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映画『虹をつかむ男』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『虹をつかむ男』の概要:第49作目となる『男はつらいよ 寅次郎花へんろ』の撮影前に寅さん役の渥美清が急逝したため、渥美清への追悼映画という形で作られた山田洋次監督作品。映画のラストシーンにはCG合成で寅さんが姿を見せ、「敬愛する渥美清さんに捧げる」というテロップが出される。

映画『虹をつかむ男』の作品情報

虹をつかむ男

製作年:1996年
上映時間:120分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:山田洋次
キャスト:西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子、田中邦衛 etc

映画『虹をつかむ男』の登場人物(キャスト)

白銀活男(西田敏行)
通称かっちゃん。徳島県の光町で「オデオン座」というレトロな映画館の館長をしている。とにかく映画が好きで仕方がない映画バカ。観客が満足してくれることだけが生き甲斐で映画館を続けているが、オデオン座は常に大赤字。幼馴染の八重子に惚れている。
平山亮(吉岡秀隆)
就職試験に失敗し、あちこちでバイトしながら放浪の旅を続けている東京の青年。かっちゃんに誘われ、オデオン座で働き始める。東京の葛飾柴又に両親と妹がいる。
十成八重子(田中裕子)
かっちゃんの幼馴染。亡くなった1番目の兄がかっちゃんと親友だった。大阪で結婚していたが、夫が亡くなったので故郷に戻り、「カサブランカ」という喫茶店を営んでいる。実家で父親と次男家族と同居している。かっちゃんの気持ちには気づいている。
常さん(田中邦衛)
オデオン座の映写技師。この道一筋40年のベテラン映写技師で、非常に腕がいい。鮎釣りの名人でもあり、生活費はそちらで稼いでいる。1番好きな映画は『無法松の一生』。

映画『虹をつかむ男』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『虹をつかむ男』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『虹をつかむ男』のあらすじ【起】

東京の葛飾柴又で両親と妹と暮らす平山亮は、就職試験に失敗し、アルバイトをしながら全国を旅していた。夏は南アルプスの山小屋、冬は北海道のスキー場などで働き、久しぶりに東京へ戻った亮は、父親と衝突して再び家を飛び出す。

亮は四国方面に向かい、徳島県の光町という小さな町にたどり着く。この町には、「オデオン座」という古びた映画館があり、亮はそこの館長の白銀活男(以下かっちゃん)から声をかけられる。かっちゃんは、亮を館内に招き、頼んでもいないのにオデオン座の概要を説明する。赤字続きのオデオン座には、映写技師歴40年の常さん以外に従業員はいない。かっちゃんは、亮が仕事を探していると知ると、すぐに彼を雇う。しかし、給料などの労働条件については、何も教えてくれなかった。

亮は何となくかっちゃんのペースに巻き込まれ、仕事を手伝い始める。かっちゃんは所謂「映画バカ」で、映画の話になると我を忘れて夢中になる。かっちゃんの口癖は「どんないい映画を作っても、上映する人がいないとゼロや」であり、自分の仕事に誇りを持っていた。

亮が再び給料について尋ねると、かっちゃんは話を誤魔化し、喫茶店「カサブランカ」に亮を連れていく。店主の八重子は、かっちゃんの幼馴染であり、亡くなった親友の妹でもあった。そのため、八重子はかっちゃんのことを「兄さん」と呼んでいる。八重子は大阪に嫁いでいたが、3年前に夫を亡くし、故郷へ戻ってきていた。

オデオン座は大正時代に建てられた芝居小屋を改装した建物で、裏には30年前に首吊り自殺のあった古い楽屋がある。その夜、何も知らずに楽屋で寝た亮は、火の玉とオバケを見てしまう。翌朝、亮はひどい待遇に腹を立て、オデオン座から逃げ出す。

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映画『虹をつかむ男』のあらすじ【承】

川辺でパンをかじっていた亮は八重子と遭遇し、オデオン座を辞めたことを告げる。八重子はとても残念がり、この町の人たちに面白い映画を見せたくて、儲け度外視でオデオン座を続けているかっちゃんの気持ちだけはわかってあげて欲しいと話す。八重子の言葉に心を動かされた亮は、ボランティア活動をするつもりでオデオン座に戻る。

かっちゃんは、町の映画好きと企画委員会を作り、土曜日の夜にはオデオン座で土曜名画劇場を開催している。今晩は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の傑作『ニュー・シネマ・パラダイス』が上映された。委員会のメンバーでもあり、土曜名画劇場を楽しみにしている八重子は、涙を流しながら映画の感想を述べる。かっちゃんは、いい映画を見て満足した観客の顔を見ると、自分が世界一の金持ちになったような気分になるのだった。

光町での生活が落ち着いた頃、亮は東京の両親に手紙を書く。両親は、息子が元気にしていることを知ってホッとする。

移動映画の日。かっちゃんはオデオン座のバンにフイルムと道具一式を積み、亮と常さんと一緒に、映画館のない山間部の町へ向かう。今回は、子供向けのアニメ映画と木下恵介監督の純愛映画『野菊の如き君なりき』を町の公民館で上映する予定だったが、役場の課長から、開始時刻を早めて夜の9時までに上映を終わらせろと命じられる。しかし、かっちゃんは仕事を終えてから来る人のことを考え、予定通り7時に上映を開始する。結局、ヒロインと同じ年頃の娘を持つ課長は映画に感動し、最後まで上映することを許可してくれた。

オデオン座の仕事を続けるうち、亮はかっちゃんのことを見直すようになっていた。八重子と2人で山登りをした時、亮はそのことを八重子に話す。「もうこの町を離れないんですか?」と亮に聞かれ、八重子は複雑な表情で亮の手を握る。その仕草が妙に色っぽくて、亮はドギマギしてしまう。

映画『虹をつかむ男』のあらすじ【転】

八重子の実家では、年老いた父親と次男家族が暮らしている。父親は八重子の好きにさせていたが、兄は妹の将来を心配し、見合い話を持ってくる。しかし、八重子はそれを断り、兄から叱責される。兄は、父親が八重子に甘いことも気に入らないようだった。

企画委員会のメンバーは、オデオン座に集まって、次の上映作品を決める。土曜名画劇場もオデオン座も大赤字なので、客が呼べる映画がいいだろうという意見が出るが、名画はフイルムのコピー代が高い。そこから、いい映画とは何かという話になり、常さんは「見ているうちに身につまされる映画だ」と語る。その話を聞いて、かっちゃんはアンリ・コルビ監督の『かくも長き不在』というフランス映画を推す。映画を再現するかっちゃんの熱演が素晴らしく、次回作はそれに決まる。

『かくも長き不在』が上映された夜。他のメンバーはかっちゃんの話の方が面白かったと言っていたが、八重子はこの恋愛映画に感動し、「今夜の映画は最高やった、身につまされた」と泣きながら感想を述べる。かっちゃんはすっかり嬉しくなり、雨が降っていたので相合傘をして、八重子を家まで送る。

八重子は、信頼するかっちゃんだけに、自分の本音を打ち明ける。八重子は心のどこかで、何かが起こるのを待っていた。かっちゃんは、そのうち必ず王子様が現れると言って、八重子を励ます。その夜、八重子と握手をして別れたかっちゃんは、『雨に唄えば』のジーン・ケリーを真似て、ずぶ濡れになって踊る。

秋、かっちゃんは映画好きな先生の希望を聞き入れ、たった1人の生徒のために、廃校になる小学校の文化祭で『禁じられた遊び』を上映する。もちろん大赤字だったが、かっちゃんは、その生徒がこの映画を心の財産にして、美しい人生を送ってくれたらそれでいいと思っていた。

上映後、村の人たちが開いてくれた打ち上げの席で、かっちゃんの奥さんとして挨拶を求められた八重子は、間違いを訂正せずに「改めて主人に惚れ直しました」と語る。八重子に惚れているかっちゃんは、とても嬉しそうだった。

映画『虹をつかむ男』の結末・ラスト(ネタバレ)

ずっと体調の悪かった八重子の父親が亡くなった。通夜の後、服部と名乗る男が八重子を訪ねてくる。服部はわざわざ休暇を取り、大阪から駆けつけていた。

父親が亡くなってから、八重子はずっとカサブランカを閉めていた。かっちゃんはカサブランカの花束を持ち、八重子の顔を見に行く。八重子はかっちゃんのジャケットを繕いながら、この店を閉めて服部と結婚するつもりだと告げる。服部は亡くなった夫の友人で、八重子は以前から彼にプロポーズされていた。八重子はなかなか決心がつかなかったが、父親が亡くなって家にいづらくなったこともあり、服部との再婚を決意したのだった。

かっちゃんはショックを隠し、八重子を祝福する。かっちゃんの気持ちに気づいていた八重子は、「裏切るようなことをしてごめんなさい」と、泣きながら詫びる。かっちゃんは動揺し、八重子を妹のように思っていただけだと繰り返す。

土曜名画劇場で、かっちゃんが八重子のために用意した小津安二郎監督の『東京物語』が上映される。しかし、いつもの席に八重子の姿はなかった。

上映終了後、かっちゃんは委員会のメンバーに、オデオン座の閉鎖を発表する。銀行からの借金が膨らみ、この土地を処分するしかない状況になっていた。黙って話を聞いていた常さんは、貯金通帳と印鑑をかっちゃんに渡し、「これを使ってくれ」と告げる。常さんはいつかこんな時が来るだろうと予想し、鮎釣りで生計を立てて、オデオン座からのわずかな給料を全て貯金していた。その額は1200万円になっており、一同は驚愕する。かっちゃんは、そんな大事なお金は使えないと断るが、常さんは一歩も引かず、映写室に籠城してしまう。常さんは、誰よりもこのオデオン座を愛していた。

その後、八重子は大阪へ旅立ち、かっちゃんはオデオン座の一部をピザ屋に改装し、映画館を続けていくことにする。改装資金には、常さんの貯金を使わせてもらった。そして、亮はかっちゃんから、東京行きの飛行機のチケットと今までの給料を渡される。かっちゃんは亮の将来を真剣に考え、クビにすることを決めていた。

東京へ帰る前の日、かっちゃんは亮と一緒に『男はつらいよ』を見る。さくらが嫁入りするシーンを見ながら、ポロポロと涙をこぼすかっちゃんを見て、亮はかっちゃんの八重子に対する愛情の深さを知る。

東京へ戻った亮は、ハローワークに通って仕事を探し始める。かっちゃんは暇そうな若者を捕まえてバンに乗せ、常さんと3人で移動映画の開催地へ向かう。オデオン座のバンが通り過ぎた道沿いには、旅を続ける寅さんの姿があった。

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