映画『屋根裏の散歩者(2016)』の概要:歯科医の遠藤幸男が暮らすアパートに、浮気相手の大内照子が引っ越してきた。しかも、大内は遠藤が婚約者といるときに接触してきた。怒った遠藤は、大内を乱暴に抱いた。そんな住民の様子を、郷田は屋根裏の穴から覗いていた。
映画『屋根裏の散歩者』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:窪田将治
キャスト:木嶋のりこ、間宮夕貴、河合龍之介、草野康太 etc
映画『屋根裏の散歩者』の登場人物(キャスト)
- 遠藤幸男(淵上泰史)
- 歯科医。かつて女性と心中をしようとしたことがある。普通の性交では満足できず、大内に暴力を振るいながら関係を持っている。
- 大内照子(木嶋のりこ)
- 美術学校の学生。寡黙な女性。遠藤の浮気相手。
- 黒木直子(間宮夕貴)
- 遠藤の婚約者。病院の令嬢。遠藤のことを心から愛している。
- 郷田三郎(河合龍之介)
- 遠藤と同じアパートに暮らしている。他の住民から変人と噂されている。家賃の支払いが滞っている。
- 明智小五郎(草野康太)
- 名探偵。遠藤の自殺に疑問を抱き、調査を開始する。妻の文代が助手を務めている。
映画『屋根裏の散歩者』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『屋根裏の散歩者』のあらすじ【起】
遠藤が酔っ払いながら家に帰ると、同じアパートに暮らす郷田三郎が小さな刃物を研いでいた。遠藤は陰気臭い郷田をからかい、女性と遊ぶことを勧めた。すると、苛立った郷田が、刃物を向けてきた。遠藤は郷田が持っている刃物では人が殺せないことを指摘し、殺すならモルヒネがお勧めだと伝えた。しかし、歯科医の自分ならいざ知らず、郷田にモルヒネが手に入るとは思っていなかった。
美術学校の学生である大内照子が、遠藤のアパートに引っ越してきた。遠藤と大内が顔を見合わせて驚いているのを見て、大家は2人が知り合いなのか尋ねた。遠藤は困惑した表情のまま、自分の患者であることを告げた。部屋からそんな2人の様子を見た郷田は大内に興味を持ち、屋根裏から大内の部屋を眺めた。実は、大内は遠藤と体の関係があった。
遠藤が婚約者の黒木直子とカフェで会っていると、大内が現れる。遠藤は戸惑う黒木に、大内が患者だと紹介した。黒木の家に帰ってベッドを共にするが、最後まですることができなかった。遠藤は困惑する黒木を抱き締めた。
遠藤は自宅に帰ると、自分と婚約者の前に現れた大内に怒りをぶつけた。そして、乱暴に体を繋げた。その様子を、郷田は屋根裏から覗いていた。郷田は外に飛び出し、看板に頭を打ちつけながら気分を落ち着かせた。明智小五郎はそんな郷田に気づき、声を掛けた。一度古書店で会ったことがあったのだ。だが、郷田は何もしゃべらないまま、その場を立ち去った。家に帰った小五郎は、妻の文代から黒木の調査依頼の件を報告される。調査内容は、遠藤の浮気だった。文代は遠藤の不貞の証拠を写真に収めていた。
映画『屋根裏の散歩者』のあらすじ【承】
文代は黒木に調査結果が入った封筒を渡し、遠藤が不貞を働いていることを伝えた。詳しく説明しようとするが、黒木はそれを拒み調査料を支払って立ち去った。黒木は遠藤に会い、他に女性がいる事実を突きつけた。だが、遠藤は誤魔化し、黒木に愛を囁いた。黒木はそれが悔しくて、涙を流して悲しんだ。
郷田は酒を持って遠藤の部屋を訪ねた。遠藤は酒に酔いながら、学生の頃女性と心中をしようとしたことを打ち明けた。使おうとしていたのは、モルヒネだった。モルヒネは少量で死ぬことができ、他の薬物と違い苦しむことがなかった。だが、死ぬ前にした性交が忘れられず、心中を止めたのだ。しかも、それ以来、遠藤は普通の性交では満足できなくなっていた。遠藤は今でもモルヒネを持っており、郷田に自慢げに見せた。
遠藤は大内に暴力を振るい、乱暴に体を繋げることを止めなかった。郷田は大内を救いたい一心で、モルヒネを使って遠藤を殺すことにした。屋根裏に行き、そこに空いている穴から就寝中の遠藤の口にモルヒネを入れようとした。だが、その日は穴の真下に遠藤の口がなかったため、モルヒネを入れることができなかった。
映画『屋根裏の散歩者』のあらすじ【転】
黒木は調査結果を確認し、大内が遠藤の浮気相手だと知る。カフェに呼び出し、遠藤と手を切るよう伝えた。すると、大内は化粧を落とし、遠藤に殴られた跡であることを話した。大内は黒木に助けを求めた。黒木は大内の話が信じられず、困惑した気持ちのままカフェを飛び出した。
黒木は遠藤に会いに行き、大内との関係を尋ねた。だが、遠藤は大内との関係を誤魔化した。黒木は遠藤に調査結果を渡した。遠藤はそれでもなお誤魔化し、大内に付き纏われ、嵌められたのだと話した。黒木は信じる代わりに、最後まで抱いて欲しいと遠藤に頼んだ。遠藤は黒木と体を繋げるが、その脳裏には大内の姿があった。遠藤は思わず黒木を殴ってしまう。
遠藤が服毒自殺で亡くなった。小五郎はそのことを新聞で知り、遠藤が泊まっているアパートに向かうことにした。アパートにいた郷田に話を聞こうとするが、あまり親しくなかったので知らないと言われる。郷田は部屋に帰る間際、他殺の疑いは持たないかと意味深な言葉を小五郎に残した。
小五郎は大家に頼み、遠藤の部屋を見せてもらうことにした。部屋の棚にはホルマリンなどの薬品が入っていた。天井を見上げていると、他の住人がドアが開いているのを不審に思って入ってきた。小五郎はその住人に自己紹介をした。すると、その住人の男性は、遠藤が年内に結婚するつもりだと話していたことを明かした。事件当夜、遠藤が落ち込んだ様子で帰ってきたため、婚約破棄されたことで自殺したのではないかと、住民達の間では噂になっていた。だが、遺体が発見された朝も目覚ましが鳴っていたことを知り、小五郎は違和感を抱く。自殺する人が、目覚まし時計の針を巻くとは思えなかったのだ。
映画『屋根裏の散歩者』の結末・ラスト(ネタバレ)
小五郎と文代は、遠藤の事件を担当した浪越警部に、遠藤の浮気調査を行っていたことを話した。小五郎は浪越警部に、現場の写真を見せてもらった。遺書は見つかっていなかったが、ドアも窓も鍵が掛かっていた。さらに、居住者全員にアリバイがあった。だが、写真を見ていた小五郎は、モルヒネの瓶と蓋が離れて落ちていたこと、遠藤は几帳面なはずなのにモルヒネの瓶が灰皿の上に倒れていたことに疑問を抱く。
文代は黒木の家に行くが、直子は寝込んでいて出てこられない様子だった。代わりに、直子の父から話を聞くことになった。事件当夜、直子は父と食事をしていた。しかし、父は遠藤が浮気をしていたことは知らない様子だった。そこに、直子本人が現れ、あなたのせいだと泣きながら文代のことを責めた。
大内は引っ越しすることを決める。郷田はどこに引っ越すのか問い詰めるが、大内はそれに答えず立ち去った。郷田は肩を落としながら帰宅した。すると、小五郎が押入れから出てきた。小五郎は郷田が屋根裏を散歩していることに気づいていた。遠藤の部屋の真上に郷田の衣服のボタンが落ちていたと偽装し、遠藤殺しの犯行を白状させようとした。
郷田はそれでも遠藤殺しを認めなかった。そこで、事件当夜、大内とカフェに行っていたというアリバイを崩すことにした。カフェの店員は大内しか見ていないと言っていたため、大内本人に確認することにした。だが、大内は留守だった。すると、郷田は何も言わずアパートを飛び出した。
小五郎は大内を文代に尾行させていた。郷田が大内に会いに行けば、犯人であることは決定的であった。だが、大内の元に現れたのは、黒木だった。そこに、小五郎から頼まれて黒木を尾行していた浪越警部が現れる。黒木は大内が犯人だと思っており、責めていた。だが、大内は肩を揺らして笑った。大内は黒木に遠藤を渡さないために、郷田の気持ちを利用して犯行に及んだのだ。勝ち誇った表情で、遠藤が永遠に自分のものであることを話した。怒った黒木は、大内の手をナイフで突き刺した。そのまま殺そうとするが、浪越警部が身を挺して庇った。文代は黒木を止めようとするが、大内が自ら黒木に近寄って殺されることを望んだ。黒木は大内をめった刺した。大内は微笑みながら亡くなった。
黒木も郷田も警察に連行されるが、何も話そうとはしなかった。郷田は証拠不十分で釈放された。その後、郷田は酒を大量に飲み、橋から飛び降りた。
映画『屋根裏の散歩者』の感想・評価・レビュー
三角関係が引き起こした悲しい殺人事件なのだが、犯人の大内照子がとにかく不気味で気味が悪かった。初めは遠藤幸男に弄ばれている可哀想な女性という印象しかなかったのだが、遠藤を婚約者に渡さないために殺害するという恐ろしい二面性を持った女性だった。しかも、自分に好意を持っていた男性を殺害に利用したところが、大内の気味の悪い印象を決定づけた。「女性は恐ろしい」という言葉を、まさに映像で表した作品だと思う。
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