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映画『影武者』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『影武者』の概要:当時、邦画の歴代興行成績一位を獲得した話題作。外国版のプロデューサーにはJ・ルーカスやF・コッポラが名を連ねており、世界の黒澤っぷりが伺える。実在の武将・武田信玄をモデルに、有名な長篠の合戦に至るまでを描く。パルムドール賞受賞。

映画『影武者』の作品情報

影武者

製作年:1980年
上映時間:179分
ジャンル:ヒューマンドラマ、時代劇、戦争
監督:黒澤明
キャスト:仲代達矢、山崎努、萩原健一、根津甚八 etc

映画『影武者』の登場人物(キャスト)

武田信玄(仲代達矢)
御屋形と呼ばれる。各地の武将たちに一目置かれているが、狙撃されてしまい命を落とす。自分の死後も、家を守るため三年は喪を秘すよう家臣たちに命じる。
影武者(仲代達矢)
仕置き場にいたところを、信玄の影武者として信廉に拾われる。下賤の身であるが、一度会ったきりの信玄に心服し、務めを果たしあげる。
武田信廉(山崎努)
信玄の弟。影武者を手配し、その後も面倒を見る。影武者の苦労をよく理解し、寛大な心を見せる。
諏訪勝頼(萩原健一)
信玄の息子。幼い竹丸の陣代であることに不満を隠せない。信玄亡き後、暴走を始め、家を滅亡に導いてしまう。
山縣昌景(大滝秀治)
武田家の旗本。信玄の命を守るため、様々な面で采配を下す。
織田信長(隆大介)
気性が荒くせっかち。信玄の安否を確かめるべく、武田家に医者を送り込む。
徳川家康(油井昌由樹)
頭脳派で策士。様々な方法で、武田家の実態を探ろうとする。
武田竹丸(油井孝太)
勝頼の息子。信玄の世継ぎとして育てられる。まだ幼く、影武者に懐く。
田口刑部(志村喬)
信玄の父。かつて信玄に追放される。信長の手先として、医者と共に武田家に送り込まれる。

映画『影武者』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『影武者』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『影武者』のあらすじ【起】

武田の軍勢は、野田城陥落を目前に控えていた。勝利を目にするべく戦地に赴いた信玄は、夜の闇の中で狙撃され、深手を負う。その一報は、すぐさま各地の武将の耳に入る。特に徳川家康、織田信長は、名将信玄の安否を確かめようと必死だ。落城寸前の野田城と和議を結び、退陣した武田軍に、ますます疑惑は広がってゆく。

家康は、信玄を撃った足軽に会いにゆき、真相に迫ろうとする。足軽は、敵方の武将の位置を見抜き、昼間のうちに狙いをつけて夜間に撃ったのだという。その狙いの正確さから、家康は信玄の重体を確信する。

一方、信玄はかろうじて生きていたものの、長くはないと見て遺言を残す。家のため、たとえ死すとも三年は喪を秘すよう命じ、後日息を引き取ってしまう。信玄の命を守るため、旗本たちが頭を捻るなか、信玄の弟・信廉は兼ねてより用意していた影武者を連れてくる。彼は下賤の生まれかつ盗人であったが、その姿は信玄と瓜二つであった。

影武者が現れると、味方の兵は歓呼し、御屋形の健在に湧きたった。徳川、織田の間者たちは、その様子を半信半疑で見守る。なおも確かな情報が得られず、信長は苛立つ。

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映画『影武者』のあらすじ【承】

城内でも盗みを働こうとした影武者は、偶然信玄の遺体を見つけてしまう。信玄亡き今、すっかり気力を失くしてしまい、任を降りると言いだす。旗本・山県昌景に情けをかけられ、咎められることなく自由の身となるも、心残りがある様子だ。

翌日、家臣たちが見守るなか、信玄の遺骨が湖に沈められる。影武者は、その様子を影から伺っていた。たった一度会ったきりの信玄にひどく心服していた彼は、今一度自分を影武者として用立てるよう、旗本たちに頼み込む。

再び務めを果たすこととなった影武者は、信玄として儀式に参加し、間者の目を見事に欺く。信玄の屋形に帰宅すると、孫で世継ぎの竹丸や側室たちの前でも、機転を利かせた態度を取って信玄であると信じ込ませた。唯一、信玄の愛馬である黒雲だけは騙せぬと見て、旗本たちは接触を避けさせる。黒雲は気性が荒く、信玄にしか懐かないのだ。

家康は、相変わらず信玄について探っていた。武田を攻めることで、信玄の様子を知ろうと考える。

映画『影武者』のあらすじ【転】

勝頼は、ただでさえ息子の陣代という立場が気に入らないうえ、影武者を父と崇める日々に我慢ならない。家臣には、信玄の後を継ぐにふさわしいのは竹丸ではなく勝頼だと煽られる。

徳川の出陣を受けて、評定が開かれる。武田の今後の動きについて、形式的なやり取りが行われる。大勢の家臣たちが見守るなか、勝頼は突然、信玄の指示を仰ごうと言いだす。旗本たちは慌てるが、影武者の対応は堂々たるものであった。先日、信玄が「お山」と呼ばれている所以を聞いていたことから、最良の返答を絞りだしたのだ。武田の旗には「風林火山」と記されており、信玄はその中の「山」として、絶大な信頼を置かれていた。うまくかわされてしまった勝頼は、屋形を飛びだして諏訪に帰ってしまう。

信長は、信玄の父・田口刑部と共に、見舞いとして医者を遣わせる。信玄として影武者が診察に応じたため、信玄健在の証拠は揃うばかりであった。

勝頼が抜け駆けの出陣をしたとの報せが入る。勝頼の勝手な行動に、旗本たちは憤慨する。ただちに勝頼軍の背後に後詰めの軍を据え、信玄の存在をアピールすることで援護する。それを見た勝頼は、ますます怒りを募らせる。

映画『影武者』の結末・ラスト(ネタバレ)

夜になっても戦は続き、緊張の糸が張り詰める。暗闇で怒号と銃声がこだまし、慌ただしく陣形が移ろう。数人の兵が、影武者を守って命を落とす。やがて落城は成功するが、勝頼は不満を露わにする。勝利を導いたのは自分の力ではなく、父の幻影であると分かっていたのだ。

帰宅した影武者は、屋形の生活にも馴れ、竹丸との仲を一層深めていた。ところが、黒雲に乗ろうとして振り落とされてしまい、さらには信玄の背中にあるはずの傷がないことまで指摘されてしまう。観念した旗本たちは、ついに影武者の正体を明かし、勝頼を御屋形とすることに決める。影武者は屋形を追いだされる。

信玄の仮葬儀が行われる。影武者は、遠くからその様子を眺め、幼い竹丸の俯く姿に胸を痛める。家康と信長は、三年もの間謀られていたことに驚きを隠せない。

勝頼が長篠に出陣する。武田の滅亡を予感させるその動きを、旗本たちは必死に止めようと説得するが、勝頼は聞く耳を持たない。

徳川の連合軍による鉄砲隊の攻撃は、武田軍を壊滅させた。その様子を影から見ていた影武者は、心苦しいあまりに敵前に飛びだす。砲撃を受け、必死で川に逃げ込むと、そこには風林火山の旗が沈んでいた。旗に手を伸ばすも命は尽き、その横を流されてゆく。

映画『影武者』の感想・評価・レビュー

ラストシーンは、影武者の表情から川の水の色まで印象深い。流れる川然り、何度も挟まれる空模様のインサート然り、本作は無常の性質を持つものをしつこく登場させる。このような懇切丁寧な演出に加え、コントのような簡潔なストーリー展開となっているため、三時間という大作でありながら、こんがらがることなく非常にさっぱりとした後味が残った。

影武者が敵前に飛びだし、亡霊のように進む様は、『』の秀虎が天守からゆらりと降りてくる場面と酷似している。黒澤が執心し、こだわり抜いたシーンなのだろうと思うと、微笑ましい気持ちになった。(MIHOシネマ編集部)


賛否両論ある今作。黒澤明監督の作品でキャストには山崎努や仲代達矢、荻原健一に根津甚八などかなり豪華な演技派俳優が揃っています。武田信玄とその「影武者」、そして信玄の家族の物語である今作は邦画とは思えないほど壮大な世界観でした。カメラワークも素晴らしく「魅せる」という言葉がぴったりです。
大きな盛り上がりはありませんが、それがまた寡黙な「男」の世界を表している気がしてとても楽しめました。より深く理解するために何度も見たい作品です。(女性 30代)

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