映画『天才スピヴェット』の概要:2001年に公開されたヒット作「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作で、初の3D映画。10歳の天才少年スピヴェットが、家族に内緒でスミソニアンを目指す不思議な物語。
映画『天才スピヴェット』 作品情報
- 製作年:2013年
- 上映時間:105分
- ジャンル:アドベンチャー、ヒューマンドラマ、コメディ
- 監督:ジャン=ピエール・ジュネ
- キャスト:カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム=カーター、ジュディ・デイヴィス、カラム・キース・レニー etc
映画『天才スピヴェット』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★★
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『天才スピヴェット』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『天才スピヴェット』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『天才スピヴェット』 あらすじ【起・承】
モンタナ州でコパートップ牧場を経営する、身も心もカウボーイの父テカムセ・E・スピヴェット、昆虫学者の母クレア、愛犬タピオカ、一刻も早くモンタナを出たいと考える姉グレーシー、二卵性双生児の弟レイトンと暮らすテカムセ・スパロー(T.S)。
レイトンは父のお気に入りで体格の良さ、T.Sは頭の良さを受け継いでいた。
しかし、レイトンはライフルの暴発で命を落とし、一緒にいたT.Sは大きなショックを受け、自分の責任だと思うようになる。
家族も同様にショックを受け、レイトンの話題はタブーのようになった。
天才科学者を目指すT.Sの発明が名誉あるベアード賞を受賞し、ワシントンで行われる式典でスピーチをしてほしいと頼まれる。
彼は喋ることのできない父の発明だと嘘を吐き、依頼を断るが、悩んだ末に単身ワシントンに向かうことに。
早朝、家を出た後に父の車とすれ違うが、T.Sを引き留めなかったことから彼の心にレイトンの死の責任がのしかかり、逃げるように貨物列車に飛び乗る。
ネブラスカ州で、別の貨物列車に乗っていた老人トゥー・クラウズと親しくなるT.S。
そして母から禁止されているホットドッグを買いに向かうと、自分が家出人として捜索されている事を知る。
映画『天才スピヴェット』 結末・ラスト(ネタバレ)
シカゴに着いたT.Sだったが、イタズラ目的で線路に忍び込んだと勘違いされ、警察に追いかけられてしまう。
逃げる途中で肋骨を痛めてしまったT.Sは、ヒッチハイクをしてワシントンに向かう。
写真好きのトラック運転手リッキーに拾われ、目的地スミソニアンに到着したT.S。
電話をかけてきた女性ジブセンに追い返されないよう両親は死んだとウソをつき、自分の発明だと証明する。
スミソニアンで怪我を診てもらうと骨折していたが、スピーチをすることになる。
10歳の天才科学者スピヴェットのスピーチと、弟レイトンの死への懺悔は会場の涙を誘った。
そこには、隠れてT.Sを見守る母クレアの姿が。
ジブセンは、T.Sを金儲けや話題作りの広告塔として扱い始める。
トーク番組への出演も決まるが、そこにはサプライズゲストとして呼ばれた母クレアが。
レイトンの死は事故で、誰もT.Sを責めていないと説得されるとT.Sは家に帰る決意をする。
父も迎えにきており、家出をした朝に引き留めなかった理由を聞くT.Sだったが、運悪くT.Sの姿を見ていなかっただけだった。
やがてスピヴェット家には新しい家族が加わり、若き天才科学者T.Sは生まれてくる家族のために、新しい発明をするのだった。
映画『天才スピヴェット』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『天才スピヴェット』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
3Dじゃなくても十分ワクワクする世界観
一風変わった切り口で描く作風が有名な、ジャン=ピエール・ジュネ監督作品の初3D映画だが、もともと変わった演出と映像技術が売りだった監督なだけに、今更3D作品になっても驚くような映像は出てこない。
しかし、見るものを魅了する独特な世界観は、本作でも健在。
T.Sの荷造りの様子は見ていて遠足の前の日のようなワクワク感が得られるし、生まれてくる時代を間違えたカウボーイの父の部屋、壊れたトースターがずらりと並んだキッチンなど、個性的な家の様子も面白い。
しかしそんな家族の間に“レイトンの死”という壁ができていて、不自然なくらいにレイトンを象徴するものが存在しない。
だが、レイトンの死の瞬間をグラフで表して重くしすぎないようにしつつ、走り回る父や泣きじゃくるグレーシーとT.Sの姿を映すことで軽すぎない問題にしているのはさすが。
壮大な家出物語とこっそり入れられたアメリカ批判
レイトンの幻と一緒にスミソニアンを目指すT.Sの冒険は、ユニークで可愛らしい。
食べたかったホットドッグを頬張る子供らしいシーンもあれば、老人に松の木の生態を説くといった天才らしい一面もみられる。
子供目線では頭でっかちにしか見えない教師、家出の妨げの警察官が意地悪く描かれていたり、スミソニアンのジブセンの見栄っ張りな部分も、セリフ回しや動きが巧妙に作られている。
トーク番組で、「子供に銃を持たせるような親が悪い」と言い切る母クレアのセリフは、銃社会、アメリカ嫌いの監督の心がそのまま表れたようで驚かされる。
父、母、T.Sに比べて姉グレーシーの存在感が薄いようにも見えるが、テレビに出演するT.Sを見ながら電話ではしゃぐ姿は、よくあるティーンエイジャーの姿だ。
パッケージから、コミカルな物語なのかなと勝手に想像していた。もちろん笑える部分もあったのだが、それだけではなかった。家族の深い愛や天才的な頭脳を持つ自分への葛藤なども描かれており、自然と涙が滲んでくるような感動的な作品だった。スピヴェットは確かに誰よりも優れた頭脳を持っているが、心はまだ幼くて、10歳という少年の姿がリアルに描かれていたと思う。スピヴェット役のカイル・キャトレットの演技も素晴らしかった。(女性 30代)
優れた頭脳を持つスピヴェットは大人から見れば天才少年なのかもしれませんが、心はまだ子供でイタズラしたり、親に甘えたい気持ちもいっぱいあったのだろうなと思うと可愛くて仕方ありませんでした。
ジャン=ピエール・ジュネ監督作品ということで、面白くてちょっぴり不思議な世界観を存分に楽しむことが出来るでしょう。スピヴェットの大冒険に寄り添いながら、子供らしい悩みや天才ならではの葛藤など、スピヴェットの気持ちに寄り添ってあげたくなる作品です。(女性 30代)
映画『天才スピヴェット』 まとめ
まるで精巧に作られた飛び出す絵本を見ているような作品で、意地悪な教師や警察官、相手が子供だからとお金儲けに走る見栄っ張りのずるい大人の姿を隠さずに描いた物語。
アメリカ嫌いの監督らしく、「銃を子供に持たせるなんて言語道断」といった設定やセリフも盛り込まれているが、あからさまにしていないところに好感が持てる。
ライフ・ラーセンの小説「T・S・スピヴェット君 傑作集」を原作としており、原作のほうも気になってしまう。
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