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映画『追想』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

一目で恋に落ちて結婚したフローレンスとエドワードは、新婚旅行先のホテルで初夜を迎えるのだが、思いがけない問題に直面し、急転直下の結末を迎える。シアーシャ・ローナン主演の複雑なラブストーリー。

映画『追想』の作品情報

追想

タイトル
追想
原題
On Chesil Beach
製作年
2018年
日本公開日
2018年8月10日(金)
上映時間
110分
ジャンル
ラブストーリー
ヒューマンドラマ
監督
ドミニク・クック
脚本
イアン・マキューアン
製作
エリザベス・カールセン
スティーブン・ウーリー
製作総指揮
ジョー・オッペンハイマー
ベス・パッティンソン
ノーマン・メリー
ピーター・ハンプデン
イアン・マキューアン
トーステン・シューマッハー
ジギー・カマサ
キャスト
シアーシャ・ローナン
ビリー・ハウル
アンヌ=マリー・ダフ
エイドリアン・スカーボロー
エミリー・ワトソン
サミュエル・ウェスト
製作国
イギリス
配給
東北新社
STAR CHANNEL MOVIES

映画『追想』の作品概要

数々の文学賞を受賞しているイギリスの著名な小説家イアン・マキューアンが、2007年に発表したブッカー賞最終候補作『初夜』を原作としたラブストーリー。監督はこれが長編映画監督デビュー作となるドミニク・クックで、脚本は原作者のイアン・マキューアン自身が手がけている。ヒロインを演じるのは、2018年6月に日本で公開されたばかりの『レディ・バード』(17)でもアカデミー主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン。

映画『追想』の予告動画

映画『追想』の登場人物(キャスト)

フローレンス(シアーシャ・ローナン)
才能溢れる若きバイオリニスト。
エドワード(ビリー・ハウル)
歴史学者を目指す真面目な青年。

映画『追想』のあらすじ(ネタバレなし)

1960年代のイギリス。容姿端麗で聡明な若きバイオリニストのフローレンスは、一流の音楽家を目指して猛勉強中で、恋愛には奥手だった。しかし、歴史学者を目指している好青年のエドワードと出会い、一目で恋に落ちる。若い2人は初々しい恋愛期間を経て、めでたく結婚する。

結婚式を終えた2人は、新婚旅行のためドーセット州のチェジル・ビーチを訪れ、海岸沿いのホテルで初夜を迎える。フローレンスはエドワードを心から愛しており、彼と結ばれるのは自然なことなのに、いざとなるとその行為に嫌悪感を感じてしまう。苛立つエドワードとフローレンスは口論となり、彼女はホテルを飛び出していく。エドワードは彼女の後を追うが、2人の結婚生活はたった6時間で終わりの時を迎えてしまう…。

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映画『追想』の感想・評価

複雑で繊細な男女の心の機微を描く

美しくて聡明な女性が誠実な若者と恋に落ち、幸せな交際期間を経て、めでたく結婚したはずなのに、結婚初日で別れてしまうとは一体どういうことなのか。すでに予告編で「たった6時間の結婚で2人は別れることに」と結末が暴露されているので、本作では、そうなるに至った男女の複雑な心の機微に注目して欲しい。

物語の舞台は1960年代のイギリスであり、フローレンスとエドワードは、婚前交渉をすることなく、新婚初夜を迎えている。イアン・マキューアンの原作小説『初夜』では、初夜を迎えた2人の様子が事細かに描写され、多くの読者の心を掴んでいる。フローレンスは心からエドワードのことを愛しているが、肉体関係を持つことには強い抵抗感がある。極度の潔癖症なのか、それとも過去に何かあったのか。愛しているのに別れる理由が外的な要因(親の反対や物理的な距離など)ではなく、主人公自身の中にあるという点に興味をそそられる。

原作者のイアン・マキューアン自身が脚本を執筆

原作の『初夜』を執筆したイアン・マキューアンは、1975年に発表したデビュー作の短編集『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞を受賞した才能の持ち主だ。その後も精力的な執筆活動を続け、1998年に発表した『アムステルダム』では、世界的権威のある文学賞として知られるブッカー賞を受賞している。

彼の小説は何作か映画化されており、少ないながら映画脚本の執筆も手がけている。原作者が脚本を書くことについては賛否両論あるところだが、本作のように登場人物の心理描写が重要になる作品では、利点の方が多いだろう。なぜなら、原作者のイアン・マキューアン以上に登場人物の複雑な内面を理解している人はいないからだ。

実力はお墨付きのシアーシャ・ローナン

本作でヒロインのフローレンスを演じるのは、実力派の若手女優として知られるアイルランド出身のシアーシャ・ローナン。彼女は13歳の時に、イアン・マキューアンの小説『贖罪』を映画化した『つぐない』(07)に出演し、いきなりアカデミー助演女優賞にノミネートされた。2009年公開の『ラブリーボーン』では、連続殺人犯に殺され、天国から家族の再生を見守る健気な少女を感情豊かに演じて、天才子役ぶりを発揮した。2015年公開の『ブルックリン』では、故郷から遠く離れたニューヨークで成長していく主人公のアイルランド人女性を瑞々しく演じ切り、数多くの映画賞で主演女優賞を受賞している。

彼女の魅力を簡潔に述べると、透明感のあるルックスとやはり天才的な演技力ということになるだろうか。「天性の女優」という誉め言葉があるが、シアーシャ・ローナンはまさにその言葉がピッタリの女優であり、自然にその役になりきってしまえる天性の才能を感じる。さらに最近は、経験を重ねたことで演技に深みが出てきており、現在の若手女優の中でオスカーに最も近い存在であることは間違いない。そんな成長著しいシアーシャ・ローナンが、この複雑な役をどんな風に演じているのか、楽しみで仕方がない。

映画『追想』の公開前に見ておきたい映画

映画『追想』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『追想』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

つぐない

1935年のイギリス。裕福な家庭で育ったセシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、使用人の息子のロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と恋に落ち、人知れず愛し合うようになる。13歳になるセシーリアの妹のブライオニー(シアーシャ・ローナン)は、小説家志望の繊細な少女で、姉とロビーの関係に強い嫌悪感を抱く。そんなある日、屋敷の敷地内でレイプ事件が起こり、ブライオニーは少女独特の思い込みで犯人はロビーだと証言してしまう。このブライオニーの罪深い嘘は、それぞれの人生の歯車を大きく狂わせることになる。

イアン・マキューアンの傑作小説『贖罪』を『プライドと偏見』(05)のジョー・ライト監督が映画化したイギリス映画で、第80回アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネートされた。あらゆる点で評価の高い恋愛映画であり、様々な方法で映像が入手できるメジャーな作品なので、未鑑賞の方にはまずはオススメしたい1作。

詳細 つぐない

ブルックリン

1950年代。故郷アイルランドでの田舎暮らしに飽き飽きしていたエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は、優しい姉の配慮で憧れのニューヨークへ渡る。しかし、都会での日々は想像以上に孤独で、エイリシュはホームシックになってしまう。それでも、大学へ通うことで学ぶ楽しさを知り、素敵な恋人もできて新生活は軌道に乗り始める。そんなある日、大人の女性へと成長しつつあったエイリシュのもとに、故郷から悲しい知らせが届く。

2015年に公開されたこの作品は、世界各国の批評家から97%という高い支持率を得て、興行的にも大成功を収めた。特にヒロインのエイリシュを演じたシアーシャ・ローランの演技が絶賛され、彼女は数多くの映画賞で主演女優賞を受賞し、アカデミー主演女優賞にもノミネートされた。田舎からたった1人で都会に出てきて、孤独の中で少しずつ強さを身につけながら、垢抜けていくエイリシュの姿に自分を重ねた女性も多いことだろう。1人の女性の成長物語としても楽しめるが、天才子役から大人の女優に成長したシアーシャ・ローランの演技が堪能できるのも嬉しい。

詳細 ブルックリン

恋人たちの予感

大学時代に知り合ったサリー(メグ・ライアン)とハリー(ビリー・クリスタル)は、10年ぶりに再会を果たして意気投合し、男女の枠を超えた大親友となる。2人はこの関係を大切にしたくて、一線を越えないという暗黙のルールを守ってきたのだが…。

『追想』とは全く違うテイストのコミカルな恋愛映画だが、プラトニックな関係を維持しているうちは幸福だった男女が、一線を越えた(越えようとした)ことでおかしくなるという点に、この2作品の共通点がある。サリーとハリーはお互いの恋愛事情も全て暴露し合うような親友であり、サリーはベッドの中での女性の本音までぶちまけている。その2人がはずみで一線を越えてしまい、男女としての新たな関係を模索し始める。フローレンスとエドワードは愛し合って結婚までしたが、一線を越えようとして大きな壁にぶち当たり、結局は別れてしまう。この2つの作品を見比べてみて、男女関係の難しさについて考えてみるのも面白いのではないだろうか。

詳細 恋人たちの予感

映画『追想』の評判・口コミ・レビュー

映画『追想』のまとめ

愛する人と結婚して、初夜を迎えたら結ばれるのは自然なことのように思えるが、本作はそこで立ち止まり、若い男女に強烈な試練を与えている。心から愛し合っている健康な若い男女が、何らかの理由でどうしても肉体を重ねることができないというのは、ある意味でとても残酷な話だ。この悲劇をどんな脚本と演出で観客の共感を得られるラブストーリーに仕上げているのか。そしてキャストはどんな演技を見せてくれるのか。全く予想がつかないところが本作の魅力だろう。

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