタントを募集する。面接で合格した斉藤久子は、英子に姿形はそっくりだったが、安物の服を着た平凡な女性だった。死んだ奥さんの服を着て簡単なアシスタント業務をするという変わった仕事内容に久子は戸惑う。そこでどんな服なのか見せて欲しいとトニーに頼んでみる。

トニーは久子を英子の衣装部屋へ案内する。久子は広い部屋いっぱいに並べられた高価な服や靴に圧倒されながら、試着を始める。服も靴も久子にぴったりだった。そうするうちに久子はなぜか無性に悲しくなり、号泣してしまう。泣き声を聞いて部屋へ入ってきたトニーは、久子の思わぬ反応に強い衝撃を受ける。

映画『トニー滝谷』の結末・ラスト(ネタバレ)

トニーは妻の残した大量の服が生命の根を失った影の群れのように思えてきて、その存在自体に息苦しさを感じ始める。久子にはこのことは誰にも話さないで欲しいと言って仕事を辞めてもらい、久子が使用した服は全部あげてしまう。残りは古着屋に引き取らせて、英子の衣装部屋は空っぽになる。そしてトニーの中の英子の記憶も薄らいでいく。

2年後、正三郎が肝臓ガンで亡くなる。遺品の楽器と古いジャズレコードの山は英子の衣装部屋に置かれる。しかし古いレコードはカビ臭く、それを所有していることが重荷になってきたトニーは、1年後には中古レコード屋に全て売ってしまう。レコードの山が消え、トニーは本当のひとりぼっちになった。

仕事関係のパーティーに出席したトニーは、英子の前の恋人から声をかけられる。英子を“あいつ”呼ばわりする男にトニーは不快感を感じる。“英子のことはもう忘れた”と言ってその場を去るトニーを、男は“絵と同じでつまらない男だ”と罵倒する。

トニーは何もなくなった英子の衣装部屋に寝転がり、ただぼんやりとしていた。トニーはなぜかここで涙を流した久子のことばかりを思い出す。いろんなことは忘れていくのに、見知らぬ女の久子を忘れられない自分が不思議だった。トニーは久子へ電話をしてみるが、2人が会話することはなかった。

映画『トニー滝谷』の感想・評価・レビュー

本作は村上春樹の短編小説『レキシントンの幽霊』の中の『トニー滝谷』を映画化したもの。
孤独なイラストレーターの男が、15歳も年下の恋人を持つ女性に恋する物語。
そんな彼女の異様な程の洋服への執着が、やがて自身を死に導くことになる。
彼女と出会う前も出会った後も結局トニーの孤独感は拭えないという空虚さが好みだった。
淡々と進んでいくが小説同様に、観終わった後に非常に不思議さと独特な余韻を残す作品だった。(女性 20代)

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