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映画『陽暉楼』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『陽暉楼』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『陽暉楼』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『陽暉楼』の結末までのストーリー
  • 『陽暉楼』を見た感想・レビュー
  • 『陽暉楼』を見た人におすすめの映画5選

映画『陽暉楼』の作品情報

陽暉楼

製作年:1983年
上映時間:144分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:五社英雄
キャスト:緒形拳、池上季実子、浅野温子、二宮さよ子 etc

映画『陽暉楼』の登場人物(キャスト)

太田房子 / 桃若(池上季実子)
料亭・陽暉楼のNO.1を誇る美しい芸妓。芸名は桃若。産まれて間もない時に、芸妓の母親・豊竹呂鶴(お鶴)を亡くしており、父親・勝造とも疎遠となっている。男性から抱かれる日々を過ごしているが、心から誰かを愛する本当の恋を経験したことがない。
太田勝造(緒形拳)
房子の父親で、亡くなった妻・お鶴を想い続けている。貧困のあまり娘を苦界に売らざるを得ない家族と芸者置屋や遊郭との間を取り持ち、手数料を取る斡旋の仕事をしている。あまり表には出さないが、房子には申し訳ない気持ちを抱いている。
珠子(浅野温子)
勝造の愛人。若く可愛らしい容姿をしており、性格は猪突猛進で強気な面が目立つ。勝造の心を占有する亡きお鶴に嫉妬している。
お袖(倍賞美津子)
陽暉楼の元芸妓で、その後は女将として芸妓達の面倒を見ている。勝造のことが好きで、房子の母親・お鶴とは恋のライバルだった。お鶴の死後は彼女の代わりに房子を育て、芸妓として生きていけるように教育を施した。

映画『陽暉楼』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『陽暉楼』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『陽暉楼』のあらすじ【起】

吹雪が舞い、白雪が降り積もる夜。屋内の舞台では、芸妓が三味線を奏で、美しい音色が鳴り響いていた。

芸妓の豊竹呂鶴(お鶴)に惚れ込んだ太田勝造は、彼女と駆け落ちすることを決意する。しかし、芸妓が逃げることは容易いことではなく、お鶴は追っ手の男に刺され、絶命する。2人の間に産まれた赤ん坊は、母の死も知らずに泣き声をあげていた。

お鶴の死から20年経った昭和8年(1993年)の春。土佐・高知の陽暉楼では、桃若という美しい芸妓が人気を博していた。桃若は芸名で、本名は太田房子といい、彼女は勝造とお鶴の実の娘だった。

房子は母・お鶴に似て美しく、陽暉楼のNO.1の芸妓だったが、一生ものと言えるような情熱的な恋愛を経験したことがなく、客からは「実は冷たい娘なのでは?」と言われてしまうこともあった。

陽暉楼にはお袖という女将がおり、芸妓達からは「お母さん」と呼ばれ、慕われていた。房子の母・お鶴と現女将のお袖は、勝造を巡る恋敵同士だったが、お袖は房子の溢れんばかりの才能を見込み、自身の後継者として育てていた。

一方、勝造は娘・房子とは距離を置いており、大阪で愛人・珠子と暮らしていた。勝造の職業は女衒(ぜげん)という特殊なもので、お金に困った女性を風俗店に斡旋する仕事だった。

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映画『陽暉楼』のあらすじ【承】

勝造にはお峯という後妻がおり、彼女との間に忠という息子を授かっていた。忠は盲目の少年で、房子の腹違いの弟だった。房子は忠を可愛がり、時にはプレゼントを贈る時もあった。

勝造の愛人・珠子は、勝造のことを「お父ちゃん」と呼び、気が強く、時折少女のような面を見せる魅力的な女性だった。しかし、勝造が真に愛しているのはお鶴であり、珠子はそれをひしひしと感じていた。

勝造の心を支配するお鶴に嫉妬した珠子は、陽暉楼に入って芸妓になることで、お鶴より魅力的な女性になることを目指す。勝造を連れて陽暉楼へ向かった珠子だったが、女将のお袖から芸妓になることを拒否されてしまう。

陽暉楼の建物から出る際、珠子達は芸妓達と遭遇し、房子(桃若)の姿を目にする。お鶴の生き写しである美しい房子を見た珠子は、彼女に対抗心を燃やし、玉水という名の遊郭へ入り、女郎になることを決意する。

その後、房子達芸妓は、お得意先の客と共にダンスホールへ足を伸ばすが、そこで女郎となった珠子と彼女が引き連れる女郎達と出くわす。女郎になって間もない珠子だったが、豊富な金と強気な性格から、女郎達のリーダー格となっていた。

音楽が流れ、陽暉楼の客がダンスを踊り出すと、珠子がそこに乱入し、2人でリズミカルなダンスを披露する。自分達芸妓よりも身分の低い女郎に客を盗まれ、頭に血が上った房子は、2人のダンスを強制的に終了させる。

ダンスは終わったものの、芸妓と女郎の戦い、もとい房子と珠子の対決は終わってはいなかった。ダンスホールのトイレで遭遇した2人は、険悪なムードから取っ組み合いの喧嘩へ発展し、綺麗にセットした髪も着物も全て乱れ、女同士の激しい戦いは壮絶を極めた。

映画『陽暉楼』のあらすじ【転】

ダンスホールから飛び出した房子は、乱れた姿のままバーへ向かう。そこには、南海銀行の御曹司である佐賀野井守広がおり、彼は房子が来店するのをずっと待っていた。

房子はフラフラと歩き、佐賀野井の所まで行くと、「(こんな姿の私に)失望したでしょ?」と、半ば諦めたような声を出す。しかし、房子の予想とは裏腹に、佐賀野井は房子に愛を示し、2人は情熱的に抱き合うのだった。芸妓として生きてきた房子にとって、これは初めての恋だった。

大阪で活動している稲宗組の親分・稲村宗一は、大金を獲得するために、高知の陽暉楼を買い取ることを計画する。稲村は、お気に入りの女性・丸子を陽暉楼へ送り、芸妓として忍び込ませ、陽暉楼の主人・山岡をたぶらかし陥れる算段を企てる。

稲宗組が陽暉楼を欲していることを知った勝造は、陽暉楼が被害を受けないように、命懸けで稲宗組の者達と戦い、怪我を負わされ、病院の床に就く。そこに、陽暉楼の女将・お袖がお見舞いにやって来て、房子が妊娠していることを告げる。

房子の子供の父親は、陽暉楼のパトロンで、四国銀行協会会長の堀川かと思われたが、房子はそれを否定する。房子が身ごもった子は、彼女が愛する佐賀野井の子だったのだ。しかし、佐賀野井は房子を置いて、彼女の元から姿を消してしまう。

房子は、後日店を訪れた堀川と対面し、身ごもった子供は堀川との子ではないと正直に伝える。堀川は落胆し、房子につらく当たるが、堀川は何も知らないふりをしていただけで、本当のところは自分の子ではないことを理解していた。

陽暉楼でスパイ活動をする稲宗組の丸子は、道後温泉の貸し切り風呂にて、山岡を誘惑していたが、そこに山岡の妻・お袖がやって来る。お袖は浮気した夫に呆れたが、真の敵である丸子に照準を定めると、着物のままズブズブと温泉の中に入り、彼女を威圧した。強気なお袖は、丸子がその場から立ち退くように仕向け、そんな彼女に怯えた丸子は、渋々その場を立ち去るのだった。

稲宗組の丸子と浮気をした陽暉楼の主人・山岡は、浮気に止まらず、博打をした際に稲宗組から借金をした過去もあり、陽暉楼は危機に追い込まれたが、勝造の助けによって借金は全て返済され、稲宗組は陽暉楼を脅し略奪する手段が得られず、やむなく大阪へ戻っていくのだった。

映画『陽暉楼』の結末・ラスト(ネタバレ)

その後、勝造は珠子との愛人関係に終止符を打ち、珠子を想い続ける優しい男性・秀次との結婚を彼女に勧める。珠子と秀次は結婚後、高知へ住居を移し、その土地で小さな店を営み始める。そこへは、かつて珠子と激しい戦いを繰り広げた房子も訪れていた。房子と珠子は全力でぶつかり合ったことをきっかけに、奇妙な熱い友情が生まれ、親友同士となっていた。房子の腕には彼女の赤ん坊が抱かれており、性別は女の子で、弘子という名前だった。

子のために働く幸せを噛み締める房子だったが、芸の途中で倒れてしまい、結核を患っていたことが判明する。房子は弘子を育てられなくなり、お袖に頼んで、やむを得ず弘子を里子に出すことを決める。

病室のベッドに横たわる房子は、勝造が抱いて連れてきた娘・弘子を窓越しに見つめると、「死にたくない」と儚い声で訴え、そのまま命を散らせるのだった。

房子の死を伝えるために、勝造が珠子と秀次の店を訪れると、稲宗組の刺客の襲撃に遭い、秀次は命を失う。

房子と秀次の死後、勝造と珠子は船に乗って大阪へ向かう。大阪へ着いた勝造は、珠子と駅で別れ、稲宗組の親分・稲村がいる理髪屋へ赴く。勝造は、秀次を殺された仇を取るために稲村を射殺し、その場から逃げ出すが、稲宗組の者に刺殺され、命を落とす。

珠子は人のいない大阪駅のベンチに座り、勝造が無事に帰ってくることを祈っていたが、目からは止めどなく涙が溢れていた。

映画『陽暉楼』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

『陽暉楼』は144分と長い映画だが、展開から目が離せないため退屈せずに観賞することができた。気が強い女性達による修羅場(喧嘩)シーンが見どころだと思っていたが、実際には修羅場要素は少なく、人生の儚さと切なさを描いた作品であることが分かった。房子の母親は彼女が赤子の時に亡くなり、房子自身も母親になってすぐに亡くなってしまう。切なく悲しい連鎖が続き、運命とは残酷だと思わざるを得なかった。房子の親友・珠子も、終盤で夫・秀次と元愛人・勝造を亡くしており、残された彼女がどうなったのかは分からないが、幸せに暮らしてほしいと感じた。(MIHOシネマ編集部)


田中裕子さんの演技に圧倒されました。特に、彼女が演じる桃若の純粋さと哀しみが画面越しに痛いほど伝わってきます。陽暉楼という遊郭がただの舞台でなく、そこに生きる女たちの人生の縮図になっていることが印象的。最後に桃若が自ら命を絶つシーンでは、彼女の愛と絶望の深さに涙が止まりませんでした。日本映画の名作として、何度でも観たくなる重厚な一作です。(30代 女性)


主演の緒形拳さんと田中裕子さんの演技のぶつかり合いが凄まじい。特に緒形さんの演じる堅物な男が、次第に心を開いていく様子は実に人間らしく、リアルでした。陽暉楼という閉じられた世界に生きる女性たちが抱える運命と悲哀、それに対する男たちの無理解が終盤に向かって爆発していく様子に胸が締めつけられました。文学作品のような深みを持った名作です。(40代 男性)


高知の風景と遊郭の華やかさ、そしてその裏にある女性たちの悲しみが対比的に描かれていてとても美しい作品でした。桃若の最後の選択があまりに切なくて、心に深く残ります。自由を求めて生きた結果が死という選択なのが悲しいけれど、それだけ彼女の中の愛は強くて純粋だったと思います。映像も演技も文学的で、観終えた後に余韻が長く残る映画でした。(20代 女性)


時代背景や価値観が違うとはいえ、陽暉楼に生きる女性たちの強さと哀しさには普遍的なものを感じました。田中裕子さんの演じた桃若は、まさにその象徴のような存在。自分の意志で生き抜き、そして自ら終わらせる姿に震えました。物語としては決して明るくはないけれど、人間の生き様という意味では非常に見応えがあります。日本映画の底力を感じる作品です。(50代 男性)


若い頃に観た時は重すぎて理解できませんでしたが、改めて観るとその深さと悲しさに引き込まれました。遊郭の世界は今では考えられない文化ですが、そこに生きる人々の人間らしさ、特に女性の苦悩と誇りが丁寧に描かれています。桃若が命を絶つことで自由を選ぶラストは衝撃的だけど、どこか救いも感じました。人生とは何かを考えさせられる映画でした。(60代 女性)


陽暉楼の世界観がとても丁寧に再現されていて、まるで明治の遊郭にタイムスリップしたかのような没入感がありました。物語は決して明るくありませんが、人間ドラマとして一級品。桃若の人生は苦しいものでしたが、その中に一筋の愛と希望があったことが救いです。田中裕子さんの演技がとにかく素晴らしく、最後まで引き込まれました。心に残る作品です。(30代 男性)


文学的でありながらも映像的に非常に美しい作品でした。登場人物の誰もが善人でも悪人でもなく、それぞれが時代や状況に押しつぶされながらも懸命に生きている姿が印象的です。桃若が選んだ結末は悲しいけれど、彼女なりの誇りを持って生き抜いた証でもあると感じました。娯楽というより“観る体験”として記憶に残る映画です。(40代 女性)


古い映画だと思って甘く見ていたのですが、心に深く刺さりました。遊郭という特殊な舞台でありながら、そこに流れる感情は今と変わらない。桃若の純粋さと、それに惹かれる男たちの不器用さがリアルで切ない。特にラストは衝撃的で、しばらく言葉を失いました。日本映画にしか出せない静けさと重みを感じられる名作です。(20代 男性)


学生時代に原作を読んでいたので内容は知っていたのですが、映像化されたことでより一層キャラクターの感情が伝わってきました。桃若が最後に選んだ道は悲劇的ではあるけれど、彼女にとっては自分を貫く方法だったのだと思います。画面の隅々まで情緒があふれていて、演出の丁寧さに感動しました。静かだけど強い映画です。(50代 女性)

映画『陽暉楼』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『陽暉楼』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

鬼龍院花子の生涯

この映画を一言で表すと?

激動の時代を生き抜いた女たちの、強さと哀しみを描いた傑作人間ドラマ。

どんな話?

昭和初期の土佐を舞台に、侠客・鬼龍院政五郎とその周囲の女性たちの数奇な運命を描く物語。家父長的な支配と抗う女性の生きざまが、情緒的な映像美の中で丁寧に描かれています。血と涙にまみれた人生のドラマが展開します。

ここがおすすめ!

『陽暉楼』と同様に土佐の地を舞台にし、強く儚い女性たちの人生を描いた物語。中でも夏目雅子の圧倒的な演技力が光り、観る者を物語に引き込みます。哀しみと誇りが交差する名作として必見です。

雪之丞変化(1963年版)

この映画を一言で表すと?

妖艶かつ悲哀に満ちた復讐劇が、まるで絵巻物のように繰り広げられる美の極致。

どんな話?

父を冤罪で失った美貌の歌舞伎役者・雪之丞が、復讐のために政敵へと近づいていく物語。変化する仮面の下に秘めた深い悲しみと憎しみが、舞台と現実を交錯させながら静かに燃え上がります。

ここがおすすめ!

市川雷蔵の美しさと気品ある演技が物語を妖しく彩ります。芸術性の高い映像と音楽、緻密な美術が融合したこの作品は、『陽暉楼』に通じる時代劇の叙情性と女性の悲哀を感じさせる力作です。

細雪

この映画を一言で表すと?

時代の波に翻弄される姉妹たちの人生模様を、優雅に、そして静かに描いた名作。

どんな話?

戦前の大阪・芦屋を舞台に、没落する旧家の4姉妹がそれぞれの生き方を模索する姿を描く。格式と誇り、結婚と家柄、戦争の影が少しずつ彼女たちの運命を変えていきます。

ここがおすすめ!

谷崎潤一郎の原作を忠実に映画化し、美しい日本文化と女性の心の機微を見事に再現。『陽暉楼』が描いた女の哀しみと誇りは、本作にも色濃く通じています。格調高い映像と繊細な人物描写に浸れる作品です。

千年の恋 ひかる源氏物語

この映画を一言で表すと?

平安の雅と官能を極めた、王朝文学を現代の映像美で描き出した幻想絵巻。

どんな話?

紫式部の『源氏物語』を、彼女自身の想像力と現実世界を交錯させながら描いた異色の構成。光源氏と女たちの愛憎を背景に、平安貴族の豪奢な世界と女性の内面が濃密に表現されます。

ここがおすすめ!

豪華な衣装、幻想的な演出、情念に満ちた愛の形。『陽暉楼』が持つ女性たちの抑圧と解放をテーマにした視点と、文学的な深みが共通しています。映像と物語の贅沢な融合を堪能できます。

花芯

この映画を一言で表すと?

戦後の女性の性と愛を赤裸々に描く、抑圧からの解放を求める衝撃作。

どんな話?

戦後の混乱期に嫁いだ園子が、形式的な夫婦関係に違和感を抱きながら、本能的な愛に目覚めていく。女性の欲望と自立、そして自由をテーマにした、瀬戸内寂聴原作の官能文学の映画化。

ここがおすすめ!

『陽暉楼』と同様に、女性が社会的役割から解き放たれようとする姿が強烈に描かれています。禁断の愛と自己確立の葛藤が、静かな演出とともに深く心に残ります。女性の本音に向き合いたい人におすすめです。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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