映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の概要:第二次世界大戦中、ポーランドのワルシャワ動物園を経営していた夫妻。ドイツ軍がユダヤ人を不当に扱うのを目にし、動物園を利用し密かに匿っては逃亡させるという計画を実行する。危険と隣り合わせの中、ユダヤ人を救おうと奮闘した事実を映画化。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の作品情報
上映時間:127分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
監督:ニキ・カーロ
キャスト:ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグ、ダニエル・ブリュール、マイケル・マケルハットン etc
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の登場人物(キャスト)
- アントニーナ・ジャビンスキ(ジェシカ・チャステイン)
- ヤンの妻で、動物のことになるとなり振りを構わない。金髪で美しい女性。夫と共にワルシャワ動物園を経営し、慈悲深い愛情の持ち主。1児の母でもある。
- ヤン・ジャビンスキ(ヨハン・ヘンデンベルグ)
- アントニーナの夫。妻アントニーナのことを楽園のイヴと呼んで、深く愛している。ゲットーがするユダヤ人たちへの扱いに憤り、匿って逃亡させるという危険な計画を実行する。
- ルーツ・ヘック(ダニエル・ブリュール)
- 動物学者でジャビンスキ夫妻と親交があるが、ヒトラー直属の配下。美しいアントニーナに懸想しており、あからさまなモーションをかけてくる。絶滅種の復活を成功させるのが夢。
- イエジク(マイケル・マケルハットン)
- ワルシャワ動物園の飼育員。夫妻にとても忠実で、計画に協力してくれる。動物園を自分の家だと豪語し、決して離れず一家の帰りを待っている。
- マウリツィ・フランケル(イド・ゴールドバーグ)
- ユダヤ人。知的で優しい性格。法的な仕事に従事していたが、ゲットーに捕縛され居住区へ強制的に入れられてしまう。妻とはしばらくの間、離れ離れだったが、ヤンの手引きで再会を果たす。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のあらすじ【起】
1939年、ポーランドのワルシャワ。アントニーナ・ジャビンスキは夫のヤンと共にワルシャワ動物園を経営し、人気を博していた。巷ではユダヤ人の殲滅を目的とした、ヒトラー率いるドイツ軍との戦火がワルシャワへも飛び火すると噂され、ヤンは幼い息子を連れ妻に田舎へ避難するように話す。だが、アントニーナは息子にとっても自分にとっても、家はここだけだと言い切り、避難することを拒否。
同年、9月1日。ワルシャワ上空にドイツの爆撃機が襲来。動物園も標的とされ、アントニーナはただちに荷造りを行い息子と共に駅へ。しかしその際、動物たちが檻から抜け出してしまう。ヤンが駅へ迎えに来たため、帰宅したものの、空爆後の動物園は酷い有様となっていた。
ドイツ軍はワルシャワへ侵攻し、支配下に置くことに成功。奴らは動物園の一部を武器庫として使用するのであった。
空爆後の片付けを行っていた最中、夫妻と親交のある動物学者、ルーツ・ヘックがやって来てドイツ軍がワルシャワ動物園を清算しようとしていると話す。彼はアントニーナに動物を救うには、希少動物をドイツで保護するのが最善の策だと言う。彼女は答えを急かされ、その案に了承してしまう。
そのことをヤンに話したアントニーナだったが、ヘックはヒトラー直属の配下であるため、希少動物を奪われたらワルシャワ動物園は経営が成り立たず、潰されてしまうだろうと推測。夫は妻が自分を待たず、ヘックの案へ安易に了承してしまったことをやんわりと責めるのだった。後日、ヘック指導の下、希少種がドイツへ移送される。
そうして、降雪が認められる冬。ドイツの軍服を着たヘックが兵士を伴い動物園へ。彼らは無情にも残された動物たちを全て始末してしまう。このままでは冬を越せないとの理由からだった。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のあらすじ【承】
ユダヤ人はドイツ軍によって強制連行されていく。その様子はさながら罪人を扱うようであった。市民が避難のため、街を去って行く中、夫妻の元へ親交のあるユダヤ人昆虫学者夫妻が訪れる。彼らもユダヤ人であったが、逃亡中に大量の昆虫の標本を持ち歩けないので、ジャビンスキ夫妻へ預かって欲しいと依頼。ヤンは快く了承し、預かった標本を地下室へ大事にしまった。
話に聞くとドイツ軍がユダヤ人に対する扱いは酷いもので、塀に囲まれた地区へと集められているらしい。塀の中では食糧も少なく、水を渡しただけで厳しく罰せられると言う。夫妻の友人であるマウリツィもまた捕縛されてしまい、妻が助けを求めて夫妻の元へ身を寄せる。アントニーナは夫にユダヤ人たちを動物園に匿うことはできないかと相談したが、現状ではとても難しい問題であった。
一旦は妻の相談に難を示したヤンだったが、あまりにも酷い仕打ちであることと、ユダヤ人を救おうと水面下で活動する者達が現れたため、考えを改める。彼はユダヤ人たちを救う玄関口として動物園に匿おうと考えた。それは1人を匿うのとは話が違い、非常に危険な行為でもある。ドイツ軍の武器庫として一部を使用され、全てにおいて見張られている状況であるにも関わらず、同じ場所にユダヤ人を大勢匿うという話なのだ。夫妻はドイツ軍の裏をかく、上手い作戦を考えなければならなかった。
そこで、2人はヘックの元を訪れ動物園を養豚場にしないかと話を持ち掛ける。ヘックは絶滅した種の復活を画策しており、夫妻の案に乗って動物園にてバイソンの繁殖を行うことにした。夫妻の養豚場の案は許可され、ヤンはユダヤ人居住区から豚の餌となる廃棄野菜の回収へ。その廃棄野菜の中に救出する人々を隠し、外へ逃亡させるという作戦だった。
作戦は功を奏し若者から順に国外への逃亡を手助けする夫妻。そんな中、ヤンは見るに見かねて傷ついた少女をも連れて来てしまい、アントニーナは彼女を地下室へ匿うことにする。女性と子供達は一旦地下室へ、男性は国外へ。計画は順調に進んだ。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』のあらすじ【転】
協力者の店の奥にて身分証を偽称。大人の女性は髪を染め友人を装って密かに逃亡させる。外へ出ることはできなかったが、夜ならば自宅内を自由にさせた。ユダヤ人たちは居住区から助け出され、ジャビンスキ夫妻の元で一時の安息を得る。
アントニーナの元には度々、ヘックが訪れた。彼はバイソンの繁殖のため、彼女に手助けを頼んでいたのだ。理由はそれだけではなく、人妻であるにも関わらずヘックはアントニーナに懸想しているのだった。例え彼を欺くためとは言え、親密な様子を見せる妻とヘックに嫉妬を隠せないヤン。時には彼女へ冷たく当たることもあった。
そんなある日、夫妻の元へゲットーの労働局員がやって来る。彼はユダヤ人の昆虫学者を尊敬しており、夫妻に標本を預けたと本人から直接聞いたと言う。更に昆虫学者は居住区にて亡くなっていたが、労働局員は彼からある作戦に加担する旨を託されていた。
そのお陰で、労働局を自由に行き来できるようになったヤンは、局を通してユダヤ人たちを次々に逃亡させる。これまでは慎重を期し、秘密裏に行っていた手続きが労働局を通すことで、より簡単に逃がしやすくなったのである。しかし、手続きが簡単に済ませられるようになった分、危険は以前より高まった。
アントニーナもまた、これまで通りの手法で女性を逃がし続ける。そんな中、ヤンは友人マウリツィをどうにか逃がすことに成功。自宅にて匿っている妻と再会させた。その日の夜、ヤンからヘックとの親密さを咎められたアントニーナ。欺くための偽りであるとは言え、目に余ると言われてしまうのだった。
1942年、8月5日。ゲットーは居住区に集めたユダヤ人たちの集団移送を列車にて行う。ヤンは信奉する学者へ再三に渡り逃亡の誘いをかけていたが、学者は幼い子供達と行動を共にしたいと望み申し出を拒否。そんな中、またもヘックと妻の戯れを目撃してしまったヤン。憤りと八つ当たりをアントニーナにぶつけてしまう。彼女は夫の言葉に哀しみを募らせたが、互いに愛を確かめ合うことで絆を守った。
翌年の4月。逃亡させ市内にて平穏に暮らしていたユダヤ人女性2名が、ゲットーに見つかり銃殺されてしまう。夫婦はそのことで懊悩を抱いたが、同月19日。ラジオにてヒトラー親衛隊の1人が反旗を翻し、ワルシャワ・ゲットーを殲滅すると宣言。市民へと蜂起を呼び掛けた。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の結末・ラスト(ネタバレ)
その日はユダヤ人にとって過越の祭りが始まる日で、外では灰の雪が降る。それは、反乱軍が市内でゲットーを燃やしたために発生したものだった。外は騒乱の渦と化していたが、ジャビンスキ家では祈りの歌が粛々と唄われる。
1944年8月1日。ポーランド国内軍がナチス・ドイツに対し蜂起し、市民へと更なる呼びかけを行う。その頃には市内は戦場と化し、ヤンもまた戦いへ。だがその日、彼は首を撃たれてしまいドイツ軍の捕虜収容所へと入れられてしまう。
1945年1月。アントニーナは夫を助けるため、身支度を整えヘックの元へ。彼は戦況が変わりベルリンへ呼び戻されたため、荷造りの最中だった。彼女は夫の容態と居場所を知るため、ヘックとの交渉に臨んだが、失敗。計画を知られてしまう。
急いで動物園へ戻ったアントニーナは、まずゲットーを撤退させ地下に匿っていたユダヤ人を逃がした。そして、息子を地下室から逃がす。
アントニーナの後を追って動物園へやって来たヘック。地下室へ立ち入り壁に描かれた絵を目にする。そうして、ここにユダヤ人を匿っていたことを知るのだ。だが、今はもう1人の姿も見えない。ヘックはアントニーナを脅すために息子を銃殺したように見せかけ、去って行くのだった。
1945年、9月。ゲットーがワルシャワから完全撤退。その1年後、アントニーナは2人の子供達を連れ動物園へ戻った。そこでは、飼育員のイエジクが動物園を守ってくれている。1年間、放置されていた自宅は荒れ果てていたが、預かった昆虫標本は無事だった。
季節は巡り、翌年の春。安否が分からなくなっていたヤンが奇跡の生還を果たし、アントニーナと子供達は彼の帰還を心から喜んだ。
それから20年後、夫妻は“諸国民の正義の人”として、イスラエルからヤド・ヴァシェム賞を授与される。戦争にて壊滅状態となったワルシャワだったが、夫妻は動物園を再開。ワルシャワ動物園は現在も変わらずに開園している。
映画『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の感想・評価・レビュー
第2次世界大戦中、実際にあった勇気ある行動を映画化。ワルシャワ動物園の経営者であるジャビンスキ夫妻が危険を顧みず、ユダヤ人を300人も匿って逃亡させたという話。序盤のシーンにて、動物園の賑わいとアントニーナがいかに動物を労り愛していたかが描かれる。当時のワルシャワ動物園では、一部の動物が放し飼いにされており驚いた。
爆撃機による空爆でのシーンや動物が銃殺されてしまうシーンは、特に切ない。ジャビンスキ夫妻の深い愛と強い絆がしっかりと描かれた作品。(MIHOシネマ編集部)
実話をもとにした物語です。戦時中に閉鎖された動物園を養豚場にすることにより、ユダヤ人収容所との往来許可を得て、危険を顧みずに300人ものユダヤ人を救った動物園経営者のお話です。最初は動物園の楽しそうな情景で始まりますが、一転戦時中のお話に変わります。全体的な映像もちょっと暗めですが、内容は大変な時代に人を助けようとするとても力強いものでした。このような話を聞くたびに、あのような時代に命を助けるために力を尽くした人々がいることを知ることができます。きっと、記録や映画に残らない人々もたくさんいたことでしょう。(女性 40代)
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