この記事では、映画『罠(2015)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『罠(2015)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『罠』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、フィルムノワール
監督:クォン・ヒョンジン
キャスト:マ・ドンソク、チョ・ハンソン、キム・ミンギョン etc
映画『罠』の登場人物(キャスト)
- パク・ソンチョル(マ・ドンソク)
- 山奥の質素な食堂を営む謎の男。自分で食材を狩り、来客をもてなすことを生きがいにしている。共に暮らすミンヒには高圧的な態度をとる一面も持ち合わせる。
- クォン・ジュンシク(チョ・ハンソン)
- 流産を目の当たりにしたこと機に、妻と深い関係を築けなくなってしまった男性。子供は欲しいが、フラッシュバックする記憶がトラウマとなってしまっている。
- リー・ソヨン(キム・ミンギョン)
- 夫の愛情は感じているものの、子作りができないことに不安を抱いていた。ネットで見つけたサンマル食堂に期待し、旅行を計画するも命の危機にさらされてしまう。
- キム・ミンヒ(アン・ジー)
- ソンチョルの下で食堂を手伝っている女性。奴隷のように扱われているが、喋ることができず特に抵抗もしない不思議な存在。
映画『罠』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『罠』のあらすじ【起】
ソウルに住む一組の夫婦。2年前に妻が流産して以来、夫婦の関係はギクシャクとしていた。夫のジュンシクが流産のショックから立ち直れず、愛情があっても妻・ソヨンを抱けずにいたのだ。子供が欲しいと思いつつも行動に移せない二人。ソヨンはジュンシクの帰りを待ちながら、とある離島にあるサンマル食堂についての記事を見つけた。その食堂はどんな機能不全も治せるという。早速、ジュンシクを旅行に誘い出したソヨン。もちろん目的はサンマル食堂である。
フェリーで離島へ向かうも想像とは違う景色に、少し後悔し始めるソヨン。森の中は圏外で舗装もされていない道を越えようやくたどり着いた食堂。しかし他の客はおらず、目的の見えない場所に不安を隠しきれないジュンシク。この店を切り盛りしているのは一組の夫婦だった。ずけずけとプライベートなことまでも聞いてくる店主のパク・ソンチョルと妻・ミンヒ。話すことができないミンヒは、ソンチョルに言われるがまま従うのだった。その様子に尻込みしたソヨンは帰ろうと提案するも、ソンチョルの強引さに負け名物の水炊きだけ食べてみることに。味は抜群に美味しいが、一緒に出された酒にはムカデが入っているなど見慣れない料理も多かった。徐々に上機嫌になっていくジュンシクと不安が大きくなるソヨン。気分転換に散歩に出るが、再度ソンチョルに見つかってしまい夕食も食べることになってしまった。
美味しい酒を振る舞われより上機嫌になっていくジュンシク。二人には子供がいないことを知ったソンチョルは次々と精のつく物を振る舞うのである。さらには、ミニスカートから綺麗な脚をちらつかせるミンヒに接待をさせるソンチョル。お酒が進む中で、ミンヒが喋ることができないのは、親代わりに育てた自分を捨ててミンヒが離島を出ようとした罰で舌を切ったというのだ。ジョークにしても笑えないソンチョルの異様な空気に怖気づいてしまったソヨン。帰ろうとするが、森の中夜道を走るのは危険だとソンチョルに止められ、一泊することになってしまった。
映画『罠』のあらすじ【承】
酔っぱらったジュンシクをよそに、全く飲まないソヨンに対して執拗に酒を勧めるソンチョル。露骨に嫌悪感を示してしまうソヨンだったが、一人になった隙を見て「俺に話があるんだろう」と声をかけてきたことで確認になっていった。その夜、数年ぶりにジュンシクがソンチョルを求めてきた。きっと大丈夫だと思った矢先、やはり流産したときのことがよぎり、ジュンシクはダメになってしまうのである。
翌朝、ジュンシクが居ないことに気付き焦るソヨン。ジュンシクは気楽にもソンチョルと狩りに出ていた。すぐにでもこの店を離れたいソヨンだったが、車が故障しておりもう一泊することになってしまう。このころから見え始めるソンチョルの思惑。客はもてなすべきだと言い、ミンヒは他人に差し出しても恥ずかしくない容姿だからと笑うのである。ようやく違和感を覚え始めたジュンシク。狩りの最中にも、機能不全には他の女性と試してみるのが一番だと言っていたのを思い出していた。
招かれるまま最後の宴を乗り切ろうとするソヨンとジュンシク。その夜、大人しく寝て朝を迎えようとするジュンシクの元に、ソンチョルは何度も声をかけてくるのである。しつこいと感じながらもはぐらかしていたジュンシクだったが、一人タバコを吸いに外に出た際に、ソンチョルに見つかってしまう。強引に夫婦の部屋へ連れ込まれたジュンシク。ソンチョルはミンヒに誘惑させ、二人はまんまと一線を越えてしまう。その時、ソヨンの元にはソンチョルが来ていた。自分の前では見せない夫の姿を見せつけに来たのである。ショックを隠し切れないソヨンに襲い掛かるソンチョル。「大声を出せば面白いことになるだけだ」と脅し、大雨の音の中鳴き声を殺すソヨンをレイプするのだった。
映画『罠』のあらすじ【転】
何事もなかったかのように晴れ渡った翌朝。車の修理のため、港へ向かったソンチョルとジュンシク。しかし、修理工などいなかった。さらに、港に居た老人がソンチョルを見て「疫病神」と罵るのである。ソンチョルの話では、幼いころから父親から暴力を振るわれていたソンチョルは、耐えかねて家に火をつけたというのだ。小さな港町でその噂を聞いた老人が勝手に解釈しているという。帰り道、森の罠を見るのを付き合ってほしいというソンチョル。何の疑いもないジュンシクは言われるがまま手伝うが、ソンチョルの思惑にはまり罠にはまって谷底へ落ちていってしまった。その様子を見届けたソンチョルは一人で食堂へ帰ったのである。
不安な中、ジュンシクの帰りを待つソヨン。幸か不幸か、次の客が来たのである。その矢先に戻ったソンチョル。しかしジュンシクの姿はない。さらにソンチョルは店を手伝えと命令をしてくるのである。反抗的な目をするソヨンに対して、暴力でひれ伏せさせ部屋へ閉じ込めたソンチョル。ソヨンの予感は当たり、次の客にも同じように“もてなし”は始まった。
酒を飲ませ、ミンヒに夫を誘惑させ自分は妻を抱くというのがソンチョルの思惑である。しかし、次にソンチョルのターゲットとなった妻はひどく抵抗し、大声を上げた。助けに入った夫はソンチョルに殴り殺されてしまう。その頃、崖下で意識を取り戻したジュンシク。ソヨンの無事を確認するため、怪我だらけの身体に鞭を打ち食堂へと向かっていた。
映画『罠』の結末・ラスト(ネタバレ)
ソヨンは息を殺しながら生きる策を探していた。しかし、客の夫婦は殺されてしまう。もう駄目だと思った時、ジュンシクが戻ってきたのである。あたかも心配していたフリをするソンチョル。まずは死体の処理をするソンチョルの隙を見て、二人は家から逃げ出すことに成功した。ソンチョルのトラックに乗り込むが、キーが無いことに気付きジュンシクは身を挺して家へ戻る。何とかトラックのカギを手に戻り発進させたジュンシク。しかし慣れないトラックの運転に、ジュンシクはハンドル操作を誤りソンチョルに追いつかれてしまった。
目を覚ますと、二人は倉庫に縛り付けられていた。泣きながら、ジュンシクと元に戻りたかったと謝罪するソヨン。泣きじゃくるソヨンの声に苛立ちながら倉庫にやってきたソンチョル。まずはジュンシクの命を奪おうとナイフを向けた矢先、ソウル市内で行方不明の夫婦を捜索しに警察が訪ねてきた。ソンチョルは上手く誤魔化したように見えたが、一人の警察が血痕に気づき倉庫を覗いてしまう。ソンチョルは躊躇なくその警察をナイフで殺し、もう一人の刑事も鉈で殴り殺してしまった。あまりに残酷な現実に耐え兼ねたミンヒは、隙を見て二人を逃がした。森の中を逃げ彷徨う二人。しかし森を知り尽くすソンチョルはすぐに追いついてしまう。動物用の罠を使ってソンチョルをはめようとしたソヨンだったが、目線でバレてしまい、ソンチョルの怒りのボルテージは最高潮に達する。その時、追いかけてきたミンヒが気を引くために猟銃を空撃ちした。隙を見て罠から抜いた釘をソンチョルに刺したソヨン。ソンチョルがソヨンに襲いかかろうとしたところを助けに入ったジュンシクは一緒に崖を転がっていく。その最中にソンチョルは自分の心臓を刺してしまい、息を引き取った。生きながらえたジュンシクとソヨン。ミンヒはソンチョルの遺体を抱きしめ、声を絞り出しながら泣き続けるのであった。
映画『罠』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
Deepではないものの、「罠」が「罠」を呼び合う展開であった。韓国映画のド定番と言っても過言ではない「マ・ドンソク」の主演作。見たことのない彼の姿があった。だが、代表作とは言い難い一作かもしれない。妻の後ろめたさをエサに女を自分の支配下に置きたがるという、ヒールではなくサイコな男を演じ切っているのはさすがだ。韓国作品独特の仄暗さは健在。実に黒い雨が似合うのは共通する。殺害方法がなんとも短絡的で、艶めかしいラブシーンのギャップが好きな人には刺さるのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)
冒頭の空気感から不穏さが漂っていて、少しずつ狂気が増していく展開にどんどん引き込まれました。山奥の民宿という閉鎖空間と、異常なまでに親切な店主のギャップが恐怖を煽ります。特に妻が精神的に追い詰められていく過程はリアルで息苦しく、夫婦の関係性も揺らいでいく描写が見事でした。ラストの反撃シーンは思わず声が出そうになるほどスリリングでした。(20代 男性)
夫婦の再出発のはずが悪夢に変わる。そんな皮肉に満ちた設定にゾッとしました。キム・ミンギュの演じる主人公が最初からどこか頼りなく感じられたのが伏線だったと気づいた時には、もう手遅れ。妻が最後に見せる決意と反撃には思わず拍手を送りたくなりました。日常の延長に潜む異常をここまで巧みに描いた韓国サスペンス、恐るべし。(30代 女性)
最初はただの心理サスペンスかと思って観ていたら、徐々に恐怖のギアが上がっていき、気づけば身動きできずに画面に釘付け。民宿の主人が持つ“静かな狂気”が本当に不気味で、序盤の親切さが逆に怖くなっていきました。最後に妻が主導権を握る展開はカタルシスがあって、良質なスリラーとして満足度が高いです。(40代 男性)
密室劇としての完成度が高く、特に照明や音の使い方で不安を煽る演出が秀逸でした。女性の視点から見ると、夫婦の会話や態度にもゾクッとする違和感があり、「信じる」という行為がどれだけ危ういものかを痛感しました。最後は彼女自身の力で地獄から抜け出す姿が描かれていて、ただの被害者で終わらない強さを感じました。(50代 女性)
韓国映画らしい“緻密な人間心理の崩壊”が丁寧に描かれていました。夫が無意識に妻を支配している様子も不快ながらリアルで、精神的DVのような側面にも注目すべき作品だと思います。最初は何でもなさそうだった民宿が、次第に逃げ場のない場所へと変化していく描写にゾクゾクしました。静かに忍び寄る恐怖が好きな人にはおすすめです。(30代 男性)
終始、緊張感が張り詰めたまま進行していくので、最後まで息をつく暇がありませんでした。演出の緩急が絶妙で、特に夜のシーンは暗闇と静けさの中に突然現れる恐怖が印象的。ラストで明かされる夫の裏切りにはショックを受けましたが、それでも妻がすべてを乗り越えて生き延びる姿が強く心に残りました。(20代 女性)
ホラーのような恐怖ではなく、人間の心の奥に潜む「異常」に焦点を当てた作品。店主の行動も怖いけど、むしろ普通の人間が狂気に染まる過程の方がリアルでゾッとしました。夫婦の間にある溝が徐々に広がっていく様子も、セリフではなく空気感で表現されていて非常に秀逸。心理的スリラーの傑作だと思います。(40代 女性)
最初から不気味ではあるけど、決して突飛ではなく、だからこそ現実味があって怖い。誰にでも起こりうるようなシチュエーションで、少しのズレから破滅へと向かっていく流れがリアルでした。夫が徐々に無力化されていく様子も印象的で、最終的に妻があそこまで強くなるとは予想外。女性の強さがテーマの一つでもあると思います。(50代 男性)
旅先での恐怖という非常に身近なテーマが、ここまでスリリングに描かれているとは驚きました。親切すぎる人間の裏にある恐怖、信頼していた相手の裏切り、閉鎖された空間での圧倒的な無力感。どの要素もリアリティがあって、緊張が途切れる瞬間が一切なかったです。クライマックスの暴走劇は鳥肌モノでした。(30代 女性)
映画『罠』を見た人におすすめの映画5選
ミザリー(Misery)
この映画を一言で表すと?
狂気に満ちた“ファン”との密室地獄、逃げ場のない恐怖劇!
どんな話?
事故で負傷した作家が、熱狂的ファンの女性に助けられるが、その親切はやがて狂気へと変貌していく。逃げ場のない部屋の中で、自由と命をかけた攻防が始まる。スティーヴン・キング原作の心理スリラーの名作。
ここがおすすめ!
『罠』と同じく閉鎖空間で展開されるスリリングな構成が魅力。誰も助けに来ない、逃げられないという絶望感が共通しています。キャシー・ベイツの怪演は必見で、じわじわと精神を削る恐怖がクセになる一本です。
ゲット・アウト(Get Out)
この映画を一言で表すと?
“違和感”が恐怖へと変わる、人種と洗脳を描いた社会派ホラー!
どんな話?
黒人青年が恋人の実家を訪れたことをきっかけに、奇妙な言動や状況に直面。穏やかな空気が次第に狂気に変わり、やがて恐ろしい陰謀が明らかに。人種問題をベースにした斬新なスリラー作品。
ここがおすすめ!
『罠』と同様、最初は普通に見える関係が、徐々に不気味さを増していく展開が秀逸。観客の予想を裏切る展開が続き、視覚的・心理的な驚きの連続です。社会的テーマをエンタメに昇華した傑作スリラーです。
ヴィジット(The Visit)
この映画を一言で表すと?
普通の祖父母が“何かおかしい”…予測不能のファウンド・ホラー!
どんな話?
田舎に住む祖父母の家を訪ねた兄妹。最初は楽しい滞在のはずが、祖父母の奇怪な行動が徐々にエスカレート。ビデオカメラを通じて映し出される真実が、次第に恐怖に変わっていく。
ここがおすすめ!
『罠』のような「親切な他人の裏にある狂気」がテーマ。ファウンド・フッテージ形式による臨場感と、静かな日常が壊れていく恐怖が共通点です。意外性と不気味さがクセになる良質なホラーです。
ファニーゲーム(Funny Games U.S.)
この映画を一言で表すと?
暴力がルールになる世界…観る者の良心を試す問題作。
どんな話?
休暇に訪れた家族が、見知らぬ青年2人に理不尽な暴力ゲームを仕掛けられる。助けを呼べない環境の中、ゲーム感覚で進む暴力に家族は追い詰められていく。ハネケ監督の倫理的スリラー。
ここがおすすめ!
『罠』が描いた「閉鎖空間での狂気」と通じる内容で、より残酷で哲学的。観客に対しても不快感を与える構造が話題となり、考察好きにはたまらない作品です。倫理観を揺さぶる問題作です。
鍵泥棒のメソッド
この映画を一言で表すと?
他人になりすました瞬間、人生がトラップに変わる!?
どんな話?
売れない俳優が偶然出会った記憶喪失の男と人生を入れ替えるが、その男はプロの殺し屋だった…!意図せぬ“人生交換”から始まるサスペンスとコメディが交錯する異色エンタメ。
ここがおすすめ!
ジャンルは違えど、「正体不明の他者の恐怖」や「普通の人が追い詰められていく構造」は『罠』に通じます。コメディ要素もありながら、予測不能な展開がクセになります。日本映画の中でも非常に完成度が高い一作です。
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