映画『銀の匙 Silver Spoon』あらすじとネタバレ感想

銀の匙 Silver Spoonの概要:「さんかく」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」などで高い評価を得る吉田恵輔監督作品。人気漫画を原作に持つ作品であるが、丹念な演出で人物の心のゆらめきを描く監督の手腕が光る。

銀の匙 Silver Spoon あらすじ

銀の匙 Silver Spoon
映画『銀の匙 Silver Spoon』のあらすじを紹介します。

進学校の中学校にかよっていた八軒勇吾(中島健人)は勉強についていけず、おちこぼれてしまう。その結果、家庭での居心地が悪くなり、家庭から逃避するために寮のある大蝦夷農業高校、通称エゾノーに進学した。

これまでの自分の育ってきた環境とのあまりの違いに驚きつつも、周囲の友人が明確な夢を持ってエゾノーに進学していることを知り、八軒は自分の中に夢がないことに悩みはじめる。

そんな最中、八軒が密かに思いを寄せる御影アキ(広瀬アリス)が実家の農場を夏休みの間だけアルバイトとして手伝ってくれないか、と八軒に頼んでくる。二つ返事で引き受けた八軒は慣れないことに戸惑いながらも、そこで人間関係や仕事をしてお金をもらうということがどれほど大事なことかを学ぶ。

そんな中、自分が子豚の頃から手塩にかけて育てた豚が出荷されることになり、豚が屠殺されるその瞬間を目の当たりにする。自分が関わろうとしている仕事の重さに気づき、酪農に関わる人間としての自覚を持ち始める八軒であった。

そしてある時、クラスメイトが突然学校を辞めたことを知る。農場経営が立ち行かなくなったことによるものだった。志半ばで退学せざるを得なくなった友人の思いを背負った八軒は小さなある夢を見つけることになる。

銀の匙 Silver Spoon 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2014年3月
  • 上映時間:111分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:吉田恵輔
  • キャスト:中島健人、広瀬アリス、市川知宏、黒木華 etc

銀の匙 Silver Spoon ネタバレ批評

映画『銀の匙 Silver Spoon』について、感想批評です。※ネタバレあり

「夢」との付き合い方

吉田恵輔監督作の前々作、「ばしゃ馬さんとビッグマウス」では「夢」が持つ中毒性を鋭く描いていた。「夢」を抱き始めてすぐは希望にあふれるが、その「夢」がどうやら叶いそうにないことを悟ったが最後、「夢」は自分を苦しめる呪縛に豹変する。いつ諦めればよいのか。そもそも諦めてよいものか。続けても「夢」は叶うのか。前作「麦子さんと」においても、主人公の麦子は自分の心の時間が止まった人物だった。彼女は母の死を通じて、自分の夢や人生と向き合うようになっていくという物語であった。

本作では対極的に「夢」を持たない人を主人公に描いているというように、「夢」がもつさまざまな側面をメッセージとして押し出す、銀の匙の実写映画版の監督を吉田監督が務めるというのはこれ以上ない正解であると言わざるをえない。

ばんえい競馬

本作のクライマックスとして、ばんえい競馬のシーンがある。御影が手放そうとしている馬を最後の思い出に競走馬として、学園祭のばんえい競馬の舞台に立たせようと八軒が奮闘するのだが、このシーンにおける演出は本作の中でも一段と光っているといえる。

ゴール直前、馬のお尻に御影がムチを入れるのだが、ここで映像がスローモーションになり、八軒の顔がカットバックされる。これはかつての八軒を馬になぞらえた演出である。エゾノーに入学した八軒は御影の発言や行動をきっかけにさまざまなことにチャレンジしてきた。つまり、常に御影は八軒のお尻を叩き続けてきたわけだ。すなわち、あの馬が一着でゴールするその瞬間、八軒はそこに未来の自分を観ているのだ。

ささやかながらも確かな演出は、観客の心を動かしうるスパイスになるのだ。

銀の匙 Silver Spoon 感想まとめ

原作が人気漫画ということもあり、実写化ともなればある程度それに反発するファンも出てくるであろう。原作という比較対象があるわけだから、それと映画を比較して、あのシーンが抜けている、とかあの役者はキャラクターに合っていないなどという批判意見も出てくるだろう。

しかし、本作では全体をうまくまとめ上げ、原作で伝えようとしているエッセンスをうまく抽出しているように感じた。役者陣の配役も、できるだけ原作の雰囲気をまとった人選にしている。加えて、主役に中島健人を迎えることで、彼のファンを観客として取り込むことに成功している。そういったある種の商業的なしたたかさも、嫌味にならない程度である。

映画史に残る大傑作とは言わないものの、観た人の心に残る良作に仕上げているという印象だ。

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