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映画『トト・ザ・ヒーロー』あらすじネタバレ結末と感想

映画『トト・ザ・ヒーロー』の概要:2015年に公開され、話題を呼んだ「神様メール」のジャコ・ヴァン・ドルマル監督の長編映画処女作。ベルギー出身の彼の出自を思わせる、愛らしい画面とシリアスな物語の対比が新鮮な1991年の映画です。

映画『トト・ザ・ヒーロー』 作品情報

トト・ザ・ヒーロー

  • 製作年:1991年
  • 上映時間:92分
  • ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
  • 監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
  • キャスト:ミシェル・ブーケ、トマ・ゴデ、クラウス・シンドラー、サンドリーヌ・ブランク etc

映画『トト・ザ・ヒーロー』 評価

  • 点数:55点/100点
  • オススメ度:★★☆☆☆
  • ストーリー:★★☆☆☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★★☆☆

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映画『トト・ザ・ヒーロー』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『トト・ザ・ヒーロー』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『トト・ザ・ヒーロー』 あらすじ【起・承】

冒頭、老人トマは自分の生涯を振り返ります。幸せな出来事の何ひとつなかった人生を悲しみ、幼い頃より恨んでいたアルフレッドを殺しに行く決意をします。
老人ホームを抜け出したトマは、幼いころから抱いてきた妄想とも現実ともつかない心象風景を思い返します。
家事になった病院で、アルフレッドと自分は取り違えられてしまったのだと。

少年トマは、両親と姉と、ダウン症の弟とともに幸せに暮らしていました。しかし、いじめられっ子の弟とともに、仲間内ではからかわれることも多く、とりわけ、向かいに住むお金持ちの息子アルフレッドからはよくいじめられていました。
いじめられるたび、トマは妄想をします。テレビで見た、ハードボイルドな探偵の姿を自分に重ね合わせるのです。探偵トトは、鮮やかに悪者アルフレッドを追い詰めます。幼い日に「チキンスープ」とからかわれていた少年が、とアルフレッドと仲間たちは悔しがります。
そんな妄想が、トマの支えでした。

一方、姉のアリスはトマにとって世界の救いでした。美しく明るく、ピアノが上手で、弟想いのアリス。彼女はトマにとっての初恋でした。

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映画『トト・ザ・ヒーロー』 結末・ラスト(ネタバレ)

トマは成長し、測量学を生業としていました。かつて妄想した、格好いい探偵は夢のまた夢、眼鏡をかけた内気な青年は、生真面目な性格から女性や友人とも縁がなく、孤独な日常を送っていました。
そんなある日、トマは街中でアリスに面差しの似た女性と巡り合います。まるでアリスのような鮮やかな黄色いドレス姿のエヴリーヌに、トマは恋に落ちます。人妻と知っても、彼の想いは止められません。施設で暮らす弟のもとに彼女を連れて行くと、弟は「似ていないよ」と言います。

少年トマは、アリスへの想いを募らせていました。しかし、アルフレッドもまた、アリスの美しさに魅了された一人でした。トマは焦り、いつか自分の元を離れるのか!とアリスを責め立てます。
アリスは、離れない証拠にアルフレッドの家の車庫に火を放つと言い残し、車庫に入ります。しかし、車庫は引火し、家事に。アリスはその火事に巻き込まれ、幼い命を燃やしてしまいます。

アリスを失ったトマにとって、エヴリーヌはただ一人の女性でした。しかし、ある日トマは残酷な現実を突き付けられます。
エヴリーヌは、アルフレッドの妻だったのです。アルフレッドもまた、アリスの面影に掴まれた一人。その事実を知ったトマは、駆け落ちに応じて呉れたエヴリーヌを置いて、自分の日常に逃げ込んでしまいます。

老人トマがアルフレッドの家で見たものは、事業の失敗により追い詰められたアルフレッドの姿でした。彼はトマをエヴリーヌに会わせ、また自分が窮地に立たされていることを打ち明けます。
かつてのわだかまりの融けた三人は笑い合います。

そしていよいよ窮地に立たされたアルフレッドを屋敷に閉じ込め、彼の服を身に着けるトマ。スナイパーは、アルフレッドと見間違い彼を撃ち抜きます。
死んでしまったトマの前で、アルフレッドは崩れ落ちます。

自由になったトマの魂は、遺灰とともにセスナから地上に撒かれ、初めて自由を感じるのでした。

映画『トト・ザ・ヒーロー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『トト・ザ・ヒーロー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

美しい姉アリス

今作の監督はベルギー出身なのですが、ベルギーの町並みなどから想像する通り、とにかく画面が可愛らしいことが魅力です。とくに、トマの姉・アリスの河かわいらしい巻き毛とワンピース姿には、トマでなくても心を奪われてしまいます。その中でも、エヴリーヌにアリスを重ねるきっかけにもなった明るいレモンイエローのドレス。栗色の巻き毛と相まって、真似したくなる可愛らしさです。
今年の夏はこういった明るいカラーの、少し長めの丈の上品なワンピースが流行っているので、女性の観客には是非取り入れてほしいファッション。

こういった画面作りのセンスの良さは、東欧の監督ならではという感じがします。

繰り返されるテーマソング

とくにトマの妄想の中で繰り返される音楽として、Charles TrenetのBoumという曲があります。キャッチーであり、明るい曲調のこの曲は、トマが少年時代、父親と姉と奏でた思い出の音楽。しつこいくらいに繰り返されることで、トマの独りよがりな、しかしきらきらとした妄想がファンタジックに描かれます。
「妄想」をファンタジックな映像に乗せ、シリアスなドラマの間に挟み込むのはドルマル監督の作風のひとつ。この癖が、どうしても印象に残ってしまう作品作りの肝です。

妄想と現実

この物語は、すべて一人称で描かれます。つまり、トマが現実だと信じているシーンも、見方によってはトマの妄想である可能性があるということ。
代表的なのは、家事の夜、病院で取り違えられてしまったという、トマがずっと信じている過去。これは、トマの妄想ではないかと、特に後半、観客は感じてしまいます。

また、鑑賞し終ったあと、つい考えてしまうのです。今、わたしやあなたが現実だと思っている過去や心も、もしかしたら、想像の産物にすぎないのかもしれないと。

映画『トト・ザ・ヒーロー』 まとめ

東欧出身の映画監督というと、癖が強いイメージがあります。それは、映画に限らず、絵本や小説、アニメーションなど、すべての表現物から感じる癖なのですが、これを面白いと思えるかどうかで、この映画の価値は変わってくると思います。
その癖は、一種のグロテスクさと残酷さです。わたしたち日本人からすれば「シャレにならないな」と思ってしまうような事実が、さらっと出てくるのです。たとえば、トマのアリスに対する恋。それも、淡い片想いではなく、エロティックなくらいのまぎれもない「恋」なのです。そして、そのアリスはあっけなく死んでしまう。
この展開の残酷さと急さに、ついていけるかどうか、ちなみに私は少し面食らってしまいました。ラストも含め、かなり癖の強い作品です。異国情緒を存分に味わいたい気分のときに、ぜひ挑戦してみてください。

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