映画『予告犯』の概要:生田斗真主演のクライム・サスペンス。原作は筒井哲也の同名漫画。シンブンシと名乗る予告犯が動画を使って犯罪予告をし実行する痛快な物語。共演は戸田恵梨香、鈴木亮平。「クイール」の中村義洋監督作品。
映画『予告犯』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:119分
- ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
- 監督:中村義洋
- キャスト:生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳 etc
映画『予告犯』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
映画『予告犯』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『予告犯』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『予告犯』 あらすじ【起・承】
”勘違いするんじゃない!オレは自分の為にやってるんじゃない!”。ある日、シンブンシと名乗る男が、ネット上に犯罪予告を送った。やがて、犯罪予告は実行され、ネット・ユーザーたちに支持されてゆく。
サイバー・テロを未然に防ぐために捜査を開始した、警視庁サイバー犯罪対策課。その若き班長・吉野恵里香(戸田恵梨香)は、給食費を払えない極貧生活から這い上がった経験を持つ。どんな理由があれ、犯罪を許さない姿勢を貫いていた。
第1の予告は、”食中毒事件を起こしたアジサン・フードの逆切れ会見!オレがきっちり、火を通してやる!”と宣言。予告どおりにアジサン・フードの工場で火災が発生した。
第2の予告は、”性犯罪について、「ほいほい着いてゆく女も悪い。自業自得だ。」という意見をネットに載せ炎上させた男”に対して、元気玉を注入すると宣言。男に下ったのは、監禁され辱められるという天罰だった。
第3の予告は、”アルバイト先の飲食店で、ゴキブリを揚げた店員”に対して、特製メニューを食べさせてやる!と宣言し、実際にゴキブリを揚げて食べさせたのだった。
しかし、ネットで炎上等させた彼らが反省する姿は見せない。インターネットカフェの近くで、警察の様子をうかがう青年。再び、第4の予告が配信された。それは、就職の面接に訪れた30代の男性に対してのツイッターでの侮辱だった。
賃貸マンションの空き部屋を捜索中のサイバー課の面々に対して、100KM圏内をくまなく探すよう指示する、班長。だが、予告犯は捕まらない。
映画『予告犯』 結末・ラスト(ネタバレ)
予告犯になる3年前。プログラマーとして働く派遣社員の奥田(生田斗真)は、すぐ切れる社長に社内いじめを受け、胃潰瘍になり会社を辞めざるを得なくなってしまう。
その後、職業安定所へ行くが休職期間が長いため就職先が決まらない。奥田と同じような境遇にいる者同士が、日雇い労働者として出会う。
奥田と行動を共にするようになったのは、音楽をやっていた関西人のカンサイ(鈴木亮平)、ニートの青年ノビタ(濱田岳)、小太りのメタボ(荒川良々)、そして日本人の父親を探しにきたフィリピン人のヒョロ(福山康平)。
奥田は、ITに強いのでゲイツと呼ばれるようになった。5人は産廃現場で働かされていたが、ある日、ヒョロが肝臓を悪くして死んでしまう。その際、ヒョロを埋めるよう指示した悪徳社長を5人で殺してしまう。
そして死のうとしたが、”オレたちにはまだやることがある!”というゲイツの声に賛同して予告犯として動き始めた。
ある時、予告ではなくネット上で主張した。”人間はプライドがなければ生きてゆくことができない・・。最も憎んでいるのは、プライドを奪おうとする奴らだ!理由もなく、侮辱する奴がいたらオレに言え!殺す!”と。
そんな予告犯に呼応するように模倣犯が現れ、逮捕されるという事件も起きた。予告犯に対して、匿名の書き込みを禁止するよう定める法律を制定しようと主張した設楽木議員(小日向文世)が現れた。
”明日の予告だ!衆議院議員設楽木正を24時間以内に抹殺してやる!”という犯罪予告を送った。飲料水レッドエナジーのPRイベント当日。会場に配られた飲料水を開けたとたん、泡が吹きだした。騒然となる中、設楽木は腰を抜かしてしまう。
結局、死亡者は出なかったが、公安部の北村(田中圭)は捜査が進展しないことにいら立つ。サイバー犯罪対策課は、特定したネットカフェ、ピットポットボウイへ向かった。そこで、シンブンシに似た男を発見し捕まえるが別人だった。
ゲイツは、ネットカフェの店員青山祐一(窪田正孝)に逃げるよう言われ、脱出した。
ところが、サイバー犯罪対策課の班長吉野に気づかれ、下水道まで追跡されてしまう。
”あんたみたいな人、絶対に認めない!”とゲイツに言い放つ、班長・吉野。ゲイツは、吉野に”頑張れるだけ、幸せだったんだよ”と言う。しかし、ネットカフェの店員青山は捕まり、聴取を受けるが、”あなたには分からない”と黙秘をした。
予告犯は最後の予告を送った。シンブンシと名乗る連中に制裁をすると言う。そして、はじめてネット上に彼らの顔をさらすのだった。誤って逮捕されたネットカフェ店員は釈放され、ようやく主犯格の奥田について調べ始めた班長吉野。
4人は青酸カリを飲み、自殺を図るがゲイツこと奥田だけが死んでしまう。事件を起こした本当の目的が明かされ、ヒョロの”父親に会いたい”という夢を班長・吉野恵里香は叶えようとするのだった。
映画『予告犯』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『予告犯』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ダーク・ヒーローの誕生!
サイバー・テロを題材に、若者の貧困や生き辛さを描いています。予告犯のビジュアルや知的なふるまいはいいのですが、予告内容がつまらない。映画で描くのなら、原子力発電所を止めるとかスケールの大きな事に挑戦して欲しかったと思います。
特に設楽木議員への殺人予告&実行がお粗末でした。飲料水を発砲させるなんて!小学生が思いつくようなことじゃないですか?ただ、2ちゃんねるやツイッターなどネット社会のアブナイ側面や派遣切りの実態は心に重く残っています。
ゲイツを演じた生田斗真の演技と台詞に共感する人は多いでしょう。例えば、”頑張れるだけ、幸せだったんだよ。”という言葉。思い出すと、また涙が出そうになってしまいます。
予告犯の真の狙いが分かった時も、”誰かのためなら人は動く”という信念を見せつけました。悪だけど善という描き方がいい。ゲイツをはじめとした予告犯たちの生い立ちや表情、夢などが観終わった後もじんわり効いてきます。
生田斗真~冷徹さと優しさをまとう
クライム・サスペンスの常連として、「予告犯」以外にも伊坂幸太郎原作の映画「グラスホッパー」(15)などに出演。舞台で培った演技力と柔らかな存在感に癒されます。
悪人になりきれない善人役を演じることが多いのですが、特に目の演技と台詞にやられてしまいます!ゲイツの横顔に注目して下さい。彼が孤独な表情を浮かべる時、なんだか泣きたくなります。
胸に沁みわたるような夕暮れの風景です。シーンごとの心象風景が浮かび上がってくるような繊細な演技が魅力。加えて、4人の仲間達との連帯感?友情というべき絆も良かった。
2016年、生田斗真の最新作は、大友啓史監督の「秘密 THETOPSECRET」で、8月6日公開予定です。ドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」で共演した岡田将生も出演する、清水玲子原作のSF映画。
更に2017年には、桐谷健太と恋人同士を演じる「彼らが本気で編むときは、」で新しい挑戦をしています。ご期待下さい。
映画『予告犯』 まとめ
生田斗真は、いつもなにかしら痛みを背負っているように見えます。青春ドラマで人気になった頃よりも、現在の方が愁いがかっているようだ。サイバー・テロの犯罪性よりも、そこへ向かう貧困や生き辛さが胸に迫ってきます。
ゲイツたちがしたことは犯罪だが、そのおかげで救われる人もいるだろう。ゲイツの”頑張れるだけ、幸せだったんだよ。”と”誰かのためなら人は動く”という言葉に共感します。
ただ、ゲイツたちを追う警視庁サイバー犯罪対策課の班長を演じる、戸田恵梨香の演技には失望した。台詞も1本調子だし、ラストまで無表情なのは面白くない。
この映画の原作は、筒井哲也の同名漫画。全3巻と聞くと短いように思えるが、毒性が強く、画力に圧倒されます。ぜひ、一読をお勧めします。
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