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映画『まぼろしの市街戦』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

1967年に公開された、狂気に塗れる愚かしい戦争をテーマに、その重苦しさを吹き飛ばすほどの笑いとユーモアで観客を引き込み魅了した作品。巨匠フィリップ・ド・ブロカの代表作でもある『まぼろしの市街戦』が、4Kデジタル修復版で、2018年10月にリバイバル公開が決定。

映画『まぼろしの市街戦』の作品情報

まぼろしの市街戦

タイトル
まぼろしの市街戦
原題
Le roi de coeur
製作年
1967年
日本公開日
2018年10月27日(土)
上映時間
102分
ジャンル
コメディ
ヒューマンドラマ
監督
フィリップ・ド・ブロカ
脚本
ダニエル・ブーランジェ
製作
フィリップ・ド・ブロカ
ミシェル・ド・ブロカ
製作総指揮
不明
キャスト
アラン・ベイツ
ピエール・ブラッスール
ジャン=クロード・ブリアリ
ジュヌビエーブ・ビヨルド
アドルフォ・チェリ
フランソワーズ・クリストフ
ジュリアン・ギオマール
ミシュリーヌ・プレール
製作国
フランス
配給
パンドラ

映画『まぼろしの市街戦』の作品概要

時は、第一次世界大戦末期の1910年代。北フランスの小さな町で起こった、とある出来事。上層部から命じられ、田舎町へ潜入しにやって来たイギリス軍通信兵のプランピック二等兵は、もぬけの殻になった町に取り残される精神病院の患者たちと仲良くなる。その病院では戦争なんて何のその、理想郷(ユートピア)のような光景が広がっていた。2018年で没後15年を迎える、イギリスの俳優アラン・ベイツが若かりし頃に演じた、戦争を笑い飛ばすほどの魅力とユーモア溢れるハートフルコメディドラマ。

映画『まぼろしの市街戦』の予告動画

映画『まぼろしの市街戦』の登場人物(キャスト)

チャールズ・プランピック(アラン・ベイツ)
イギリス軍に従事している通信兵、階級は二等兵。ドイツ軍が仕掛けていった時限式爆弾の解除を命じられ、単身フランスの田舎町までやって来る。精神病患者たちには「ハートのキング」と名乗る。
コクリコ(ジュヌビエーブ・ビヨルド)
田舎町の精神病院に入れられている患者の1人。突然やって来たハートのキングであるプランピックと恋に落ちる。

映画『まぼろしの市街戦』のあらすじ(ネタバレなし)

どこか気弱そうなイギリス軍の通信兵・プランピック二等兵は、第一次世界大戦の只中、1人フランスの田舎町を目指し歩く。向かう先の町には、敗走しているドイツ軍が仕掛けた時限式の爆弾があるとのこと。

殺風景で古い建物が並ぶ町に辿り着いたプランピック二等兵は、道の向こうからやって来る、町に残っていたドイツ軍兵士に追われ、たまたま開門していた精神病院に逃げ込む。そこでは、世の中で起こっている戦争を他所にトランプで遊び、楽しそうに過ごす患者たちの姿があった。

王様が戻ってきたと誰かが叫び、プランピックは「ハートのキング」となる。そして、誰もいなくなった町で、プランピックと患者たちとサーカス団の動物たちだけの、奇妙でおかしくて、そして楽しさに溢れる日々が始まる。

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映画『まぼろしの市街戦』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『まぼろしの市街戦』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『まぼろしの市街戦』の感想・評価

カルト映画の名監督が送る、反戦コメディ映画

場所はフランス、パリに生まれ育った今は無きフランスの名監督、その名はフィリップ・ド・ブロカ。彼は、若い頃に端役として映画に出演する傍ら、助監督などを務めて監督の修行を積む。

アクション映画やコメディ映画を多く撮り、1963年に公開された『リオの男』は、ブロカ監督の代表作となり、アカデミー賞にもノミネートされている。そのブロカが、カルト映画界の名監督と呼ばれるのは、どの映画もコミカルでウィットに富む軽い気持ちで見られる面白おかしい映画ばかりだが、どこか演出やシチュエーションが奇妙で、ファンがそこに風刺的な意味を見出すからである。

事実、今回およそ半世紀もの長い時間を経て、デジタル修復版でリバイバル公開される『まぼろしの市街戦』は、明らかなるコメディ映画ではあるが、テーマが「戦争」や「反戦」なだけに、映画内から多くの意図が読み解かれている。

ストーリーだけでなく、そこで生活している精神病患者たちは、現実なようで現実離れした存在。そして、そこに感化されていく主人公プランピック二等兵。彼らが102分の間に織り成すそれぞれのストーリーは、反戦とは何か、戦争とは何かを問いかけるようで、問いかけない映画である。

2つの可能性を持つ映画

1967年に日本で公開された際、オリジナルのエンディングとは異なったエンディングが上映されている。あまりにも微妙すぎる違いだが、今回リバイバル上映される映画は、日本で公開されたものではなく、オリジナル版である。

1つの映画で、2つの異なるエンディングが存在する映画は、これまでにもいくつか上映されているが、そうした映画が公開されるには必ず理由が存在する。監督が、あるいは脚本家や演出家が描きたかった物語が、別のところにも存在しているとすれば、クリエイターとして表現しておきたくなる気持ちも、分からなくはない。

物語の結末を、敢えて1つに絞らずに表現することで、観客により深く語り掛ける効果があるとも言える。物語は、どちらに進むべきなのか、それとも他にも可能性が存在するのかを問いかけるのに、2つの選択肢はとても有効的である。

この映画のエンディングは、そこまで大掛かりな違いのあるものではないし、そもそも内容からして、観客が考えさせられるような、考えなくても見られるようなユーモラスな映画でもある。ただ、多くのテーマと多くの衝撃を与えてくれる映画であることは間違いないので、映画ファンにはより深く、この映画の神髄まで楽しんで欲しいと願うばかりである。

美しすぎるジュヌビエーブ・ビヨルド

精神を病み、病院に入院している患者とは、世間的にはどのようなイメージを抱くであろうか。どこか目はうつろで、余り身なりが良くなく、話す言葉も理解できないような独特の世界観を持つような人。

そんなイメージが精神病患者には、あるいは当てはまるのかもしれない。ところが、今作のヒロインとなるカナダ生まれの女優、ジュヌビエーブ・ビヨルドの美しさと言ったら、かの名女優オードリー・ヘプバーンに負けるとも劣らない程の美女である。

主人公プランピックが、ジュヌビエーブ・ビヨルド演じるコクリコと結ばれるのも、致し方ないのではないだろうか。例えコクリコが精神を病み、病院に入院していたとしても、なお余りある事象である。

サーカス団の残していったドレスを纏ったコクリコは、はた目から見たらとても精神を病んでいるとは思えない程の絶世の美女である。美しく修復されたスクリーンで、ジュヌビエーブ・ビヨルドの美しさをぜひ堪能していただきたい。

映画『まぼろしの市街戦』の公開前に見ておきたい映画

映画『まぼろしの市街戦』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『まぼろしの市街戦』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

リオの男

フランスの名監督、フィリップ・ド・ブロカの映画と言えば、この映画を外しては語られない。1964年にフランスとイタリア共同で製作されたアクション・コメディ映画である。

アカデミー賞最優秀脚本賞にノミネートされたこの作品は、フランス東部の町ブザンソンに住む見習い航空兵アドリアン・デュフルケのパリ休暇中の物語。婚約者と、婚約者の父親が何者かに誘拐され、遥か地球の裏側ブラジルのリオデジャネイロまで追いかける羽目になった主人公。

考古学教授でもある婚約者の父親が、ブラジルから持ってきた美術品を巡って、アドリアン・デュフルケが奔走する。この映画は、日本で大人気のモンキー・パンチ原作の漫画『ルパン三世』の元ネタとも言われている。

それを知っているだけで、「女性」と「お宝」を追いかけ走り回るアドリアン・デュフルケが割とかっこいい俳優名だけあって、ルパン三世にも見えてくるのではないだろうか。

詳細 リオの男

1000日目のアン

歴史映画として1969年に公開された、16世紀イングランド王国を舞台に、ヘンリー8世の妃・アン・ブーリンを描いた物語。演じるのは、この映画でゴールデングローブ賞主演女優賞ドラマ部門を受賞したジュヌビエーブ・ビヨルド。

アカデミー賞でも10部門の候補に上げられ、その中で衣装デザイン賞を受賞するなど、ジュヌビエーブ・ビヨルドの映画の中でも、彼女の代表作ともいえる作品となっている。

16世紀のイングランドで、宮廷で生活していた18歳のアンは、当時の王ヘンリー8世に見初められ、愛人になることを迫られる。しかし、アンの姉が庶子を生んでいたことから、同じような境遇にはなりたくないと拒絶する。

諦めきれないヘンリー8世は、自分の妻キャサリンやローマと決別し、アンを選ぶ決断をする。しかし、生まれた子供が女児であったことから、アンの人生は狂い始める。美しいジュヌビエーブ・ビヨルド演じるアン・ブーリンが、男に乗せられ利用される様が、とても儚く悲しく、しかしどこか官能的で見入ってしまう映画である。

詳細 1000日目のアン

トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン

かの有名なホラー映画『エクソシスト』の監督にして、ホラー映画界の第一人者とも言える監督ウィリアム・ピーター・ブラッティの作品。元は脚本家であったブラッティが、『エクソシスト』の次に監督を手掛けた作品である。

時は、ベトナム戦争終盤。戦火の厳しい状況で、精神に異常をきたしてしまう兵士のために、太平洋上の小さな孤島に建てられた、立派なサナトリウム。その巨大な治療施設に、兵士たちが次々と収容されていく。

主人公・ケーン大佐(ステイシー・キーチ)は、精神科医としてこの島に赴任してくる。ここで出会う収容者たちは、誰もが本当に奇天烈で基地外な者ばかり。ケーン大佐は、屈強な男のような見た目とは裏腹に、患者たちにはとても優しく丁寧に接している。

しかし、このケーン大佐も実はとある過去の持ち主であったり、更に誰にも知られないところで、この治療施設に激震が走る秘密の計画が進められたりと、映画の内容としては見どころが満載である。『エクソシスト』があまりにも有名すぎて、このファンシーな題名の映画はあまり知られていないが、戦争映画で精神病患者が出てくるストーリーと言えば、この映画もお勧めである。

詳細 トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン

映画『まぼろしの市街戦』の評判・口コミ・レビュー

映画『まぼろしの市街戦』のまとめ

毎年、8月になれば終戦の日を記念して、多くのメディアがこぞって反戦を訴えかける。更に、評論家や批評家、または体験者が戦争についての惨劇や害悪を語っている。そんなメディアを他所に、一歩その輪の外へ出てみたら、案外誰しもがこの精神病院の患者のように、楽天的でどこ風吹く表情で戦争を見ているのかもしれない。映画内で、「冗談が過ぎるなぁ」というセリフが出てくるが、戦争とは案外、外から見てみるとそんなものかもしれないと思えてしまう。

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