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映画『それでも夜は明ける』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『それでも夜は明ける』の概要:実在の黒人男性ソロモン・ノーサップの実体験を綴った「Twelve Years a Slave」を原作とした伝記映画。1840年当時のアメリカ南部で、黒人奴隷がどれほどひどい扱いを受けていたかが克明に描かれており、映画は数多くの賞を受賞した。原作者のソロモン・ノーサップは、解放後に奴隷制度廃止運動の活動家として奴隷解放に尽力したが、その後謎の死を遂げている。

映画『それでも夜は明ける』の作品情報

それでも夜は明ける

製作年:2013年
上映時間:134分
ジャンル:伝記、ヒューマンドラマ
監督:スティーヴ・マックィーン
キャスト:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ etc

映画『それでも夜は明ける』の登場人物(キャスト)

ソロモン・ノーサップ / プラット(キウェテル・イジョフォー)
バイオリン弾きの自由黒人で、妻と2人の子供とニューヨーク州サラトガで幸せに暮らしていた。しかし、悪い男に騙され、奴隷として人身売買され、その後12年間も苦難の日々を強いられる。プラットは、ソロモンの奴隷時の名前。
エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダー)
南部で綿花農場を営む男。奴隷に対して非常に冷酷で、気に入らないことがあると鞭で打つ。サディスティックで変質的な性格をしており、女性の奴隷に対して性的虐待も行う。妻のメアリーもかなり冷酷な女。
ウィリアム・フォード(ベネディクト・カンバーバッチ)
ソロモンを最初に買った材木業を営む男。信仰心が強く、人柄も温厚。ソロモンのことを気に入っていたが、ある事情から彼をエップスに売る。
パッツィー(ルピタ・ニョンゴ)
エップスの農場で働く奴隷の少女。綿花の収穫量が常にトップ。エップスに気に入られ、妻のメアリーからひどい嫌がらせを受ける。

映画『それでも夜は明ける』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『それでも夜は明ける』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『それでも夜は明ける』のあらすじ【起】

1841年ニューヨーク州サラトガ。バイオリン弾きをしている自由黒人のソロモンは、愛する妻と2人の子供と幸せに暮らしていた。ある日、ソロモンは2人の男からワシントンの興行でバイオリンを弾いて欲しいと頼まれる。ちょうど妻と子供が留守中だったこともあり、ソロモンはその話を気楽に引き受ける。興行は成功し、男たちは気前よくレストランでソロモンにご馳走する。しかし、その夜なぜかソロモンは異常に気分が悪くなり、意識を失ってしまう。

目を覚ましたソロモンは、薄暗い部屋に監禁され、両手両足を鎖で拘束されていた。部屋を訪れた男に“自分はサラトガの自由黒人だ”と訴えるが、男は“お前はジョージア州出身の奴隷だ”と言って、ソロモンにひどい暴力を振るう。その後もソロモンは抵抗を続けるが、ひたすら拷問され、無理矢理奴隷ということにされてしまう。

同じように捕まった黒人男性2名と、イライザという黒人女性とその子供2名と共に、ソロモンは船で南部へ運ばれる。そこで抵抗した黒人男性は冷酷に殺され、海に捨てられる。ソロモンは他の黒人から“生き残りたいならお前の素性や読み書きができることを言うな”と忠告を受ける。

ソロモンはプラットという名で呼ばれ、売りに出される。彼を買ったのはフォードという材木業を営む男で、幸いにも温厚な人物だった。同じくフォードに買われたイライザは、子供達と引き離され、ずっと泣き続けていた。

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映画『それでも夜は明ける』のあらすじ【承】

フォードはいい人だったが、この家へ大工として出入りしているジョンという男が嫌な奴で、賢いソロモンを目の敵にする。ソロモンは、水路で材木を運搬する方法を考案し、フォードからお礼としてバイオリンを贈られる。

ジョンの嫌がらせは激しくなり、ついにソロモンはジョンと取っ組み合いの喧嘩になる。ジョンは仲間を連れて仕返しにきて、ソロモンの首に縄をかけて木に吊るす。監督官のおかげで命は助かったが、フォードはこれ以上ソロモンをここに置いておくのは危険だと判断する。フォードは、ソロモンがただの奴隷ではないことに気づいていたが、トラブルに巻き込まれることを恐れ、綿花農場を営むエップスにソロモンを売る。

エップスは非常に冷酷な男で、日々綿花の収穫量をチェックし、成績の悪い奴隷を鞭打っていた。収穫の名人は黒人少女のパッツィーで、エップスは彼女を異常に可愛がっていた。

エップスの妻のメアリーは、夫がパッチィーに執着していることに気づいており、あの女をよそへ売れと騒ぐ。しかしエップスは、聞く耳を持たない。

ソロモンは、メアリーに町でのお使いを頼まれる。ソロモンは逃亡しようと森を走るが、逃亡しようとした奴隷が絞首刑にされている現場に遭遇し、逃亡をあきらめる。ある日、いつものようにお使いへ行ったソロモンは、メアリーが買った紙を1枚だけ盗む。読み書きができるソロモンは、なんとかして自分の状況を手紙に書いて、故郷へ知らせたいと考えていた。

エップスはパッツィーの体を弄ぶようになり、メアリーのパッツィーに対する風当たりはさらに厳しくなる。生きることに絶望したパッツィーは、自分を殺して欲しいとソロモンに頼む。しかしソロモンは、その願いを断る。

映画『それでも夜は明ける』のあらすじ【転】

害虫被害で綿花の不作が続き、エップスは苛立ちを募らせる。金に困ったエップスは、奴隷たちをしばらく判事の農場で働かせる。判事はソロモンのことを気に入り、舞踏会でバイオリンを演奏してもらう。お礼として、判事は内緒でソロモンにお金をくれる。

パレットの農場へ戻されたソロモンは、また綿花農場での労働を強いられる。変化といえば、従業員として白人男性のアームズバイが雇われたことだった。奴隷の監督官だったアームズバイは、酒が原因で監督をクビになり、労働者に身を落としていた。奴隷を鞭打つ良心の呵責から酒に溺れたのだというアームズバイの話を聞き、ソロモンは彼を信用して、自分の手紙を郵便局から出して欲しいと頼む。

アームズバイはソロモンの願いを聞き入れ、お金を受け取る。しかし、彼はソロモンを裏切り、エップスにこのことを密告する。エップスに詰問されたソロモンは、アームズバイが監督官という職を得るために嘘をついているのだと訴え、なんとかその場をしのぐ。そして最後の希望だった手紙を燃やす。

エップスの屋敷に東屋を建てる大工として、旅人のバスという男が雇われる。バスはあちこちを旅している自由主義者で、奴隷制度には反対だった。バスに奴隷たちの労働環境の酷さを指摘され、エップスはバスに脅しを入れる。人種差別の激しい南部では、下手のことをいうと何をされるかわからないという恐怖があった。

映画『それでも夜は明ける』の結末・ラスト(ネタバレ)

ある日、パッチィーの姿が見えず、エップスが狂ったように騒ぎ出す。メアリーの嫌がらせで石鹸をもらえないパッチィーは、近所の女主人に石鹸をもらいに行っていた。パッチィーがそれだけだと訴えても、エップスは納得せず、彼女を裸にして木にくくりつけ、ソロモンに鞭打ちを命じる。ソロモンは手加減していたが、エップスは“本気で打たないと奴隷を片っ端から殺す”とソロモンを脅す。ソロモンは仕方なく、肉が裂けるほどパッチィーを鞭打つ。それを見たエップスは興奮した様子で、自らパッチィーを打ち始める。エップスは完全に狂っていた。ソロモンの心はズタズタになり、大事にしていたバイオリンを自ら壊してしまう。

ソロモンをただの奴隷ではないと感じていたバスは、彼に事情を聞く。ソロモンは秘密を打ち明けることを怖がるが、バスを信用して全てを話す。そして“故郷に住む私の友人に、手紙で自由黒人の証明書を送るよう頼んで欲しい”と懇願する。バスは内心恐ろしかったが、必ず手紙を書くと約束してくれる。

それからしばらくして、ソロモンがいつものように労働をしていると、屋敷に見慣れぬ馬車がやってくる。保安官とともに馬車に乗っていたのは、故郷の友人のパーカーだった。保安官はソロモンにいくつか質問し、バスから届いた手紙の内容が事実であることを確認する。エップスは怒り狂うが、保安官とパーカーがソロモンを守ってくれ、ソロモンはようやく自由黒人として奴隷の立場から解放される。

故郷へ戻ったソロモンは、12年ぶりに愛しい家族と再会を果たす。子供だった娘は結婚し、孫まで生まれていた。ソロモンは涙を流し“許してくれ”と何度も謝る。妻は“あなたは何も悪くない”と、ソロモンを優しく抱きしめるのだった。

映画『それでも夜は明ける』の感想・評価・レビュー

人種差別問題、特に黒人に対する虐待はたくさんの作品で描かれているが、何度見ても胸をえぐられる。それが実話であればなおさらだ。どんな扱いを受けても希望を捨てずに生きることを最優先に過ごした12年は想像を絶する。

教養があり主人となっている白人よりも知的だろうに、黒人であるだけで人身売買されてしまった不運や、己の素性を隠しバカなふりをしなければならなかった主人公のことを考えると切なくなる。過酷な状況で自尊心を保ち自分を律したのはすごいの一言。狂気や保身や偽善など白人たちを通して人間の心の闇も感じた。(女性 40代)


物事の善悪を学ぶべき幼少期に、当たり前のように黒人差別の風潮があったから、大人になってからも何の違和感も抱かずに差別をしてしまう白人たち。当時の社会の異常性が見える作品でした。首をくくっている人のいる横で子どもたちが遊んでいたり、穏やかな昼下がりが描かれているのが本当に残酷で、これが現実だったのかと思うと苦しい気持ちになります。
現代でも人身売買は続いているし、世界のどこかでは、きっと今でも苦しんでいる人がいます。どうしたらこの状況を無くすことが出来るのだろうかと、考えさせられました。(女性 20代)


かつての奴隷制度、何が正しいかを語ることは難しいが、この作品は観ていて辛くショックが大きかった。エップスという男の異常性には、はらわたが煮えくり返る思いだった。本当にここまで良心を捨てきれる人がいたと思うとぞっとする。人を所有物として扱った時の快楽、今更優しさを見せると復讐されるのではないかという恐怖、それらが入り混じり引き返せないところまで堕ちてしまったのだと思った。差別意識は誰にでもあって、大事なのはどこで踏みとどまれるかだと思う。自分自身に凝り固まった、人に対する偏見を考える機会を与えてくれた作品。(男性 20代)


本作は、黒人男性ソロモン・ノーサップの実体験を基に1840年のアメリカ南部の黒人奴隷制度を描いた伝記ヒューマンドラマ作品。
社会の歪みや人間の闇に怒りが込み上げてきた。
想像を絶するような残酷な差別を受けても当たり前のように言いなりになって暮らしている人々を見てとても辛く、恐怖を感じた。
言うのは簡単だが、差別意識は無意識のうちに人間誰しも持ち合わせているものだから終わりがないのだと思う。
そうして現代でも続いている人身売買や人種差別に対して、自分は一体何ができるのだろうかと非常に考えさせられた。(女性 20代)


現実にこういうことが起きていたというのが、何よりもショックだった。同じ人間を痛めつけて、何とも思わない心が恐ろしいと思う。何度も絶望を感じ、辛い思いをしながら、12年間の月日を過ごすなんて、自分だったらとてもじゃないが耐えられないと思う。家族の元に戻れて良かったと思うが、それまでの日々があまりにも惨くて、手放しで喜ぶことができなかった。本来なら家族と一緒に幸せに過ごせたはずの12年間は、二度と戻って来ないのだ。(女性 30代)


正しいことをしていれば、幸せに生きられるというのは間違いなのだと気付かされた今作。ソロモンの12年間の苦悩は平凡で平和な毎日を生きている私には計り知れないほど過酷なものだったと思います。しかし、彼を救ったのは自分自身の気持ちをしっかりと保ち、時には心を偽る覚悟と行動力だと感じました。
正しいことだけを貫き通していたら、ソロモンは直ぐに殺され、捨てられていたでしょう。しかし、プライドを捨てて自分の心を偽り、奴隷の「ふり」をし続けたことで彼は家族の元へ帰ってくることが出来ました。
諦めないことと、臨機応変な対応力は自分の人生を大きく変えるものになるかもしれないと感じました。(女性 30代)

みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    ソロモン・ノーサップの奴隷生活は、実際の出来事である。2時間15分ほどの本編の中で、その時間の経過は分かりにくいが、12年という年月は途方もない。
    短い映画の中でも、その途方もなさというのは嫌というほど伝わってくる。白人による残虐な暴力シーンなどは特に長回しで撮られていたように思う。板の様なもので何度もたたかれ、首にロープをかけて吊るされ、鞭で打たれ……そういうシーンを畳みかけ、最後、ソロモンがバスに手紙を出すことを頼んだ後のシーンは本当に印象的だった。何が起こるというわけでもなく、ただ座って不安な顔をするソロモンのシーン。これが本当にいつまで続くんだというほど長い。あまりにも不安そうだし、これが失敗すればもう後はないし、12年という終わりがあることはわかっているのに何か良くないことが起こるんじゃないかと思わせるような長さだった。その観客の不安はそのままソロモンの不安なのだと思う。その後ソロモンは救い出されるが、恐らく手紙を出してからの時間はかなり長かっただろう。

  2. 匿名 より:

    この映画には、白人の中にも善人はいるように描かれている。最初の主人フォードもそうだし、最後ソロモンを救ったバスもそう。しかし、その善人然とした奥にあるのはやはり差別意識ではないだろうか。フォードは表面的な優しさを見せても、どこか「奴隷は奴隷」という考えが見え透いている。頭では奴隷たちを尊重していても、潜在的意識ではそうではないのだ。バスも、結果的にソロモンを救ったことには違いないが、彼はソロモンのために自分の身を危険にさらそうとは思っていない。この二人は「いい人風」でしかない。

  3. 匿名 より:

    この映画、面白いのは、単に奴隷制度の残酷さについて、奴隷を主人公にして語ったことではない。ソロモン・ノーサップは奴隷とは程遠い生活をしていたということも重要だと思う。裕福に暮らしていたソロモンにとって、南部での奴隷がどれほど過酷な状況に置かれているかなんて考えもしなかったのではないだろうか。そんなソロモンの視点で描かれているからこそ、主人側の人間性や奴隷たちが人生を諦めきって、まるで家畜のように当たり前に生きていることが恐ろしく感じられたのだと思う。