映画『べロニカは死ぬことにした(2005)』の概要:平凡な生活を送るトワはある日、自殺未遂を起こす。目覚めると精神病院「サナトリウム」に入院させられていた。そして、後7日の命だと宣告される。生きる事に投げやりなトワが、入院患者達に触れ合う事で生きたいと思えるようになっていく。
映画『べロニカは死ぬことにした』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:堀江慶
キャスト:真木よう子、イ・ワン、風吹ジュン、中嶋朋子 etc
映画『べロニカは死ぬことにした』の登場人物(キャスト)
- トワ(真木よう子)
- 28歳。国立図書館で働き、彼氏がいる。満たされない生活から解放される為に自殺を図るが助かり、精神病院「サナトリウム」に入院させられる。
- クロード(イ・ワン)
- 「サナトリウム」の患者。トワの事が気になり見守る寡黙な男性。
- ショウコ(風吹ジュン)
- 「サナトリウム」の患者で常にサングラスをかけている。入院歴が長く、唯一外出が許されている。元弁護士。
- サチ(中嶋朋子)
- 「サナトリウム」の患者でトワのルームメイト。旦那と子供がいる。
- 婦長(荻野目慶子)
- 「サナトリウム」の看護婦長。
- トワの母・京子(多岐川裕美)
- トワの母。娘の事を愛しているが、自殺未遂を起こし彼女の心が分からないと嘆く。
- 紅子(淡路恵子)
- 「サナトリウム」の患者。いつも化粧をしており美しい老齢の女性。
- 院長(市村正親)
- 「サナトリウム」の陽気な院長。誰よりも患者達の事を思っており、優しく見守っている。
- 医師(田中哲司)
- 「サナトリウム」の生真面目な医師。
- 看護婦(片桐はいり)
- 「サナトリウム」の看護婦。神出鬼没。
映画『べロニカは死ぬことにした』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『べロニカは死ぬことにした』のあらすじ【起】
地味な服装で物静かな女性のトワは、図書館で働き、人ごみに紛れて歩き家に帰るという平凡な日常を送っていた。そして、夜は反対に真っ赤なドレスを着てお酒を飲んではしゃぐのだが、一人になると鬱々とした気持ちで落ち込んでいた。
トワは大量の薬を並べて一粒ずつ飲み込んでいく。そして、最後に大嫌いな自分自身へ手紙を書き薬の瓶に入れると、必死に握りしめて倒れそうになる体でバルコニーに出た。
トワは病室で目を覚ますが、眼鏡を付けていない事に気づき発狂する。看護婦達に取り押さえられる。
そこは古い洋館のような建物で、入院患者達が昨日運び込まれたトワの事を話していた。そして、ここは「安全な混乱がある場所だ」と誰かが言うと、口々にその言葉を真似し始めた。
院長は階段を上りながら医師や看護婦から患者達の様子を聞いていた。そして、医師を伴いトワの部屋を訪れる。
トワは問診には答えず、この病院について問う。自分は死ぬ事にしたんだと詰め寄るが、院長は自身が選んだ結末を知るべきだと言う。薬を飲んだことで心臓の一部が壊死し、後7日の命だと聞かされる。トワは涙を溜めながらその話を聞く。
映画『べロニカは死ぬことにした』のあらすじ【承】
夜、ベッドから起きたトワは建物から出ようとするが、突如現れた看護婦に捕まる。仕方なく戻りホールにあった椅子に座っていると、二階から男性が見ているのに気づく。男性が去っていく様子を眺めていると、後ろに突然サチが現れ驚かされる。そして、狂っているとはどういう事か教えてあげると言われるが、トワは自殺に失敗しただけだと突っぱねる。
朝食が用意されるがトワは口をつける事はなく、話しかけられても鬱々とした気持ちが取れず邪険にした。その様子を昨日の男性が眺めていた。
日光浴の時間になり、サチが楽しげにトワに話しかける。鬱陶しがるが睡眠薬が手に入る方法があると聞き話を聞く事にする。それは、外出が許されているショウコに頼めば良いと言うものだった。
トワは物語の読み聞かせを聞いていたショウコに声を掛けようとするが、患者の一人がトワに大声で話しかけた為に注目を浴びてしまい、慌ててその場を立ち去る。だが、いつまでも騒ぐ患者に苛立ち、トワは戻ってビンタをしてしまう。すると、それを見た別の患者が興奮しトワに襲いかかろうとするが、寸での所でクロードに助けられる。
トワは逃げるように部屋に戻ると、サチが自慰をしている場面に遭遇する。驚くトワにサチは構う様子もなく、平然としてトワに話しかけるのだが、構われることが煩わしいトワは拒み、叫んで部屋を出て行く。すると、心配そうにトワを見るクロードに会ってしまう。トワはその眼を嫌がり、泣き叫んで逃げ出す。
映画『べロニカは死ぬことにした』のあらすじ【転】
トワは院長を訪ね、後寿命は何日なのか聞く。だが、院長はそれには答えず、楽しかったことを思い出して好きな事をすればいいと言う。その言葉にトワは泣きそうになってしまう。図書館で働き彼氏もいたが、いつも満たされない生活を送っていた。
トワはショウコに伴い、トラックの荷台に乗って外出する。拙くありがとうと言うトワに対し、寒くないかと優しく肩を抱いてくれるショウコ。
薬を買うと、ショウコはトワを伴い夫との思い出の古い映画館を訪れる。そこはショウコがパニック発作を起こした場所だった。普通に暮らしていると思ったショウコもまた、苦しみながら生活をしていたのだ。話を聞き、発作によって仕事を失ってしまった理不尽さにトワは怒りを覚え、彼女の話す姿を最後まで優しく見守る。
トワはサナトリウムに戻り、薬を出して飲もうとするが途中で止めてしまう。そして、医師がサチを探す声を聞き、慌てて部屋を出てついて行く。すると、サチが椅子からぐったり倒れる場面を見て恐怖を抱く。
紅子は患者達と自殺をしたことがあるか明るく話し合う。
サチは明るくトワの前に現れ、自身の入院した経緯を話す。サチは過去に好きになった人がいたが捨てられ失踪してしまい、別の男性と何人も付き合うようになる。そして、最後の男性と結婚し子供も2人いたが、最初の男性を忘れられずにいた。そして、引き籠るようになり入院するのだが、子供に会えない辛さは募っていった。トワはその話を辛そうに聞いていた。そして、トワは自分自身には何もない事を悲しみサチを羨ましく感じた。
婦長が現れトワに優しく話しかける。彼女の手にはリストカットした跡がありトワは驚く。
トワの元に母、京子が訪ねてくる。だが、トワは嫌がり叫んで逃げてしまう。それをクロードは心配そうに見守る。
院長室で娘が自殺未遂した事を知った京子は信じられずにいた。そして、会う事を拒む娘に京子は深い悲しみに襲われる。
映画『べロニカは死ぬことにした』の結末・ラスト(ネタバレ)
夜、トワの元にクロードが訪れる。静かな空間でトワは思いの丈を叫ぶ。京子の期待に応えられない事を苦しみ、自分自身を嫌っていた。狂ったように泣き叫ぶ姿をクロードは抱きしめ、大声で助けを求める。
トワは看護婦と婦長に手当されながら、クロードについて話を聞く。クロードの家族は政治家の一族で、彼自身も英才教育を受けていたが、彼は本当は画家になりたかった。周りに反対され、理解されず、クロードの心は壊れてしまい入院することになったのだ。婦長達はクロードの声を聞いたことがなく、大声でトワの為に助けを求めた事を嬉しそうに笑いあった。
院長室で院長がトワに優しく話しかける。石だって成長するのだと言い、綺麗な水晶を見せる。どんなものでも毎日が同じと言う事は無いのだと言われ、トワは残りの命を悲しみ後悔する。
トワはクロードにピアノを教える。その姿をサナトリウムの皆が優しく見守っていた。そして、みんなで楽しいパーティーを開く。
トワは院長室を訪ね、後どれくらいの命なのか聞く。トワは最後の時間を精一杯生きようとしていた。トワに残された時間は後24時間以内だった。朝日をもう見ることが出来ない事実に静かに涙を流す。
トワはクロードに絵を見せてもらう。そして、最後に死ぬ場所を決める為、トワはクロードを伴い外へと飛び出す。
その日、ショウコも皆に見守られながら退院して行った。サングラスを外しその光景を焼き付けた。
医師は院長が嘘をつきトワに残り命が少ないと言ったと思っており、生きる事を焚き付けた見事な手腕を褒めるが、それを聞く院長の顔は厳しいままだった。
トワ達は喫茶店に行き、浜辺を走り、最後の時間を楽しむ。夜になり二人は浜辺で触れ合いながら会話をし、いつかトワの絵を描くことをクロードと約束する。
海に潜ったトワの胸元から薬の瓶が流れ落ちる。海面に上がると朝日が出ており、彼女はもう一度生きる事を決める。トワは明るくなった浜辺を、優しい微笑みを浮かべて一人で歩いて行った。
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