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映画『ライ麦畑で出会ったら』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

1969年、アメリカペンシルベニア州に住む学生ジェイミーは、1951年に発表された「ライ麦畑でつかまえて」にいたく感動を覚えていた。ひたむきな青年が、原作者サリンジャーに出会うまでの素直でハートフルな旅の思い出を、金色の稲穂が風に揺られる情緒あふれる10月に、満を持して日本公開。

映画『ライ麦畑で出会ったら』の作品情報

ライ麦畑で出会ったら

タイトル
ライ麦畑で出会ったら
原題
Coming Through the Rye
製作年
2015年
日本公開日
2018年10月27日(土)
上映時間
97分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
ジェームズ・サドウィズ
脚本
ジェームズ・サドウィズ
製作
テディ・グレナン
ジェームズ・サドウィズ
製作総指揮
ジェフ・スティーン
アレクサンドル・ウッドワード
キャスト
アレックス・ウルフ
ステファニア・オーウェン
クリス・クーパー
エイドリアン・パスダー
製作国
アメリカ
配給
東北新社
STAR CHANNEL MOVIES

映画『ライ麦畑で出会ったら』の作品概要

演劇サークルに所属する孤独な学生のジェイミーは、ひょんなことから名作「ライ麦畑でつかまえて」に出会う。感動を覚え、原作者に会いたいという衝動に駆られた青年は、奮起して原作者サリンジャーへ会う旅路に出る。素朴な青年ジェイミーを、2018年日本でも大ヒットを記録した『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』に出演した、アレックス・ウルフが務める。ジェイミーが焦がれる名作を生みだした巨匠サリンジャーは、アカデミー助演男優賞受賞の名俳優クリス・クーパーが演じる。

映画『ライ麦畑で出会ったら』の予告動画

映画『ライ麦畑で出会ったら』の登場人物(キャスト)

ジェイミー(アレックス・ウルフ)
ペンシルベニア州の高校に通い、演劇サークルに所属する。「ライ麦畑でつかまえて」の脚色をするため、サリンジャーに会いに旅に出る。
ディーディー(ステファニア・オーウェン)
ジェイミーと同じ演劇サークルに所属する学生。ジェイミーの旅に同行することになる。
サリンジャー(クリス・クーパー)
「ライ麦畑でつかまえて」の原作者。現在は隠居生活を送っている。

映画『ライ麦畑で出会ったら』のあらすじ(ネタバレなし)

1969年、アメリカのペンシルベニア州のクランプトン高校に通う、学校一冴えない青年ジェイミー。僅かな友達もおらず自分を囚人だと揶揄するひねくれた性格で、学友からは馬鹿にされる日々。

その中で、ジェイミーが夢中になれるものが、青年小説の金字塔と言われている『ライ麦畑でつかまえて』。原作を読み感動を覚えたジェイミーは、演劇の舞台でぜひ原作の脚色をしたいと考える。だが、先生に相談したところ原作の脚本には原作者の許可が必要と言われてしまう。

ジェイミーは、原作者のサリンジャーに手紙をしたためる。実際にお会いする機会を作っていただくか、脚本を送っていただけないでしょうか。そんな内容の手紙に、サリンジャーからの返事はない。ジェイミーは、一大決心をして寮を飛び出しサリンジャーに会うための旅路を行く。

大きなカバン一つでヒッチハイクしながら進む道のりで、クラクションを鳴らして止まってくれた車に乗っていたのは、演劇サークルで出会ったディーディー。2人は、隠居して何処にいるとも知れない原作者・サリンジャーを探す旅に出発する。

映画『ライ麦畑で出会ったら』の感想・評価

恋愛映画とはまた違う、好きなことにひたむきになる映画

風変わりでとても苦手な兄や、自分をからかう学友たち、心を開けずにいる意気地なしの自分。何もかもに嫌気が差し、学校は牢獄、自分は囚人と不貞腐れる日々。そんな捻くれた考え方のジェイミーが、唯一のめり込むように没頭するのが演劇。

そして、そこで出会う名作『ライ麦畑でつかまえて』。この名作を舞台にしたら、どれだけ素晴らしいだろうか。ジェイミーの心を突き動かす、作品を舞台化する夢。その夢に立ちはだかる現実に、受け身の青年が自らを突き動かしていく。

決して能動的で積極的でなかった青年が、自分の意思で寮を出て、どこにいるとも分からない原作者に会いに行く。その彼を近くで見ていたディーディーは、ひたむきな心に共感を持ったからこそ助けたいと思い、一緒にいたいとも思う。そして、挫けそうになるジェイミーの傍にいて、アドバイスをくれ励ましてくれる。

ただの高校生の恋愛映画とは違う、自分の好きなことに素直になれる、そんな温かな気持ちになるストーリー。

ジェームズ・サドウィズ監督の実体験を基に作られた、リアル青春ストーリー

今作の監督・脚本・製作を担当しているジェームズ・サドウィズ氏は、ストーリーの中でサリンジャーに会いに行くまでの88%、会ってからラストまでの99%が自分の実体験だと語る。

ドラマの脚本からスタートしたサドウィズ氏のクリエイティブ人生は、監督や製作を重ねていくうちにグラミー賞・ゴールデン・グローブ賞などの名誉ある賞を次々と受賞する。気付けば、彼の携わった作品がノミネートや受賞したのは延べ35作品にも上る。

そんな多くの実績を持つサドウィズ氏の、長編映画初監督作品となるのが『ライ麦畑で出会ったら』。実話を元にしているので、青春時代ならではのほろ苦くも甘酸っぱい恋愛模様や、人生に行き詰まる姿は、多くの海外メディアからも絶賛されている。

秋を彩る稲穂のような優しさが、大人になって忘れてしまう青春を取り戻してくれる。

不朽の名作が紡ぐ人間模様

名作を巡った映画は数多く製作されており、この映画もその名作を映画化した作品の一つとも言える。しかし、この映画の魅力的なところを挙げるのだとすれば、これが完全なフィクションではないということである。

監督の実体験を具現化した、名作を巡る物語。あらゆる要素にリアリティがあるからこそ、この映画は数多くの人たちに称賛されているのだと言える。刊行から60年を超えた現代になってもなお、世代を超えて語り継がれる青春小説の金字塔が織り成すヒューマンドラマは、とても美しくそして優しい。ジェイミーがサリンジャーの名作に心を奪われてしまうのは、その年代の青年だったら誰しもがそうなるのかもしれない。

貧困や人種差別が浮き彫りになり問題視され、ベトナム戦争の長期化により社会は不安定になる。更に、ケネディ大統領や偉大なキング牧師暗殺などが続き、アメリカが分裂されようとしている激動の60年代。

先の不安な世の中で、高校と言う小さな社会の中ですら上手くやっていけないジェイミーが、『ライ麦畑でつかまえて』の主人公ホールデン・コールフィールドと出会えたのも、これは運命だったのかもしれない。

映画『ライ麦畑で出会ったら』の公開前に見ておきたい映画

映画『ライ麦畑で出会ったら』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『ライ麦畑で出会ったら』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル

2018年4月に日本で公開される前から、話題となり人気が急上昇した映画『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、1995年の『ジュマンジ』の続編として製作された。近年、人気を不動のものとしている『ワイルド・スピード』シリーズにも出演しているドウェイン・ジョンソンが主演を務め、肉体は見るからに筋骨隆々のマッチョなアメリカンでありながら、オタクの高校生と言う役を演じる。

『ライ麦畑で出会ったら』の主演・アレックス・ウルフは、この映画ドウェイン・ジョンソンが演じる役の中身とも言える、オタクな高校生スペンサー役。映画の主人公なんて柄じゃない、いわゆるイケてない高校生を熱演し、最近ではその演技力に磨きかかかり注目を浴びている。

詳細 ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル

アダプテーション

ニコラス・ケイジ主演の2003年に公開されたアメリカのコメディ映画。脚本化を目指すニコラス・ケイジ演じるチャーリー・カウフマンはクライアントからの度重なる催促に悩まされ、双子の弟の邪魔に悩まされながらもなんとか脚本作業を進めている。

この映画でクリス・クーパーは、カウフマンが執筆しようとしているメリル・ストリープ演じる記者・スーザンの書いた『蘭に魅せられた男』という本に登場する。コレクター癖のある男性ジョン・ラロシェ(クリス・クーパー)は、様々なものを集めていたが、幽霊蘭と言われる“ポリリザ・リンデニイ”を収集する。

クリス・クーパーはこの映画に出演後、アカデミー助演男優賞とゴールデン・グローブ賞助演男優賞を受賞している。数々の映画に出演してきたクリス・クーパーの演技が、世界的に認められた作品として、彼の代表作に名を連ねることとなった。

詳細 アダプテーション

ウォールフラワー

アメリカの作家・スティーブン・チョボスキーが執筆した2009年度最も推奨する本のトップ10にも選ばれたティーンエイジャー向けの青春小説。主人公チャーリーが学校に対して孤独と不安を抱えながらも、工作クラスで出会った上級生に連れられ、パーティーに参加し多くの人と出会っていく。そしてそこで、人だけでなく音楽に触れ、果てはドラッグにまで触れていく。

チャーリーは上級生パトリックの妹サムや、サムの友人メアリーとも仲良くなり、心惹かれ学校を楽しむようになる。ところが、幼い頃に親戚から性的暴行を受けていた記憶が呼び覚まされ、精神を病んでしまう。

様々な出来事が目まぐるしく起きる学校生活の中で、追いついていかない自分の心に寄り添い、静かに耳を傾ける。不安定な精神を無理に落ち着かせるのではなく、出会った人々と何度も深くまで話し合い、自分自身を見つめ直し、自分を認めてあげ、自分を受け入れてあげる練習をする。そしていつしか、自分で自分を好きになれるところが1つでも見つけられるようになったら、学校はもう、怖いところではなくなっている。

ティーンエイジャーが抱える心の不安が、チャーリーの言葉を紡いで訴えかけているよう。その切な思いに、人々はそっと近くでジッと話を聞いて待ってくれる。1人の人間が自立していく様を、優しいテイストで語り掛けてくれる、青春ドラマ。

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映画『ライ麦畑で出会ったら』の評判・口コミ・レビュー

映画『ライ麦畑で出会ったら』のまとめ

10代の頃、とにかく何もかもが気に入らなくて自分自身のことも気に入らなくて、全部が壊れてしまえば良いのにと、誰しも思ったことがあるだろう。それでも、「明日はきっと、今日よりはマシ」と、心のどこかでなんとなく思いながら日々を過ごしている。ティーン独特の捻くれた考え方と、素直になれない意地が、自分もそうだったとあの頃の青春を思い出させてくれるようで、懐かしさを覚える。

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