映画『浮き雲(1996)』のネタバレあらすじ結末と感想 | MIHOシネマ

「浮き雲(1996)」のネタバレあらすじ結末と感想

浮き雲(1996)の概要:不況の中、失業してしまった夫婦の絶望と再起を描いたフィンランド映画。登場人物の無表情で淡々とした様子は他の映画にはない独特な世界。アキ・カウリスマキ監督による敗者3部作の1作品目である。

浮き雲の作品情報

浮き雲

製作年:1996年
上映時間:96分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アキ・カウリスマキ
キャスト:カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネン、エリナ・サロ、サカリ・クオスマネン etc

浮き雲の登場人物(キャスト)

イロナ(カティ・オウティネン)
老舗レストラン「ドゥブロヴニク」で給仕長として働いている。夫と二人暮らしである。
ラウリ(カリ・ヴァーナネン)
イロナの夫で路面電車の運転士。
メラルティン(サカリ・クオスマネン)
「ドゥブロヴニク」でクローク係として働いている。
ラユネン(マルク・ペルトラ)
「ドゥブロヴニク」の料理人。アルコール依存症である。

浮き雲のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『浮き雲(1996)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

浮き雲のあらすじ【起】

イロナは老舗のレストラン「ドゥブロヴニク」で給仕長として働いている。店にはステージがあり、客はバンドやピアノの演奏を聞きながら食事をする。入り口にはクローク係のメラルティンが立っており、料理人のラユネンはアルコール依存だが料理の腕はいい。支配人のスヨホルム夫人は、夫と長い間この店を経営していたが、夫が亡くなってからは一人で店を続けていた。

イロナの夫のラウリは路面電車の運転士。イロナは夜遅く仕事が終わると、夫の運転する電車に乗り、電車を車庫に戻すまでの時間、彼の後ろに立って束の間のデートの時間を楽しむのだった。

ラウリは少し浪費家で、まだ本棚とソファーのローンも残っているのに、新しいテレビを買ってきた。だが、いつかはローンも返せるだろうと、イロナはラウリの気持ちを尊重し、自分も嬉しいと合わせる。裕福ではないが、イロナは愛する夫と穏やかに暮らす日々に幸せを感じていた。

そんなある日、ラウリが職場に着くと、従業員たちが皆集まっていた。ボスは不況で電車の運行数が減るため、運転士にも4人に辞めてもらいたいと言う。それは半分の人数だった。決定はカードで決まり、ハズレを引いたラウリは仕事を失ってしまうのだった。

浮き雲のあらすじ【承】

ラウリは失業したことをイロナにすぐには言えなかった。仕事の最終日が終わり、ようやく伝えるラウリ。イロナは彼に同情するが、プライドの高いラウリはそれを嫌がり、失業手当すらも「物乞いなどできない」と言い、貰わないのだった。

ラウリは再就職活動を始める。40代だが、まだ若いしこれまでの実績があれば、すぐに仕事は見つかると思っていた。

しかし、その夜戻ってきたラウリは泥酔しておりそのまま倒れこむ。イロナは夫を静かにベッドまで引きずる。彼女は何も言わなかったが、就職活動が思っていたほど上手くいかなかったことを悟った。

不幸は続いて訪れた。イロナの働く「ドゥブロヴニク」がチェーン店に買収されることになったのだ。常連客も年を取り、店でお酒をあまり飲まなくなった。店はローンが払えなくなり、スヨホルム夫人も泣く泣く店を手放さざるを得なくなった。そして、従業員も「ドゥブロヴニク」の幕引きと共に解雇されることになる。

夫婦で失業になり、イロナはその夜眠れぬ一夜を過ごした。しかし、お互いに泣き言など言わない。朝方、まだコートのまま呆然と座っていたイロナにラウルはコーヒーを淹れてあげるのだった。

イロナの再就職も世の中全体が不況で厳しかった。別のレストランでの職を探すが、どこに行っても仕事はなかった。まだ38才なのに年のせいで断られることさえあった。イロナは途方に暮れる。

そしてイロナとラウリは職業安定所に出向く。だが、そこでも仕事は見つからないのだった。ラウリはその足でまた仕事を探しに出かける。

その後、ラウリはバス会社での長距離運転手としての仕事が決まり、花束を持って帰宅する。飲みに出かけたと思っていたイロナは、驚くが夫の再就職を喜び、心からほっとするのだった。

仕事は早速その翌日からで、健康診断を受けてからの出発だった。夫を見送ったイロナは飾ってあった子供の写真を眺めて物思いに耽る。それは過去に亡くした二人の子供だった。ラウリの仕事が決まり嬉しい日だが、イロナは子供のことを思い出し涙を堪えた。

ところが、そこへ仕事に出かけたはずのラウリが戻ってくる。実は健康診断の耳の検査で片耳に以上が見つかったのだ。ラウリはそこで働けないどころか免許も取り消しになり、運転さえできなくなった。イロナは夫に寄り添うことしかできなかった。

そんな時、イロナは道で「ドゥブロヴニク」で共に働いていたメラルティンと再会する。彼も仕事が見つからず、飲み屋で持ち金以上に飲んでしまい、偶然通りかかったイロナに奢ってもらおうと思ったのだ。失業者同士、二人は酒を飲んだ。ラウルは酔っ払って戻ったイロナを優しく看病した。

ラウリは意地でも失業手当を貰わず、二人の生活は苦しくなっていく。イロナは新聞に載っていた雇用サービスに電話をし、翌日一番で面接を受けられるよう、そこの入り口で一夜を明かすのだった。

だが、座ったまま眠りこけてしまったイロナ。翌朝目を覚ました時、すでに営業時間は始まっており出遅れてしまったことに気がつく。給仕長の仕事は他の人間に決まっていた。そして、皿洗いの仕事ならあると言われてお願いするが、紹介料を払わなければならず、銀行残高全て引き出し工面するのだった。

浮き雲のあらすじ【転】

イロナはようやく仕事が見つかるが、そこは小さなスナックでまともな厨房もなく、従業員も自分一人だった。惨めな気持ちになったイロナはラウリに慰められ、涙ながらに自分がいい店に変えると呟く。

イロナは注文が入るとまるでコックがいるかのように厨房に声をかけ、一人でフロアと厨房を行き来した。店も綺麗に掃除し、一生懸命働いた。

だが、そんな日々もたった6週間しか続かなかった。店に税務署の監査が入り、経営者のフォルストロムが税金を払っていなかったことが発覚。彼は店を閉店することにし、イロナはまた仕事を失うのだった。

ラウリはイロナの未払いである給料を、フォルストロムが仲間とたむろする場所へ取り立てに行くが、激しく殴られ殺されそうになる。血だらけの状態で港に捨てられたラウリは、イロナに心配させないようにと、仕事が見つかりしばらく帰れないと嘘をついた。しかし、イロナは本当のことを何も知らず、勝手に家を留守にするラウリに腹を立てるのだった。

ラウリは安ホテルで傷が治るのを待った。そのホテル代も、生命保険を解約しなんとか支払った。履いていた靴もボロボロになり、ラウリはガムテープで補強し帰宅する。

ラウリは花を買い家に戻るが、そこにイロナはおらず、家具などが差し押さえになり運び出されているところだった。ソファーも買ったばかりのテレビも持って行かれてしまった。

イロナはラウリの妹のところにいた。二人は家に戻り、イロナは夫の敗れた靴を修理に持って行く。そこでは、あのクローク係のメラルティンが再就職していた。彼は靴の知識が全くないことを隠して働いていたのだった。

メラルティンはイロナに一緒にレストランをやらないかと話を持ちかける。彼は今の職場も靴の素人と分かれば即クビになることを知っていた。イロナはその計画に同意する。二人にとって、その計画は今残されている唯一の希望だった。

早速イロナは必要な資金の計算を始める。坪140マルカのところを40坪借り、従業員は8人。調度品は中古で見つける。あとは銀行が資金を貸してくれるかどうかが運命の分かれ道だった。しかし、担保もなく保証人もスピード修理の靴屋で働くメラルティンだけ。必死にお願いするも、銀行はお金を貸してはくれなかった。

浮き雲の結末・ラスト(ネタバレ)

イロナとラウリは最終手段で、車を売ったお金をギャンブルに注ぎ込む。だが、そのお金も全て負けてなくなってしまった。その後、ついに家も売りに出されることになる。

イロナはまた就職活動を始め、今度は美容院に面接を受けに行った。すると、偶然にも客として現れたスヨホルム夫人と再会する。

二人は募る話に花を咲かせた。スヨホルム夫人は店を売った後、退屈な日々を過ごしており、イロナに資金を出そうと申し出る。失敗すれば破産することになるが、スヨホルム夫人はきっと成功するとイロナを励まし、彼女の背中を押した。

そして、イロナは店の準備に取りかかった。店の内装も自分でできることはした。ラウリとメラルティンはその間にアルコール中毒で路上生活をしていたラユネンを更生施設に入れ、料理人として復帰させる。料理のメニューも決まり、店の名前は「レストラン・ワーク」に決まった。

オープンになり、イロナとラウリ、そして従業員たちは固唾を飲んで客を待つ。スヨホルム夫人も状況が気になり店にやってきた。しかし、その日は誰もやってこないのだった。ラユネンは落ち込むイロナに「明日はきっと」と励ました。

次の日、ようやく初めての客が現れる。そして、ランチ時になり、次々と人が集まりだしたのだった。イロナは賑わう店内を眺め、心からほっとした笑顔を浮かべた。さらに、ラウリが店の電話に出ると、それは30人もの予約の電話だった。

イロナは店の外に出て静かにタバコに火をつける。そこへラウリもやってきてイロナの肩を抱いた。二人は空を見上げ、浮き雲を見つめる。ようやく訪れた平穏は、彼らを晴れ晴れしい顔にしていた。

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