映画『バウンス ko GALS』の概要:90年代の女子高生たちに焦点を当て、その青春を赤裸々に描く。「コギャル」や「援助交際」など、明るみに出ない問題の実態を映しだす。監督は、のちに『ラスト サムライ』『駆込み女と駆出し男』で人気を博す原田眞人。
映画『バウンス ko GALS』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:青春
監督:原田眞人
キャスト:佐藤仁美、佐藤康恵、岡元夕紀子、役所広司 etc
映画『バウンス ko GALS』の登場人物(キャスト)
- ジョンコ(佐藤仁美)
- リーダー格のコギャル。体を売らずとも客から金を巻きあげるのが得意。その荒いやり口から、ヤクザの男・大島に目をつけられる。リサを助けるため、大島との約束を破る。
- ラクちゃん(佐藤康恵)
- コギャル。友人に客を紹介することで稼ぐ。リサを助けるため、絶縁していたジョンコに協力を依頼する。最後はジョンコと仲直りし、リサも含めた三人で強い絆を結ぶ。
- リサ(岡元夕紀子)
- ニューヨーク行きの飛行機に乗るため、渋谷に立ち寄った美少女。旅費を稼ぐために危ない仕事を引き受け、代償に貯金を失ってしまう。ジョンコとリサと共に、資金調達に奔走する。
- 大島(役所広司)
- ヤクザの男。援助交際をビジネスにするコギャルたちに、制裁を与えようとする。ジョンコと出会い、彼女の考え方に影響を受ける。
- サップ(村上淳)
- 渋谷のスカウトマン。リサに惚れ、執拗に追いかけ回す。彼女のピンチを度々救う。
- マル(矢沢心)
- コギャル。体を売って金を稼いでおり、中絶の経験が何度かある。オヤジ狩りに協力したところ、返り討ちにあって病院に搬送される。
- サキ(桃井かおり)
- ブルセラショップの店員。リサに仕事を紹介する。大島とも面識がある。
映画『バウンス ko GALS』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『バウンス ko GALS』のあらすじ【起】
白いルーズソックスに明るい茶髪、飾られた長い付け爪…90年代の女子高生の間では、「コギャル」ファッションが定着していた。「〜じゃん」「超〜」などの言葉が飛び交い、当たり前のように昨夜の援助交際の話をする。ラクちゃんは、今日も友人のマルに仕事を持ちかける。マルは三度も妊娠したことがあり、その度に中絶を繰り返していた。
その頃、リサは東京行きの新幹線に乗っていた。パスポートを握りしめ、ニューヨークへの旅路を思い描く。渋谷に降り立った美しい彼女に、スカウトマンのサップが目をつけた。彼の執拗な勧誘にも、リサは応じない。
マルが客として取った大島は、ヤクザの人間であった。そうとは知らずに大島に連れられ、マルはホテルに入る。大島は態度を一変させると、今日使った金の返済を彼女に迫る。素人の援助交際が慢性化したせいで、風俗ビジネスが滞ったことに怒りを感じていたのだ。マルは携帯電話と身分証を奪われてしまう。
旅費を稼ぐため、リサはブルセラショップを訪れる。店員のサキに促され、より高額な売り上げを手にするために、その場で脱いだ下着を売る。さらに、サキから怪しい撮影の仕事を紹介してもらう。
映画『バウンス ko GALS』のあらすじ【承】
ジョンコが友人たちとのおしゃべりに興じていたところ、大島に絞られたマルが泣きついてくる。マルの安い体の売り方を説教するも、彼女のために大島に会いにいくジョンコ。
サッポはリサの凜とした美貌に惹かれ、その後をつけていた。危ない仕事を引き受けてしまった彼女を心から案じ、引き留めようとするも、リサは聞く耳を持たない。
リサが向かった撮影場所には、ラクちゃんの姿もあった。着替えの撮影まで迫られ、リサが拒絶していると、突然ヤクザが部屋に乱入してくる。リサは貯金を奪われた挙句襲われかけるが、駆けつけたサッポに助けられ、ラクちゃんと共に逃げだす。はめられていたと知り、怒りを抑えきれない二人。
ジョンコは大島の経営するバーにやってくる。マルの代わりに、全額を返済すると告げる。体を売らずに金を稼ぐというジョンコに、大島は驚きを隠せない。ジョンコは金を受けとる自分たちではなく、金を出す大人たちが非常識であるのだと説く。身の危険を感じたら、スタンガンを使って身を守ることも話す。感心した大島は、マルの金と持ち物を返す代わりに、信頼関係を築こうと持ちかける。荒い商売はもうやめるようジョンコに約束させ、次はないと脅す。
映画『バウンス ko GALS』のあらすじ【転】
大事に貯めていた資金を奪われ、肩を落とすリサに、協力することを決めるラクちゃん。二人は意気投合し、一緒に客を探す。
ヤクザと対峙し、サッポは痣だらけで病院にいた。迎えに来たスカウトマンの仲間に、リサへの酔心ぶりを懇々と語る。
ラクちゃんは、絶縁していたジョンコに電話をかける。彼女の仕事の仕方が気に入らなかったが、リサのために協力してほしいと申し出る。事情を聞いたジョンコは、大島との約束を破ることを承知で引き受ける。
リサはラクちゃんに見送られ、ジョンコと共に仕事に向かう。ジョンコがスタンガンを使って金を強奪したり、男尊女卑の思想を展開する老人とリサが口論になったり、変質な性壁を押し付けられて必死で逃げだしたりと、様々な困難を乗り越えて二人は金を手にする。ラクちゃんも合流し、三人は成功を経て絆を深める。
だが、彼女たちの悪行は大島の耳に入る。彼の部下が、ジョンコを暴力で脅し、金を奪って三人を大島の元に連れていく。着いた先は病院だった。オヤジ狩りの報復に遭ったマルが意識不明で搬送されており、ラクちゃんは大きなショックを受ける。
映画『バウンス ko GALS』の結末・ラスト(ネタバレ)
裏切ったジョンコに厳しい言葉をかける大島だが、間違っているのは金を払った男たちであるとも話す。彼は、取りあげた半分の金をリサに返し、去ってゆく。
マルの悲劇に暗い顔の三人は、くだらない会話で笑顔を取り戻す。ジョンコとラクちゃんは、フライトを延長してもっと稼ごうとリサに提案する。しかし、今持っている航空券に思い入れがあるというリサ。けじめをつけるためにも、今あるなけなしの資金で飛び立つことを決める。
三人は、道中に「LISA」と印字された大量のポスターが貼ってあるのを見つける。それらを辿っていくと、リサが下着を売ったブルセラショップに行き着く。そこには包帯を巻いたサップの姿があった。彼は奪われたリサの金を取り戻し、彼女に届けに来たのだ。さらに、リサが売りに出していた制服の代金と選別を上乗せして、百万もの金を彼女に贈る。
三人は駅のホームにやってくる。リサは別れを告げ、電車に乗る。途端に、三人は涙目になって手を振り合う。発車する電車を、ジョンコとラクちゃんは泣きながら追いかける。リサは窓越しに、感謝の言葉を呟く。
映画『バウンス ko GALS』の感想・評価・レビュー
リサの真っ白な美しさに並んでも、コギャルたちは見劣りしない。若さを武器にし、恐怖の垣根を身軽に飛び越えてしまう彼女たちは無敵だった。時代の風潮を一身に背負ったその姿は、たくましくも儚く思える。
大島とマルのシーンは、役所広司とコギャルの異文化交流にしか見えず、奇妙に感じた。一方で、彼と桃井かおりのシーンは重厚で魅力的だ。コギャルたちの演じない演技と、役者らしい芝居をする大御所俳優の共演は、むしろ本作の見所である。(MIHOシネマ編集部)
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