映画『春にして君を想う』の概要:アイスランド北部を舞台に老人の孤独や人生を見つめたロードムービー。人間の内面を自然の風景に落とし込む演出に注目。出演はギスリ・ハルドルソン。フリドリック・トール・フリドリクソン監督の1991年映画。
映画『春にして君を想う』 作品情報
- 製作年:1991年
- 上映時間:85分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ファンタジー、音楽
- 監督:フリドリック・トール・フリドリクソン
- キャスト:ギスリ・ハルドルソン、シグリドゥル・ハーガリン、ルーリク・ハラルドソン、ワルゲルドゥル・ダーン・ソウルラウクル etc
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映画『春にして君を想う』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
映画『春にして君を想う』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『春にして君を想う』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『春にして君を想う』 あらすじ【起・承】
アイスランド北部、荒涼とした大地と自然が広がっていた。その土地で農夫として働き、妻に先立たれた夫ソウルゲイル(ギスリ・ハルドルソン)。自らの老いを知り、愛犬を手にかけたソウルゲイルは大切な思い出の品を持って家を出た。
彼が向かったのは、レイキャビクにある娘夫婦の家だった。しかし、孫娘と上手くゆかず、ビョークの歌を大音量で聴くはめになるなどの嫌がらせを受けてしまう。家族と一緒に暮らせなくなり、次に老人ホームに入所させられた。
老人ホームでは、人間らしいサービスを受けられず不満が溜まるばかり。そんな時、ホームで幼馴染のステラ(シグリドゥル・ハーガリン)と再会した。ステラは、”死ぬまでに故郷に帰りたい!”と話す。
ソウルゲイルは同室の老人が亡くなったこともあり、老人ホームで一生を終えたくないと考えた。そこでステラと一緒に駆け落ちを決意した。銀行で全財産を下ろし、2人分のスニーカーを買った。そして車を盗み、2人は生まれ故郷を目指した。
映画『春にして君を想う』 結末・ラスト(ネタバレ)
ソウルゲイルは、ステラと共に生まれ故郷を目指していたが、その道中で車が故障してしまう。野宿をし、草むらに寝転ぶ2人を月が優しく照らしていた。やがて車を捨てて、2人はヒッチハイクをしながら進んだ。ある日、トラックに乗せてもらった運転手から、島に行くには海路(ボート)がいいと聞く。
そのトラックでは、不思議なことにラジオから讃美歌が流れていた。2人は教えてもらったとおり、ボートに乗って故郷の島に降り立った。2人を見守るようにセイレーンが微笑んでいた。島は無人島になっており、小さな小屋と丘の上に教会が建っているだけだった。
2人は小屋に泊まり、暖炉の火を見つめた。すると、ステラの胸に遠い思い出が溢れるのだった。翌朝、起きてみるとステラの姿がなかった。ソウルゲイルは、島の海岸で倒れているステラを発見したが、彼女は既に亡くなっていた。
ソウルゲイルは、ステラのために心を込めて棺桶を作り、丘にある教会まで運んだ。悲しみの中、彼は島中を歩いた。ようやく、2人を探す捜索隊が島に上陸した。
やがて、ソウルゲイルは島の廃工場を見つけた。そこで、映画「ベルリン天使の詩」に出てきた天使(ブルーノ・ガンツ)が現れて、彼に触れた。すると、捜索隊が見守る中、ソウルゲイルは霧の中へ消えてゆくのだった。
映画『春にして君を想う』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『春にして君を想う』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
死の匂いが漂う、抒情詩の世界
邦題と映像がとにかくいい。まるで、”花の下にて春死なん”と詠んだ西行の心を映像で写し取ったかのよう。アイスランド北部の荒涼とした大地と風。春の終わりごろだが、2人で旅していても心細い気持ちになります。
冒頭の数分間は台詞もなく、アイスランド北部の厳しい自然に身を置くことができます。それは孤独な主人公の心情とも重なり、心に沁みます。フリドリクソン監督の作品は、特に風景を心情描写として用いるのが上手い。
老人2人の逃避行だから、重くならないようコメディにすることもできるのに決してそうは描かない。その代わり、音楽が重要な役割を果たしています。
ビョークが活動していたバンド、シュガーキューブスの曲やアイスランドを代表する音楽家ヒルマン・オルン・ヒルマンソンなどが使われ、映像と一体となって2人の魂を見守っている感じがします。
こんな崇高な映画は観たことがありません。
ヴィム・ベンダースの「ベルリン・天使の詩」とのコラボ!超自然的な存在の魅力
アイスランドには、古来から妖精がいると信じられています。国民の約65%が信じていると言われ、エルフ(妖精)を学べる学校もあります。
日本でいうところの自然崇拝に近い文化だと理解していますが、13人もサンタクロースがいるなどキリスト教文化と混ざっているのが面白い。
この映画のもう1つの楽しみ方は、超自然的な存在を尊ぶこと。死や老いが身近になると、妖精や天使の存在を感じられるようになるのではないか。
私は、ヴィム・ベンダースの「ベルリン・天使の詩」の大ファンです!その天使が出ると聞き、観る前からドキドキしていました。天使は死の象徴かもしれないが、同時に癒しでもあります。
アイスランドの風土と宗教観がたっぷり詰まった、この映画は”視えないものを見ようとする力”を与えてくれるのです。
映画『春にして君を想う』 まとめ
この映画を若い人ではなく、老いた人が観たらきっと心が安らぐのではないだろうか。アイスランド北部の厳しい自然は、主人公の孤独と不安を表現しています。
自然と心象が一体となった演出が素晴らしく、凍えるような気持ちであっても、自ら望む死へ進んでいきたいと思う。劇中に出てくる幽霊や天使の温かいまなざしがいつの間にか不安を消してくれます。
また作品に流れる音楽がいい。アイスランドの歌姫ビョークの魂を揺さぶる歌に耳を貸してほしい。主人公ソウルゲイルが、この歌の良さが分かると良かったのに。
たった1つ辛かったのは、愛犬の命を奪うシーン。もし人生最後の旅に愛犬が一緒だったら、幸せだと思う。
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