映画『贅沢な骨』の概要:行定勲監督による、女二人男一人の揺れる愛の行方を描いた恋愛ドラマ。対照的な女二人が時には寄り添い、時には傷つけあう姿を繊細なタッチで描く。16ミリからのブローアップ作品で、2001年度キネマ旬報ベスト・テン監督賞を受賞。
映画『贅沢な骨』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:行定勲
キャスト:麻生久美子、つぐみ、永瀬正敏、光石研 etc
映画『贅沢な骨』の登場人物(キャスト)
- ミヤコ(麻生久美子)
- サキコと一緒に暮らし、その生活費をホテトルの仕事でまかなっている。自分は不感症だからホテトルという仕事が性に合っていると、サキコに話している。新谷に抱かれ、初めてオーガズムを得る。
- サキコ(つぐみ)
- 父親の再婚により、孤独感を感じ、心を病んでしまっている。引きこもりがちで、ミヤコが部屋にいないときは、一人でギターを爪弾く。ハンプバックスというバンドのレコードがお気に入り。
- 新谷アキヲ(永瀬正敏)
- ミヤコを買った客。ミヤコに初めてのオーガズムを与える。ほか弁が好き。実は、ハンプバックスのメンバーだった。
映画『贅沢な骨』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『贅沢な骨』のあらすじ【起】
ミヤコとサキコは一緒に暮らしていた。不感症だからという理由でホテトルをするミヤコが、生活費を稼いでいた。サキコは、引きこもりがちで、部屋でギターを爪弾いている。
ある日ミヤコは、いつもジャージばかり着ているサキコに露出度の高い服を買ってくる。そんな服を着て出かける先もないサキコは、必要ないと言う。仕方がないので、ミヤコは、その服を着て仕事に出るのだった。
ミヤコのその日の客は、新谷といい、初めての客だった。弁当屋でハンバーグ弁当を買い、ホテルでその弁当を食ってから行為に及ぶ新谷。不感症のはずのミヤコは、その日の新谷との交わりで、初めてオルガズムを感じるのだった。
ミヤコは、初めてイッたことをサキコに告げ、今度は二人で新谷に会うことにする。3人は、公園で弁当を食べたりして一緒に過ごす。そして、ミヤコはサキコと別れ、新谷と二人で、いつものようにホテルへ向かうのだった。行為の後、新谷は金を渡そうとするが、ミヤコは「今日は仕事じゃないから」と受け取りを拒否し、一緒にショッピングへ行く。そして、サキコのために新しい靴を買うのだった。
映画『贅沢な骨』のあらすじ【承】
サキコは、屋上で自分の影を踏もうと遊んでいるうちに転落してしまい、入院する。ミヤコは買った靴を持って見舞いに行くが、足にギブスをはめたサキコには靴は必要なく、自ら新しい靴を履いて病院から帰るのだった。
以前から喉に違和感のあったミヤコは、その夜、一人でいる時に苦しくなる。呼吸困難になっているところに、たまたま新谷から電話がかかってくる。新谷はミヤコの部屋に駆けつけ、ミヤコを助ける。そして、一緒に病院へ行く、二人。しかし、喉に異常は見られないのだった。
別の日、ミヤコが仕事を終え、部屋に帰ってくると新谷が待っていた。二人は、一緒に弁当を食べ、身体を重ねる。翌日、サキコの退院の日、迎えに行くと言ってたはずのミヤコは病院には現れなかった。サキコは、一人で病院を出る。慣れない松葉杖で部屋まで帰ってくる。サキコが、部屋のドアを開けると、ベッドで寝ているのは新谷とミヤコだった。
新谷は二人の部屋に居つくようになる。3人は花火を見に行き、その帰りにサキコは金魚すくいをし、何匹の金魚を連れて帰る。水槽を持っていない二人は、その金魚をミキサーの中で飼うことにするのだった。
ミヤコが仕事に出ている時、新谷はギターをひくサキコと話をする。サキコは、ハンプバックスというバンドのレコードを気に入っていた。そして、そのことを新谷に告げるのだった。
映画『贅沢な骨』のあらすじ【転】
ミヤコは、新谷にサキコを抱くように頼む。しかし、そう言っておきながら親しげに話す二人を見ているとイライラしてしまい、ミヤコは仕事だと嘘をついて、外に出るのだった。二人きりになったサキコと新谷は、ハンプバックスのレコードを聞く。その時、雷鳴が轟き、部屋の灯りが落ちる。サキコは、自分は汚れていると新谷に話す。新谷は、「そんなことはない」とサキコに言い、彼女を抱く。そしてサキコは、幼い頃の辛い思い出を新谷に語るのだった。
仕事に行くと言っていたミヤコは、雨の中でぼんやりとしていた。喉の違和感は続いていた。
ミヤコが部屋に戻ってくると、ちょうど新谷が部屋から出てくるところだった。「サキコは良かった?」と問うミヤコを、新谷は振り払い、帰ってしまう。部屋に戻ったミヤコは、ミキサーの中の金魚と同じように口をパクパクさせているのだった。
サキコに、自分が新谷に抱くように頼んだと告げるミヤコ。サキコは「酷いよ」と言い捨て部屋を出るのだった。行くあてのないサキコは、実家の前まできて躊躇していた。そこへ偶然、義母が帰ってきて、サキコに人形を手渡すのだった。
映画『贅沢な骨』の結末・ラスト(ネタバレ)
ミヤコも部屋を飛び出し、自暴自棄に遊んでいた。しかし、新谷に説得され、部屋まで連れて帰ってもらう。ミヤコは、新谷に「ハンバーク弁当美味しかったよ」と告げ、別れるのだった。
ミヤコが部屋に戻ると、サキコも帰っていた。ミヤコの喉の違和感は続いていた。ミヤコは、突然咳き込み苦しむ。苦しみながらサキコに喉をしめてと頼むミヤコ。サキコは、そんなミヤコを抱きしめるのだった。抱きしめられたミヤコは、サキコにずっと好きだったと告白する。新谷に抱かれているときも、サキコのことを考えていたと告げるのだった。
仲直りをした二人は、サキコのギブスが取れたら一緒に旅行へ行こうと約束する。そして、その日は意外と早く訪れる。サキコは一人で旅行の準備をしていた。すると、電話がかかってくる。一方新谷は、街中でミヤコに声をかけられたように思い、返事をする。しかし、そこにミヤコはいない。
ミヤコは棺に納められていた。その遺体の頬にそっと手を添えるサキコ。喉をさすり、棺の蓋を閉める。そしてサキコは、火葬されたミヤコの骨を拾い、その喉仏の骨をそっと手にとるのだった。
映画『贅沢な骨』の感想・評価・レビュー
文学小説のような、繊細な雰囲気が漂う作品だった。淡々と物語が進んでいくのに、どのシーンも強烈に頭に焼き付くように印象に残っている。永瀬正敏を始めとした役者達の演技が素晴らしく、苦しい気持ち、切ない気持ち、愛おしい気持ちが表情に現れていた。恋愛って綺麗なだけではないのだと、改めて考えさせられた大人のラブストーリー映画。万人受けするような作品ではないかもしれないが、一度見て欲しいなと思う。切ない気持ちが心に残る作品だった。(女性 30代)
受け入れることは出来なくてもこういう恋愛はそこら中にありふれている事を、知っていなければいけないなと感じたし、自分もミヤコやサキコのような立場になる日があるかもしれないとハッとさせられました。
彼らの恋愛は幸せいっぱいのキラキラしたものでは無かったかも知れませんが、一緒に過ごした時間、お気に入りのお弁当、買ってもらった靴、相手を思って買った服などその一つ一つに幸せが込められていて、ほんの少しタイミングが噛み合わなかっただけで伝えたい思いが正しく伝わらなかったのかなと思うと物凄く切なくて悲しくなりました。(女性 30代)
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