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映画『人生タクシー』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『人生タクシー』の概要:ジャファル・パナヒ監督がタクシーで街中を移動し、客として乗ってきた人達との会話によって物語が進行する実録風の作品。市井の人々とのやり取りを通じてイラン社会の実情や問題点を浮かび上がらせている。

映画『人生タクシー』の作品情報

人生タクシー

製作年:2015年
上映時間:82分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:ジャファル・パナヒ
キャスト:ジャファル・パナヒ etc

映画『人生タクシー』の登場人物(キャスト)

ジャファル・パナヒ
イランの著名な映画監督。イラン政府により映画監督としての活動を禁じられている。タクシーを運転しながら、車内に設置したカメラを使って乗客とのやり取りを撮影した。

映画『人生タクシー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『人生タクシー』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『人生タクシー』のあらすじ【起】

信号待ちをしていたタクシーが走り出し、若い男を客として拾う。続いて女性教師が同乗してくる。盗難に遭ったという若い男は、泥棒は見せしめに絞首刑にすべきだと主張する。しかし、女性教師は貧困などの原因究明こそが重要だと反論する。そしてイランでは中国に次いで死刑が多くても社会が改善されておらず、見せしめにしても変わらないと説明する。若い男はタクシーを降りる際に実は自分も盗人であることを明かす。その後、女性教師もタクシーを降りる。

車内には元々乗車していた中年の男が残された。中年の男は運転手がジャファル・パナヒ監督だと見抜く。中年の男は、イランで上映が禁じられている映画のDVDを密売しており、パナヒの元にも作品を届けたことがあったのだ。タクシーは事故現場を通り掛かり、事故で怪我した初老の男とその妻を乗せて病院に向かうことになる。初老の男は遺言を残したいと言い出す。パナヒの携帯で動画を撮影することにし、初老の男は携帯に向かって全財産を妻に残すと語る。病院に着き、初老の男は命を取り留めるが、妻は動画を送ってほしいとパナヒに頼む。

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映画『人生タクシー』のあらすじ【承】

中年の男は民家の前でタクシーを止めるように頼む。そして、民家の住人を呼び出し、自分が持っているDVDを見せる。中年の男がパナヒを仲間だと紹介すると、住民は普段より多くのDVDを買ってくれた。住民は大学で映画の勉強をしており、パナヒに映画の主題に関する助言を求める。パナヒが中年の男と共に次の目的地に出発しようとすると、金魚鉢を抱えた中年女性2人が乗り込んでくる。

中年女性達は正午までにアリの泉に着きたいと言う。中年の男は自分の行為はイラン人が外国映画に触れるための文化活動だと正当化する。パナヒは途中で中年の男を降ろし、アリの泉に向かう。中年女性達は金魚を正午までに戻さねば自分達が死んでしまうと信じていた。その話を聞いて驚いたパナヒは急ブレーキを掛けてしまい、女性は金魚鉢を床に落として割ってしまう。パナヒは慌ててビニール袋を水で満たすと、金魚を拾って中に入れる。中年女性達は金魚が無事なことに安心する。姪を学校まで迎えに行かなければならなかったパナヒは別のタクシーを止めさせ、中年女性達をそちらに移動させる。

映画『人生タクシー』のあらすじ【転】

パナヒが遅れて来たことに姪は不機嫌だった。パナヒは姪を乗せて幼馴染みに会いに向かう。姪は車中で映画の授業で短編を撮らなければいけないと説明する。しかし、その作品を学校の文化祭で上映したいが、上映許可が問題になっていると訴える。

パナヒは通りで幼馴染みと落ち合う。幼馴染みはパナヒに動画を見せる。その動画は幼馴染みが強盗に遭った時のものだった。強盗犯は夫婦で、幼馴染みは犯人の目を見て相手が誰かを直ぐに見破ってしまった。しかし、その犯人夫婦がお金に困っており、盗んだお金で助かったということを知り、警察に通報しなかったと説明する。幼馴染みは、その話を聞いてもらいたくてパナヒに会ったのだ。

幼馴染みと別れたパナヒに姪が上映許可を取るための条件を説明する。女性はスカーフを被っていなければならず、善人の男性にはネクタイをさせず、イスラム教の聖人の名前を付けなくてはいけないのだ。パナヒは幼馴染みがネクタイをしており、イラン名であるために善人として映画に登場させられないという事実について思いを巡らす。

映画『人生タクシー』の結末・ラスト(ネタバレ)

パナヒはガソリンスタンドの近くで車を止めて、姪を車内で待たせる。姪を車内から新郎新婦の様子を撮影する。そこに少年が通りかかり、新郎が落としたお金を拾う。姪は少年に声を掛け、お金を返すように求める。お金を盗む様子が映っているために撮影したものを上映できなくなるためだ。姪はお金を返せば少年はヒーローになると説得する。しかし、少年はお金を返し損ねてしまう。

パナヒが戻って来て再び車で移動を始める。途中でパナヒの顔見知りの女性弁護士を車に乗せてあげる。女性弁護士は、パレ-の試合を観戦しようとして拘禁された女性に会いに行くところだった。女性はハンガーストライキをして抗議活動を続けている。女性弁護士自身も人権派であるために睨まれており、弁護士会から活動停止処分を受けていた。

姪が後部座席で財布が落ちているのを見付ける。年配の女性が使うような財布だったために、パナヒは金魚鉢を持っていた中年女性達だと思い当たる。女性弁護士は途中で降り、パナヒは姪と共にアリの泉に向かう。姪は再びパナヒと上映禁止について議論する。姪は都合の悪い現実を生み出しているイラン当局がその現実を映すことを禁じていることに納得できずにいる。2人はアリの泉に着き、財布を渡しに行く。誰もいなくなったタクシーにバイクに乗った2人組が近付き、カメラを奪おうとする。しかし、パナヒと姪が戻って来たためにメモリーカードを奪えずに去っていく。

映画『人生タクシー』の感想・評価・レビュー

イラン当局により映画監督としての活動を禁止されているジャファル・パナヒ監督が独特の手法で作り上げた映画で、それだけでも一見に値する。車中の会話だけでストーリーが成り立っているのにも関わらず、イラン社会の現状を雄弁に語ってみせている。表現や活動に制約がありながらも良作を生み出せるという好例だ。ベルリン映画祭で金熊賞を受賞したのも納得だ。パナヒの優しい顔立ちとおませな姪がとても印象に残る。(MIHOシネマ編集部)


あらすじを見たときはこれが映画になるのかと疑う気持ちもあったが、いつの間にか最後まで見入ってしまう素晴らしい作品だった。客達の何気ない会話にふっと笑ってしまう自分がいた。でも、ただおもしろいだけでなく、イランの社会情勢やそこに暮らす人々の率直な思いも描かれており、深く考えさせられる作品だった。
映画制作を禁じられているにも関わらず、情熱を持ち続けているジャファル・パナヒ監督がとにかく凄いと思う。(女性 30代)


イランの情勢や法律は知らないので、何故彼が映画の制作を禁止されているのか、このような手法で作品を作ったのかよく分かりませんでしたが、ドキュメンタリータッチな「リアル」な作品として非常に面白かったです。
パナヒと姪っ子の話の中で、短編映画を文化祭で上映するには、作品に登場する人のビジュアルや、行動が厳しく制限されていて、それを守らないと上映出来ないと言っていましたが、映画が大好きな私にとって、これはとても悲しいことだと感じました。
何かを変えるとか、規制を緩めるのは難しいかもしれませんが、こういった作品を作り、行動することがまず第一歩になるのだと思います。(女性 30代)

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