映画『ブルーに生まれついて』の概要:ドラッグによる問題を度々起こすジャズトランペット奏者のチェット・ベイカー。ある日、麻薬の売人からの暴行に遭い、奏者として最大のピンチを迎える。
映画『ブルーに生まれついて』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ、音楽
監督:ロバート・バドロー
キャスト:イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー、トニー・ナッポ etc
映画『ブルーに生まれついて』の登場人物(キャスト)
- チェット・ベイカー(イーサン・ホーク)
- 白人のトランペット奏者。父親の影響で演奏するようになり、才能豊かであるがヘロイン中毒という難点を抱えている。
- ジェーン(カルメン・イジョゴ)
- 女優を目指すチェットの恋人。ヘロイン中毒であるチェットを献身的に支える。
- ディック・ボック(カラム・キース・レニー)
- チェットとかつて一緒に仕事をしていた同僚。度々チェットがドラッグ絡みで問題を起こしたことでチェットと距離を置くもののチェットの才能を誰よりも高く買っている。
映画『ブルーに生まれついて』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ブルーに生まれついて』のあらすじ【起】
1950年代、圧倒的技量を持ち合わせたトランペット奏者のチェット・ベイカーは類まれなる音楽センスで多くの人を魅了した。だが、薬物中毒により刑務所に服役していた。
その後、チェットの人生を基にしたヒューマンドラマの映画が作られることとなる。自伝映画が作られることを知ったチェットは自分の役は自分でやりたいという願いを映画監督へ打診していた。監督は保釈金を支払い、チェットを出所させていた。
撮影現場へ入ったチェット。そこには自分の2人目の妻であったエレイン役を演じる新米女優ジェーンがいた。
撮影を介し距離を縮める2人。チェットはジェーンをデートに誘う。ジェーンも誘いに乗り、ボーリングを一緒にするなど親睦を深めていった。ボーリング店を出た後、2人は歩いていると突如チェットは支払いが滞っていた薬の商人からの襲撃を受けてしまう。
病院にすぐ運び込まれるもチェットは顎の骨が砕けており、トランペット奏者としての復帰は絶望的となった。
映画『ブルーに生まれついて』のあらすじ【承】
怪我を負ったことで映画の話は白紙となった。チェットの古くからの友人ディックも見舞いに来るが、薬絡みのトラブルを引き起こしたことに呆れ、ディックを見放す。
周囲の人は彼から去るも、ジェーンだけは彼の傍にいて献身に支えるのであった。
ディックの保護観察官は合法の薬を微量ずつ摂取しヘロイン中毒を克服するメタドン療法を彼に勧める。だが、この治療は他の薬と併用ができないため、怪我の鎮痛剤を飲むことができない。痛みに耐えながら彼はメタドン療法を行うのであった。
トランペット奏者としては復帰が難しい状況下であったが、彼は練習を止めなかった。ときにはバスルームで血だらけに倒れてしまうこともありながら、ジェーンは彼が復帰できるようサポートをした。
その後完全にヘロインを断ち切れない状況であった彼は、ジェーンを連れて実家に帰省する。
ディックの父親はかつてトランペット奏者として活躍していた。父に認められたい一心で取り組んでいたが、父はドラッグに溺れた息子を失望していた。結局帰省したものの、ディックと黒人であるジェーンにも関心を示さなかった親に対し怒り実家を後にする。
映画『ブルーに生まれついて』のあらすじ【転】
顎も回復し、何とかお金を工面し折れた歯を新しい歯に入れ替えることもできた。その頃にはメタドン療法とジェーンのサポートの恩恵もありヘロイン中毒から大方脱していた。
実家の田舎から戻ったチェットは都会の町にあるお店でトランペットを演奏する。だが、かつてと同じように演奏できるまでには回復していなかった。そのため周囲から厳しい意見を貰うこともしばしばあった。
ジェーンもオーディションを受けながらも順調ではなかったため2人は経済的には厳しい状況であった。
その後チェットは、ディックを訪ね仕事を紹介してほしいと依頼する。だがディックは断るのであった。
チェットは自分の名前を前面に出し演奏を行うなど精力的に活動した。だが、保護観察の身であるチェットは所定の労働時間が足りていなかった。そこでジェーンの計らいもありディックはチェットのもとに来る。彼のひたむきな姿勢はかつてチェットに足りていなかった素養であり、いまのチェットと一緒に仕事をしたいと思い始める。また同様に、チェットの努力を近くで見ていた保護観察官もチェットの労働時間について多めに見るのであった。
映画『ブルーに生まれついて』の結末・ラスト(ネタバレ)
チェットはジェーンとの結婚について真剣に考えるのであった。そこでジェーンの両親に会うことにする。
チェットがヘロイン中毒者であったことを当然知っていたジェーンの両親。ジェーンの父親は結婚については反対の姿勢を取るのであった。
結婚はできなかったチェットはさらに演奏に力を入れる。昔とは違った味を出しているチェットにステージに出そうとディックは考える。そこで一流音楽家ダニー・フリードマンを紹介することを決める。
一方、ジェーンは妊娠しており、チェットは結婚の誓いとしてネックレスを渡す。
ダニーが見守る中、演奏を行ったチェット。チェットの演奏技術を認めたダニーは一流音楽家が上がれるステージの「バードランド」で演奏することを認める。
演奏当日、不安に駆られるチェットの手元にはヘロインがあった。ステージに上がることへの不安から再度薬に誘惑されていた。ディックは打つかどうか自分で決めろとチェットに言い渡す。
ステージに出て演奏を始めるチェット。その姿をジェーンも見ていた。だが、彼女はチェットの演奏に悲しみのあまり涙を流す。彼女は薬を打ったあとに出る彼の手癖を知っており、ステージで演奏しているチェットはその手癖が出ていたのであった。
ジェーンはチェットから貰ったネックレスをディックへ渡し、別れることを決意する。ステージ上からジェーンが去るのを涙ながらに見守り演奏を続けるディックの演奏は、ジェーン以外の人間には素晴らしい出来栄えであった。
彼はその後も生涯に渡ってステージに立ち続けた。だが、薬を断ち切ることもまたできなかった。
映画『ブルーに生まれついて』の感想・評価・レビュー
チェット・ベイカーの人生をもとに作成された本作。ジャズ界では多くのファンもいる彼の人生は、トランペットと薬が切り離せない生涯であった。
彼は確かに類まれなる才能を持っていた。だが、それ故に誰よりも繊細で脆かった。そんな弱さを払拭させるため薬を止められなくなってしまうジレンマに悩まされた悲しい男。でも皮肉にも彼の演奏は聴く人の心を揺さぶる魅力があったのも事実。もしかしたらそんな彼の演奏者としてのスキルや技量だけでなく、彼自身の弱さも音に表現されていたのかもしれない。
薬を肯定するつもりはないしむしろ犯罪行為であり良くないこと。だが皮肉にもチェットをチェット・ベイカーたらしめたのは、彼の辿ってきた複雑な人生と類まれなる才能、繊細な精神によって存在できたのかもしれない。正しい道でないと分かっていてもこう生きざるを得なかったことを誰よりもチェット自身が理解していたと考えるとなんだが切なくなる。(MIHOシネマ編集部)
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