保護司という職業に焦点を当てた珍しい漫画、『前科者』。WOWOWでの連続ドラマを経て、とうとうスクリーンに進出。主演の有村架純などの豪華キャストは変わらず、ゲストに俳優としての一歩を踏み出した森田剛などを起用した期待作。
映画『前科者』の作品情報
- タイトル
- 前科者
- 原題
- なし
- 製作年
- 2022年
- 日本公開日
- 2022年1月28日(金)
- 上映時間
- 133分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 岸善幸
- 脚本
- 岸善幸
- 製作
- 石垣裕之
鳥羽乾二郎
藤本鈴子
富田朋子
久保雅一
鈴木貴幸 - 製作総指揮
- 白戸洋行
福家康孝 - キャスト
- 有村架純
磯村勇斗
若葉竜也
マキタスポーツ
石橋静河
北村有起哉
宇野祥平
リリー・フランキー - 製作国
- 日本
- 配給
- 日活、WOWOW
映画『前科者』の作品概要
元々、2021年11月にWOWOWで6話構成のドラマとして放送されていた『前科者 新米保護司・阿川佳代』。原作・香川まさひと/作画・月島冬二による漫画を原作としたその作品は、深く優しいストーリーと有村架純の熱演もあり大ヒットとなった。そして、とうとう劇場版の制作が決定。漫画原作のストーリーを題材としたドラマ版とは異なり、今回は完全オリジナルストーリーで展開される。その記念すべき作品でゲストとして選ばれたのが、元アイドルグループ『V6』の森田剛。俳優として活動を始めた彼の姿も見られる、色々な意味で見逃すことのできない一作。
映画『前科者』の予告動画
映画『前科者』の登場人物(キャスト)
- 阿川佳代(有村架純)
- 保護司として働き始めたばかりのまだ若い女性。様々な理由からお金に困っており、多くの仕事を掛け持ちしている。
- 工藤誠(森田剛)
- 阿川が担当する男性。真面目に更生生活を送っていたが、ある日突然姿を消してしまい…?
映画『前科者』のあらすじ(ネタバレなし)
阿川佳代は一風変わった仕事をしていた。それは、保護司。保護司とは、前科のある人達が更生できるように、その生活を見守り支えるという仕事である。容易ではないその仕事だが、阿川は保護司の仕事にやりがいを感じ日々対象者のために奔走していた。工藤誠は、そんな阿川が担当する前科者の1人。穏やかで真面目な工藤は、順調に更生の毎日を送っていた。しかし、ある日突然工藤が忽然と姿を消してしまう。これまでの日々から一変、警察に追われる身となってしまった工藤。一方、その頃連続殺人事件が世間を賑わせていた。果たして、工藤がその事件の犯人なのか。阿川が保護司を志した理由とともに、謎が解き明かされていく。
映画『前科者』の感想・評価
俳優・森田剛
26年間、誰も欠けることなく第一線で駆け抜け続けたアイドルグループ、V6。そんなV6が2021年をもって解散するというニュースが世間を騒がせた。その中で、唯一ジャニーズ事務所を退所することとなった森田剛。そんな彼が新たに選んだ道が俳優。あの蜷川幸雄にも認められ、演劇の道に惹かれた彼がそのままその道を突き詰めることを選んだのだ。元々、『ヒメアノ~ル』などでその演技力が高く評価されていた森田。第二の人生を歩むことになった彼の背中を後押しする作品となれるかどうか。これから見られるであろう、森田剛の新たな魅力に注目。
保護司という仕事
あなたは保護司という職業を知っているだろうか。前科のある人達を見守り、更生の手伝いをする、世論の啓発や地域社会の浄化に務めるという非常に重要なこの仕事。実はこの仕事、ボランティアという扱いになるのだ。これは、世界でも類を見ない日本特有の制度。そのため、給料はなく、従事者は熱意と責任感でもってその仕事に日々励んでいる。では一体、何が彼女達を突き動かすのだろうか。今作の主人公である保護司の阿川佳代がなぜ保護司になったのか。それは、元々放映されていたドラマの方で描かれている。勿論生きていく上でお金は必要不可欠だが、決してそれだけではないことを教えてくれる作品。
第二のチャンスはあるのか
人はやり直すことができる、よく耳にする言葉だ。しかし、果たしてそうだろうか。もちろん、諦めずに精進していれば新たな道もひらけてくるだろう。しかし、いくら本人にその気があったとしても、周囲の環境がそれを許さないこともある。前科者に対して、社会の目は厳しい。勿論、罪を犯し周囲に大なり小なり危害を及ぼしているのだから、ある程度は仕方ないのかもしれない。本作では、保護司という前科者に対して手を差し伸べる人がいる一方で、厳しい対応をする社会の側面も描かれている。人はやり直すことができる。本当にそれが可能なのか。本作を見て、自分であればどう考えどう対応するか、しっかりと考えながら作品と向き合おう。
映画『前科者』の公開前に見ておきたい映画
ヒメアノ~ル
本作で6年ぶりの映画出演という森田剛。そんな彼が最後に出演したのが本作。森田が演じたのが、過去のイジメをキッカケに性格に歪みが生じ、サイコキラーに転じていくという難しい役どころ。見事にその狂気的な役をこなした彼の演技は、非常に高い評価を得た。主人公の岡田進は、清掃のパートタイムをしながらうだつの上がらない日々を送っていた。そんなある日、彼はカフェでかつての同級生、森田正一と出会う。いつしかカフェの店員である阿部ユカと恋仲になった岡田。しかし、実は森田は阿部に恋心を寄せており、さらには密かにストーキングまでしていたのだった。2人が結ばれたことを知った森田は、2人を殺害する計画を立てるが…?
詳細 ヒメアノ~ル
あゝ、荒野
本作を手がけた岸善幸監督がかつてメガホンを取った代表作、それこそが本作『あゝ、荒野』である。元々は寺山修司の小説である作品を、菅田将暉ら豪華キャストが演じたことで話題となった。菅田将暉は本作で『日刊スポーツ映画大賞』や『第41回日本アカデミー賞』など様々な賞で主演男優賞を獲得。間違いなく、現在の菅田将暉のキャリアを支持している作品の一つとなった。舞台は2021年の新宿。日本では、社会奉仕プログラムという新たな制度が誕生していた。徴兵に協力する代わりに、奨学金の減額が認められるというその制度。そんな制度の中で、新次や健二などの若者らが、運命を少しずつ狂わされていく。
詳細 あゝ、荒野
おくりびと
最新作も本作も、どちらも一般的には中々浸透していない珍しい職業に焦点を当てた作品であり、また、命や人間に対して深く考えさせられるヒューマンドラマ作品という点が共通している。本作で取り上げられる職業は、納棺師。納棺師とは、亡くなった人を棺に納め、そして、そのために必要な作業を行う者のことである。本木雅弘演じる主人公小林大吾は、ふとした勘違いからこの納棺師の仕事に就いてしまう。周囲の人間からは『汚らわしい仕事』と揶揄され、一度は退職を決める小林。しかし、社長がなぜこの納棺師の職を志したのかという経緯や志を聞き、再び仕事と向き合う決心をする。そして、彼の温かいお見送りは、次第に周囲の人達の心を溶かしていくこととなる。
詳細 おくりびと
映画『前科者』の評判・口コミ・レビュー
『#前科者』新作映画20本目
有村架純圧巻の演技。ある病室のシーンで評価爆上がり。保護司としての覚悟と前科者に寄り添うと決めた強い決意表明。森田剛や若葉竜也らも見もので登場人物の苦悩や葛藤を見事表現していた。ドラマ版を補完する要素もあり両方観てこそ完結する部分が難点。 #EDDIE映画2022 pic.twitter.com/LuD7VYinO7— EDDIE@KingsFan👑 (@eddie2yuji) January 30, 2022
“前科者”非常勤ながら国家公務員も無給。そんな、信念だけを胸に、有村架純演じる保護司阿川の熱い思いが、法律、福祉で救えない前科者の思いの心を、彼女の思いが埋めていく様に、人間の絆こそが人を救う力になることに希望を感じられる物語。彼女の思いと共にありたい、そんな願いに涙する秀作。 pic.twitter.com/e7cqhBC8Dm
— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) January 30, 2022
映画『前科者』のまとめ
『ヒメアノ~ル』での怪演で、世間が森田剛の高い演技力に気がついた。しかし、演劇界ではそれよりもかなり前から、森田剛の存在は認知されていた。彼を評価していたのは、宮本亜門や蜷川幸雄といった錚々たるメンバー。だからこそ、前作に引き続き難しい役どころが彼の元に回ってきたのだろう。必要不可欠な仕事である保護司。しかし、お世辞にも保護司の社会的認知度は高いとは言い難い。知識がないばかりに、誤った印象を持っている人もいるかもしれない。本作を通して、保護司が一体私達のために何を担ってくれているのかを知るキッカケになることを望む。
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