映画『スポットライト 世紀のスクープ』の概要:定期購読層の半分以上がカトリックの地方紙が、巨大権力の大罪を暴く。幾多の困難にも屈することなくジャーナリズムの生命を懸け正義を貫いた取材シームの実話の映画化。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:128分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史
- 監督:トム・マッカーシー
- キャスト:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー etc
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『スポットライト 世紀のスクープ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 あらすじ【起・承】
時は’01年7月米国東部の新聞社・ボストン・グローブにフロリダ・ヘラルドからユダヤ系の編集局長バロン(リーブ・シュレイバー)が就任した。
ネットが新聞業界に多大な影響を及ぼし始めたこの時代、バロンは読み応えのある記事で読者層を掴もうと驚くべき指示を出す。
それはとうの昔に地元では封印された『ゲーガン事件』について再調査し、ボストン・グローブの特ダネチーム『スポットライト』に取材の権限を渡すというものだった。
『ゲーガン事件』はゲーガンというカトリックの神父が、30年もの間に80人もの信徒の児童に性的虐待をl加えたにも関わらず無罪放免になっている事件である。
スポットライトは、一年かけて同じネタを追う為、この事件に携わるという事はひいては神父による性的虐待の裏側を取材する事になるのだ。
ボストン・グローブは、定期購読層の半分以上がカトリックで、絶対的権力をもつ教会に歯向かうのは、新聞社の命運をかけての事だった。
スポットライトのデスクのロビー(マイケル・キートン)は、この手の訴訟に詳しい大手弁護士事務所のマクリーシュ(ビリー・グラダップ)と、
旧友で教会の相談役でもある弁護士のサリヴァン(ジェイミー・シェリダン)に話を聞くが、2人とも守備義務を盾に話そうともしない。
記者歴の浅いマイク(マーク・ラファロ)は、アルメニア系の被害者側の弁護を続けるガラベディアン(スタンリー・トウイッチ)とコンタクトを取ろうとするが、
彼は、メディアや裁判所、教会からの脅迫、態度に辟易としていた。
そんな時、編集部に虐待被害者の会のサヴィアノ(ニール・ハフ)が訪ねてくる。
サヴィアノは、神父は貧しく親の愛に飢えている子だけを狙う事、子供たちは虐待を受けた年齢で心の成長が止まってしまうという事実を告げる。
スポットライトチームは、調査を進めていくが、ゲーガン事件の奥は深く、それは教会の闇そのものを暴く必要があった・・・。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 結末・ラスト(ネタバレ)
チームの紅一点サーシャ(レイチェル・マクアダムス)は、別の神父に虐待されたという被害者や、虐待を認める神父を訪ねる。
すると虐待は1人の神父だけでなく歴代、連鎖になっている事が判明する。
マイクは取材を進めていくうちに問題がある神父が送られてくる療養施設で働いていたという元神父(リチャード・ジェンキンズ)から度々電話を受取る様になる。
彼の通報によると、神父の約6%は小児性愛者だというのだ。
という事は、ボストン市内だけでも、問題があると考えられる神父の数は80人近く居るという、おぞましい現実にチームは直面する。
取材に絶望したその時、データ分析のプロのマット(ブライアン・ダーシー・ジェームス)が、教会の年鑑を見て、神父が一定期間で不自然に病欠もしくは、別の地域に左遷させられているのを発見した。
チームは、その法則を調べれば、問題のある神父の名前、そしてマクリーシュたちが示談に持ち込んだ神父や被害者の名前と数が一致するのではと判断し、地道に調査すると、まず神父の数がほぼ一致。
マクリーシュの元を訪ね、示談に持ち込んだ神父の人数は45人だった事を突き止める。
そして残りの疑惑の神父の人数を確認する為に、ロビーはクリスマスイブにサリヴァンの家にアポなしで訪れる。
サリヴァンは根負けし、とうとうロビーに、虐待の疑いのある神父の名を教える。
そして締め切りまでに記事を間に合わせたスポットライトチームは、’02年1月、とうとうスクープとなって現れ、日曜の朝には、
被害者からの通報でチームのデスクの電話は鳴り響き、映画は終わる。
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『スポットライト 世紀のスクープ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
映画は、はじまりにすぎない
監督のトム・マッカーシーは『扉をたたく人』や『靴職人と魔法のミシン』など手堅い作品作りで定評のある監督。
この映画の終わりは被害者からの告発電話がスポットライトに、どんどんかかってくるところで終わるが、それは『はじまり』に過ぎない。
結果、被害者の数は500人、加害者とされる神父は最終的に250人にのぼり、グローブ紙は、ボストン教区だけで黙認された教会での性的虐待被害について600件以上記事を連載したのだ。
王様は裸だという勇気
グローブ紙本社のあるボストンは、2人に1人がカトリックであり、劇中に出て来るバロンやガラベディアンは、よそ者扱いされているも同然だ。
バロンが赴任してくるまでは、グローブ紙だけでなく、米国のメディア全体でも教会を疑うという概念はなかったのだろう。
そこにメスを入れる事が出来たのは教会関係者に『王様は裸だ』という勇気を記者たちが持ったからだ。
神父の犯罪を裏付ける機密文書の公開をマイクが裁判所に申し込む時に、裁判所の判事は渋る。
マイクはあえて、こう切り出す『記事にしない場合の責任は?』
取材相手となれなれしくなりすぎて記事を書けなくなったという様では記者ではない、それを思い知らされる映画でもある。
細部まで当時の様子を再現したドラマ
大都市にある主要新聞社のニュース製作部を再現する為に、映画の美術担当者はトロントの元デパートの建物に、オフィスを作り上げたらしい。
その上で、実際のボストン・グローブ社で撮影した現場を繋ぎ合わせた。
何より気を使ったのは、現在と映画の時代背景となった15年前とではOA機器の発達により、オフィス空間の配置が
全く異なる事だったという。
登場人物のファッションもさることながら、こうした部分にも気を配ってある所も見所である。
マーク・ラファロにレイチェル・マクアダムス、スタンリー・トゥッチと好きな俳優が沢山出ているのに、社会派なストーリーに躊躇して手を出していなかった今作。
賞を取っているということで鑑賞しましたが、想像していたより山あり谷ありの展開が面白く、どんどん引き込まれていきました。
信仰と言うのは誰にも邪魔できないもので、その人が信じているものを批判するというのは本当に勇気がいることだったと思います。しかし、蓋を開けてみれば多くの被害者が出てくるのが事実。こんなことは私たちが知らないだけで世界中の色々なところで起きているのだろうなと感じました。(女性 30代)
実話ベースのお話。こういう作品を観ると、アメリカには確かに色々な問題があるのかもしれないが、その問題をこうやって映画にして公開できるということは良い部分なのだろうなと思う。問題があるのにそれを発表できない、誰もしようとしないという状況の方が遙かに恐ろしい。さらに言えば、そこに問題なんかなかったかのように蓋をしたり、蓋を開けようとする人が攻撃されるような状況はさらに恐ろしい。あらためてそんなことを思う一本。(男性 40代)
映画『スポットライト 世紀のスクープ』 まとめ
この映画の舞台となった15年前から、現在にかけて、多くの新聞が休刊となり、ベテラン記者が仕事を失っているのはネット上でも同じ事である。
ニュースを作る予算の大幅削減、取材期間の短縮、効率重視で、この映画の様な濃密なニュースを送り続けられる事は可能なのだろうかと考えた。
今現在、ニュースは、ネットでパッと見てアクセス数が沢山あるものがよしとされているが、それがいいとは限らない。
その様なアクセス数稼ぎのニュースが横行する度、スポットライトチームの様な優秀なニュース編集室が消えていくのではないかと心配でならない。
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