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映画『嵐が丘(1939)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『嵐が丘(1939)』の概要:名優ローレンス・オリヴィエのハリウッド初挑戦作品。監督は「ローマの休日」のウィリアム・ワイラー。英文学三大悲劇小説とも言われる「嵐が丘」を原作に、時を超えた男女の愛憎を叙情的に映像化。

映画『嵐が丘』の作品情報

嵐が丘

製作年:1939年
上映時間:105分
ジャンル:ラブストーリー
監督:ウィリアム・ワイラー
キャスト:ローレンス・オリヴィエ、マール・オベロン、デヴィッド・ニーヴン、ジェラルディン・フィッツジェラルド etc

映画『嵐が丘』の登場人物(キャスト)

ロックウッド(マイルズ・マンダー)
ヒースクリフから家を借りることになった男。礼儀正しいが好奇心旺盛で、エレンから嵐が丘の昔話を聞き出す。
キャシー・アーンショウ(マール・オベロン)
嵐が丘で生まれ育った娘。活発で美しく、気性は激しい。大人になりリントン家に嫁いでからは、持ち前の優しさや穏やかな部分も引き出され良き妻になる。
ヒースクリフ(ローレンス・オリヴィエ)
リバプールの港でキャシーの父に拾われた孤児。ジプシー風の容貌に、虐げられ育った恨み心が相まって「悪魔的」と評される人物。しかし、自分を助けてくれる人への恩は忘れず、特にキャシーに対しては強く執着し愛している。
エドガー・リントン(デヴィッド・ニーヴン)
領主の息子。上品で優しく、理性的。快活なキャシーを愛するが、彼女から見ると青白くやわな印象も。
イザベラ・リントン(ジェラルディン・フィッツジェラルド)
エドガーの妹。愛らしく、優しい令嬢。紳士になったヒースクリフに恋をしてからは、周りが見えなくなり嫉妬と焦りで人が変わったようになる。
エレン(フローラ・ロブソン)
嵐が丘の使用人。キャシーの結婚を機にリントン家に移るが、女主人の死後は再び嵐が丘に戻る。キャシーを愛し、見守ってきた。
ヒンドリー(ヒューゴ・ウィリアムズ)
キャシーの兄で、父の死後に嵐が丘を相続するが、ヒースクリフにその地位を奪われる。臆病で暴力的。早くから酒におぼれ、借金と中毒症状に苦しんでいる。

映画『嵐が丘』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『嵐が丘(1939)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『嵐が丘』のあらすじ【起】

イギリスはヨークシャーの荒野に、ポツンと建つ館がある。この「嵐が丘」と呼ばれる館に、猛烈な吹雪の中、一人の男が転がり込んだ。彼は新しい借家人で、家主で嵐が丘の当主であるヒースクリフに挨拶にやって来たのだ。荒れた館内で当主夫妻と使用人らが暖炉を囲み、あまりに陰鬱な雰囲気で気圧されるロックウッド。しかし、ひどい嵐の為、今晩はここに泊めてもらうしか無さそうだ。

通されたのは、何年も使われていない部屋だった。埃を払って何とか床に就くが、壊れた雨戸がバタつき起こされてしまう。窓辺に行くと、割れた窓から女の声がする。「ヒースクリフ、中に入れて、キャシーよ」。雨戸を閉めるため伸ばした手に、氷のように冷たい手が触れた気がした。驚いて、助けを求め叫ぶロックウッド。すぐにヒースクリフが駆け付けた。

ロックウッドは我に返り、気のせいだろうと誤魔化す。しかし、冷淡で幽霊話など到底信じそうもないこの当主が、必死で窓辺にすがりつくではないか。ロックウッドを部屋から追い出し、夜の猛吹雪に向かって「キャシー」を呼ぶ。それでは埒が明かず、とうとう外に飛び出してしまうヒースクリフ。

あっけにとられているロックウッドに、使用人のエレンが声をかける。あの声は聞き間違いなどではない、亡くなったキャシー様の声だ。今晩あなたは、死者を呼び戻すほどの強い愛の力に出会ったのだ、と。興味をひかれたロックウッドに、エレンが昔話を始めた。

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映画『嵐が丘』のあらすじ【承】

40年前の嵐が丘は、笑い声の溢れる明るい屋敷だった。若かりし頃のエレンが仕えたキャシーの父は、陽気で面倒見のいい人物だった。ある日、リバプールから帰宅した父親は、港で拾った孤児を連れ帰った。エキゾチックな顔立ちの子供で、ひどく汚れている。嵐が丘の子供、キャシーと兄のヒンドリーは、このヒースクリフと名付けられた汚い孤児に驚いた。しかし、ヒースクリフは兄妹と同等の立場で扱われ、キャシーもすぐに打ち解けていく。

ヒンドリーだけは、自分の地位を脅かすヒースクリフを憎み恐れていた。彼はヒースクリフの持ち物を取り上げ、暴力をふるった。ヒースクリフも尊大なヒンドリーを激しく憎み、「復讐してやる」と口にする。そんな彼をキャシーは励まし、岩山を城に見立て、本当は中国皇帝とインドの女王の息子に違いないと言ってやる。ヒースクリフはキャシーを姫と呼び、幼い二人は甘く楽しい日々を過ごしていた。

しかし、ヒースクリフの運命は一転した。優しい保護者であるキャシーの父が、病で亡くなったのだ。次の当主は、もちろんヒンドリーだ。ヒースクリフの地位は奪われ、馬丁としてどうにか家に置いてもらう有様だった。それでも、何年経っても兄の目を盗んでヒースクリフと愛を語り合うキャシー。ここから逃げて、王子様のように金持ちになって私を助けに来てほしい。だけど、一緒に逃げて貧しい暮らしをするのは嫌。わがままなキャシーだが、ヒースクリフは下男でいいから側にいたいと言って苦境を耐える。

素朴な生活をしていた二人は、ある日、上流階級の暮らしに触れてしまった。地元の名家リントン家の舞踏会を覗いていた時、犬に襲われて見つかってしまったのだ。屋敷で手厚い治療を受けるキャシーと、追い出されるヒースクリフ。豪華な屋敷にすっかり魅了されたキャシーは彼をかばってやらず、「このまま遠くへ逃げて」と言うだけだ。ヒースクリフはここでもまた、リントン家の若者エドガーと一家を呪い、屋敷を去るのだった。

数週間、エドガーや彼の妹イザベラと夢のような生活をしたキャシー。美しいドレスを借り、意気揚々と嵐が丘に帰る。すると、ヒースクリフは逃げずにキャシーを待っていた。一度はアメリカ行きの船に乗ったのだが、彼女から離れられず戻ったのだ。キャシーは彼が残ったことに怒るが、エドガーがヒースクリフを下男扱いすると今度はエドガーを責めたてる。元の質素なドレスに着替えてヒースクリフの元へ走るキャシー。しかし、彼女はリントン家での上質な暮らしへの憧れを、心から捨てきれずにいた。

エドガーもまたキャシーを諦められず、高価な贈り物を続ける。浮かれるキャシーに、ヒースクリフは彼女の虚栄心を指摘してしまった。自己嫌悪に苦しんだヒースクリフは、謝ろうと彼女を探す。すると、キャシーとエレンの会話を立ち聞きしてしまう。エドガーの求婚を受け入れようと思う。ヒースクリフは日に日に悪化するから、もう一緒にいられない。それを聞いたヒースクリフは、ひどい雨の中、嵐が丘を去っていった。

一方、ヒースクリフに話を聞かれたなどつゆ知らず、キャシーはエレンを相手に話し続ける。そういえば、天国で暮らす夢を見た。嵐が丘に帰りたくて仕方なかった。やはり、自分とエドガーは合わないだろう。ヒースクリフとは、幼い頃から悲しみも喜びも共にしてきた。私は、ヒースクリフそのものだ。

キャシーが自分の気持ちに気が付いた時、ヒースクリフはすでに姿を消していた。思い出の岩場まで探しに行くが、暴風雨に倒れるキャシー。再びリントン家に助けられたキャシーは、そのままエドガーの元に嫁ぐ。挙式が終わり、ふと言いようのない不安に襲われる。キャシーは思わず、エドガーにすがりついて助けを求めるのだった。

映画『嵐が丘』のあらすじ【転】

キャシーやエレンの不安をよそに、リントン家での生活は幸せに満ちていた。領主夫人として立派に務めるキャシー。そこへ、再びヒースクリフが現れる。アメリカで財を成したらしく、馬丁だったとは信じられない紳士ぶりだ。今や酒で借金まみれのヒンドリーを出し抜き、嵐が丘と土地の権利を買い占めたという。キャシーとヒースクリフは隣人として付き合う事を約束し、ヒースクリフは彼女の結婚を祝う。

すっかり男らしい紳士になったヒースクリフに、イザベラが惚れ込んだ。独身でリントン家でも孤独を感じ始めていた彼女は、兄夫婦が止めるのも聞かずにヒースクリフにのめり込んでしまう。ヒースクリフもまた、彼女の気持ちを利用していた。イザベラと幸せな家庭を築くことこそが、自分を捨てたキャシーへの復讐だと考えているのだ。

必死にイザベラを止めるキャシー。しかし、いまだにヒースクリフの視線を独占するキャシーはイザベラにとって脅威でしかなかった。自分に嫉妬しているのだとののしり、イザベラは家出してしまう。そのまま嵐が丘でヒースクリフと結婚し、酒浸りのヒンドリーとの同居生活を始めて、兄とは縁を切ってしまうのだった。

ヒースクリフとイザベラの結婚は、数か月と待たず破たんしていた。長らく嵐が丘の世話をしてきたケネス医師も、この家はもうダメだと匙を投げる。ヒンドリーの酒癖は直せないし、すっかりやつれて薄汚れたイザベラを救う事も出来ない。ケネス医師は、イザベラにリントン家に帰るよう勧めた。キャシーが病で死にかかっているから、兄の側にいてあげて欲しいと頼む。しかし、キャシーなんか死ねばいい、それで自分は生きられると言うイザベラ。嵐が丘に毒されてしまったイザベラを、ケネス医師は諦めに満ちた目で見つめていた。

希望を抱いたイザベラは、何とかヒースクリフを自分に振向かせようと懇願する。しかし、彼にとって、イザベラやエドガーは空虚でつまらない人間でしかなかった。キャシーの目には、ヒースクリフを畏れさせる美徳や信仰心が溢れているというのに。そこに、エドガーの使いでエレンがやって来た。イザベラの帰宅を待っているのだ。ヒースクリフもキャシーの異変を察し、イザベラが泣いて引き止めるのも聞かず、嵐が丘を飛び出していった。

映画『嵐が丘』の結末・ラスト(ネタバレ)

病床のキャシーもまた、幼い頃のヒースクリフとの記憶に思いを馳せていた。しかし、エドガーへの愛も嘘では無かった。彼女は夫の優しさをたたえ、感謝を伝える。キャシーに病と闘う気力は無く、彼女は死にたがっていた。

エドガーが部屋を去った間に、部屋に押し入って来るヒースクリフ。キャシーは再会の喜びに目を輝かせるが、ヒースクリフは死を選んだ彼女を責めた。彼女の事も、呪うという。キャシーは、エドガーに求婚されヒースクリフが嵐が丘を去ったあの雨の日の話を始めた。ヒースクリフが聞かずに行ってしまった、キャシーの本心を打ち明ける。彼女の愛を思い知るヒースクリフ。二人は窓から思い出の岩山を眺めた。キャシーは、あの城で待っていると言い残し、ヒースクリフの腕の中で息を引き取った。

戻ったエドガーは、ヒースクリフがいることを責めなかった。これで彼女は天国へ行けるだろうから、と。しかし、ヒースクリフはキャシーが天国へ行くことを望まなかった。自分が生きている限り、亡霊になって嵐が丘を彷徨うが良い。自分を呪え。キャシー無しでは生きられない。

エレンの昔話が終わると、すっかり日が昇っていた。吹雪も止んだようだ。まだ信じられないと言った顔のロックウッドに、あなたが出会ったのは、キャシー様の霊というより時を超えた愛の姿だと言うエレン。そこへ、ケネス医師が大慌てで飛び込んできた。雪原で、ヒースクリフが女と歩いている所を見たのだが、追いかけると彼一人だった。場所は、あの岩山だ。二人はようやく一緒になれたのだと、エレンは優しく微笑んだ。

映画『嵐が丘』の感想・評価・レビュー

結ばれない恋とか禁断の恋なんて言葉はどうして魅力的に感じるのでしょうか。1939年のこの作品で描かれているのは、お嬢様と使用人の恋。今の時代であれば、執事との恋愛なんて興味をそそられるワードですが、この時代のそんな恋愛は簡単に許されるはずもなく、見ていて苦しくなる展開でした。
きっと時代のせいで、こんなに辛い恋愛をしなければならなかったのだろうと思うと胸が苦しくなります。愛とはなんなのか?優しさだけが愛情ではないことを、思い知らされる作品です。(女性 30代)


長い事タイトルだけは知っていたもののイギリスの古典を原作に持つ映画ということで、どこか敷居の高さを感じ未見だった。しかし実は小難しいことのない山あり谷ありのメロドラマになっていて、昼の連続テレビドラマを楽しく観られる方ならば容易に入っていける感じの作品だ。主要な登場人物のほとんどが単なる良し悪しでは語れない行いをするが、その人間が持つ複雑さはどこか普遍的なものかもしれない。そしてそれこそがこの作品が長く親しまれている所以なのだろう。これを観てからケイト・ブッシュのあの曲を聴くとさらに味わい深い。(男性 40代)

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