映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』の概要:『ソロモンの偽証 前篇・事件』は、宮部みゆき原作小説の映画。中学校で起こった事件が、クラス、学校、そしてやがては世間にまで影響を及ぼしていく過程を描く。前後編の前編。
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:121分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ミステリー、青春
- 監督:成島出
- キャスト:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也 etc
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 あらすじ【起・承】
バブル崩壊のほんの少し前、1990年12月。
雪の降るクリスマスの夜、ある事件が起こった。25日の朝、藤野涼子は学校のうさぎの世話で朝早く家を出た。同じ係の野田健一と一緒に学校に着くと、通用門のすぐそばで雪に埋もれた死体を発見する。
遺体は同じクラスの不登校の生徒・柏木卓也のものだった。死因は転落死で、警察は死亡時刻の状況から自殺と判断した。
ところが、冬休みも終わろうとする頃、涼子宛てに「告発状」が届く。差出人は不明で、内容は柏木卓也の死に関わることだった。
差出人はこれは殺人事件だとし、犯行を目撃していたという。犯人は二年D組の大出俊次とその友人二人。この事件をもう一度警察に調べてもらうように願う内容だった。
警察官の父を持つ涼子はすぐに父に相談した。同じ告発状は校長の元にも届いており、差出人の特定とカウンセリングのためにA組の生徒に取り調べをすることになった。
A組に絞ったのは、涼子の住所を知っていたことから、彼女と近い存在だと思われたからだ。
取り調べの結果、警察は送り主を突き止める。三宅樹理と浅井松子だ。
警察の読み通り送り主はこの二人だ。
三宅樹理はニキビ面の目立たない生徒で、浅井松子は肥満で過去にいじめられたことはあるが、今は明るく前向きな生徒だ。
樹理は過去に、大出たちに絡まれ、ニキビ面をからかわれて殴る蹴るなどの暴行を受けたことがある。彼女を助けようとした松子も同様だ。
実は涼子はこの現場を目撃しており、怖くて見て見ぬふりをした。それを柏木卓也に見とがめられ、「口先だけの偽善者」と言われ深く傷ついた。
柏木に苦手意識を持っていたのは涼子だけではない。担任の森内も彼の見透かすような眼を怖く思っており、苦手にしていた。
森内にも告発状は届けられたはずが、破り捨てられた状態で発見され、それがメディアで報道されて事件は学校だけの問題ではなくなっていく。
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 結末・ラスト(ネタバレ)
告発状が世間に知られたことにより、犯人だと名指しで書かれた大出はマスコミに付け回され、告発状を破った疑いのある森内も追い回され、とうとう辞職してしまう。
報道によって保護者は声をあげたため、警察は保護者を集めて説明を行った。論理的な説明に保護者達は納得し、やはり自殺だったのだと落ち着く。
これに衝撃を受けたのは松子だった。松子は妄信的に樹理を慕っており、彼女が犯人は大出だと言ったため協力して告発したのだ。しかし、親の話を聞くと樹理が犯行現場にいるなどあり得ないのだ。
雨の中樹理を問いただしに行った帰り、泣きじゃくる松子は車にはねられて死んでしまう。
季節は変わって学年は3年になり、クラスは別々になっていたが、元A組から二人目の死者が出たことで学校は大きく動揺する。校長は自分の責任を感じて辞職する。松子の親友だった樹理はショックのあまり声が出せなくなってしまう。
涼子も、小学校が同じだった松子の死にはショックを受けた。
季節は夏に移り変わろうとしていた。事件は風化しようとしていたが、涼子はこのままでいいのかと疑問に思う。
そんな時、野田に別の学校の神原和彦を紹介される。柏木の葬儀にも来ていた彼は、小学校時代の柏木の友人だという。彼も、柏木に「口先だけの偽善者」と言われたことがあった。彼も柏木の死を疑問に思っているようだった。
三人は、学校で裁判を起こして真相を追究しようと決心する。
当然親や教師たちは反対したが、バスケ部顧問の北尾だけは賛成し、後押ししてくれた。
裁判は陪審員裁判にすることになった。判事から陪審員・弁護人・検事まですべてが生徒で構成される。涼子は検事として柏木が殺されたことを立証する側、神原は弁護人として大出の無実を証明する側になった。
容疑者の大出は、家が火事に遭い、度重なるメディアの追究に父親が怒り、彼や母親に暴力をふるっていた。大出は母のためにも無実を証明したいと出廷を了承する。
その頃、辞職した森内は探偵を雇い、隣の夫婦の妻が自分の郵便受けを漁っていた事実を突き止める。告発状を抜き取ったのもメディアに送ったのも彼女だった。
そして、学校を休んでいた樹理はメディアに学校裁判が行われることを知らせていた。
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
事件が起こり、これからが山場
この映画は前後編の二部作なので、一つの作品としては起承転結の承までを描いている。涼子や神原を中心として事件の真相究明に本格的に乗り出していこうと盛り上がる所で後編に続く。
前編で描かれることだけでもすごい密度で、殺人(?)やいじめ・DVなど、事件が一言では片づけられないことが想像できる。
ミステリーとしては、恐らく柏木は本当に自殺で、大出は全く関わりがないことがわかるし、彼に恨みを持つ樹理が意図的に犯人に仕立て上げようとするのも明らかなので特に面白みはないが、中学生がどこまで裁判をやりきることができるのかが気になる。それは後編で描かれるので、前編ラストでぐいぐい盛り上げられた後なので期待度は高い。
藤野涼子について
主人公の名前は藤野涼子だが、演じる女優も藤野涼子だ。これは、この作品で映画主役デビューを果たすことを機に付けられた芸名らしい。これ以前の活躍を知らないので、特にこの役名と同名の主演デビューは印象的だった。
他の中学生を演じる役者たちも、石井杏奈や前田航基を除いてはほとんどが無名の子供たちで、それまでの俳優としての活動もほとんどないような人物ばかりだが、これがいい。演技馴れしている役者を集めて集団にするよりも、本当の中学生としてのリアリティがある。
ただ、これでは集客できないと思ったのか、映画の宣伝はほとんど脇役でしかないベテランの俳優たち。作品としてはもっと子役たちをプッシュしても良かったのではないかと思う。
映画だから面白く、興味深く見られるのであって実際に自分の身近でこんなことが起きたら、自殺なのか殺人なのか突き止めようなんて気持ちは起こらないだろうと冷めた目で見てしまいました。
登場する生徒たちが皆、謎の正義感があり映画だからそれでもいいのかもしれませんが、今の時代現実に他人のためにこんなに熱心になれる子がどのくらいいるのだろうと考えてしまいます。
とは言え、ストーリーはとても面白く観客を引きつける魅力が存分に感じられる作品なので後編もとても楽しみです。(女性 30代)
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』 まとめ
中学生の死を描いた作品で、学校という社会のヒエラルキーの問題、いじめ、DVと、問題はどんどん学校の外にまで広がっていき、簡単には収まりそうもない話で、後編でどう収拾をつけるのかが気になる。
この映画で一番輝いているのはやはり主演の藤野涼子だ。役柄としては、学校で特に目立っているというわけでもなく、いじめの加害者でも被害者でもない平凡な生徒。ちょっとだけ優等生という感じで、学校を舞台にした作品の語り手として申し分ない立場だ。演じる藤野涼子も落ち着いた優等生というイメージによく合っている。
関連作品
- ソロモンの偽証 後篇・裁判[後作]
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