映画『青の炎』の概要:貴志祐介の同名小説を、鬼才・蜷川幸雄が監督として映画化した作品。二宮和也主演、松浦亜弥がヒロインを演じた。
映画『青の炎』 作品情報
- 製作年:2003年
- 上映時間:116分
- ジャンル:青春、ミステリー、ヒューマンドラマ
- 監督:蜷川幸雄
- キャスト:二宮和也、松浦亜弥、鈴木杏、秋吉久美子 etc
映画『青の炎』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★☆☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『青の炎』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『青の炎』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『青の炎』 あらすじ【起・承】
主人公の櫛本秀一は、名門高校に通うごく平凡な高校生だった。家族は、母親と妹。趣味は、使わなくなったガレージに自分の好きなものを集めて、音楽を聴いたり、愛車のロードバイクを整備したりすること。
何不自由ない、穏やかな生活をしていたがある日、かつての義理の父親である曽根という男が家にやってくる。暴力的なふるまいで、秀一や母、妹を脅し、家に居座ろうとする曽根。秀一は、母や妹のために、なんとか曽根を追い出すことができないかと警察を頼ったり法律を調べたりと奔走するが、どうやっても自分たちを守ってくれそうになかった。
誰かに頼っても無駄だと悟った秀一は、その頭脳を生かして曽根殺害を計画する。膨大な本を読み、インターネットを利用して、計画を練る秀一。やがて彼は、銀歯から電気を流し、心臓の微細動を利用することで心臓麻痺のように見せかける殺害方法を思いついた。
何度も何度も迷いが秀一の頭をよぎる。ガールフレンドの紀子の存在もまた、彼を踏みとどまらせる一因だった。しかし、そんな中、曽根が妹の遥香に性的な暴力を加えようとする。もう殺すしかない、と追い詰められた秀一は、計画を実行して曽根を殺害した。
映画『青の炎』 結末・ラスト(ネタバレ)
秀一の計画通り、普段から不摂生をしていたのもあいまって、曽根は病死と判断された。紀子に不信感を抱かれつつも、秀一の計画はうまくいったかのように見えた。
しかし、幼馴染であり、今は不登校の石岡にひょんなことから犯罪に関与していることがバレてしまい、それをネタに強請られることになってしまう。石岡もまた、完全犯罪の様に見せかけて殺害するが、二つの事件を探る刑事に追及され、もはや逮捕されるのは時間の問題だと秀一は心を決めた。
自分が逮捕されれば、残された家族がつらい目に合う。母と妹を守るため、秀一は法律の知識を利用する。その結果、秀一が導き出した答えは、被疑者が事故とも自殺ともわからない方法で死ねば、その事件をどうすることもできなくなる、というものだった。
秀一は紀子に一方的に別れを告げる。そして、「自転車」と言われるたびに「ロードレーサーだ」と訂正していた愛車にまたがって、道路を走り抜ける。自分の人生に思いを馳せながら、トラックの前で大きくハンドルを切るのだった。
映画『青の炎』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『青の炎』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ありそうでない話
主人公が高校生で、家族のために完全犯罪を計画し、実行する、というありそうで、ない話である。なぜありそうでないかというと、結局殺人を犯してしまったものをフィクションの世界だろうが、許すのはなかなか難しいからだ。そうなると、最終的に主人公が救われないパターンの話にしかなりづらい。それを避けるために、よく「なぜ善良な一般市民が殺人を犯したのか」という、謎解き側にフォーカスされる作品は生まれやすい。
しかしこれは違う。最初から最後まで、秀一の目線で話は進んで終わる。高校生らしい一面もある、ちょっと大人ぶった少年が、ひたむきに家族を想い、追い詰められていくさまは観てて苦しいとしか言いようがない。
後味が悪すぎる
どんな事情があっても、秀一は犯罪を犯した。二人も人間の命を奪った。だから当然と言えば当然の報いなのかもしれないが、それにしても終わり方が悲しすぎる。しかし、ここまで追いつめられたということそのものがこの話の要でもあると思う。
手を差し伸べる大人がもっと早くからいたら、と考えずにはいられないが、幼いというのはこういうことだ。思いつめて思いつめて、そのエネルギーは時に予想を超える。とにかく秀一の心理をなぞっていると、どうしようもなさに苦しくなるしかない。
映画に何を求めるか
映画に一体どのようなものを求めて観るかによって、この作品は評価が分かれる作品だと思う。すっきりしないし爽快でもない。感動もするけれどつらい感動だし、どちらかというともう悲しいばかりだ。
けれど、映画というものは私たちの経験しえない世界を描いてくれるものだから、そういった「味わうことのない思い」を堪能するには最高の作品だと思う。
この作品は、アイドルとしての二宮和也では無く「役者」としての彼の存在を確立させた作品だと思います。嵐のニノが好きだった私は、当時ニノのファンとしてこの作品を鑑賞しましたが、正直見なければよかったと思うほど悲しい作品で気持ちが沈んだのを覚えています。
時が経ち、『青の炎』という一つの作品として再び鑑賞しましたが、当時の印象とは異なり秀一への共感や、誰も助けてくれないことに対する怒りなど様々な感情が入り交じりました。モヤモヤした気持ちが残るラストですが、それがこの作品の良さなのだと思います。(女性 30代)
本作は、貴志裕介による同名小説を蜷川幸雄監督が映画化した青春サスペンス作品。
少し生意気で大人ぶった高校生の少年が、家族を愛するが故に起こした事件。
終始、陰鬱な重い雰囲気で、誰も手を差し伸べてくれない悲しさや、どこに向けたらいいか分からない怒りの矛先などといった主人公の胸の内が痛いほど伝わってきた。
近くに話を聞いてくれる人がいればと思うとやるせない気持ちになる。
何とも辛い終わり方に気持ちが沈み、切なさや悲しさがじっとりと残る作品。(女性 20代)
映画『青の炎』 まとめ
問題作、といえるほど良作である。ただ、やるせなさや悲しさばかりが後をひく映画なので、誰にでもおすすめできる作品ではない。蜷川幸雄監督ということで演出は非常にうまいが、だからこそ陰鬱さが一層増す。
ちなみに原作からはやはりある程度端折られている部分があるので、もし映画が気に入ったのなら小説を読むことをおすすめする。映画では描き切れていないエピソードもあり、より一層胸を打たれるはずだ。ただし、これ以上胸を打たれるのは、とためらうほど、映画そのものはつらい結末を迎えることをお忘れなく。
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