映画『苦役列車』の概要:北町貫多は中学卒業後から日雇い人足仕事で働いていた。変わらぬ毎日を送っていたある日、職場で日下部正二という青年と出会い友達になる。貫多は正二に相談をしながら、好きになった女性と仲良くしようと奮闘する。
映画『苦役列車』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、青春
監督:山下敦弘
キャスト:森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ etc
映画『苦役列車』の登場人物(キャスト)
- 北町貫多(森山未來)
- 19歳。趣味は読書。小学生の頃に父親が性犯罪を犯して捕まったため、一家離散する。中学卒業後から日雇い人足として働く。お金にだらしなく、度々家賃を滞納している。口が悪く、自分に学がないことを卑下している。康子に惚れている。
- 日下部正二(高良健吾)
- 専門学生。貫多と同じ職場で働いている。真面目で心優しい性格。貫多に振り回され気味なところもあるが、友人として貫多のことを支えている。女子大生の彼女がいる。
- 桜井康子(前田敦子)
- 女子大生。本が好きで、古本屋でアルバイトをしている。高校生の頃から付き合っている恋人と遠距離恋愛中。
- 高橋岩男(マキタスポーツ)
- 貫多の職場の先輩。結婚している。若い頃は歌手を目指していた。
映画『苦役列車』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『苦役列車』のあらすじ【起】
北町貫多は小学校5年生の頃、父が犯した性犯罪により一家が離散した。中学卒業後から日雇い人足仕事でその日暮らしを続けて、19歳になった
貫多が仕事を終えて昼食を食べていると、同じ仕事をしていた日下部正二に声を掛けられる。初めは警戒していた貫多も、正二が同い年だと知り会話が弾んだ。正二は専門学生で、春に九州から引っ越してきたことを話した。次の日、貫多と正二は仕事終わりに2人で夕食を食べに出かけた。お互いの恋愛事情を話す内に、さらに打ち解けていった。貫多は好きな人がおり、今度紹介することを正二に約束する。
貫多は家賃を滞納しており、大家から催促される。必死に頭を下げて、1週間待ってもらう約束を取り付ける。だが、大家が目の前からいなくなると、こっそり悪態を吐いた。次の日、仕事の先輩である高橋岩男から、日雇いの仕事などせずに若いのだから夢を持てと言われる。正二は笑って話を受け流していたが、貫多は先輩面されて腹を立てる。
2週間後。貫多と正二は連続出勤が評価され、倉庫番見習いへと昇格した。正二は簡単に機械を操作させて仕事を行うが、貫多は上手く操作ができず先輩に怒られてしまう。貫多は中学しか卒業していないせいだと自虐した。
映画『苦役列車』のあらすじ【承】
貫多は正二を連れて、よく通っている古本屋を訪れた。そこの店員の女の子(桜井康子)が、貫多が好きな人だった。正二は康子に声を掛け、貫多と友達になって欲しいと頼んだ。康子はそれを受け入れた。店によく来る貫多のことを覚えていたのだ。貫多は泣きながら喜んだ。
貫多は康子に本を借りるため、“友達”という言葉を盾にして家を訪ねた。康子は警戒しながらも、貫多を家に招き入れた。貫多は康子を襲いたい気持ちが湧き上がるが、嫌われたくないので我慢した。その後、一緒に外を歩きながら、貫多は康子に恋人がいるのか尋ねた。康子は高校生の頃から付き合っている彼氏がいた。遠距離恋愛だったが、毎日電話してるほどラブラブだった。貫多は咄嗟に康子の手を握り、手を舐めてしまう。
貫多は大家の息子に家賃の催促をされるが、払えるお金はなかった。大家の息子から、家から出て行けと怒鳴られる。次の日、貫多は正二に部屋に置いてくれと頼むが、無理だと断られる。代わりに5万円を借りて、アパートを引っ越した。
貫多は父親が逮捕されてから、投げやりに生きていた。生い立ちを含めて、胸の内に抱えていた苦しみを正二に打ち明けた。正二は犯罪を犯したのはお前じゃないと貫多を励ました。貫多は戸惑いながらも、その言葉を受け入れようとした。そして、正二に付き添ってもらい、康子に謝罪しに行った。康子は謝罪を受け入れ、一緒に遊びに行こうと2人を誘った。ボーリングや海水浴など、3人で楽しい時間を過ごした。
映画『苦役列車』のあらすじ【転】
高橋が仕事で事故を起こし、機械に足を挟まれてしまう。貫多はただ血が流れているのを見ているしかなかった。高橋は足の指を2本切り落とすことになった。日雇いのため、労災もおりなかった。貫多は会社から頼まれ、見舞金を高橋に渡しに行った。高橋は怪我をしてささくれた気持ちを持て余し、夢を持っても無理なんだと貫多に忠告した。貫多は高橋の話を聞いて、小説を書きたいと思っている気持ちを真剣に伝えた。高橋は中卒のくせにと馬鹿にするが、貫多の目は本気だった。
事故以降、貫多は倉庫番見習いから逃げ出し、元の人足仕事に戻った。その頃から、正二の付き合いが悪くなっていった。しかも、正二に彼女がいたことが判明する。貫多は戸惑いながら、祝福の言葉を述べた。康子に会いに行くが、店にはいなかった。貫多がむしゃくしゃした気持ちのまま風俗に行くと、元カノが働いていた。
貫多は1人になるのが嫌で、仕事終わりの元カノを待ち伏せした。一緒にお酒を飲んでいると、元カノの恋人が現れる。元カノ達が2人で楽しそうにしている姿を見て、貫多は深い悲しみに襲われた。貫多は元カノの悪口を言ってしまい、元カノの恋人にボコボコに殴られる。
貫多は正二に彼女を紹介してもらう。正二の恋人は大学生で、貫多とは違って優秀で将来に輝かしい未来が待っている人物だった。正二は恋人と楽しそうに話をしているが、貫多は学がないためその話に入っていけなかった。貫多は1人でお酒を飲んで黙っていたが、とうとう耐えられなくなり、正二の恋人に暴言を吐いてしまう。次の日、貫多は何事もなかったかのように正二に話しかけるが、もうお前とは付き合えないと拒絶される。
映画『苦役列車』の結末・ラスト(ネタバレ)
貫多は康子のマンションを訪れ、部屋に入れてくれと迫った。だが、康子は遅い時間だったこともあり、無理だと断った。貫多は拒絶を受け入れられず、康子を押し倒してしまう。康子は必死に抵抗して、貫多に頭突きを食らわせた。康子は貫多と友達でいたかったのだ。だが、貫多は友達はいらないと呟いた。
次の日、貫多は先輩を殴ってしまい、仕事をクビになる。仕事終わり、正二に声を掛けて連絡先を教えてくれと頼んだ。正二は電話を貰っても遊べないと断りを入れながらも、貫多に連絡先を教えた。貫多は素直に正二に感謝の言葉を述べた。その後、貫多は古本屋に行くが、康子は辞めてしまっていた。しかし、康子が置いていった本を店主から渡される。本の中には「この本を読んだら北町くんが浮かんできた」という、康子からの手紙が挟まっていた。
3年後。
貫多は相変わらず風俗に通い、人にお金を借りて生活していた。喫茶店で本を読んでいると、テレビに高橋の姿が写る。貫多は呆然と高橋が歌う姿を見ていた。他の客にチャンネルを変えられても、貫多はリモコンを奪い返してテレビを見ていた。すると、客が怒り出し、貫多を店の外に連れ出した。貫多はボコボコに殴られ、服を盗られてしまう。
貫多は裸のまま、笑いながら街を走った。海に行くと、正二と康子が笑いながら貫多を呼ぶ姿が見えた。貫多は2人の元に行こうとするが、落とし穴に落ちてしまう。目が覚めると、アパートの前のゴミ捨て場だった。貫多は立ち上がると、自分の部屋に戻り机に向かった。
映画『苦役列車』の感想・評価・レビュー
とてもシュールな感じがあり、主人公の喜多を演じた瑛太のダメ人間さが面白く、所々で笑ってしまう程であった。夢も希望もない生活を送っている喜多が正二と仲良くなり、好きな人である康子や正二の恋人と関わることによって、更に人と比べてしまい、落ちこぼれていく姿がリアルすぎて、見入ってしまった。最後の、全裸で正二と康子の元へ走り出すシーンが不思議な感覚があり、目が覚めた現実にすぐ切り替えて、机に向かう喜多の姿も印象的であった。(女性 20代)
正直私はどちらかといえば主人公の友人である日下部君側の人間だと思う。
お金に不自由したこともないし、友達も、家族もいる。私の周りの世界は平和だ。
めったに自分の周りでは事件なんておきないし、つまらない。私は、だから日下部君は冷やかし目的で中卒の彼を面白がるために彼と友達になったのではないかと感じた。彼には友達と言っておきながら、一線を引いて彼を見ている感じがある。日下部君は今作には欠かせないキャラクターだが、主人公にはなれない、そんな醜く、意地汚い人間らしい存在である。(女性 20代)
「友なし、金なし、女なし。この愛すべき、ろくでなし。」
この言葉通り、こんなどこまでもクズのダメ男には近づきたくもないものだ。
唯一の友人も、恋も見事に失う。その主人公は、どこまでも落ちぶれていて、呆れるほど。
「俺には何もない」という主人公を演じた森山未来が素晴らしく、貫多という人間の嫌な部分をさらけ出し続けるところに、ずっと目が離せなかった。
彼は役者として非常に魅力的に映った。
最後、自ら机に向かう後ろ姿が頼もしかった。(女性 20代)
北町貫多は本当にダメ男で、正直に言うと引いてしまう部分も多々あった。特に康子に対してのアプローチ方法は、本当に気持ちが悪かった。でも、この不器用な部分が、何だか切なく感じた。一家離散をしていることから考えても、幼少期は今よりも大変な生活を送っていたのではないかと思う。友達なんていらないと言っていたが、貫多にとって正二と康子は初めて出来た本当の友達だったのではないかなと思った。ラストで机に向かう姿を見て、自堕落に生きていた貫多の心に変化が現れたのが見られたので良かった。(女性 30代)
「ろくでなし」と言うとどうしようも無い、周りから見放された人間に対して使う言葉のイメージがありましたが、今作で描かれていたのは「愛すべき」ろくでなしの物語でした。
貫多を演じた森山未來のどうしようも無いクズっぷりが最高でした。ダメダメなのに何故か憎めなくて、そんな所すら彼の魅力に思えてしまう不思議な作品でした。
彼の周りの人達がとにかく良い人で、生きていれば「なんとかなる」と思わせてくれる素敵な作品です。(女性 30代)
この作品を観て、森山未來さんを嫌いになりそうになりました。私はどうしても、この作品の主人公が好きになれませんでした。森山さんはあまりに演技が上手く、本当にこういう奴なのでは…?と感じるほどで、この作品を観た後しばらくは、森山未來は嫌な奴という印象が残ってしまいました。
映画やダンサーとしての作品など、他の作品でも演技力の高さはもちろん感じられますが、この作品が一番、森山未來さん圧倒的な実力を体感できる気がします。
初めてこの作品を観た高校生の頃は、主人公のことを本当に最低な奴だとしか思えませんでした。大人になった今改めて観ると、こういう生き方しかできない人もいるし、ラストは意外と前向きな表現があることも発見し、自分の小さな成長にも気づけました。(女性 20代)
主人公の生き様に閉口します。人間の駄目な部分を集大成したようなキャラクターです。こんな難しい役柄をこなす森山未來の演技力は、化け物級です。ファッションや情景、路上での喫煙シーンに、昭和時代の名残が感じられます。親の不祥事等で辛い人生なのは分かります。しかし、社会や周囲の人々に対しての認識が随分歪んでいることが気にかかりました。これでは、どんなご縁も水の泡と化すように思います。胸を張っておすすめだとは言えないものの、案外面白い作品です。(女性 30代)
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