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映画『浮草物語』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『浮草物語』の概要:旅芸人の一座がある田舎町へとやってくる。座長である男は、その町にかつて関係のあった女と隠し子がいた。それに気づいた世話女房は、座員を使って隠し子を誘惑させる。小津安二郎監督のサイレント映画。

映画『浮草物語』の作品情報

浮草物語

製作年:1934年
上映時間:118分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:小津安二郎
キャスト:坂本武、飯田蝶子、三井秀男、八雲理恵子 etc

映画『浮草物語』の登場人物(キャスト)

喜八(坂本武)
旅芸人。一座の座長。おつねという女との間に信吉という隠し子がいる。それを知った世話女房のおたかに、許さないと非難される。旅芸人である自分の身分に自信がなく、信吉に真実を話せないでいる。
おつね(飯田蝶子)
シングルマザー。息子の信吉は、喜八との間に生まれた隠し子。喜八の意向で、信吉には真実を話していない。穏やかな性格で、おたかの嫉妬心にすら気を配る。
信吉(三井秀男)
おつねの息子。喜八が父親だと知らず、おじさんだと思って慕っている。おたかの策略でおときと恋に落ち、二人で生きていくことを決意する。真面目で勤勉。
おたか(八雲理恵子)
喜八の世話女房。おつねと信吉の存在に気づき、喜八を非難する。復讐のため、おときに信吉を誘惑させる。嫉妬深い女。
おとき(坪内美子)
喜八の劇団の女優。おたかに言われ、信吉を誘惑する。そのうち、本気で信吉を愛してしまう。

映画『浮草物語』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『浮草物語』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『浮草物語』のあらすじ【起】

ある田舎町に、市川喜八の一座が芝居に来ることになっている。駅でタバコを吸う男は、その一座を待っている。

汽車が到着すると、座長の喜八を先頭に一座の団員が続々と駅に降りてくる。駅で待っていた男は、久しぶりに再開する一座のメンバーを懐かしんでいる。

一座の座員は、芝居に向けて準備をしている。町の人達も、久しぶりの喜八の芝居を楽しみにしている。

喜八がある小料理屋を訪れる。そこにいたのはおつねという女で、おつねは喜八にお酒を酌み、再会を喜んでいる。最近は体も悪く、お灸ばかりだと喜八はおつねに話す。彼女はかつて喜八と男女の関係にあった。喜八との間には信吉という隠し子がおり、去年農学校を卒業して、今は補習科に通っているとおつねは言う。

信吉と一緒に釣りへと出かけた喜八。信吉は、喜八が本当の父親だということを知らない。今晩楽屋に行きたいという信吉に、書生は書生らしく勉学をしなさいと喜八は言う。喜八は、自分の商売をやくざ者の商売だと思うところがあり、自分が信吉の親だということに自信を持てないでいた。

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映画『浮草物語』のあらすじ【承】

喜八の一座の芝居が催される。座員は、芝居が始まる前に客を品定めして遊んでいる。満員御礼の中、芝居が始まる。お客達も満足そうに芝居を観劇する。

そんな中、外は雨が本降りになってきた。芝居小屋にも雨漏りし、お客はみんな帰ってしまう。一座にとって雨は不幸なもので、座員達は暇を持て余すかのように寝転びながら楽屋で雑談をする。

座員達は、喜八が呑気に毎晩のみに行っていることを非難する。そんな中、座員の一人が思わずおつねのことを口走ってしまう。そこにいた喜八の世話女房のおたかがその座員を問い詰める。

喜八は毎晩のようにおつねの家を訪れ、信吉と仲良く時間を過ごしていた。そこへ、おたかがおつねの小料理屋を訪れる。何も知らないおつねは、熱燗を準備する。するとおたかがおつねに、喜八がお世話になっていますと皮肉を述べる。

喜八がおたかの前に姿を表す。喜八は怒って、おたかに帰れと怒鳴る。おたかは信吉を見つけると、嫉妬心から信吉に対しても皮肉を言い出す。

映画『浮草物語』のあらすじ【転】

おつねの家を出たあと、おたかは、今まで数えきれないくらいの苦労を喜八のためにしてきたと嘆く。喜八は、恩のある人間にどこでいつ会おうが自由だと言い返す。絶対に許さないと言い張るおつねに、もう今日限りの縁だと言って喜八は去って行く。

おたかは、若い一座の女優であるおときに信吉を誘惑するよう頼む。嫌だと断るおときだったが、おたかはお金を渡し、無理やりに信吉を誘惑させるように仕向ける。

おたかは、下校途中の信吉に話し掛けて誘惑する。信吉はおときの誘いに乗ってしまい、その夜におときに会いに出掛ける。

川で洗濯をする座員達。喜八はそこにおときがいないことに気づく。座員達は、最近ちょくちょくおときがいなくなることに疑問を抱いていた。

おときは、信吉と何度も逢瀬を重ねていた。おときのことを本気で考え出した信吉は、母親に話をしようと思うと言い出す。おときも、いつの間にか信吉のことを好きになり始めていた。しかし、おときは信吉に、自分が騙そうとしていたことを正直に話す。信吉はそれでも、きっかけなんかは関係ないと言う。

映画『浮草物語』の結末・ラスト(ネタバレ)

喜八は、信吉とおときの逢瀬を発見する。喜八はおときを呼び出し、頬をひっぱたく。強く関係を問い詰める喜八。お金が欲しかったのかと非難する喜八に、おたかが誘惑しろと言ったのだと答える。それでも、今では信吉のことが本当に好きなのだとおときは言う。

喜八がおたかを呼び出す。皮肉を言うおたかに、喜八は殴りかかる。仲直りしておくれと言うおたかだったが、喜八はその場を去って行く。

再びおときを探しに向かう喜八。おつねの家に向かった喜八だったが、信吉はおつねと一緒に出ていったと言う。喜八は、大変なことになったと嘆く。

一方、雨で財政難に陥った劇団は解散することになる。苦渋の決断に喜八は肩を落としながら、座員と最後の晩酌をする。

おつねのもとを訪れた喜八。そこへ、信吉とおときが姿を現す。再びおときを殴る喜八。それを止めに入った信吉にも殴りかかる。止めに入ったおつねが信吉に、喜八が本当のお父さんだと真実を告げる。旅芸人なんかにならず、堅気に育って欲しいという思いから今まで他人のふりをしてきたのだと言うおつね。

おときをおつねのもとに預け、喜八は再び旅に出かける決意をする。喜八が駅に向かうと、そこにはおたかがいた。二人は一緒に旅に出る決意をする。

映画『浮草物語』の感想・評価・レビュー

この作品をリメイクした『浮草』を先に鑑賞してしまったため、かなり比較してしまいますが、役者が違うだけでこんなにも違うものになるのだと驚きました。
「無声映画」と聞くと、現代の映画を見なれている私は違和感を感じてしまい、それは「映画」なのかと疑いを持ってしまいますが、この作品を見て音声がなくてもしっかりと伝わるのだとびっくりしました。
役者という職業は手の届かない存在に思われがちですが、彼らも仕事をしている時以外は普通の同じ人間で、周りの人に支えられているのだと感じる作品でした。(女性 30代)


無声映画というもの自体、未経験でしたのでとても新鮮な作品に感じました。トーキー映画では表現しきれないような、心の機微を感じられるでしょう。殊に、涙を流すシーンはそのどれもが非常に美しく、切なさや悲しみが正確に伝わりました。活弁が大変聞き取りやすく、役によって見事に演じてくれるので話に入り込めます。しかも、ピアノ演奏が派手すぎず丁度よいです。当時の人々の生活とか、素朴な雰囲気がいかにも本当っぽくて昔にタイムトラベルできます。(女性 30代)

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