この記事では、映画『ボーイズ・ドント・クライ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ボーイズ・ドント・クライ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
監督:キンバリー・ピアース
キャスト:ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー、ピーター・サースガード、ブレンダン・セクストン三世 etc
映画『ボーイズ・ドント・クライ』の登場人物(キャスト)
- ブランドン・ティーナ / ティーナ・ブランドン(ヒラリー・スワンク)
- 性同一性障害のため、身体的には女性だが、男性として生きている。ネブラスカ州リンカーンで生まれ育ち、幼い頃から自分の性について違和感を覚えていた。外見的には小柄な美青年。
- ラナ(クロエ・ゼヴィニー)
- ブランドンと出会い、恋に落ちる女性。食品工場で働きながら、バーのカラオケで歌って鬱憤を晴らしている。田舎町フォールズシティでの生活に閉塞感を覚え、いつか街を出たいと考えている。
- ジョン(ピーター・サースガー)
- フォールズシティで暮らす青年。ふとしたことがきっかけでブランドンと友人になる。粗暴で男臭く、頭に血が上りやすい。数年前の入所中に、幼いラナからの手紙に励まされたことから、ラナに対し異常な執着心を持っている。
- トム(ブレンダン・セクストン3世)
- ジョンの友人。ジョンと連れ立って犯罪行為に及ぶ。自分の家に火を放って家族を火事に巻き込んだことがある。自傷癖がある。
- キャンディス(アリシア・ゴランソン)
- ブランドンと親しくなる女性。ラナの友人で、ジョンやトムとも親しい。バーで働きながら単身で一人息子を育てている。男性としてのブランドンに魅力を感じている。
- ラナの母(ジーネッタ・アーネット)
- ラナの母親。ジョン達全員の母親的存在で、周囲から『ママ』と呼ばれている。自堕落な生活を送っており、酔ってリビングで寝ることもしばしば。
- ケイト(アリソン・フォラント)
- ラナ、キャンディスの友人。ラナと同じ食品工場で働いている。
- ロニー(マット・マクグラス)
- ブランドンの従兄で良き理解者。ゲイ。無鉄砲なブランドンに呆れつつも心配している。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ボーイズ・ドント・クライ』のあらすじ【起】
1993年、ネブラスカ州リンカーン。性同一性障害を持つブランドンは、心身ともに男性になることを夢見ている。ブランドンは、本名ティーナ・ブランドンをブランドン・ティーナに変えて名乗り、胸に布を巻いて股間に男性器を模した遊具を挟み、男らしく振る舞って生活している。
ブランドンは、少女をナンパしてはその家族達に異常者として追われる。従兄ロニーにも愛想を尽かされ、ブランドンは居候していたトレーラーハウスから追い出される。
ある夜、ブランドンはバーで、フォールズシティから来たキャンディスに声をかけ、その友人ジョンとトムを紹介される。ジョン達はブランドンをフォールズシティに連れて行き、ブランドンはキャンディスの家に滞在する。
ブランドンは、過去の傷害事件の裁判を一週間後に控えており、もし出廷しなければ確実に刑務所へ送られることになる。ブランドンはロニーに電話をかけて状況を説明し、すぐ帰ってくるように急かされる。
ブランドンは、ジョン達と共に行動する。ブランドンはキャンディスの友人ラナと出会い、一目惚れする。歌が上手いラナは、バーのカラオケで歌って鬱憤を発散している。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』のあらすじ【承】
ブランドンは、ジョンやトムに持ち上げられ、危険なトラクターレースに参加する。ラナ達が心配する中、ブランドンは男性らしさを示そうと競技に挑戦する。ジョンとトムは、ブランドンを男友達として認める。
その夜に月経が始まり、ブランドンは家を抜け出して商店に行き、生理用品を盗む。ブランドンは薬物で酩酊したラナに会い、家まで送り届ける。酔ったラナの母親が居間で寝ており、ラナはブランドンに家の中を見せたことを恥じる。ブランドンは、ラナに率直に好意を伝える。
ブランドンは、女性であることを必死に隠し、ラナ達に嘘の出自を語る。優しいブランドンにラナは好意を強め、二人は次第に接近していく。
ある夜、ブランドンはジョン達と酔って騒ぐ。ジョンはブランドンに運転を任せ、挑発してきた車を抜くよう煽る。一行はスピード違反で逮捕され、ブランドンは違反切符を切られる。ジョンはブランドンに責任を押し付けていきなり不機嫌になり、ブランドン、トム、キャンディスを降ろし、ラナと友人のケイトだけを乗せて走り去る。
裁判が目前に迫り、ブランドンは、リンカーンへ発つ前にラナに挨拶をする。ラナはブランドンに夢中になっており、二人はキスを交わす。
ブランドンは裁判所に行ったものの、女性であることを衆目の前で公言されることに耐えられなくなり、裁判直前で逃げ出す。ブランドンは盗んだバイクでフォールズシティに戻り、仕事中のラナを誘い出し、二人は屋外で体を重ねる。ラナは、ブランドンが女性であると気づかないでいる。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』のあらすじ【転】
ラナの自宅で、ブランドンのバースデーパーティーが開催される。酔ったジョンとトムが乱入し、その場の雰囲気が緊張する。ブランドンとラナの関係が気に入らないジョンは、ブランドンを牽制し、ラナのプライバシーに干渉する。
ラナは、ブランドンと街を出て都会に行くという夢を抱く。ブランドンは、ラナと同棲するため、ガソリンスタンドで働き始める。
スピード違反の罰金を払いに交通局は行った際に、ブランドンの以前の罪状が明らかになり、ブランドンは女子刑務所に投獄される。ブランドンがキャンディスの小切手を使おうとしたことから、キャンディスはブランドンの素性を疑い、ブランドンが女性であることに気付く。
ラナはブランドンを保釈する。ブランドンはラナに自分が両性具有者だと説明すると、ラナは理解を示し、二人は交際を続ける。
ブランドンが女であることが周囲に知られる。ラナがブランドンを自宅へ連れて帰ると、ジョン達はブランドンに罵詈雑言を浴びせて責める。ジョンとトムは、ラナの前でブランドンを裸にし、ブランドンが女であることを示す。
ジョンとトムは、ブランドンを街の外れの工場に連れて行き、暴行してレイプする。ジョン達は、他言したら殺すとブランドンを脅し、自宅へ連れ帰ってシャワーを浴びるよう強制する。ジョン達の目を盗み、ブランドンは浴室の窓から逃げ出す。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ブランドンはラナの家に駆け込み、助けを求める。ブランドンは救急車で病院に運ばれ、治療とレイプ検査を受ける。
偏見に満ちた警察官達から屈辱的な事情聴取をされ、ブランドンは、涙ながらに性同一性障害であることを告白する。尋問を受けたジョンとトムは、レイプ事件には無関係だと言い張る。
キャンディスは大怪我を負ったブランドンを匿い、ブランドンは庭の小屋で寝泊まりする。ある夜、ラナが小屋にやってくる。ブランドンは、自分の出自を嘘で固めていたことをラナに謝る。ブランドンが女だと判明した後も、ラナはブランドンを愛している。二人は、フォールズシティを出てリンカーンへ行く計画を立てる。
荷物を纏めるために自宅へ戻ったラナは、急に怖気付き、街を出る決意が揺らぐ。突如、銃を持ったジョンとトムがラナの家に押しかけ、ブランドンの行方を尋ねる。警察に犯行がバレることを恐れ、ジョン達は口止めにブランドンを殺そうと考えている。
ジョンとトムは、ラナを連れ出し、キャンディスの家へ向かう。ジョンはキャンディスに銃を向けて脅し、助けようと姿を現したブランドンを射殺する。ジョンはキャンディスの子供の前でキャンディスを殺し、その場から逃げる。
ラナは、ブランドンの遺体に寄り添って夜を明かす。ラナは、ブランドンの上着から自分宛の手紙を見つける。手紙には、ラナへの純粋な愛が綴られている。事件が落ち着いた頃、ラナは街を出て、車で夜道を走り抜ける。
映画『ボーイズ・ドント・クライ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
アメリカは広大な田舎であり、実は面積ではいまだ一番開明的でない場所が多い国。そんな中で自分をさらけ出して生きる若者の勇気に感動させられる。ヒラリー・スワンクの熱演が見事で、もがきながらも懸命に生きる彼女に共感せずにはいられないだろう。事実に基づいた話ではないがこんなことはきっと多くあったのだろう。自分らしく生きる権利なんてものはまだまだ発展途上なのだ。(男性 30代)
社会が“異質”と見なしたものをどれほど排除しようとするか、それを突きつけられた映画だった。ブランドンが自分の存在を貫こうとする姿に心を打たれ、そして最期の無残な扱いに怒りを感じた。人間の残酷さと愛情の両方が描かれた本作、観る価値は非常に高いです。(40代 男性)
前知識なしで観ましたが、あまりにも衝撃的でした。ブランドンとラナの関係が純粋で美しいからこそ、その後の悲劇が余計に苦しい。社会が少しだけ違うだけで、人はここまで残酷になれるのかと愕然としました。映画としてではなく“人間として”向き合うべき物語。(20代 女性)
ブランドンの物語が映画化されたことで、トランスジェンダーへの理解や社会の偏見が可視化されたと思う。本人が選んだ生き方を、社会がどこまで受け入れられるのか。それが問われる物語。フィクションではなく、実話だということがこの映画のすべてを重くしている。(50代 男性)
ヒラリー・スワンクの演技が圧倒的。彼女がブランドンに命を吹き込んだからこそ、この映画はここまで観る者の心を揺さぶったのだと思う。悲劇ではあるけれど、ブランドンが生きた証として、この映画は多くの人に観てほしいと思いました。(30代 女性)
「普通」ってなんなんだろうって、この映画を観て思った。自分らしく生きたい、それだけなのに、それがここまで否定される社会。ブランドンが追い詰められていく過程は本当に苦しくて、正直、観ていて何度も胸が張り裂けそうになった。目を背けたくなる真実こそ、観るべきだと痛感した。(20代 男性)
この映画が描くのは、単なるLGBTの話じゃない。「人間が人間をどう扱うか」の話だと感じました。小さな町での閉鎖的な価値観、暴力、恐怖、そのなかでも愛を探すブランドンの姿が切なすぎた。苦しいけど、重要な一本。誰にでもおすすめできる映画ではないけど、観るべき映画だと思う。(40代 女性)
ブランドンとラナの関係が、純粋であればあるほど、あのラストが本当に辛い。暴力と差別に対して何もできなかった自分が、観ていてただただ悔しかった。こんなことが本当にあったなんて信じられないし、でも現実。絶対に忘れたくない映画になった。(30代 男性)
学校でこの映画を教材にしてもいいと思う。それほどまでに強烈で、社会を映す鏡のような作品だった。ブランドンの存在が、なぜ周囲にとって“受け入れがたい”ものになってしまったのか。その理由が明確に描かれていた。考えること、感じることが多すぎて、しばらく放心してしまった。(20代 女性)
あまりにも痛ましい内容だけど、知ること、そして考えることの大切さを教えてくれる作品だった。暴力の描写は本当にキツいけど、それが現実の出来事だったということを忘れてはいけない。静かに、それでも強く、ブランドンの声が今も胸に残っている。(50代 男性)
映画『ボーイズ・ドント・クライ』を見た人におすすめの映画5選
ムーンライト
この映画を一言で表すと?
“少年の孤独と愛を描く、静かで力強い成長物語”
どんな話?
マイアミを舞台に、ゲイであることに葛藤する黒人少年・シャロンが、自分らしさを模索しながら大人へと成長していく物語。3つの時代を通して描かれるシャロンの心の変遷と、アイデンティティとの向き合い方が丁寧に綴られる。
ここがおすすめ!
『ボーイズ・ドント・クライ』同様、自分自身の性や存在に苦しむ青年の姿を真正面から描いています。映像の美しさと静かな語り口で感情をすくい上げる演出が素晴らしく、観る人の心にそっと寄り添う作品です。
ダラス・バイヤーズクラブ
この映画を一言で表すと?
“偏見と闘いながら生き抜く、人間の尊厳をかけた実話”
どんな話?
1980年代のアメリカ。HIV陽性と診断された男が、生きるために非合法の薬を入手・販売し、同じ境遇の人々と共に生き抜こうとする。変わり者のドラァグクイーン・レイヨンとの友情も見どころ。
ここがおすすめ!
差別と闘いながらも人間としての尊厳を取り戻そうとする姿は、『ボーイズ・ドント・クライ』に通じるメッセージ性があります。マシュー・マコノヒーとジャレッド・レトの魂を削るような演技にも注目です。
ガール・ネクスト・ドア(原題:A Girl Like Me: The Gwen Araujo Story)
この映画を一言で表すと?
“トランスジェンダーの少女が歩んだ、愛と闘いの真実”
どんな話?
実在したトランスジェンダー女性グウェン・アラウホの人生と、彼女が経験した差別、そして最期の瞬間までを描くテレビ映画。家族との関係や社会の目線に揺れながらも、自分らしく生きようとした姿を描く。
ここがおすすめ!
『ボーイズ・ドント・クライ』と同じく、実在のトランスジェンダー当事者が直面した現実を描いた貴重な作品。やさしさと痛みが交錯するストーリーは、観る人に深い問題意識をもたらします。
パレードへようこそ(原題:Pride)
この映画を一言で表すと?
“異なる立場の人々が、共に声を上げる感動の実話”
どんな話?
1984年のイギリス。炭鉱労働者を支援するため、ゲイとレズビアンの活動家グループが立ち上がる。はじめは反発し合っていた両者が、やがて連帯し大きな力になるまでの過程がユーモラスかつ感動的に描かれる。
ここがおすすめ!
苦しみだけでなく、希望や連帯の可能性を描いているのが魅力。『ボーイズ・ドント・クライ』で感じた怒りや無力感を、少しでも前向きな力に変えたい人におすすめのハートフル社会派ドラマです。
トランスアメリカ
この映画を一言で表すと?
“自分らしく生きるため、親子の旅が導く再出発の物語”
どんな話?
性別適合手術を控えたトランス女性ブリーと、疎遠だった息子とのロードトリップを描くヒューマンドラマ。秘密を抱えたまま旅を続ける中で、ふたりは少しずつ心の距離を縮めていく。
ここがおすすめ!
アイデンティティや親子関係、孤独と再生というテーマを優しく包み込むように描いた感動作。ユーモアと温かさもあるため、『ボーイズ・ドント・クライ』とはまた違った角度からLGBTQ+のリアルに触れられます。
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