映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の概要:ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・尾崎世界観の原案をもとに『アフロ田中』『アズミ・ハルコは行方不明』などの松居大悟が監督した群像劇。池松壮亮、黒川芽以、大東駿介らが共演。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:松居大悟
キャスト:池松壮亮、黒川芽以、安藤聖、尾上寛之 etc
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の登場人物(キャスト)
- リクオ(池松壮亮)
- 日雇いバイトで暮らすホームレスの青年。トレーラーの車内で生活をしている。衝動的な性格で、度々感情を爆発させる。
- ユーナ(黒川芽以)
- リクオの恋人。失声症を患っており、言葉を発することができない。
- クミコ(安藤聖)
- 風俗嬢の女性。実家には看護師と偽っている。元恋人ヒデキへの思いを断ち切ることができずにいる。
- ミエ(山田真歩)
- OL。クリープハイプのファン。会社の上司と不倫関係にある。
- ツダ(大東駿介)
- リクオのバイト先の友人。アイドルの追っかけをしているオタク青年。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のあらすじ【起】
クミコは風俗嬢として勤めている女性。ある日、仕事から帰ると実家から電話があり、出てみると、それは母の訃報の連絡だった。クミコは家族には風俗嬢ではなく看護師だと偽り続けていた。
母の突然の死に気持ちが落ち着かないクミコだったが、そのとき元カレのヒデキが部屋を訪ねてくる。どうやらゲームの充電器を忘れ、取りに戻ったらしい。
ヒデキと別れて二週間ほどが経っていたが、クミコはいまだにヒデキへの思いを断ち切れずにいた。帰ろうとする彼を引き止め、もう一度やり直したいと告げようとするクミコだったが、そのとき彼女のパソコンから読み込み中だったCDの再生が始まる。それは「クリープハイプ」というバンドの曲で、ヒデキとの思い出が詰まった曲だった。その曲を聴きながら、ヒデキとの日々をクミコは回想し始める。
ミュージシャンを目指すヒデキと同棲を始めたクミコだったが、収入が追いつかず、夢を追う彼を支えるために夜の仕事を始めたのだった。しかし、それを知ったヒデキと折り合いがつかなくなり、二人は別れてしまったのだった。
結局、ヒデキへの復縁の思いを打ち明けられなかったクミコ。ヒデキは去り際に、今までクミコから借りていたお金を渡して去って行った。誰もいなくなった部屋で、クミコは一人泣き明かした。
翌日、母の葬儀に行かず、バイト先へ向かうクミコ。その顔は何かを吹っ切ったかのように晴れ晴れとしていた。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のあらすじ【承】
ある商社でOLとして勤務するミエは、ロックバンド「クリープハイプ」の大ファン。バンドの曲への思いを、常にネット上で発信していた。
そんなある日、クリープハイプのライブチケットを入手した彼女は、ライブへ向かうため半休の申請を会社に提出するが、上司からは認められず、ライブ当日もいつも通り残業させられることに。その会社の上司とミエは不倫関係にあった。
ライブ開始後も終わる気配のない仕事に嫌気がさし、ミエは会社のトイレですすり泣く。彼女が仕事を終えた頃には、ライブはもう終盤にさしかかっているところだった。それでも彼女はライブ会場へと走る。
会場へ着くと、既にライブは終わりアンコールの時間となっていた。クリープハイプのヴォーカル・尾崎世界観は新曲の発表を告げる。さらに彼はこの曲に込められた思いを切実に語り出す。そうして放たれた新曲は驚くほどミエの内面に抱えていた思いそのもので、ミエは曲を聴きながら号泣した。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のあらすじ【転】
フリーターのツダはある地下アイドルの熱狂的なファンで、ライブ会場へ足を運んでは彼女へ愛を捧げていた。そんな彼の行動は次第に常軌を逸していき、遂にはアイドルの自宅を特定し、夜な夜な部屋の窓を望遠鏡で覗き始める。
ある日、そのアイドルが引退を表明。ライブ会場にてラストライブとアルバムの発売が行われる。ライブの帰り道、早速ラストアルバムを再生し始めたツダだったが、そこに収められていた楽曲はこれまでツダが愛していた彼女の路線とはまったく異なるものだった。裏切られたような気分になったツダは、その場でCDを破壊する。
ツダはある日、日雇いのバイト先で同じくフリーターのリクオと知り合う。リクオは家がなく、空き地のトレーラーを改良しその中で恋人のユーナと二人で生活していた。
意気投合した二人はトレーラーへと向かうが、酒に酔ったリクオはそのまま眠ってしまう。ツダはユーナに話しかけるが、彼女は一言も言葉を発しなかった。そんな彼女に半ば強引に自分のCDを貸すツダ。そのときリクオが目覚め、ツダのCDを手にするユーナに「金がない俺への当てつけか」と怒鳴り散らす。ツダは何とかリクオを落ち着かせ、その場を去った。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ある日、働きたいという意思表示を見せたユーナを連れ街を歩くリクオ。ユーナは一軒のCDショップの前で立ち止まる。リクオはユーナの代わりに「アルバイトを雇ってくれないか」と店員に頼むも、聞き入れては貰えなかった。そのときユーナが突然に体調を崩し、その場で嘔吐してしまう。
トレーラーへと戻る二人だったが、感情を表現しないユーナに腹を立てリクオは怒鳴り散らす。そのときユーナがそっと何かを差し出してきた。それは妊娠検査薬で、結果は陽性だった。
ユーナの懐妊を祝うツダだったが、リクオに「金を稼がないと」と説き、機嫌を損ねたリクオはたまたま店に一人で飲みに来ていた女性ミエを連れカラオケに向かう。
ミエは不倫している上司から貢いでもらっている数十万円をリクオに手渡す。しかしリクオはそれを受け取らずユーナのもとへ帰る。
金を手にするためにCDショップを襲ったリクオ。しかしツダが呼んだ警察に捕まり、精神不安定から隔離病棟へ入れられる。
ツダは少し前からユーナに惹かれており、彼女への思いを告白するが、彼女の目はツダのことなど見ていなかった。
数年後、娘を連れて病棟を訪れるユーナ。そこには虚空に向かって一人で会話を続けるリクオの姿があった。ショックを受けその場を去り、道端でうずくまるユーナ。その姿を病室の窓から眺めていたリクオは涙を流しそっと窓ガラスに口づけた。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』の感想・評価・レビュー
本作は、元カレを忘れられないピンサロ嬢や好きなバンドのライブ当日に残業となったOL、熱狂的なオタク、車中泊の青年、家出少女などの日常に不満を抱える登場人物たちの人生が交差していくヒューマンドラマ作品。
クリープハイプの歌は全く知らなかったけれど、それまでの楽曲のPVや歌詞に合わせた演出、クリープハイプと松居監督の世界観にハマっていきそうだ。
不器用な登場人物たちの人間臭さが素晴らしく、ありのままで生きていていて良いんだと背中を押してくれる作品。(女性 20代)
尾崎世界観、松居大悟、池松壮亮。この才能溢れる3人が交わり合うとこんなにも儚くて汚くて、美しい世界が見えるのかと言葉にならない興奮を覚えた作品でした。様々な人たちの物語をクリープハイプの音楽と共に描いた今作ですが、とにかくエモいです。あまりこういう言葉を使いたくはありませんが、心が揺さぶられるような不思議な感覚を映画から経験したのは初めてかも知れません。
監督も音楽も演者も全てが良かったです。登場人物の中に1人は共感できるキャラクターがいるのでは無いでしょうか。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー