映画『テルマ』の概要:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などで知られるラース・フォン・トリアー監督の甥であるヨアキム・トリアー監督作。舞台はノルウェー、厳格なクリスチャンである両親に育てられた少女テルマが同級生の少女と恋に落ちたとき、テルマの秘められたある特殊な力が覚醒する。
映画『テルマ』の作品情報
上映時間:116分
ジャンル:ホラー、サスペンス、ミステリー
監督:ヨアキム・トリアー
キャスト:アイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンズ、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン etc
映画『テルマ』の登場人物(キャスト)
- テルマ(エイリ・ハーボー)
- 厳格なクリスチャンである両親に育てられたため、敬虔な信仰心を持つ。内向的な性格であるが特殊な力を持っている。幼少期の記憶がない。
- アンニャ(カヤ・ウィルキンス)
- オスロの大学に於けるテルマの同級生。エキゾチックな容姿を持つ美少女。テルマと恋に落ちる。
- トロン(ヘンリク・ラファエルソン)
- テルマの父親。信仰心が強く厳格な性格の持ち主。テルマの持つ特殊な力に対してある種の怖れを抱いている。
- ウンニ(エレン・ドリト・ピーターセン)
- テルマの母親。父親同様に信仰心が強い。車いすに乗って生活している。
映画『テルマ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『テルマ』のあらすじ【起】
ノルウェーの片田舎。辺りは雪景色で湖は凍り付いている。幼いテルマと父トロンは森の中で鹿と遭遇する。鹿の姿を見つめるテルマのその背後で猟銃を構えた父トロンは、その銃口をテルマに向けていた。
やがて時が経ち、美しい少女へと成長したテルマは実家のある田舎町からノルウェーの首都オスロにある大学へと進学し、親元から離れて大学での寄宿舎生活を開始する。もともと内向的で人付き合いが苦手なテルマは、不安を抱えながらも田舎での生活とはまるで正反対な都会での生活に徐々に溶け込んでいく。
その一方、娘のことが心配な両親は毎日のように電話をかけてくる。いつまでも自分が子ども扱いをされているようでテルマは内心、両親からの電話を疎ましく感じていた。
そんなある日、大学の図書室でテルマが勉強をしていると、黒い鳥の一群が突然、図書館のガラス窓目がけて次々に衝突した。すると、テルマは身体を激しく痙攣させて床に転げ落ちる。突然、テルマを謎の発作が襲ったのである。
映画『テルマ』のあらすじ【承】
突然の発作を起こしたテルマは病院に運ばれ、診察を受けることになる。しかし、検査の結果、特に異常は見られず、彼女は釈然としない気持ちを抱えたまま、普段の生活へと戻っていく。
ある日、プールでテルマが泳いでいるとプールサイドからエキゾチックな顔立ちの美しい女性アンニャがテルマに話しかけてきた。彼女はテルマが図書室で発作を起こした時、その場に居合わせ、以来、テルマのことをずっと心配していたのだという。
アンニャと出会い、徐々に内向的な自分の殻を破って行こうとするテルマ。はじめのうちは躊躇していたテルマだが、徐々にアンニャのみならずアンニャの友人たちとも交流していく。
しかし、キャンパス・ライフにはつきもののパーティや酒、そして煙草などへの誘惑は敬虔なクリスチャンであり、厳格な両親に育てられたテルマにとっては禁断の領域でもあった。葛藤を抱えながらも仲間と酒を飲み、煙草を吸うようになるテルマ。
やがて、テルマはアンニャに恋をしていることに気づく。
映画『テルマ』のあらすじ【転】
同性であるアンニャに対する恋心に動揺を隠せないテルマ。背徳心を感じながらもアンニャへの想いは募るばかりで、時には彼女への淫らな妄想すら抱いてしまうようになる。そのことがまたクリスチャンである彼女を激しく悩ませる。しかし、彼女のアンニャへの想いはもはや抑えようのないもであった。やがて彼女は両親からかかってくる電話も無視しがちになる。
また、テルマは相変わらず発作症状に悩まされていたため、病院で精密検査を受けることになる。脳波検査用のケーブルを頭部に取り付けられ、激しく光が明滅する。更にMRI検査よって脳の断面図を撮影することになる。その結果、心因性非てんかん発作であると診断される。
テルマの症状に何か引っかかるものを感じた担当医はテルマの過去の病歴を調べることを決め、テルマが過去に診察を受けた病院からカルテを取り寄せ、調べることにする。するとテルマが幼少の頃に精神疾患を患っていったことが判明する。しかし、テルマはそのことについて何も覚えていないのであった。
映画『テルマ』の結末・ラスト(ネタバレ)
テルマの症状を調べていくと彼女の祖母へと辿り着いた。テルマの祖母はかつて精神を病んでいたため、遺伝性疾患が疑われた。そして、亡くなったとテルマが聞かされていた祖母は現在も尚、半ば植物人間状態で老人ホームに入居していたのであった。
その一方で急速に惹かれあうテルマとアンニャ、二人は音楽会へと赴くことになる。演奏が奏でられる中、アンニャから手を握られるテルマ。その時、テルマは動揺を隠せず、恐慌状態に陥ってしまい、会場から抜け出す。やがて、アンニャはまるで神隠しのように忽然と姿を消してしまう。
テルマは自身の発作と失われた幼少期の記憶の謎を解き明かすべく、実家へと戻る。父から彼女は祖母同様、何かを強く願うとそれが叶ってしまうという特殊な能力を持っていると聞かされる。テルマの父であり、医者であるトロンは記憶を奪うべく、祖母にも、そしてテルマにも薬を与えていたのであった。幼かったテルマは実の弟を嫉妬心から消し去ってしまった過去があったのだ。
テルマは怒りを父に向けると湖でボートに乗っていた父は炎に包まれてしまう。母を残し、オスロへと帰るテルマ。テルマはアンニャと再会を果たし、キスを交わした。
映画『テルマ』の感想・評価・レビュー
北欧の冬の風景の美しさと少女たちの儚い美しさが印象的。超常現象や超能力など現実離れした要素を扱いながらも、決してそれをギミック的手法として用いるのではなく、隠喩的に少女テルマの心象風景と重ね合わせ、大人の女性へと成長していく過程として表現した点に極めて高い芸術性を垣間見ることができる。
冒頭の父トロンが我が子であるテルマの背後から銃口を向けるという衝撃的なショットのなんと恐ろしくも美しいこと。本作によってまた更にヨアキム・トリアー監督の底知れぬ才能を垣間見た気がする。(MIHOシネマ編集部)
ホラーやサスペンス的な要素を期待しましたが、想像以上に映像が美しく、ノルウェーの自然やそこで暮らす少女たちの消えてしまいそうな儚い雰囲気に、一気に引き込まれてしまいました。
テルマが持つ特殊能力は、人を幸せにするものではありません。しかし、それを無かったことにして我慢させたせいで、更に悪い方向へと進んでいってしまいます。
ピュアな少女の青春や恋愛物語としても楽しめる作品でしょう。映像な音楽など、芸術的なクオリティがとても高く、魅力的でした。(女性 30代)
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