映画『ラビング 愛という名前のふたり』の概要:リチャード(白人)は恋人であるミルドレッド(黒人)の妊娠を機に結婚することにした。だが、彼らが暮らすバージニア州は、異人種間結婚が禁止されていた。リチャード達は逮捕され、州外へ退去しなければいけなくなる。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』の作品情報
上映時間:123分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ジェフ・ニコルズ
キャスト:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニック・クロール etc
映画『ラビング 愛という名前のふたり』の登場人物(キャスト)
- リチャード・ラビング(ジョエル・エドガートン)
- 白人。レンガ職人。恋人のミルドレッドの妊娠を機にプロポーズする。寡黙な性格で、働き者。ミルドレッドのことを深く愛している。
- ミルドレッド・ラビング(ルース・ネッガ)
- 黒人。姉のガーネットと仲が良い。故郷に帰るため、夫のリチャードと共に異人種間結婚禁止法に立ち向かう。気弱な女性だったが、結婚と出産を通じて強い女性になっていく。
- バーナード・コーエン(ニック・クロール)
- 弁護士。バージニア州アメリカ自由人権協会(ACLU)の創立者の1人。異人種間結婚禁止法に苦しむリチャード夫妻に手を差し伸べる。弁護士としての経験は浅い。
- フィリップ・ハーシュコプ(ジョン・ベース)
- 優秀な人権派の弁護士。アンティオー教授を通じてコーエンと知り合い、彼の手助けをすることになる。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ラビング 愛という名前のふたり』のあらすじ【起】
リチャード・ラビングは恋人のミルドレッドが妊娠したのを機に、土地を購入してプロポーズした。ミルドレッドはそのことを姉のガーネットに報告した。2人は抱き合って喜びを分かち合った。リチャード達はミルドレッドの父の立ち合いの元、ワシントンD.C.で結婚の誓いを立てた。
リチャードとミルドレッドが寝ていると、突然保安官が家に押し入ってきて2人は捕まってしまう。リチャード達は別々の牢屋に入れられた。次の日、リチャードは釈放されるが、ミルドレッドは牢屋に入れられたままだった。リチャードはミルドレッドを置いていくのが嫌で抵抗するが、保安官に無理矢理外へと追い出されてしまう。
リチャード達が暮らすバージニア州では、異人種間の結婚は禁止されていた。リチャードは白人で、ミルドレッドは黒人だった。しかし、保安官になぜ結婚のことがバレたのか分からなかった。誰かが密告した可能性があった。
リチャードはいてもたってもいられず、保釈申請をするために保安官事務所を訪れた。しかし、ブルックス保安官からミルドレッドの家族を寄越すよう指示される。白人であるリチャードではダメだと言うのだ。ブルックス保安官は異人種間の結婚に対して強い反対を示した。リチャードは自分の妻であるにも関わらず、ミルドレッドを助けることができないことに悔しい思いを抱く。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』のあらすじ【承】
父が保釈金を払い、ミルドレッドは釈放された。リチャードが傍にいてはミルドレッドが再び逮捕されてしまうため、彼はミルドレッドの元を離れた。しかし、人目を盗み、夜中こっそり会いに行った。
リチャードとミルドレッドはフランク・ビーズリー弁護士に会いに行った。フランクはバジーレ判事に会って司法取引をしていた。その内容は、リチャード達が罪を認めるなら執行猶予をつけるというものだった。その代わり、リチャード達は婚姻関係を解消しなければならなかった。もし、婚姻関係を継続するなら、州外退去をしなければならなかった。その期間は25年だった。実刑を選択するなら、州刑務所に1年間収監されることになった。
リチャード達は知り合いを頼り、ワシントンに引っ越すことにした。ミルドレッドは家族と離れ離れになってしまうことを悲しんだ。ガーネットは妹と離れるのが悲しくて、リチャードを責めた。リチャード達は不安な中、生活を新たに始めることになった。
ミルドレッドは助産師であるリチャードの母の元で出産することを望んでいた。リチャードはミルドレッドの願いを叶えるため、彼女の家族の協力の下バージニア州にある実家に帰った。ガーネットは妹のために動いてくれたリチャードに感謝した。リチャードは出産の手助けをしてくれた母に感謝の言葉を伝えた。その時、この結婚は誤りだと非難される。母はミルドレッドのことが好きだったが、法を犯して結婚することを認めてはいなかった。
子供の誕生を喜んだのも束の間、保安官が家に駆けつけた。ミルドレッドはガーネットに我が子を託し、保安官の元へ向かった。2人はそのまま法廷に向かうことになった。バジーレ判事が200ドルの罰金を言い渡していると、フランク弁護士が駆けつけた。フランク弁護士は出産時に一時帰郷できると言ってしまった自分のミスだとし、情状酌量を求めた。バジーレ判事はそれを認め、ミルドレッド達を許した。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』のあらすじ【転】
リチャード達は子供を連れてワシントンに戻り、生活を再開させた。さらに2人の子供も生まれ、幸せな生活を送った。そこに、ガーネットが訪ねてくる。ミルドレッドはガーネットを抱き締め、再会を喜んだ。ミルドレッドはガーネットと話し、故郷を懐かしんだ。
10万人の民衆が集まり、仕事と自由を求めてデモ行進を行った。その行進をテレビで見たミルドレッドは、ケネディ司法長官に異人種間結婚禁止法の件を手紙に書いて送った。後日、アメリカ自由人権協会(ACLU)から紹介を受けたバーナード・コーエン弁護士から電話がかかってくる。ケネディ司法長官がACLUにミルドレッドの手紙を送ったことで、バーナードに弁護の依頼がきたのだ。弁護費用は協会が持つとのことで、ミルドレッドは会ってみることにした。
ミルドレッドはリチャードと共にコーエンに会いに行った。コーエンは群裁判の判決に不服を申し立て、連邦裁判まで持ち込まなければならないことを説明した。しかし、リチャードは故郷に戻りたいだけで、裁判を起こす気はなかった。バジーレ判事と話し合って解決してくれと意見した。コーエンはリチャードの意見を否定し、このケースは最高裁まで進まないと解決しないのだと説明した。控訴期限は判決後60日と定められているため、上訴するためにはミルドレッド達がバージニア州に戻って再逮捕される必要があった。リチャード達が再逮捕に強い拒絶を示したため、コーエンは別の案を考えておくことを約束した。
ミルドレッドの子供が車に轢かれてしまう。幸いかすり傷と打撲だけで済んだが、ミルドレッドは安全な場所で子供を育てるためにも故郷に戻ることを決意する。リチャードはミルドレッドの意思を尊重することにした。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』の結末・ラスト(ネタバレ)
ミルドレッド達は故郷の近くのキングアンドクイーン群の農場地に引っ越した。そして、長い間連絡がなかったので諦めたという旨の手紙をコーエン弁護士に送った。手紙を受け取ったコーエンは、師であるアンティオー教授に助けを求めた。アンティオー教授はコーエンに優秀な人権派の弁護士、フィリップ・ハーシュコプを紹介した。ハーシュコプはコーエンに様々なアドバイスをした。今回の案件は憲法を変える可能性があった。
コーエンとハーシュコプはリチャード夫妻と会い、今後の予定について話した。群裁判で訴えが棄却されたため、州裁判所に上訴できることになった。そして、州裁判所で敗訴すれば、最高裁に持ち込むことができた。コーエンは話題を変え、雑誌のライフ誌から取材要請がきていることを話した。今後の展開を考えれば、取材を受けることはプラスに働くはずだった。リチャードはあまり乗り気ではなかったが、ミルドレッドは取材を受けることにした。取材に来たライフ誌のヴィレットはおもしろい男で、リチャード達の家族にすぐに溶け込んだ。
リチャード達は州裁判で敗訴になった。彼らの裁判は社会からも大きく注目され、取材も受けた。すると、リチャードは会社で嫌がらせを受け、何者かに車で後をつけられる。そんな中、ミルドレッドが記者を家に招いて取材を受けた。リチャードはミルドレッドを止めようとするが、ミルドレッドは裁判のためだと言って聞き入れなかった。
リチャードは黒人の友人に会い、現状が嫌なら離婚すればいいと勧められる。例え今嫌がらせをされても、離婚すれば白人であるリチャードは普通の生活が送れるからだった。しかし、リチャードは周囲から冷たい目を向けられても、ミルドレッドと別れる気はなかった。
最高裁に上告が受理されたが、州政府側は反論してくることが予想された。反論の内容に使うのは子供のことで、混血児を生み出すことは不当だと主張するつもりなのだ。リチャードはあまりにも酷い主張にショックを受け、裁判の傍聴を拒否した。ミルドレッドも夫に従うことにした。コーエンはリチャードに、最高裁の判事に伝えたいことはないか尋ねた。リチャードが伝えたかったのは、妻を愛しているという思いだった。
コーエン達が最高裁で勝訴し、異人種間結婚禁止法は違憲となった。リチャードとミルドレッドは喜び合った。判決から7年後、リチャードは飲酒運転の車との衝突事故で死亡した。ミルドレッドは再婚せず、リチャードが建てた家で生涯暮らした。
映画『ラビング 愛という名前のふたり』の感想・評価・レビュー
ミルドレッドとリチャードは実在の人物である。この作品は実話を元に制作されており、異人種間結婚禁止法に苦しんだミルドレッド達の姿が描かれている。リチャードの職場での嫌がらせや保安官達の態度を見ていると、きっと他にも嫌がらせがたくさんあったのではないかと思う。それでも、リチャードとミルドレッドは別れを選ぶことなく、お互いを愛し合い支え合って生きている。純粋に凄いなと思うし、愛というものが尊いものであると感じられる。この作品を通じて、かつて異人種間結婚禁止法で苦しんだ人がいるということを忘れてはいけないなと感じた。(MIHOシネマ編集部)
1958年、アメリカでの実話を元にした映画と知り、驚きを隠せません。今からたった60年前には、異人種間での結婚は違法であったことが不思議で、恐ろしくも感じます。日本では触れる機会の少ない、人種差別問題についての知識を得られる作品です。鑑賞すると、残酷で根深い問題であることがわかります。後半は連邦裁判となりますが、ラビング夫妻の愛の深さが浮き彫りとなり、静かに感動しました。多少、盛り上がりに欠ける気がしますが、その地味さが素敵だと思います。(女性 30代)
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