『動乱』あらすじ感想とネタバレ映画批評・評価

動乱の概要:「動乱」は、1980年の日本映画。監督は「八甲田山」、「日本沈没」の森谷司郎。主演は「八甲田山」、「幸福の黄色いハンカチ」の高倉健。共演は「青春の門」、「衝動殺人 息子よ」の吉永小百合。他の共演者に米倉斉加年、桜田淳子、田村高廣、志村喬など。

動乱

動乱 あらすじ

映画『動乱』のあらすじを紹介します。

第一部:「海峡を渡る愛」昭和七年四月、仙台連隊で宮城大尉(高倉健)が隊長をつとめる中隊の初年兵、溝口二等兵(永島敏行)が脱走した。その理由は姉の薫(吉永小百合)が貧しさから千円で芸者に売られてしまうという事が原因だった。溝口は逃走の罪で自決を促されたが果たせず、その幇助をしようとした捜索隊の上司を殺してしまう。宮城は弁護を申し出るが聞き入れられず、溝口は銃殺刑に処せられた。宮城は父に用立ててもらった千円を溝口の香典として渡す。当時、日本は厳しい経済恐慌であり、それを改革する意図で海軍将校と陸軍士官候補生らの有志が決起したという五・一五事件である。クーデターは成功せず、陸軍内部の皇道派と統制派の対立を激化させ、その影響は仙台にいる宮城大尉にも及び、部下が脱走兵した責任を問われて朝鮮の国境守備隊へ転任を命ぜられる。そこで将校をねぎらう宴が行われ、宮城は芸者になり身を売っている薫と再会する。彼女を責める宮城だったが数日後に薫は自殺を図る。軍が朝鮮のゲリラに不法に物資を横流しするのを目撃した宮城は、その事を黙認する代わりに、雪の中で晒し者になっていた薫の命を救う。そして日本国内では統制派による中国との戦争の準備が進められていた。

第二部:「雪降り止まず」昭和十年十月の東京。宮城は第一連隊に配属になり、薫と共に居を構えるが、二人の間にはまだ男女関係はなかった。宮城の家には多くの青年将校が訪れ、“建設か破壊か”と議論を交わす。憲兵隊の島(米倉斉加年)は宮城家の向かいに往み見張りを続けていた。ある日、宮城は恩師であり皇道派の長老格でもある鳥取の神崎中佐(田村高廣)の許へ薫を伴い訪問する。神崎の幸せな家庭を見て、自分の存在は宮城にとって一体何なのかと薫は詰め寄る。数日後、宮城が決意していた軍務局長の暗殺を、神崎が単身で陸軍省に赴き決行に及び、その事件は青年将校たちの維新の機運を一気に高める。そして島は宮城たちの行動に心情的には同調しながらも、憲兵という職務からクーデターを事前に防ごうと苦悩する。決行の日を前に宮城は実家に帰り、父親に薫のことを頼むと初めて彼女を抱いた。昭和十一年二月二十五日。夜半から降りはじめた雪の中、男たちは決起の場へと向かってゆく。

動乱 評価

  • 点数:60点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:1980年
  • 上映時間:150分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:森谷司郎
  • キャスト:高倉健、吉永小百合、米倉斉加年、田村高廣 etc

動乱 批評 ※ネタバレ

映画『動乱』について、2つ感想批評です。※ネタバレあり

二・二六事件の全貌と、第二次世界大戦前の日本がリアルに描かれている

昭和十一年二月二十六日に起こった、一部の陸軍将校によるクーデターであり、第二次大戦前の日本の歴史を揺るがした、二・二六事件を背景に描かれた物語である。復讐譚ではなく時代背景は違うものの、どこか忠臣蔵を想い起こさせる内容である。歴史の実像に迫るような観点ではなく、理不尽な世の中に反抗し無念の死を遂げる英雄と、その英雄に寄り添う薄倖の女性を中心に捉えているところが、戦争というもので繰り返される悲劇をリアルに捉えている。高いドラマ性による緊迫感と、薫という女性の切なさが交互に描かれ、長尺作品でありながら画面から目を離すことが出来ないほど食い入ってしまう。軍国主義の中で起こる貧困と、理不尽な圧政の中で起こる汚職に立ち向かった宮城大尉が、クーデターを成功させながらも旧知の軍幹部を殺されたという天皇陛下の私的とも言える一存で「国賊」のレッテルを貼られ、処刑されてしまう話はどうにもやり切れなさが残る。忠臣蔵は切腹を覚悟して謀反を起こし、成功させた上で武士という立場で死を選択できたが、このクーデターは成功したにも関わらず、政権を覆すという結果にならず、不本意のまま銃殺になったというのは無念以外の何物でもないだろう。かつて日本はドイツ、イタリアと軍事同盟を結んでいたファシズムの国家だったという事実を、改めて本作では認識させられてしまう。

高倉健と吉永小百合の絶妙な絡み

高倉健と吉永小百合はこの後「海峡」も共演しているが、本作での二人の絡みは見事なほどに絶妙である。役者のオーラがこの頃からすでに群を抜いていたというのがよく解り、物言わぬシーンでも圧倒的な存在感で迫ってくる。笑うところなど全くない映画ではあるが、クーデターの前に健さんが皇居に向かい和服姿で土下座をする姿は、正しく出入り前の任侠の世界であり、それはそれである意味吹き出しそうになるシーンでもある。どうせなら軍服を着たままのシーンに出来なかったのかと思ってしまうのだが、それ以外ではさすがとしか言いようのない高倉健としての圧倒的存在感を見せつけており、同じように吉永小百合も、どうすればこんな表情が出せるのだろうという演技に今さらながら驚いてしまう。この二人の主演というのならシナリオが少々お粗末でも、駄作になろう筈がない。

動乱 感想まとめ

日本映画は時代劇を除いて、明治維新から昭和初期辺りの背景を描いたものが一番奥深さがある。明治維新から始まって60~70年が経過し、西洋文化が定着しつつ過渡期を迎えながら、なぜ思想だけが軍国主義に走ろうとしていたのかも僅かだが垣間見える作品である。軍の内部でクーデターに成功しながらも、理不尽な理由で処刑をされるに至った経緯にその片鱗が窺える。そこから日本は僅か9年でその思想も根底から覆されてしまうのだが、そこに巻き込まれた民衆の悲劇はこの物語の比ではない。一部の人間の思想が多くの悲劇を生み出したというこのような史実は、教科書で学習するばかりでなく多くの若者にも観ていただきたい。映画ならではの表現が大いに人の心に迫ってくる筈である。

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コメント

  1. 名無し より:

    クーデターが成功したにも…とのくだりがありますが未遂もしくは失敗ではありませんか?
    成功したとはおかしな表現です