この記事では、映画『チワワちゃん』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『チワワちゃん』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『チワワちゃん』の作品情報

上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:二宮健
キャスト:門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ etc
映画『チワワちゃん』の登場人物(キャスト)
- ミキ(門脇麦)
- チワワの友人。写真系SNSで自分の写真をアップするのが趣味。実家は美容院。
- チワワ / 千脇良子(吉田志織)
- ヨシダの彼女として現れた少女。政治家への賄賂を横取りし、その金で豪遊する。SNSで有名になりモデルになった。写真家のサカタと恋仲になるがすぐに破綻。その後、紆余曲折あるが、最終的に東京湾でバラバラ死体となって発見される。
- ヨシダ(成田凌)
- ナガイの元に集まった一人。チワワを連れてきた人物。独特な色気を纏っており、女を落とすのが上手い。口説き文句は“お前だけ、なんか違う”。
- カツオ(寛一郎)
- ミキたちの仲間の一人。チワワが住むところが無くなった時、少しの間、泊めたことがある。
- ナガイ(村上虹郎)
- 映画監督を目指す青年。チワワに恋心を抱いており、彼女用に脚本まで書いたが亡くなったことで実現はしなかった。
- サカタ(浅野忠信)
- 有名カメラマン。モデルに暴言を吐くことで有名だが、仕上がる写真は素晴らしいものばかり。
- 鈴木裕子(栗山千明)
- チワワの事件の詳細を知ろうとする記者。
映画『チワワちゃん』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『チワワちゃん』のあらすじ【起】
東京湾で一人の女性のバラバラ死体が発見された。腐乱が進んでいたがDNA鑑定の結果、その死体は千脇良子という女性だと判明する。事件を知ったミキは、その千脇良子が自分の友達のチワワちゃんのことだとは全く気がつかなかった。
チワワとはクラブで出会った。映画監督を目指すナガイの元に若者たちが集まり、いつしかつるんで遊ぶようになっていたが、その中のヨシダという男が新しい恋人として連れてきたのがチワワだった。
若さゆえにやりたことはたくさんあったが彼らには金が無かった。そんな時、常連にしているバーのマスター・シマから、ビップ席の男たちがバッグの中に600万円持っていると耳打ちされる。政治家に届ける賄賂らしい。
横取りしようという考えが頭をよぎるが、誰も行動には起こさない。しかし、チワワは別だった。彼女は男たちを油断させるとバッグを持って走って逃げた。皆は次々にバッグをリレーし、東京の夜の町を逃げ回る。ミキはチワワと一緒に逃げ切ったことで不思議な友情が芽生え始める。
翌朝、金を持っていた男たちが逮捕されたというニュースが流れる。チワワたちは600万円が自分たちのものになったと大喜び。海外旅行をしようと考えたがチワワがパスポートを持っておらず、仕方なく国内のリゾート地へ。

映画『チワワちゃん』のあらすじ【承】
チワワたちは豪遊の限りを尽くし、600万円をわずか3日で使い切ってしまう。ヨシダは傲慢な男だったが、チワワの影響か少しずつ性格が変わっていった。しかし、それは彼が苛立ちを募らせているに過ぎなかった。チワワはヨシダがパーティに群がってきた見知らぬ女とキスしている姿を目撃し動揺。腹いせに別の男に強引にキスを迫る。
夢のようだった時間が過ぎ去り、ミキたちは以前と同じ世界に戻ってきた。ミキはナガイの仕事場を利用して写真を撮ってもらっていた。その写真をSNSに上げており、フォロワーも5000人を超えていた。チワワも仲間のキキから勧められSNSを始めることに。
チワワは有名なモデルからフォローされたことで有名になり、フォロワーはうなぎ上り。モデルとして契約も交わし一躍有名人の仲間入りをした。
その後、ミキたちはあまり集まらなくなり、少しずつ疎遠になっていった。そんな時、チワワの遺体が発見されたのだ。マスコミはチワワの事件を大々的に取り上げたが、そこで報道されたのは良いことばかりではなく、むしろ批判的なことが多かった。
記者の鈴木裕子から取材の依頼を受けたミキは、今までの出来事とチワワの印象を語ったが、自分がチワワについて知っていることが少ないことに気がつき、かつて遊んだ仲間たちにチワワの話を聞いて回ることにした。
映画『チワワちゃん』のあらすじ【転】
カツオの話ではチワワは料理が上手でヨシダと似合いのカップルだったという。だが、チワワに別に好きな男ができてヨシダは捨てられたのだそうだ。しかし、ミキはチワワからはヨシダが他に女を作ったのだと聞かされていた。マスターのシマは、チワワがヨシダから暴力を受けていたと言う。
ナガイが言うには、チワワがおかしくなったのは有名写真家のサカタのせいだという。モデルとしてナガイの働くスタジオに来た際、サカタに写真を撮られたチワワ。撮影中にきつい言葉を浴びせられ泣き出すが、撮影後に心配になったナガイが楽屋を訪れると二人はキスをしていた。その後、チワワはヨシダの元を離れ、サカタと付き合うようになったという。
だが、サカタとはすぐに別れることになった。その後、チワワには放浪の半年が訪れる。彼女は住む家が無くなり、友人たちの家を渡り歩いた時期があったという。ミキの家にも二週間ほど転がり込み、実家の美容院を手伝ったりした。
クラブで知り合ったハラダの家にも2~3ヵ月ほど転がり込み、毎日のように性行為に耽ったという。しかし、次第に飽き始めていつの間にかチワワはいなくなっていた。
その後、チワワは長濱ゆずきという名でAV女優になっているところを仲間が発見。チワワは女優達が共同で暮らす豪華な部屋に住んでいたが、共同生活が嫌になり、自分の所にやってきたとカツオは語った。しばらくして、プイといなくなったチワワ。カツオは六本木のクラブでチワワを見かけたが、一緒にいた男たちはどう見ても危ない空気を漂わせていた。
映画『チワワちゃん』の結末・ラスト(ネタバレ)
ユミはチワワがカツオとお金で揉めていたと言い、当時、ユミと付き合っていたアキラはユミに近づくなとチワワを脅した。それ以降、ユミにチワワからの連絡は無いそうだ。他にも、チワワはあまり親しくもないサヨコにも金を貸してくれと言っていたという。怒ったサヨコはチワワに掴みかかったが、その時、チワワがとても力が弱かったと説明された。
そんな時、シンガポールで大規模テロが発生する。今まで何度も連絡していたが、音沙汰が無かったヨシダから着信が来る。ミキがヨシダに会いに行くと、彼はすっかり別人のようになっていた。金髪だった髪を黒く染め、就職活動に勤しんでいたのだ。
ヨシダはチワワに対して何も思っておらず、興味なさそうな反応しかしなかった。誘うようなヨシダの視線と発言にミキはその場を去ろうとするが、ヨシダは強引にミキを抱こうとしてきた。しかし、上手くできなかったヨシダは、やがてその場にへたり込んでしまった。
世界は目まぐるしい勢いで回り、テロや暴動など悲しいニュースが飛び交っていた。そんな中では、チワワの事件はあっという間に風化し、皆、彼女の存在を忘れていった。結局、犯人も未だに捕まっていない。
チワワにお別れをしようと思い立った者たちが東京湾の埠頭に集まった。皆、海に花束を投げ、チワワを思って涙を流した。その中にはクマちゃんと呼ばれる少女もいた。彼女は事件のニ、三日前にチワワと遭遇していた。新しい彼氏のために料理するのが楽しいと言っていたそうだ。
集まった皆はそれぞれチワワに向けて動画を残した。去り際、車の窓の外を眺めていたミキの目に、チワワの思い出が駆け抜けていった。
映画『チワワちゃん』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
こういった青春群像劇は時代時代で定期的に作られるものだが、これが“今”の青春表現なのだと思わされる作品。若手キャストはそれぞれ見事な演技を披露したが、浅野忠信が年齢とキャリアから生み出される圧倒的な存在感を示す。『時計じかけのオレンジ』のオマージュもあり、二宮健監督の映画好きがよく伝わる。作中の言葉を引用すれば、まさに若さはゴールドラッシュ、駆け抜けた者勝ちなのだ。そして、若さと死は切っても切れないものなのだと改めて痛感した。(MIHOシネマ編集部)
内容が詰まった作品が好きな方には苦手にされそうなメッセージ性を持った作品。時間に対して得られるものは少ないというか、展開も単純で流れが遅い感じがあった。若い人にはぜひ観ていただきたいが、なんとなく嫌がられそうな雰囲気がある。実際観ても嫌だと感じる人は多いかもしれないが、感情豊かだったり、シンクロするような出来事があった人には響くだろう。残念ながらわたしは2回目観る気にはなれない。今考えても、どこかしらに靄がかかったような感覚になる。(女性 20代)
これが若者で、これが今なのかもしれないと若さ故の過ちや、過剰な自信など冷静に見ていると恐ろしくなってしまうようなストーリーでした。
私は平凡で平穏な人生を歩んでいきたいので、若い頃に調子に乗って危険なことをしたりはしませんでした。周りにそういうことをする友人は多くいましたが、羨ましいとも思いませんでした。
今作に登場するキャラクターは誰もが他人と繋がっていたかったり、認めてもらいたかったりと承認欲求の塊でした。それが今の若者の当たり前なのかなとも思いましたが、死んでも気づいてもらえないほど浅い付き合いになんの意味があるのだろうと考えてしまいました。(女性 30代)
チワワという少女の死から始まる物語だが、彼女自身の人物像が誰の証言からも定まらない点に惹きつけられた。誰にとってもチワワは「自分が見たい姿」でしかなく、その曖昧さが彼女の死の虚無感をより強めている。若者たちの刹那的な生活、刺激を求めて漂流する感覚がリアルで、ラストに向けて徐々に空虚さが積み重なっていく構成が印象的。死の真相が明かされても救いはなく、彼らの青春がただ崩れていく余韻が切ない作品だった。(20代 女性)
登場人物全員がチワワを知っているようで何も知らないという構造が面白かった。SNS時代の「つながっているのに孤独」という感覚が鋭く描かれ、若者文化の危うさが浮き彫りになる。チワワの死が発覚しても、誰もが悲しみきれず、自分の生活を優先してしまう姿がリアルすぎて胸に刺さる。特にヨシダの虚ろな目の演技は、彼の内面の空洞を象徴していて印象に残った。観終わった後、改めて“他人を本当に知ることの難しさ”を考えさせられる。(30代 男性)
観ていてとにかく痛烈だった。チワワの死体がバラバラで見つかるというショッキングな冒頭から、彼女を巡る証言がまるで違う色を持つのが興味深い。彼女は誰にとっても特別でありながら、誰にとっても“本当の姿”ではなかった。若者たちの刹那的な快楽の連続が、死という現実で強制的に終わらされる残酷さが響く。チワワの不安定さや孤独が垣間見える終盤は胸が締めつけられ、ただの青春映画では終わらない余韻を残した。(40代 女性)
チワワという存在が、物語そのものを問いかける“概念”として扱われている点が斬新だった。彼女は魅力的で自由な象徴のように見えるが、その裏には満たされない孤独が潜んでいたのだろう。誰も彼女を理解せず、都合の良い形で見ていたからこそ、死後に語られるエピソードがどれも食い違っていく。若者たちの無軌道さは批判ではなく“時代の空気”として描かれており、痛いほどリアル。観終えた後の喪失感が重く残る作品だった。(50代 男性)
“若さの輝き”と“虚無”の落差が強烈な作品。チワワが周囲を振り回すのではなく、周囲が勝手に彼女に意味を与えていたことが、死後の証言から浮き彫りになるのが巧い。クラブや夜の街の浮遊感が映像として美しく、同時に危うさを孕んでいる。彼女が最後に見せた孤独な横顔は、破滅へ向かう暗示だったようにも感じた。物語の答えを観客に委ねるスタイルが心地よく、余白が多いからこそ深読みしがいがある。(20代 男性)
チワワの死によって明らかになる仲間たちの関係性が、実に淡々としていてリアルだった。悲しみよりも戸惑い、そして“どうでもよさ”が同居する感情は、若者特有の残酷さかもしれない。チワワは皆の中心にいたようで、実は誰のものでもなかった。その浮遊した存在感が魅力的でもあり、危うくもある。彼女が抱えていたであろう孤独が、断片的な回想を通して滲み出てくる構成が秀逸だった。(30代 女性)
人の死をきっかけに、それぞれが“自分にとってのチワワ”を語る形式が面白く、オムニバス的な魅力があった。誰もが知ったふうに語るのに核心に触れられないという空虚さは、現代の人間関係そのものを象徴しているように感じた。チワワの生き方は自由で奔放に見えるが、最期に向かうほど脆さが露わになっていく。物語が進むほど彼女が“掴めない人間”であると知り、胸に切なさが残った。(40代 男性)
映画『チワワちゃん』を見た人におすすめの映画5選
ヘルタースケルター(2012)
この映画を一言で表すと?
煌びやかな表面の裏に潜む自己崩壊を描く、過剰で濃密なエンターテインメント作品。
どんな話?
トップモデルとして絶大な人気を誇るリリコは、美しさを維持するために秘密裏の美容手術に依存していた。しかし成功と嫉妬、欲望の渦に飲み込まれるうちに精神が不安定になっていく。華やかな世界の裏にある孤独と焦燥が露わになり、崩壊へ向かうリリコの姿が痛々しく美しい物語。
ここがおすすめ!
視覚表現が圧倒的で、虚無を抱えた若者の危うさや“作られた自分”を生きる苦しさが鮮烈に描かれている。『チワワちゃん』の持つ刹那的で不安定な世界観が好きな人には特に刺さるはず。沢尻エリカの熱演も見どころで、観る者に強烈な印象を残す作品。
リリイ・シュシュのすべて(2001)
この映画を一言で表すと?
透明感のある映像で、若さの痛みと孤独を浮かび上がらせる青春残酷劇。
どんな話?
中学生・雄一と友人の関係を中心に、ネット掲示板や音楽に救いを求めながらも暴力や孤立に飲み込まれていく少年たちの日常が描かれる。淡々とした日々の中に積み重なる苦しみが、静かに彼らを追い詰めていく。美しい映像と残酷な現実が交錯する独特の空気感が魅力。
ここがおすすめ!
若者たちの壊れやすさや心の叫びが、繊細なカメラワークで丁寧に表現されている。SNS世代の孤独を描いた『チワワちゃん』との親和性も高く、淡い光と深い闇が同居する世界観に引き込まれる。観終わった後に残る余韻は非常に大きい。
ミッドナイトスワン(2020)
この映画を一言で表すと?
孤独な魂同士が出会い、互いに変わっていく姿を描いた静かで力強いヒューマンドラマ。
どんな話?
トランスジェンダーとして生きる凪沙は、親に放置された少女・一果を預かることになる。当初は距離があった二人だが、やがて互いの不器用な孤独を理解し合い、かけがえのない存在へと変化していく。痛みと優しさが交差し、胸が締めつけられる物語が展開する。
ここがおすすめ!
存在の不安定さや孤独を抱えるキャラクターの姿は、『チワワちゃん』のチワワの影と重なる部分がある。草彅剛の鬼気迫る演技と、一果との関係性の変化が深い感動を呼ぶ。破壊的ではなく静かに心を揺らす作品として非常におすすめ。
スワロウテイル(1996)
この映画を一言で表すと?
“居場所を求める若者たち”をエネルギッシュに描いた、疾走感あふれる青春群像劇。
どんな話?
外国人労働者が集まる架空都市・円都を舞台に、少女アゲハと仲間たちが音楽や仲間との絆を拠りどころに生きていく姿を描く。厳しい現実の中でも希望を探し続ける若者たちの熱量が詰まった物語で、自由と危うさが共存する世界が広がる。
ここがおすすめ!
“寄る辺なさ”を持ちながらも前へ進もうとするキャラクターたちが魅力的。混沌とした映像美、音楽の高揚感、若者の疾走感など、『チワワちゃん』の世界観に通じる疾走するエネルギーがある。アジア映画の中でも特に熱量が高く、今観ても色褪せない名作。
パラダイス・キス(2011)
この映画を一言で表すと?
自分を見失っていた少女が、自由な世界で“自分の輪郭”を見つけていく青春ドラマ。
どんな話?
平凡な毎日を送る女子高生・早坂紫は、ファッション業界を目指す学生グループ“パラキス”と出会い、モデルとして新たな世界へ踏み出す。一見華やかなその世界で、紫は自分が何を選び、どう生きたいのかを少しずつ見つけていく成長物語が描かれる。
ここがおすすめ!
若さの迷い・輝き・危うさが色濃く描かれており、『チワワちゃん』で感じた“自分探しの痛み”に共鳴する。ファッションの世界観が美しく、登場人物たちの魅力も満載。軽やかに見えて、一歩踏み出す勇気を語る深みのある作品。






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