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映画『奇跡の海(1996)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『奇跡の海(1996)』の概要:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などのラース・フォン・トリアーが、愛する者のために身を削っていく女性の姿を、美しい風景と共に残酷に描き出す。カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した。

映画『奇跡の海』の作品情報

奇跡の海

製作年:1996年
上映時間:158分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ラース・フォン・トリアー
キャスト:エミリー・ワトソン、ステラン・スカルスガルド、カトリン・カートリッジ、ジャン=マルク・バール etc

映画『奇跡の海』の登場人物(キャスト)

ベス(エミリー・ワトソン)
スコットランドの片田舎に暮らす純朴な女性。教会に通いつめ、神と対話している。時々感情を抑えきれず、ヒステリーを起こすことがある。
ヤン(ステラン・スカルスガルド)
油田工場で働く作業員。ベスと結婚する。生い立ちなどは不明。
ドド(カトリン・カートリッジ)
ベスの義理の姉。夫の故郷に嫁いだ形だが、夫は油田工場での事故で死亡、ベスだけが理解者となっている。

映画『奇跡の海』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『奇跡の海(1996)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『奇跡の海』のあらすじ【起】

スコットランドの片田舎に住むベスは、油田工場の作業員であるヤンと恋に落ち、結婚する。素性の分からないヤンに不信感を抱く義姉ドドだったが、義妹の幸せそうな様子を見て心から祝福する。

結婚式当日、まだ処女であったベスは、心から愛するヤンと初めてセックスをする。二人はしばらくの間、どこに行くにも一緒で、毎日のように深く愛しあった。しかし、もうじきヤンが油田工場へ遠征に行く日が近づいていた。

ベスは心理的にストレスを抱えており、過去には精神病棟への入院歴もあった。ヤンが離れてしまうことによって再び症状が悪化してしまうのではないかとドドはベスの身を案じていた。

そしてヤンが町を発つ当日。なんとか気丈に振る舞っていたベスだったが、彼を乗せた飛行機が離陸する直前、寂しさからヒステリーを起こしてしまう。

ヤンが居なくなってから無気力に過ごすベスの姿を見て家族は心配になり、ベスを以前診てもらっていた主治医のもとに再び通わせることに。

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映画『奇跡の海』のあらすじ【承】

ヤンとの会話は週に数回、電話のみで行っていた。その電話口で、互いに愛の言葉を交わし合う二人。しかし、そんな日々ではベスの孤独は埋まらなかった。ベスは日に日に精神をすり減らしていく。

ある日ベスは教会で「ヤンが今すぐ私のもとに戻ってくること」を神に祈ってしまう。それから数日、油田工場で事故があり、ヤンが瀕死の重体で町に戻ってくる。ただちに緊急手術が行われたが、一切の予断を許さない状態だった。

一命を取り留めたヤンだったが、いつ再び意識が途切れるか分からず、さらに全身に麻痺が残ってしまった。ヤンが戻ってくるよう自分が祈ってしまったことが原因で今回の事故が起こってしまったのだと、ベスは自分を責め始める。

全身麻痺で性的不能となったヤンは、ある日ベスを病室に呼び出す。そこで彼は「愛人を作れ」とベスに告げる。他の男とセックスをし、その詳細を話して聞かせること。そうすることで二人は精神的に繋がっていられるからとヤンは言った。

映画『奇跡の海』のあらすじ【転】

はじめは戸惑いを覚えていたものの、ベスはヤンの言いつけ通り振る舞うことを決める。主治医の家に向かい全裸で医者を誘ったベスだが、その姿を見た医者はこれも彼女の心理的不安定さから起こした行動だと思い、ベスをそのまま家に帰す。

ある日、バーで知り合った見知らぬ男と遂に一線を越えたベス。その詳細をヤンに話して聞かせると、翌日ヤンの病態が回復の兆しを見せ始める。ベスはそれを二人の愛の力だと信じ込み、さらに見知らぬ男性たちと情交を繰り返していく。

日に日に派手になっていくベスの姿を不審に思い、ドドはベスを問い詰める。そしてベスがヤンのために行っている行為を知りショックを受けた家族たちは、ベスを再び精神病棟へ入院させることを決意する。

警察に身柄を拘束され、病院へと移送されるベスだったが、隙を見て逃げ出す。病院へ戻ると、再びヤンの病態は悪化していた。ヤンを救うため、再びベスは男を見つけに町へ繰り出す。しかし町の住人たちが彼女に向ける目は、以前と違い軽蔑の込められたものに変わっていた。

映画『奇跡の海』の結末・ラスト(ネタバレ)

港に辿り着いたベスは、そこで沖に出ている船乗りのための娼婦の仕事があることを知り、船乗りたちの待つ船に向かう。そこは二人の船乗りが居たが、一人とセックスを始めると、もう一人が興奮してナイフでベスの体を切りつけた。恐れをなしたベスはその場を逃げ出す。

教会に向かったベスだったが、不埒な行動を繰り返す彼女を周囲は歓迎せず、今後一切教会へ足を向けることを禁じられてしまう。プロテスタント信仰が根強いこの町で教会を追い出されるということは、ほとんど村八分になったことと同義だった。

翌日からベスは町ですれ違う度、子供たちから「商売女」と罵られ石を投げつけられてしまう。

そんな中、ヤンの病態がさらに悪化する。ヤンを救うため、ベスは再び船に乗り込んだ。そこで船乗りに体を痛めつけられたベスは、血だらけになって病院へ運ばれる。彼女は家族に見守られる中、ひっそりと息を引き取った。

ベスの死と入れ替わるようにして、ヤンは驚異的な回復を見せた。ヤンはベスの遺体を持ち出し、船に乗って海に流した。悲しみに暮れる彼の耳に、どこからか教会の鐘の音が聴こえた。

映画『奇跡の海』の感想・評価・レビュー

世の中に様々な愛の形があり、それを表現した映画もたくさんあるが、ここまで徹底的に突き詰めた作品はないのではないかと思う。
夫・ヤンを愛してやまない妻のベス。しかし、ヤンが北海油田の仕事に戻り、会えない日々が続く。そしてヤンが不慮の事故で障害を負ってしまうのだ。信仰深いベスの健気さ故に、彼女は自分を責める。さらにヤンの「愛人を作れ」という言葉を受け止め、愛を貫こうとする。
ベスの想いを想像しただけで涙が出て来る。切ないストーリーだが、観て受け止めなくてはいけない映画である。(男性 40代)


ヤンとベス、2人だけが分かる「愛の形」は周りの人間には理解することが出来ませんでした。異常な愛の形を育む彼らよりも、彼らを軽蔑していた周りの人間の方に感情移入してしまい何とも複雑な気持ちになりました。
愛する夫のために「他人」とセックスをする妻。そんな行為を理解するというのはなかなか難しいですが、今作の結末を見ると周りがもっと理解してあげていたら、2人とも幸せでいられたのでは…と感じてしまいます。
独特の世界観がクセになる作品でした。(女性 30代)

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