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映画『月と雷』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『月と雷』の概要:幼い頃、両親が離婚したせいで父親に育てられたヒロイン。平穏な人生を送るつもりだったがある日、両親の離婚の原因となった愛人の息子が彼女を訪ねて来る。それを機にヒロインの生活は一変。感情や人間関係を丁寧に描いたヒューマンドラマ。

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映画『月と雷』の作品情報

月と雷

製作年:2016年
上映時間:120分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:安藤尋
キャスト:初音映莉子、高良健吾、藤井武美、黒田大輔 etc

映画『月と雷』の登場人物(キャスト)

泰子(初音映莉子)
両親が離婚後、父親に育てられる。結婚して子供を産み、家族を作るという平穏な生活を望んでいた。放浪癖のある直子の気持ちが分からず、やきもきとする。どこか泰然としており、内に秘めた感情を表に出すのがへたくそ。
智(高良健吾)
幼い頃、泰子の家で過ごしたことがある。母親の直子と同じ放浪癖があり、生きるために身に着けたコミュ力は相当なもの。女性と長続きしない。
佐伯亜里砂(藤井武美)
泰子とは異父姉妹。母親は料理研究家だが、本人は全く料理ができない。素直で人の心を慮ることのできる、とても良い子。賢い頭脳を持ち、海外への留学が決まっている。
山信太郎(黒田大輔)
泰子が勤めるスーパーと取引をする酒販の販売員。泰子と恋人関係にあるが、まめで優しい性格。結婚を望んでいる。
直子(草刈民代)
智の母親で泰子の父親の愛人だった。放浪癖があり、流れに抗うことなく受け入れ続けている。謎めいた雰囲気を持っており、何を考えているのか分からない。少なくとも智と泰子には愛情を持っていると思われる。

映画『月と雷』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『月と雷』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『月と雷』のあらすじ【起】

幼い頃、泰子の家には半年ほど一緒に住んでいた父の愛人、直子とその子供、智がいた。泰子は智と年が近かったのでとても仲が良く、ふらりとやって来てふらりと出て行ってしまった母子を何日も探し続けたが、父に諭され彼らの存在を忘れてしまった。

それから父が亡くなり泰子は一人暮らしになる。彼女は大人になってスーパーで働き、恋人の山信太郎と交際中。恐らく彼と結婚することになるだろう。そうして、泰子は平穏な人生を送るはずだった。

そんなある日、彼女の前に20年間、会うことのなかった智が突然、現れる。彼は根無し草のように女性の家を転々として暮らしていたが、幼い頃に一緒に住んでいたことのある泰子のことを思い出して、やって来たと言うのだった。

時が経ち互いに大人になった2人だったが、20年振りに会ったというのにまるで違和感がない。泰子は一晩だけ智を家に泊めることにしたが、その夜のうちに肌を合わせてしまう。彼女は自分の人生を邪魔しないで欲しいと言いつつ、彼の身体を求めた。
翌日、彼女は智を家に住まわせる条件として、直子のせいで家を出て行ってしまった母親の捜索を頼んだ。

人探しのテレビ番組に出演すると、いとも簡単に母親が見つかる。泰子の記憶にほとんどない実母との再会に、差して感動があるわけでもなかった。ただ、実母は直子が現れたことにより家を出て行くきっかけができたと、寧ろそう思っていたらしい。あの時、実母は幼い娘に声をかけたが、拒否されたと言う。だから、実母はたった1人で家を出たと言うのである。泰子には当時の記憶が全くなかった。

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映画『月と雷』のあらすじ【承】

実母との再会を果たした翌日、仕事を休んだ泰子の元に太郎が訪ねて来る。彼は恋人のことを心配していたようだが、まめで優しい性格のため、面と向かって智のことを泰子に聞けないのであった。
気を遣って散歩に行くと席を外した智だったが、直子がいなくなったと連絡が入る。彼は母親を探すため、一旦帰ることになった。

テレビにて泰子と実母の再会が放送されたが、彼女は番組以来、実母とは連絡も取っていないし会ってもいなかった。そのことを職場の友人に話すと、会いに行くべきだとアドバイスされる。そういうものかと思い後日、実母の家を訪ねてみた。

実母は再婚し、結婚相手との間に娘を1人儲けている。泰子は実母の娘、佐伯亜里砂と会うことができた。彼女もテレビ放送を観ていたらしく驚いているらしい。亜里砂は海外へ留学する予定だったようで、日本にいる間に泰子と会えて良かったと話すのだった。
その日の夜、智と連絡を取った泰子は思い立って直子に会ってみたいと言う。幼い頃に会ったきりで、どんな人物なのか覚えていなかったからだ。

直子もまた根無し草のような生活を送っている。後日、智と共に直子へと会いに行った泰子だったが、流れに抗わずそして、遠慮もしないが何も求めない直子に驚きを隠せない。彼女は男性の好意をただ受け取って世話になり、そして現れた時と同じように姿を消す。
そこには何の感情も備わっていないように思われ、深い孤独すら感じさせるのであった。

直子が世話になっている家でお茶を頂いた泰子。彼女は不意にお茶の匂いで吐き気を催しトイレへ駆け込んでしまう。トイレから出るとそこには直子がいて、もしかして妊娠したのではないかと声をかけられる。
泰子は急いで自宅へと帰り、市販の妊娠検査薬を試そうとした。しかし、こんな時に限って来客。訪ねて来たのは異父妹だった。

亜里沙は昨日、泰子に対しての態度が悪かったのではないかと気にして来たらしい。それから、留学前でもあるので奇跡的にできた縁を大切にしたいと言う。泰子は異父妹に事情を話し2人で妊娠検査薬を試した。すると、結果は陽性。太郎とはしばらく関係を持っていないので、恐らく父親は智だと思われる。その日は時間も遅くなったため、亜里沙を家に泊めることにした。

映画『月と雷』のあらすじ【転】

翌日、悪阻に苦しみながら仕事をして帰宅した泰子。家にはまだ異父妹がいるはずだが、彼女は全く料理ができないので、家から漂ってくるカレーの匂いに頭を捻った。
しかし、中へ入った泰子は驚愕に固まってしまう。台所でカレーを作っていたのが、直子だったからだ。

妊娠中は食が変わるので、泰子は冷や飯しか受け付けられない身体になっていた。直子は泰子の妊娠を気にして来てくれたらしいが、例の如く何も言わずにふらりと出て来たらしく智から連絡が入る。直子が家にいることを告げると、彼も家にやって来た。

その日の夜、智が布団に潜り込んで来たので、彼に妊娠を告げた泰子。智は泰子の話に驚いたが、否定や拒絶はしなかった。ただ、彼は怖いと感じ怯えているようだった。
翌日から奇妙な同居生活が始まる。根無し草親子と異父妹の亜里沙、そして家主の泰子の4人は、疑似家族のような生活を送った。

連日、悪阻に苦しむ泰子だったが、仕事を休むわけにもいかない。だが、帰り道。彼女の前に太郎が現れ、自分が全ての面倒を見るから結婚しようと言われる。だが、泰子は太郎との結婚に乗り気ではなく、彼の申し出を断ろうとした。すると、太郎は泰子へと襲い掛かり、無理矢理に関係を結ぼうとしてくる。彼女は抗って太郎から逃げ出すのであった。

自宅にはまだ直子と智、亜里沙がいる。汗だくになりつつ帰宅した泰子だったが、今しがた起こったことを話す気にもなれず。彼女は父親の部屋にいた直子に、本当は父親のことをどう思っていたのかを聞いたが、直子は何も話さない。
彼女は日がな一日、家で酒を飲んで過ごしている。そんな彼女に苛立ちを募らせた泰子。そんな時、直子が家を出て行った時のことを思い出す。

映画『月と雷』の結末・ラスト(ネタバレ)

泰子の父親も母親も人柄のできた人物だった。故に家のない直子親子にずっと家にいてもいいと話していたと言う。だが、あまりに良い人たちだったため、直子は返って気を遣ってしまい、家を出て行ったのだった。その話に泰子はとうとう堪忍袋の緒が切れてしまう。

直子の話は信用がならない。どうせ、家にいたいがためのでっち上げなのだ。智も勝手に家に来て、勝手に住み着いた。亜里沙だって自分の母親を奪い何不自由なく暮らしている。泰子は母親を奪われ寂しい生活を送り、父親は酒に溺れて命を落とした。全部、直子達のせいである。泰子は鬱憤をぶちまけ、全員を追い出し家に鍵をかけてしまった。

勝手にやって来て家に住み着き、そしてある日突然、姿を消してしまう。泰子はまた置いて行かれ独りぼっち。彼女は智に対し、責任を負わなくていいと言う。どうせ、またいなくなるのだからと。だが、その夜。部屋の窓の外で智が本心を語った。
彼は今まで絶やすことなく女性を渡り歩いたが、なぜか長続きしなかった。そこで、当時付き合っていた女性に理由を問う。すると、女性は智が生活というものをちゃんと理解していないからだと答える。智は生活をするという意味を考え、泰子のことを思い出した。幼い頃、共に過ごしたあの時が一番、安定していたからである。彼女となら生活ができると思ったのだ。泰子は智の話を聞き、涙を零した。

翌朝、家の中に直子親子が入り込んでいた。試しに雨戸を外してみたら、簡単に外れたと言う。直子が朝食に不格好なおにぎりを作ってくれたので、泰子は2人のことを許すことにした。
その後、直子が家を出て行く。彼女の放浪癖はすでに身について長い。最早、性分としか言いようがなかった。泰子は彼女と和解し、その後姿を見送った。

しばらく後、泰子の腹で子供はすくすくと成長。智も家を拠点に働き始め、2人は落ち着いた生活を送っていた。しかし、そこへ直子が急死したという報せが入る。彼女は吐血後、病院へ担ぎ込まれたが、そのまま息を引き取ったと言う。亡くなった病院は、自宅から案外近い場所だった。

それから智は塞ぎ込む様子を見せる。泰子は思い出のタンスが壊れたのを機に、処分することにした。智と一緒にタンスが燃えるのを眺める。思い出と決別し、新たな生活を始めようと思った。だが、数日後。智が忽然と姿を消す。彼もまた生まれた時から直子と共に放浪生活を送ってきた。やはり、彼にとってもそれが性分なのだろう。
泰子は大きくなった腹をさすり、寂しげな笑みを浮かべるのであった。

映画『月と雷』の感想・評価・レビュー

なかなか複雑な人間ドラマだなと思った。平凡な家に育った自分としては、登場人物達の気持ちを察するのが少し難しかった。ただ、もがきながら生きる泰子達の姿に、惹かれるものがあった。
泰子だけでなく、直子も智も心のどこかで普通の家庭を求める気持ちがあったのかなと感じた。「普通」というのは一見簡単そうに見えて、案外難しいのかもしれない。物語のラストは、切なさが残った。人間はそう簡単に変われないのだと思う。(女性 30代)


性分というのは分かっていても変えることはなかなか難しいと思う。放浪癖のある母子は、根無し草のような生活しかできないのだろうと思うし、一つ所に留まることができない。きっと精神の防衛本能のようなものもあるのだと思う。対してヒロインは一つ所に留まり安定した生活を望んでいる。最初に今作を観た時はやはり放浪癖のある母子の生き方が理解できなかったが、一つ所に留まりたくてもそうできない生き方もあるだということは分かった。後半に進むにつれ、彼らの生き方は難儀ではあるが、ある意味自由でもあり孤独でもあるのだと分かった。複雑な性分や心の機微が繊細に描かれた良作だと思う。(女性 40代)


普通の家族、普通の生き方ってなんだろうと考えてしまうような作品でした。今作に登場する人たちは複雑な過去や生い立ちがあり、普通とは言えない生き方をしていたと思います。しかし、それが悪いとか不幸だとか言う訳ではなく、そういう生き方だからこそ見つけられる幸せもあるだろうし、辛い経験をしたから人の痛みがわかる場合もあるのだと感じました。
自分の意思ではなく、ふわふわとその時の幸せを感じながら生きるのも一つの方法なのかもしれないと思ってしまいました。(女性 30代)

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