映画『運命は踊る』の概要:戦地に行った息子の訃報が届いたミハエルは混乱する。だが、しばらくするとその訃報は誤報だったと報告された。しかし、それを信じられないミハエルは息子の生死を確認すべく戦地から息子を連れ戻そうとする。
映画『運命は踊る』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:サミュエル・マオズ
キャスト:リオル・アシュケナージ、サラ・アドラー、ヨナタン・シレイ、シラ・ハース etc
映画『運命は踊る』の登場人物(キャスト)
- ミハエル・フェルトマン(リオール・アシュケナージー)
- 元軍人で建築家。息子のヨナタンが戦地で死亡したという報告を受けて困惑する。何事も成功させてきたため、自分の欲望や願望の通りに物事を動かしたい傲慢さも胸に秘めている。若い時はマリファナをよく吸っていたが、最近では控えている。
映画『運命は踊る』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『運命は踊る』のあらすじ【起】
ある朝、ミハエル・フェルトマンの家のドアを軍人たちが叩いた。彼らはミハエルの息子である兵士のヨナタンの訃報を告げに来たのだ。玄関で彼らを出迎えたミハエルの妻ダフナは、一目で状況を理解し失神した。軍人たちは気付け薬の注射を打ち、彼女を寝室へと運んだ。
息子の死を報告されたミハエルも放心状態となってしまう。軍人たちは一時間ごとに水を飲むように言って去って行った。呆然としながらも、ミハエルは母親にヨナタンの死を知らせに行ったが、痴呆症が進んだ母は冷静に返事をするばかりだった。
心配した身内が集まる中、軍に所属するラビは葬儀の手順を淡々と説明していく。ミハエルが息子の遺体と対面したいと言うと、心配いらないと返事をされた。その言葉に引っ掛かりを感じたミハエルは、ヨナタンの遺体など無いのではないかと考え始める。
そこへ息子の訃報を告げに来た軍人が再び現れ、ヨナタンの死は間違いだったとミハエルに告げた。亡くなったのは同姓同名の別の人物だという。だが、ミハエルはそれが信じられず、息子に今すぐ会わせろと喚き立て、軍人たちを無能呼ばわりして追い出してしまった。
ダフナが説得しても言うことを聞かず、ミハエルは軍にいる友人に電話してヨナタンを今すぐ呼び戻すように願い出た。
映画『運命は踊る』のあらすじ【承】
ヨナタンは境界地帯の検問の仕事をしていた。三人の兵士と共に通行人を取り調べ、危険が無いかをチェックする仕事だ。彼らは戦闘とは全く無縁で通行人は一般市民とラクダばかりだった。
退屈で同じような毎日が過ぎる中、ヨナタンは父のミハエルが昔に話してくれたことを絵にしてノートに描いていた。仲間たちはラジオを聞いたり、ゲームをしたりそれぞれの方法で時間を潰していた。彼らの住居は沼地に建てられたコンテナだったが、不安定な地盤のために日を追うごとに傾いていた。
ヨナタンたちのコードネームは“フォックストロット”と言ったが、ある時、その意味を仲間が教えてくれた。それはダンスのステップのことだった。前、前、右、ストップ、後、後、左、ストップというステップで構成された簡単なものなのだという。
昼夜を問わず検問を守り、食べる物も缶詰ばかりの生活を送る中で、彼らの中には自分たちが本当に戦争をしているのだろうかと疑問に思いだす者もいた。
映画『運命は踊る』のあらすじ【転】
ある雨の夜、一台の車が検問に近づいてきた。中には若い二組のカップルが乗っていた。IDを確認すると彼らに危険は無いと分かる。IDを返した時、助手席の女性がドアにスカートを挟んでいることに気がついた。仲間がそれを告げると、女性はドアを開けてスカートをしまったが、その時に空き缶を路上に落とした。それを見た仲間は空き缶を手りゅう弾と勘違いして叫んでしまう。叫び声を聞いたヨナタンは驚き、反射的に彼らを撃ち殺してしまった。
本部に連絡を入れると、すぐに対策が取られた。大きなブルドーザーが現れて穴を掘ると、ブルドーザーは撃ち殺されたカップルたちを車ごと穴に放り込み埋めてしまった。
数日後、上官がヨナタンたちの所へやってきた。上官は、これが戦争なのだ、死んだ若者たちには気の毒だが、全て無かったことにすると彼らに告げた。上官はヨナタンを見つけると、家に帰るために同行せよと言う。それはミハエルが電話したせいだったが上官は何もしならなかった。
ヨナタンは理解できないまま、車に乗せられた。車は荒野を走って行ったが道の真ん中にラクダがおり、それを避けようとした際に運転を誤って谷に落ちてしまった。そのことでヨナタンは本当に死亡してしまう。
映画『運命は踊る』の結末・ラスト(ネタバレ)
最初の訃報は誤報だったが、ミハエルが強引に連れ戻そうとしたことで本当にヨナタンは死んでしまった。そのせいで家族はバラバラになり、ミハエルはダフナと別居することになった。
ヨナタンの誕生日に久しぶりに顔を合わせた二人。二人にできた溝は埋まりそうもなかったが、ヨナタンの部屋で見つけたマリファナを吸ったことで悲しみを紛らわせる。彼らは若い頃からマリファナを吸うことがあり、そのことはヨナタンや娘も知っていた。
ミハエルは軍でも建築家としても成功していたが、心の奥では自分を恥じていることを家族は気がついていた。それをダフナに指摘されたミハエルは、静かにその理由を話し出した。彼が軍にいた頃、終戦で引き上げる際に後ろの車に道を譲った。その時、譲った車が地雷を踏んで爆発炎上。乗っていた車からは女性の悲鳴が聞こえていたが、あまりの出来事にミハエルは何もできずに女性の死を願ってしまったという。ヨナタンを授かった時、ミハエルはこれが救いだと思ったのだそうだ。
ミハエルがヨナタンと過ごした最後の時間は戦地に送り出すまでの車中だった。だが、彼は運転する息子のことよりもメールに気を取られていた。今になってミハエルはそれがどれだけ幸福な時間だったのかと後悔していることをダフナに告げた。そして、フォックストロットのダンスを披露する。同じところを回るそのダンスは、まるで自分の運命のようだと悲しそうに言うミハエルを、ダフナは優しく抱きしめた。
映画『運命は踊る』の感想・評価・レビュー
贅沢に時間を使い、静かに淡々と物語を進めていくことでメッセージがよく強調されている。真上から見下ろすようなカットが多いが、それは“運命”を操る神の視点が演出されたものだろう。心の動きを台詞よりも演技や演出で見せることに重点を置いているが、最近の台詞まみれの映画が好きという人は、少し退屈に感じてしまうかもしれない。だが、少ない台詞は日常感を生み出し、突如として運命が自分に降りかかる様をとてもよく描き出している。(MIHOシネマ編集部)
『運命は踊る』というタイトル。「運命」に翻弄されてしまった人達のストーリーを予想して鑑賞しようと思いましたが、DVDのパッケージにしっかり「戦地に向かった息子の訃報は誤報だった」って書いてあるんですよね。それを知ってから見るとなんだか勿体無い作品でした。
「訃報は誤報」が分かるのはかなりストーリーを引っ張ってから。そこまでの間、観客は「いや、でも誤報なんでしょ」という気持ちで見ているので本当に勿体無いんです。この展開を知らないまま見ていたらもっと面白かっただろうにと感じてしまいました。(女性 30代)
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