映画『お葬式』あらすじネタバレ結末と感想

お葬式の概要:伊丹十三監督が実体験をもとに「お葬式」という難しい素材をうまく調理し、初監督作品とは思えない完成度の高いコメディ映画に仕上げた。1984年公開。多数の映画賞を受賞し、興業的にも大成功した。

お葬式 あらすじネタバレ

お葬式
映画『お葬式』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

お葬式 あらすじ【起・承】

俳優の井上侘助(山崎努)と妻で女優の雨宮千鶴子(宮本信子)は2人の息子と東京で暮らしている。以前住んでいた伊豆の家には、三河から出てきた千鶴子の父・真吉と母・きく江が暮らしていた。

初夏のある日、年に一度の定期健診から帰った真吉は、夕食後に突然倒れ病院に運ばれる。そしてそのまま帰らぬ人となる。CMの撮影現場でそれを聞いた千鶴子は、侘助に父の訃報ときく江が伊豆の家で葬式をしたいと言っていることを告げる。初めて自宅から葬式を出すことになり、侘助は慌てる。

ひとまず、侘助一家とマネージャーの里見は真吉の遺体が安置されている病院へ行く。葬儀屋の海老原に案内され霊安室へ行くと、きく江と妹一家、真吉の兄の正吉がいた。遺体と対面した後、そのまま納棺を済ませ、大雨の中伊豆へと帰る。

伊豆の家には近所の人たちが手伝いに来てくれていた。何とかお棺を安置し、侘助たちは海老原と明日からの通夜と葬儀の相談をする。戒名やお布施の金額など、何もかもわからないことだらけだった。

翌日の朝、カメラマンの青木と斉藤良子が上司の命令で手伝いに来たと東京からやってくる。何も知らない千鶴子は愛想よく挨拶をするが、実は良子は侘助の愛人だった。

葬儀屋が来て、室内の準備はすっかり整う。喪主はきく江で、親戚も続々とやってくる。

通夜が始まる前、良子は青木を相手に酒を飲み大騒ぎを始める。みんながビックリする中、侘助が2人を外へ連れ出す。青木を待たせ、侘助は良子と話をするが良子はなかなか聞き分けない。散々侘助を困らせて、やっと良子は青木と帰っていく。

侘助の異変に千鶴子は気づいていたが、深く追求することはしなかった。

お葬式 あらすじ【転・結】

住職が来て通夜が始まる。子供たちは退屈して暴れ、大人たちは足のしびれに苦しんでいた。電話を取るため立ち上がった里見が転んだことで、一同は思わず吹き出してしまう。

通夜の晩、三河から来た親戚や近所の人たちが集まり賑やかな宴会となる。様々な人間模様が見える中、真吉のゲートボール仲間だった老婆が棺の中の真吉を見て泣きじゃくり、一同を驚かせる。

酒飲みたちをようやく帰し、千鶴子ときく江と従兄弟の茂はやっと静かに真吉を偲ぶ。三人で飲み直し、真吉の好きだった曲「東京だよ、おっかさん」を棺の前で歌い、踊る。

いよいよ告別式の日。大勢の弔問客が訪れ、中に入りきれない人は外の道に立っていた。
読経の後、身内だけで真吉と最後のお別れをし、正吉が弔問客へ挨拶をして出棺となる。

火葬場で真吉がお骨になるのを待つ間、侘助たちはかまの中で真吉が焼ける様子を見せてもらう。火葬場職員から興味深い話を聞き、一同は何となく神妙な面持ちになる。外へ出た侘助たちは一人で待っていたきく江と煙突から立ちのぼる煙を黙って見上げる。

お骨になった真吉と自宅へ帰ると、室内はすっかり片付いていた。最後の宴席の場では、侘助が挨拶する予定だったが、きく江が喪主として挨拶したいと言い出す。きく江の挨拶は故人と長年連れ添った妻らしい心のこもったものだった。

ようやく全てが終わり、侘助たちは帰る人々を見送る。侘助と千鶴子は黙って見つめ合い、手をつなぐ。

その後、侘助と千鶴子ときく江の3人は後片付けのため花やダンボールなどを庭で燃やす。真吉の遺影が飾られた祭壇では、線香の煙が静かに立ちのぼっていた。

お葬式 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:1984年
  • 上映時間:124分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:伊丹十三
  • キャスト:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治 etc

お葬式 批評・レビュー

映画『お葬式』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

ドキュメンタリーのようなエンターテイメント

お葬式という儀式ほど、ふざけることが許されない場はない。よくあるドラマの中のお葬式では、故人を偲ぶ人々が悲しみにくれる様子が粛々と描かれるのが定石だ。

しかし、現実に身内のお葬式を出したことがある人にはわかると思うが、遺族というのは悲しみにくれている暇がない。大事な家族を亡くして呆然としていると、病院から容赦なく“葬儀屋はお決まりですか?”と聞かれる。暗に“早く遺体を引き取ってくださいね”と言われているわけだ。

そこから始まる葬儀屋との打ち合わせでは、作中にあるように棺桶や戒名や坊さんへのお布施など相場のよくわからないもののランクを決めていかないといけないし、ここでの常識がよくわからないのでいちいち葬儀屋に“こういうのはアリですか?”と尋ねることになる。侘助のマネージャー里見の“私も電話でお棺を買うなんて初めてですからね”というセリフや霊安室で納棺をどうするか揉めるところなど、非常に現実的でそこが不思議とおかしい。“あるある!わかる!”の連続でなんだか嬉しくなる。嬉しいというのも妙なのだが。

義父のお葬式を主宰した実体験を経て“お葬式は映画になる”と直感した伊丹監督はやはり鋭い。みんなが大真面目に難問へ挑戦し、助け合ったり反発しあったりしながら泣き笑いしつつ目的を貫徹していくストーリーというのはドラマの基本構造であり、「お葬式」そのものがよくできたドラマなのだ。

ドキュメンタリーのようで、しっかりエンターテイメントになっているところが映画的であるし、伊丹監督らしいデビュー作と言える。

成功の秘訣はキャスティングにあり

この映画の楽しみはストーリーではなく人間観察にある。作り物である映画の中でリアルな人間観察を楽しむためには、脚本の面白さは当然として役者の力量が何より重要だ。

その点をしっかり押さえたキャスティングのうまさが、この映画を成功させた一番の要素だろう。特に三河のおじさんを演じた大滝秀治、マネージャー役の財津一郎の他では出せない重量感と味は最高だ。タケモトピアノのCMでしか財津一郎を知らない世代の人に、コメディアンとしての彼の底力をぜひ見て欲しい。

お葬式 感想まとめ

高瀬春奈演じる主人公侘助の愛人が大暴れすること以外、これといった事件も起こらず、真吉の臨終からお葬式が終わるまでの三日間を淡々と描いたこの作品の面白さは、細かいところに目がいく人でないとわからないかもしれない。

子供の頃、卒業式や入学式など厳粛な雰囲気の中で来賓の偉い人が壇上でつまずいたりすると、無性におかしかったような経験はないだろうか?前の列にいる友人の肩が小刻みに震えるのを見てしまうと説教覚悟で吹き出すしかない。厳粛な場にこそ最高のコメディが隠れている例の典型である。

この映画も細かいディティールにこだわり大真面目に「お葬式」を描いている。不謹慎なようだが、みんな大真面目だからおかしくて、そこが愛しい。

Amazon 映画『お葬式』の商品を見てみる