映画『おやすみなさいを言いたくて』あらすじネタバレ結末と感想

おやすみなさいを言いたくての概要:危険な紛争地域を取材する報道写真家のレベッカは、妻であり2人の娘の母親でもあった。信念を持って続けてきた仕事と家族の間で揺れ動く女性の葛藤を細やかに描いた秀作。2013年公開のノルウェー・アイルランド・スウェーデンの合作映画。

おやすみなさいを言いたくて あらすじネタバレ

おやすみなさいを言いたくて
映画『おやすみなさいを言いたくて』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

おやすみなさいを言いたくて あらすじ【起・承】

報道写真家のレベッカ(ジュリエット・ビノシュ)は、カブールの紛争地域で自爆テロを実行する女性の写真を撮っていた。レベッカは女性を乗せた車に同乗し、女性の表情を撮り続ける。しかしレベッカが車から降りたことで警官の職務質問を受け、追い込まれた女性は現場の広場で自爆し、多くの市民が犠牲となる。

爆風で重傷を負ったレベッカはドバイの病院に運ばれる。ドバイまで来た夫のマーカス(ニコライ・コスター・ワルドー)は、妻の心配をすることに内心疲れ切っていた。

レベッカには高校生のステフとまだ幼いリサという2人の娘がいた。アイルランドの自宅に戻ったレベッカをリサは無邪気に迎えるが、母を本気で心配していたステフは笑顔を見せない。レベッカは家族の苦しみと寂しさを思い知り、仕事を辞める決意をする。

レベッカは家族の幸福を大事にしようと努め、一家に笑顔が戻ってくる。学校でアフリカ・プロジェクトに参加しているステフは、レベッカが撮影した第二次コンゴ戦争の写真に興味を持ち、レベッカの仕事の話も聞くようになる。

レベッカはケニアの難民キャンプの取材を依頼される。行くつもりはなかったが、そこは安全だと聞いたステフが一緒に行きたいと言い出す。最初は反対していたマーカスもレベッカを信用し、2人が行くことを許してくれる。

おやすみなさいを言いたくて あらすじ【転・結】

難民キャンプでステフはレベッカにもらったカメラで写真を撮り、親子は距離を縮めていく。しかし翌日の取材中に現場は危険な状態になる。レベッカは怯えるステフを案内人に任せ、武装集団に襲撃されたキャンプへ後戻りし、その悲惨な光景をカメラに収める。

レベッカが撮影した写真のおかげで国連はキャンプのセキュリティを強化してくれたが、ステフは心に深い傷を負う。レベッカが話そうとしてもステフは話したがらず、ただあのことを父親には言わないで欲しいと繰り返す。

しかしマーカスはステフのカメラに残っていた動画で、あの時の一部始終を見てしまう。レベッカの身勝手な行動に激昂したマーカスは彼女を家から追い出し、子供たちは怯えて泣き出す。レベッカは2人を車に乗せようとするが、2人はマーカスに助けを求め、レベッカは家族から孤立する。

家族の元には戻れないと思ったレベッカは、再びカブールの紛争地域へ行くことにする。しかしその前に、ステフのプロジェクトの発表会を密かに見に行く。

ステフはケニアのことを発表する。世界から見捨てられている場所を誰かが撮り続けるべきで、それが自分の母だったこと。さらにあの難民キャンプの子供たちは自分よりもっと母を必要としているとステフは話す。

その夜、レベッカは子供たちに別れを告げ、カブールへ向かう。そこで体に爆弾を巻きつけていたのは十代前半の少女だった。レベッカはショックのあまり写真を撮ることができず、ただ少女を乗せて走り去る車を呆然と見送り、その場に崩れ落ちる。

おやすみなさいを言いたくて 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2013年
  • 上映時間:118分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:エリック・ポッペ
  • キャスト:ジュリエット・ビノシュ、ニコライ・コスター=ワルドー、ローリン・キャニー、アドリアンナ・クラマー・カーティス etc

おやすみなさいを言いたくて 批評・レビュー

映画『おやすみなさいを言いたくて』について、感想と批評・レビューです。※ネタバレ含む

家族の葛藤

結婚して子供を持った女性が仕事を続けるということは普通でもなかなか大変なことだが、レベッカの場合は女性だから大変なわけではない。彼女の仕事は危険な紛争地域を取材する報道写真家であり、これは男性でも家族に相当な精神的負担をかける仕事だと言える。

いつ死んでもおかしくないような戦場が仕事場なのだから、待つ身の家族はたまったものではない。レベッカの仕事に対する情熱を理解し、結婚してからも彼女を支え続けてきた夫のマークスは偉い。マークスがさすがに限界だと感じたのは、“母の死”を現実的にステフが恐れるようになり、不安定になっていたことも大きく影響しているだろう。マークスは心から家族を愛しているからこそ、レベッカの行動に怒りを感じるのだ。

私にはマークスやステフの気持ちがとてもよくわかる。ステフがレベッカに“ママが死んじゃえば皆で一緒に悲しんで、それで終わり”と言ったのは、自分より仕事を優先する母を責めているのではない。母の仕事を誇りに思う気持ちと、母を失う恐怖に押し潰されそうな気持ちの間で揺れ動いているのだ。このステフの葛藤は痛々しい。

レベッカの葛藤

レベッカも家族が自分のせいで苦しんでいることを理解し、一度は仕事を辞める決意をする。しかしレベッカは結局、自分の正義感(怒り)を抑えることができない。

ケニアで泣き叫ぶステフを残して銃撃戦の現場へ向かったレベッカは、何かにとりつかれたようにシャッターを切る。この時レベッカは娘や家族のことなど忘れ去っている。逆にそうでないと、あの危険な場所へ突進していくことはできない。

レベッカ自身が“抑えきれない何かが自分の中にある”とステフに告白している。一種の戦場中毒状態(戦争映画を見ていると軍人の人にも多い)でもあり、彼女は戦場よりも情熱を持て余す普通の生活に恐怖を感じている。家族を愛する気持ちに嘘はないが、それに勝る強い使命感を捨てられない。

“コンゴで起こっていることより、パリス・ヒルトンのゴシップで大騒ぎする世界に怒りを感じた”という正義感と、“誰かが世界から見捨てられた場所の真実を伝えなければならない”という彼女の信念は尊い。それがわかっているからこそ家族は余計につらい。誰も悪くないのだが、唯一の罪はレベッカが家庭を持ってしまったことなのかもしれない…。

おやすみなさいを言いたくて 感想まとめ

世界の紛争地域で起こっている事実に対して偏った思想や一方的な正義感は見せないドキュメンタリーのような演出は好感が持てる。その分こちらはいろいろなことを真剣に考えてしまうし、それがこの演出の意図なのだろう。

淡々としているだけにラストで受ける衝撃がすごい。爆弾を身にまとう少女を見て動揺し、一枚も写真を撮れなかったレベッカの姿には、吐き気をもよおすほどの真実味があった。ジュリエット・ビノシュの迫真の演技も素晴らしい。ここを撮りたくて、エリック・ポッペ監督はこの映画を作ったのではないかと思えるほど、忘れられないラストシーンになっている。多くの人の目に触れて欲しい秀作だ。

Amazon 映画『おやすみなさいを言いたくて』の商品を見てみる